※この作品はR-18です。

真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜   作:葉隠小太郎

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機動戦士ガンダムSEED FREEDOM良かったよ!!(関係無い)

では本編スタート




【依頼】怪死した動物達の死の真相を暴け〜後編〜

 

 

数時間前。

 

神室町 八神探偵事務所内

 

「……ナニコレ?」

 

少々足取り重く帰ってきた八神の前に広がっていたのは、驚きの光景であった。

 

来客用のソファーや机の上にはキッチン用のデジタルスケールで黒い粉を測り、其れを小さな水筒の中へ注ぐティーと釘やボルト等を詰める海藤の姿にただ開いた口が塞がらない。

 

「なぁ茶子嬢。ホントにコレしなきゃ不味いの?明らかにアナーキーな事してるよな?」

「日本国内で手に入る素材ですので見つからなければセーフです」

「良くない事って基本見つからない事前提だが?」

 

半ば準備罪に当たる行為をしている海藤もこれには不安が募る。

 

そもそも何故此れだけの準備が必要なのか、八神は思い当たる節を感じた。

 

「お帰りなさい八神さん」

「お帰りター坊。机に牛丼あるから今のうちに食べとけ」

「あ、ありがとう…」

 

あまりにも非日常な状況に晒されると全く思考が働かないことを実感出来た。

 

今まで殴り殴られ様々な事を経験したものの、流石に手製爆弾の現場までは未体験であり、唯一出来るのもただ邪魔しないように後ろを小走りに自身の机へ向かうことだけ。

 

「よっと…。はぁ……」

 

椅子に座ると少しだけ気が抜けてため息が漏れる。

 

あまりにも突拍子もない話でだいぶ困った物だが、其れでも請け負ったからには出来得る限り解決に導く事が役目。

 

数秒間目を閉じて思考をクリアにしながら目を開ける。

 

「茶子ちゃん。ちなみに何作ってるの?」

「1つはテルミット反応仕様の爆薬で残りは破砕手榴弾モドキです。別にアルコール除菌剤と混合ガソリンを混ぜたモロトフカクテルも幾つか」

「ちょっ、待てよ」

 

流石に此処で物申す。

 

「それ火炎瓶だよね?」

「ええ。由緒正しきフィンランド軍が使っていた可燃性抜群の火炎瓶です」

「否定してほしかった…」

 

ティーの足元に置かれた透明なガラス瓶内には既に可燃物である混合ガソリンとアルコールが入っており、口の上にも布が差し込まれている。

 

明らかに安保闘争等でも利用された火炎瓶そのものであり、これには頭を抱える。

 

「ご心配なく。使うのは室内と延焼被害にならない場所のみとします」

「心配だらけだよ本気で」

 

そういう話ではない。

頭痛を抱えるように両手で顔を覆う姿に海藤も考え込むが。

 

「そろそろ説明が必要みたいなので此処でハッキリ伝えます」

 

最後の一本を詰め終え、机の上の物を段ボール内へ仕舞ってから立ち上がり、ホワイトボードを出した。

 

「これから戦うのは、特殊な技量が無いと手強い相手と勝てない相手の複合と考えて下さい」

「そ…そうなのか?」

 

黒のマーカーを手に取り、丁寧な日本語を書き進めていく。

 

「想定される敵勢力…【悪魔】についてレクチャーしてもらいます」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

悪魔。

 

その言葉を聞いて頭に浮かぶのは蝙蝠の羽根を背に生やし、鋭い歯を見せつける化け物の姿。

ステレオタイプなそれと、人間に近いモノやライオン等の動物にも見えるタイプも存在する。

 

其れ等はかのイスラエルの王、〔ソロモン〕が使役した【72柱】の悪魔から引用されたりした結果である。

 

但し、聖書等の記述通りに悪魔と断定する行為は早計。

 

彼等もかつては信奉された神々でもあり、唯一神によって失墜され、悪魔というレッテルを貼られた経緯も存在する。

他にも、異教徒を悪魔の使者と呼ぶ事もあるゆえ、仏教であろうとも神道であろうとも、其れ等の神々もまた悪魔という広義的な存在としてカテゴライズされてもいる。

 

 

「ということで、唯一神を信奉する天使や日本古来に住む妖怪、ヨーロッパ伝承の妖精、世界各地の逸話に残る精霊等も広義的に悪魔と我々は呼んでいます」

 

ホワイトボードに書かれた例となる天使や妖怪等の名前は少なくとも何処かで見聞きしたものばかり。

 

ティーの言葉通りに解釈するならば、人間でも黒人種群(ネグロイド)、白人種群(コーカソイド)、黄色人種群(モンゴロイド)、黒褐色人種群(オーストラロイド)と分類され、さらに細かくイタリア系ロシア系中東系日系と分けられる事と考え方は同じと捉えられる。

 

ふとティーの話す内容から1つ疑問に思った海藤が問い掛ける。

 

「我々?他にも知ってるのがいるのか?」

「ええ。所謂"業界の人達"と呼ばれる方々です」

「……業界の人達」

 

少々答えを濁す様子に、何らかの意味合いがあるのだろうと考えさせられ、追求を止める。

 

「じゃあ茶子嬢、今回の黒幕ってのはその…悪魔が関わってるってことか?」

「はい。確実に」

 

ハッキリと答えられる様子を見た八神が背筋に何かを感じ取る。

其れが原口から聞いた"本"に関係する気がしたからだ。

 

「恐らく欺瞞や偽装に長けた力を持つ悪魔でしょう。顔や身体の特徴を見せない事で撮られても特に動じていませんから」

「…………へぇ…」

 

でなければ説明のしようがない。

そんな異次元的な力を持つ化け物に対抗するのが此処で用意されている御手製爆弾の類なのだろう。

 

「一応威力を高める為に色々と入れてみましたがどうでしょうか?」

「流石に剃刀刃も入れるのはやり過ぎじゃない?」

 

散々物騒な物を入れて更に追加するのはどうなのだろう。

 

「…なぁ、茶子ちゃん」

「はい?何でしょうか?」

 

空になった容器を置き、八神が問う。

 

「つかぬことだけど、その悪魔を召喚?するのにどうすれば良いんだ?」

「どう…と言いますと…」

 

それに答える様にティーが左腕に装着したガントレットらしきものを開き、操作する。

よくよく見れば、彼女の着ていたレディーススーツではなく、身体に密着するライダースーツと思われる服であった。

 

「呪文は言わばソースコード。讃える歌が起動キー。過去では其れ等を魔導書(グリモア)で行いましたが…」

 

タッチとスクロールを繰り返し、入力を行う。

其れが何を意味するのか。

 

「今ではこれで出来ます」

 

突然部屋の中央から光が放ち、何かが現れる。

 

『…おやっ?どうしたかなサマナー?』

「…………はぁ…?」

 

光の明度が薄くなり視界を確保出来ると、その姿が見える。

 

『どうも、貴殿が八神さんと海藤さんかな?』

 

ふくよかな巨大に象の顔、どことなくインドの装飾を付けた異形の存在に八神は目を丸くし、其れが何なのかを知っていた。

 

「………これも悪魔なの?」

「広義的な意味では」

 

幸運の象徴として日本でも広く知られる存在、〔ガネーシャ〕ですら悪魔のカテゴライズにされることを驚きつつ、八神は口を開く。

 

「…じゃあ…、そのさ…魔導書で召喚出来る悪魔って…これでどんなのが出てくるの?」

「これ?」

 

驚きつつ、八神はジーンズのポケットからメモ書きした紙をティーへと渡す。

 

「……これは?」

「原口さんの息子が使ってるとされる本らしい。見た目からしてヤバいとか…」

「ヤバい…ですか…」

 

流石にそれはと思いながら、メモ書きを開き、書かれた内容を読む。

 

室内に無言の状態が十秒程流れる中、男二人と出たばかりで状況を掴みきれないガネーシャとでジッと見続ける彼女に心配の表情を浮かべていると。

 

「……八神さん。コレは間違いないですか?」

「へっ?あっ、ああ…間違いないと思うけど…?」

「…………」

 

更に考え込む。

 

「………どうすりゃ良いんだ?」

『さぁての…?サマナーは考え込むのは珍しくはないが…』

 

周りの心配を余所に考え続けるティーにどうするべきか悩むものの、手を顔に当て、彼女から口を開いた。

 

「……急いで拠点を叩きましょう。でないと万(・)単(・)位(・)の(・)死(・)者(・)が(・)出(・)か(・)ね(・)ま(・)せ(・)ん(・)」

 

その言葉に八神、海藤は驚き、ガネーシャは納得した表情となる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

都内 某所

 

 

住宅街から少し離れた先にある廃工場の倉庫。

既に中は空の状態であったが、地下の作業場、隠し扉で覆った入口に通じる階段は今なお存在し続けている。

 

作った理由は分からずとも、おおよそ合法とは言わないその施設に音が鳴り響く。

 

「…テケリリ…テケリリ…」

 

どす黒いタール状の身体を壁や天井を沿って歩く様。所々で這った後が粘ついて歩きづらくさせ、管楽器を鳴らしたかの様な"声"が地下の狭い空間を反響させ、仲間と思しき者達に伝える。

 

これらは、門番だ。

 

何処ともなく現れ、闖入者には奇襲し、己の糧へとするべく吸収する。

 

その為の存在であり、その役割以外には何も求められていない。

 

「…わざと浮浪者が多く居た所で選んだつもりだったけど…好条件な立地とは思わなかったな」

 

秘密の地下施設って言うのも中々良い。

恐らく脱税やらなんやらで確保してたのかも知れない。

 

まぁ今となっては何とやらだが、お陰で【儀式】をするに適している。

 

地下にあることで呼び水になりやすい陰鬱さを創り、何よりも逃(・)げ(・)な(・)い(・)事(・)で場の状態が保ちやすい。

 

広さもそれなりにある事もポイントだ。

 

陣を描くに差し支えないというのは如何なる理由があろうとも優先するべきであり、新月になろうとする今夜が最も相応しい場所でもある。

 

此処まで条件が揃うとは思いもよらなかった。

 

後は粛々と儀式を続けていこう。

 

『失礼します、サマナー』

「……どうした〔モロク〕」

 

何もない壁から声が発せられる。

何時もの事だ。

そうやって人を恐怖に陥らせる事が本能だと言わんばかりに演出する所が好きになれない。

 

『此処より1km先に設置した警戒網に何かが引っ掛かりました』

「………そうか」

 

牛の頭を被ったような悪魔、モロクは顔のみを壁から出し、報告を行う。

 

警戒網に引っ掛かるものと言ったら確実に同一の力を保有する者達。

 

サマナー、もしくはデビルシフターなる人間が該当される。

 

自分と同じく悪魔を使役するサマナー。

悪魔と同じ能力を使う変身者(シフター)。

 

此れ等を相手取るには少々手間取る場合が多く、此方側が選択する方法は唯一つ。

 

「奥に閉じこもって向こうを損耗させれば良い。城攻め程時間稼ぎが出来ればこちらの物だ」

 

別に戦う必要など無い。

 

此方側は既に幾つか迷宮化させ、ショゴスを張り巡らせ、幾つかの異界から手に入れた悪霊その他を漂わせている。

 

正当法では先ず辿り着くのは不可能。

 

異界化させた空間にある以上、どの様な行為であっても破壊は不可能だと自負している。

 

『……?上空から音速超えて何かが?』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

神の杖という言葉を聞いた事はあるかも知れない。

 

運動エネルギーを利用して引力による加速で放たれたタングステンやその他超硬金属による棒状の兵器として研究開発されていた。

 

しかし、非現実的な問題や条約に違反する事が挙げられ、殆ど利用されなくなった兵器である。

 

但し、国家が利用することは無くとも。

 

「低軌道上、NSAの監視衛星内に装備しておいた兵装が役に立つとは思いませんでした」

 

尚、着弾地点から10km四方の住宅地の住人には不発弾処理の名目で密かに警察との司法取引がなされている。

 

「わぁ…わぁぁ…」

「海藤さん…泣いちゃった…」

 

何だか小さくて可愛い生命体の如く半泣きの海藤と唖然とする八神を余所に、寸分たがわず目標に着弾したことを確認したティーが誇らしく頷く。

 

「やはり其処まで強烈な破壊力は無さそうですね」

「いやいやいや。考えてみても普通じゃない」

 

早速双眼鏡を取り出してズームをするティーにやり過ぎでは?と遅い疑問を感じる八神。

 

「……周辺施設には被害軽微。根城としていたと思われる倉庫は直撃で半分以上崩壊してますね」

「窓ガラスとか外壁ヒビ入ってるよ?確実に業者呼ばないと後々大変に…」

「ご心配なく。既に住宅メーカーと話は通してありますし、費用については充分なアテに頼みますので」

「そうか……」

 

心配ないと言いつつ、車の方へと向かっていく。

 

「では、突入です」

「………はい」

 

若干現実に戻ってきそうな海藤を引き摺り、車の中へと放り込み、直ぐ様運転席へと乗って走らせる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……なっ…なん…だ…!?」

 

深層に位置する部屋内が半分瓦礫に埋まり、高温を発する棒状の金属が天井から迫り出している。

 

何が起こったのか、未だに理解が出来ずに目を見開いたまま動けずに居ると。

 

『まさか、質量兵器…しかも該当される属性が【核熱】にされたことで此方の読みを尽く踏み潰していくみたいですね…』

「嘘だろ?」

 

半ばフィクションめいた兵器が実用化されていたとは思わなかったが目の前に出ている以上、信じざる得ない。

 

『対局前に歩と金銀を根こそぎ無くされた。という所ですな』

「説明ありがとう」

 

もはや皮肉にしか思えない。

 

警戒網に入ったのはある意味宣戦布告と此方の出方を見る為だったのだろう。

爆薬で発破程度なら兎も角、まさか宇宙空間から発射した金属で貫くとは思いもよらないが。

 

「だが、飛車角は健在…香車桂馬さえあれば後は別の場所へ逃走も出来る」

『逃げるおつもりで?此処以上に適した場所はあるとは思えませんが?』

「なに。探せば見つかるさ…何れは」

 

探すさ。

たとえ何十年掛かったとしても。

 

先ずは、この空間から出ることが先決。

 

密かに作っておいた隠し扉を開け、大人1人が膝をついて這いずって行く程度の通路を使う。

 

レール状のものがあり、元々地上との運搬目的の通路だったのを使わせて貰ってるだけだか。

 

其れでも、先程の爆撃でも壊れておらず、外へ脱出するには充分だ。

 

「…はぁ…はぁ…」

 

若干空気が薄い。

 

密閉まではしていないが、人が通ることを想定していない故に湿気とカビ臭さが鼻を突く。

せめて貨車位は作っておくべきだったかと後悔しながら這って15分程。

 

扉に到達。

 

ゆっくりと開けてみれば、予め目星を付けていた民家の軒下に出た。

 

「…くっ…ぐおぉぉ!!」

 

半分土に覆い被さっていた扉を開ける。

 

モロクにやらせればとは考えるものの、契約上其れをするには難しい。

 

重い鉄の扉を開き、薄闇から光が射し込むのを見て、ゆっくりと這い出しては床の開く部分を手探りで触れていく。

 

「…あった」

 

床下収納用の扉をゆっくり開く。

恐らく今住んでいる住人が知っているとは思えない地下空間から出てきたら確実に通報されるだろう。

 

出来る限り静かに小さく様子を見ながら扉を開け、ゆっくりと周りを覗く。

 

人の気配は無い。

 

どうやらこの一帯の住人は既に避難済みみたいだ。

お陰で逃げる事も出来そうだ。

 

家の中を土足で踏み込むのは少々気が引けるが、そうとは言っていられない。

先程の爆風によって引き起こった窓ガラスの散乱から、相当威力があったのだろう。

 

「…さて、早く別の場所に退避しないと…」

 

こんな軍事力を保有している誰かに見つかる前に別の都市なり県なり、場合によっては国に逃げなければならない。

幸い、ドル札と偽造パスポートは軒下内のバッグに入れておいた。

 

後は買収してある貿易船に乗員として乗り込めば心配ない。

 

が、1つ懸念点が発見した。

 

「んっ?上から?」

 

住宅の2階から何か音が響いている。

もしかしたら避難しなかった住人が居るのか?

 

厄介だ。

 

このまま去ることも考えてみるも、この懸念点が残ると後々が面倒だと思う。

 

「………」

 

まぁ、何人居ようとも"愚者"程度であれば直ぐに首を刈れる。

 

忍び足を使いつつ、2階へ向かう階段を上り、先の廊下を視認してから音の出処を探る。

 

右側にドアが2つ、左に1つ。

 

左の方にはTOILETとドアに貼られており、音は別の方から聞こえている。

 

奥の方を見れば、開いたままだ。

 

其処が出処であろう。

 

先程と変わらない様子を見せるので少しばかり急ぎ目に歩いて向かうと、開いた隙間から見える。

 

「………チッ」

 

一定のリズムで軋むベッド。

無理矢理脱がされたであろう衣服が床に散らばる。

 

布団の柄からみて、主は年頃の少女の物だろうと思われ、その上で何者かが覆いかぶさっている。

 

知識からすれば、明らかに部屋の主を"レイプ"している。

 

猥褻な行為であり、犯罪でも重罪に当たる物だ。

 

「…はっ、で…出るっ…!!」

 

野太い下卑た声が響き、身体を震わせる。

 

避難が間に合わなかったのか否か、火事場泥棒を狙って入ってきた男と鉢合わせし、強盗と強姦をセットに行うつもりで襲ったのだろう。

 

少女の方は運がなかった。

 

壊れた窓ガラスから侵入するのも容易く、あの騒ぎからすれば避難解除まで時間がかかる。

 

元々狙っていた事も含めれば、ある意味で運が良かったと言えるだろう。

 

「………」

 

この様子だと何もせずともずっと腰を振り続けるだろう。

 

最早抵抗出来ないほど衰弱した少女の身がどうなろうとも関係はないが。

 

「………忌々しい」

 

人差し指を変化させる。

男を殺すに大掛かりなこともせずともこの方法で充分だ。

 

ドアの隙間へ細く長く伸ばした指先をしならせては、鞭のごとく男の首元を薙ぐ。

 

「……はっ?」

 

一瞬風が吹いたのかと思ったのだろう。

行為を止め、首に手を当てて疑問に思っているだろうが、既に遅い。

 

「へっ?」

 

首が皮一枚残してズれる。

 

何が起こったのか、理解せぬまま頸動脈から噴水を思わせる噴き出し方に芸術性を感じ取った。

 

恐らく解体するしか無いだろうと言わんばかりに噴き出した鮮血で部屋中を染めるのも追加で点数を付けたくなる。

 

「さて、行くとするか」

 

これからが大変だと思いつつ、この場を後にする。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

深夜の濃密な闇に包まれた海岸線。

 

巨大なコンテナが多く積まれ、大きく広がる一帯に1人男が早歩きにて目的の場へと向かう姿がある。

 

肩に掛けた巨大なバッグと殆ど姿を晒さない黒尽くめの格好はこの無人に近い港内でなければ怪しまれる事となるだろう。

 

男は歩く。

 

国外へ脱出する手筈は整え、後は用意されたボートに乗り込み、入れ違いでパナマ船籍のタンカーへと乗船するのみ。

 

如何に日本警察が優秀でも、国外へ逃げられればどうしようもない。

 

引き渡し協定のない国であれば尚更。

 

だがしかし。

 

「逃がすつもりは無いですよ?」

 

男の視線の先、其処に立つ女から言い放たれる。

 

「申し訳ねぇな。逃げらんねぇぜ?」

「此処で大人しく…って、出来ないかな?」

 

男を囲むように現れた二人組。

恐らく女の仲間なのだろう。

 

男はそう考えた。

 

「俺を捕まえてどうする?」

「貴方を警察に引き渡します」

「何で?動物愛護法か?」

「いいえ。【組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案】…つまり"テロ等準備罪"で」

 

女が早口で述べたのは、正式名称であり、長い事から殆ど略式名称で呼ばれている罪状である。

 

男の使っていた施設の内容から察されれば明らかに該当する故に、彼女は正式名称で伝えた事になる。

 

「今なら自首を勧めますが?」

「………生憎」

 

女の提案に口端を釣り上げる。

嫌な笑みを浮かべたままカーゴパンツのポケットから携帯端末を取り出しては電源を入れ。

 

「…〔モロク〕!!」

 

男は牛頭の悪魔を喚び出す。

 

『ハッハッハ!!まさに万事休すって所ですかな?』

「黙って女の方を殺れ。残りのショゴスも使い切れ」

『ほぅ…ではサマナーは?』

 

魔王モロクは対峙するサマナーへと目線を向けながら自身のサマナーへ問いかけると。

 

「向こうの二人組。ただの人間だがそれなりに器(ソウル)を感じ取れる」

『では、お任せを』

 

互いの役割分担を決め、対峙する相手へ目を向ける。

 

「…〔メリジェーヌ〕、〔ガネーシャ〕」

 

対して、女の方は左腕のガントレットを操作し、モロクに差し迫る巨大な象頭の悪魔とサマナーよりも小さな身体の少女型悪魔を喚び出し、従える。

 

『蹂躙かね?』

「ええ、お願い」

『斬り刻んで良い?』

「徹底的にね」

 

どちらも、恐らくは自身と同格に近い。

モロクの思考がそう感じ取ると、自身の最大限を見出す事を念頭に置く。

 

一方で、男は二人の前へとゆっくり歩を進める。

 

「……原口さんの息子さん…で良いんだよな?」

「ええ、まぁ…」

 

1人、髪型に無頓着な男から問いかけられ、男は顔を顰めて答える。

 

「………"ちょっと違うかな"?」

「…!?」

 

男、もとい〔原口武雄〕は身体を膨張させ、衣服が大きく膨らみ、亀裂を作っていく。

 

その様は、衝動に耐えきれなくなって強く変化し始めた怪物のように見えた。

 

細かった腕は血管が浮き出るほど筋骨隆々の大木に変わり、様々な部分を異常発達させ、軽く30cm以上成長させる。

 

「おいおい。流石にハルクと戦うことは想定してないぞ?」

「だったら今考えようぜ?海藤さん?」

「へっ、ター坊らしいな」

 

巨人となった武雄に対して、海藤と八神は臆すること無く自身の構えを作り、意志を示す。

 

「……蛮勇は猫も殺す。そういう物だ!!」

 

全身の筋肉を全力で使い、武雄は飛びかかる。

 

 

 

            to be continued

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