※この作品はR-18です。

真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜   作:葉隠小太郎

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【依頼】始まりの朝焼け【達成】

 

 

鉄パイプによる殴打、ハンマーの一撃。

 

普通であれば避けることが出来る其れ等を甘んじて受けるのは余裕の表れではない。

 

「ガァッ…!?」

 

血を吐く。

 

「おりゃぁ!!!」

 

革ジャン男の放つ鉄パイプの連打は【エスクリマ】、もしくは【カリ】と呼ばれるフィリピン武術のそれであり、確実に自分の胴体にダメージを与える。

 

「ぐっ…ぉぉぉおお!!」

 

負けじと立ち上がり、腕を振るうも。

 

「っせぃ!!」

 

振りかぶったハンマーが腕に当たり、拉げさせる。

 

「がァァァああああ!!!?」

 

痛い。

 

初めて受けたはずなのに何故か既視感を覚えた。

 

 

 

不意に蘇る記憶。

 

同級生に殴られ、蹴られ、財布から金を奪われた日々。

 

母親に相談するも既に動物保護団体の活動で忙しい毎日であった故に碌に話せなかった。

 

父親に相談しようにも、あの男は愛人との逢瀬に忙しくて何処吹く風と居なくなる。

 

警察?

相手が警察に属してる親が居るのに話してもどうする?

中にはちょっとした事で闇に葬れる人材持ってるとか言っているのにどうしろと?

 

だから唯一出来ていた勉強で、大学へ進学した。

 

アイツラはどうせ碌に試験も対策していなかっただろうと思っていたが。

 

何故か居た。

 

取り巻きは変わっているけれど、中心人物だけはそのまま。

僕は戦慄した。

 

どうすればいい?

どうしようと。

 

考え続けてた矢先。

 

『やぁ、話してみてよ?』

 

僕にとっての光。

彼等のお陰で僕はまた辛い日々を過ごすことは無かった。

 

「ァァアアアアア!!!」

 

もうあの時とは違う。

腕を振るい、悪しきものを払う様に殴りつけられる力がある。

 

もう、苦しまなくても良いんだ。

 

もう、痛い思いをしなくて良いんだ。

 

だから。

 

 

「悲しいよな」

 

派手な色合いのシャツを着た男が言う。

まるで僕を哀れんでいるかのように。

 

「……悪かったよ。〔武雄〕君」

 

革ジャンの男が言う。

酷く後悔してる声色で。

 

僕の最後に見た光景は。

 

"鉄パイプとハンマー"だけだったが。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『……最初は上手く利用して我が主を迎えようと考えました。まぁ…お互いそんな利害関係でしたがね?まさかここまで義理堅くなったとは思いませんでしたよワタクシ』

 

首だけになった牛頭が述べる。

 

本来であるなら外気とともにマグネタイトが霧散し、消滅する事となるも、外法に長けているモロクはしぶとくこの世に留まり続けている。

 

『一応義理は果たしたので、このまま魔界にいる本体のデータベース化ですかね?ま…其(・)れ(・)が(・)人(・)生(・)ですね』

「よく喋りますね」

『結構サマナーもお喋り好きですからね。昔の事とか今の状況とか…色々と』

「そうですか…」

 

段々と消滅していく中で、懐かしむ様子を見せる。

 

ふとティーは顎に手を当てて、考え始め。

 

「……1つ問います」

『何でしょうか?』

 

彼女から問答が始まる。

 

「もしも、此方でやりたいことがあり…かつ鞍替えしても大丈夫と自身で考えられる?」

『………なる程』

 

問答、というよりもある種提案に近い問いを理解し、目で見渡せる範囲の視界で見つつ。

 

『答えは1つ……今(・)後(・)と(・)も(・)ヨ(・)ロ(・)シ(・)ク(・)』

「場合によっては合体素材ですけど?」

『中々怖い事言いますね』

 

契約を果たす事とした。

 

その後、大部分を失ったモロクをCOMPへ格納。

 

「………はぁ…」

 

一段落出来た事でため息を一つ吐く。

 

長かったような短かったような夜も、雲の切れ間から陽光が差し込み始めている。

 

明るく照らされると、辺り一面が魔力を帯びた炎によって焼き焦がし、所々で鉄が飴のごとく融けた跡を残す。

 

「……危なかった」

 

驚異的な炎の力で一時は【食いしばり】も辞さない勢いであったが、メリジェーヌ(今後からはメリュジーヌ)がティーをかばい*1、損耗を減らす事が出来た。

 

後は、【一気通貫】から【モーンバレット】の必勝(場合によっては必勝にはならない)パターンで倒せたが、今後の事を考え、新たに戦術を考えねばならない。

 

「さて、八神さん達は大丈夫…でしょうか?」

 

心配なのは、いきなりバルクアップした原口武雄に向かった2人。

 

「何とかなるとは思いますが…」

 

死んでいないことを祈りながら、足早に向かう。

 

 

 

「…………」

「死んでねぇよな?思いっきり顔面ハンマーやっちまったけど?」

「大丈夫。息はしてる」

「虫の息ってやつじゃね?それ?」

 

所々に跡を残した中にロープで雁字搦めにされた原口武雄の様子を見ながら、八神と海藤の2人を見つける。

 

若干ボロボロになりながらも、無事が確認できた。

 

「八神さん!海藤さん!」

「おっ、茶子嬢」

「茶子ちゃん、ソッチは?」

「大丈夫です。少し服が焼けましたがそこは必要経費ということで」

「そうか、それで済んで良かった」

 

お互いに無事と判断され、一旦張り詰めていた空気が抜ける。

 

「…で?コイツはどうする?警察で引き取るのか?」

 

ふと、縛られた原口武雄の処分に海藤が疑問を覚える。

 

「警察ですね。法執行機関と言ったら」

「引き取るのか?このオカルト系犯罪者」

「少なくとも、大規模テロの未遂ですし…其処は司法の場で裁かれるべきです」

 

テロ準備罪辺りが検察の訴訟になるだろう。

ティーは真っ先に頭に浮かんだ。

 

「だよね。俺は賛成」

 

対して、八神は納得した表情で手を上げ、それを示す。

 

ある意味で言えばまだ弁護士である八神もどの様な結果になるとしても、事件を有耶無耶にせず、司法の場で決めることが重要だと考えての意見であった。

 

「……まっ、俺もター坊と同じく」

 

特に反対する理由もない海藤も手を上げて賛成を示す。

 

こうして全会一致の下、原口武雄の処遇は決まった。

 

「そう問屋は卸しませんが?」

「「「…へっ!?」」」

 

が、其れを断固拒否する者がいる。

 

「動かないで下さい。この者の処分は"我々"が取り仕切るであります」

「………何のつもりですか?」

 

ティーはその人物の姿を見る。

 

黒の外套、頭に乗せられた軍帽、黒を基調とする服装は現代から遠く去った大正浪漫めいた格好。

 

自身とそう変わらない身長の"女性"はニンマリと歯を見せるように笑い、口を開く。

 

「これ以上は言えませんよ?もうお茶会(任務)は御仕舞ですからね?〔ミズ・サリヴァンウォーカー〕?」

「自らの名を名乗らぬ者達ほど胡散臭い存在に名前を言われるのは心外です」

「何をぶべっ!?」

 

忌々しげに話す闖入者に対し、いつの間にか用意してたであろう手袋を振りかぶって投げ込み、胡散臭い女の顔にぶち当たる。

 

これを西洋諸国では騎士の決闘を表す物で、ブラックペッパーの如く皮肉を効かせる勢いを示した。

 

「サーベル、決闘用拳銃(ピストル)、無差別格闘(バーリトゥード)。お好みの手段を選んで構いませんよ?」

「…ヒッヒッヒ…。お嬢さん?お戯れも少し慎ましくするべきですよ?」

「生憎、我が家の家訓はエ(・)レ(・)ガ(・)ン(・)ト(・)に(・)相(・)手(・)を(・)ブ(・)チ(・)の(・)め(・)せ(・)ですので」

「英国貴族(ブリティッシュジェントリ)って阿呆であります!?」

 

日英同盟など知るかと言わんばかりの喧嘩腰を見せるティー。

こればかりは保護責任者である2人も顔をしかめて口を開くことは難しい状況である。

 

「………というのは冗談として」

「冗談にしては犬も食わないですが」

 

一頻り目線の動く範囲で目配らせた後、抜こうとしていた回転式拳銃(ドラグーン)から手を離し、背を伸ばしてから目を向ける。

 

やり合う気は無いと示すように。

 

ようやく、要求を伝えられると女は両手を平にやれやれとジェスチャーを見せながら口を開いた。

 

「では、その方を此方で引き取らせて貰います。そうすれば先程の色々を不問として日常生活を送ることが出来ますが?」

「もし断った場合は?」

「言葉より先に頸が断ち切られる事と…であります」

 

親指を首元につけ、横に一線。

 

断頭を思わせる仕草は脅し文句とも取れる。

 

想像よりも厄介さが目立つ人間に元ヤクザの海藤も冷や汗を一筋垂らしてしまう。

 

「茶子嬢。どうする気だ?」

「…………」

 

海藤の問いに答えは帰ってこない。

 

いざ、手袋を投げて示したものの、女の周りには複数人の存在が確認出来る。

少なくとも自分と同じLvか、それ以上。

 

自身の実力に伴わない挑発行為で、更に張り詰めた空気を呼び起こしてしまった事を心の中で後悔するのだった。

 

「………なぁ?俺等が退けばコイツはどうなる?」

 

この空気の中、突き進む様に八神が女へ問い掛ける。

予想していたのか、今までティーに注がれていた目線を瞬時に八神へ向け、不敵に笑い始める。

 

「気になります?処遇内容」

「まぁ…な?一応母親からの願いだし?」

「ふーん?そうですか…」

 

不穏な流れを断ち切る為の問いかけであったが、不穏さは未だに拭えない。

 

「そうですねぇ…」

 

一頻り、顎に手を当てて脳内のやることリストから反芻させ、口を開く。

 

「何をしようとしてたかとこれから何をするのかを纏めた後に防(・)腐(・)処(・)理(・)し(・)ま(・)す(・)」

 

防腐処理。

その単語一つ述べて直ぐ、脇腹を掠め、外套に穴を開けた。

 

「………人の一張羅を…」

「人の尊厳に関わる行為と比べたら安い物ですよ」

 

コンマレベルの抜き撃ちと正確無比の射撃。

 

其れを見せたことでより一層重い空気を作り、場の全員へ緊張を生み出す。

 

最早何時一つのキッカケで乱戦へ変わるか分からない中。

 

「双方止めたまえ」

 

この場を一喝する。

 

「…!!?」

「…!?」

「なっ…?!」

 

全員がその声の主を見るべく視線が注視すると、そこに立つのは1人の老年男性。

 

素肌を見せる頭頂部に側頭部及び後頭部にかけて灰色に近い白髪の老人は前を見定めるよう歩き、その姿を晒す。

 

女は眉間に皺を寄せ、怪訝そうな表情で口を開く。

 

「………【公安部】の〔荒巻〕部長直々とは。如何用に?」

 

老人の名前を皮肉を込め、轢き潰すような声で問うも。

 

「【ジプス】の〔あきつ丸〕部隊長。君達には警察権は認められていない筈だが?」

 

まるで問いを知っていたかの様に答えを述べる。

 

「ですが。此方が数ヶ月調査していた【ファイア・スターター】に関わる人物で、漸く尻尾を見せたということですよ?」

「だが、君らが関わるべき部分はあくまでも個人防衛(セルフディフェンス)。捜査及び逮捕に至っては越権行為として処理されかねないがね?」

「………難癖つけますね」

 

何が起こっているか。

ティーおろか、八神も海藤も土壇場に現れた老人によって場を支配され始めているも、呆気に取られて動くことが出来ずに居る。

 

公安部と言う名がどういう意味か、知っている単語と該当するのであれば、まさしく治安維持を生業とする特高警察の後続組織であり、右左翼双方の過激派監視や国際テロ組織の監視及び活動防止を日夜行う。

 

「ではどうする気かな?」

「………ここで殺り合います?」

「君等が既に防御手段を持ち合わせていない事は承知の上…ならば些か哀悼の意を感じるがね?」

「………(・д・)チッ」

 

荒巻の言葉は深々と突き刺さった様子を見せる。

 

赤い点が2つ、頭部と心臓付近に当てられ、何時でも狙っていると示しており、こればかりは嫌味ったらしく顔を歪めて手を上げた。

 

「今回は退きましょう。次からは容赦しません」

「この男から出た情報ならばそちらにも提供しよう。それくらいならば問題ではない」

「ふっ…それはどうも」

 

忌々しく、皮肉を込めた言葉は何事も無かったかのように過ぎた事で更に歪ませつつも彼女は踵を返し、その場を後にした。

 

残るは荒巻、ティーと八神に海藤の4人。

 

いつの間にか周りに居た見えぬ人影も何処かへ消えており、掴みきれない緊張感が途端に抜け落ちる。

 

「………はぁ…」

 

最初に溜息を吐くのは海藤。

この状況で気丈な態度を示そうと力んでいたが、流石に肩の力が抜けてしまう。

 

一方、口を開かずに無言を貫いていた八神が一度深呼吸を行い、未だ用事を済ませきっていない荒巻へと顔を向ける。

 

「公安って…本当ですか?」

「うむ、そうだ。八神隆之くん」

 

既にフルネームを知られていた。

其のことに小さな寒気を背筋に覚える。

 

「所員の海藤正治くん、そしてミス・サリヴァンウォーカー。一応調べられる範囲は把握しているがね?」

「…………」

 

思わず言葉を詰まらせ、何も発することが出来なくなる。

 

荒巻という老人が公安部の部長であることは恐らく間違いないだろう。

 

そう感じさせた。

 

「すまなかった。我々も動くには二の足を踏んでいたものでね」 

「では、お仕事の方をお願いします」

「うむ。了解した」

 

原口武雄を引き渡す。

突如現れた重武装の警察官6名によって拘束したまま運ばれていく。

 

もう二度と日の目を見ることは無い可能性を示唆するも、其れが因果応報である以上、致し方ないと考えられる。

 

「都内近郊を中心に作られていた陣の所在は全て破壊した。少なくとも誰かが利用する事は無いだろう」

「……ありがとうございます」

「我々の仕事をしたまで。礼には及ばない」

 

残っていた懸念材料も潰した事を伝えてから荒巻は軽い会釈をした後、踵を返して撤収していく。

 

幾つか停まっていた車両の姿を曲がり角で消えてなくなるまで3人は見続けるのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

調査報告書

 

原口美代子[52歳]

原口武雄[27歳]

 

原口武雄の母親であり、今回の事件に使用された魔導書?の持ち主であった。

魔導書自体は陰鬱な雰囲気を醸し出しているものの、半分以上しょうもない呪文が書かれているだけであり、危険性は其処まででも無かったとのこと。

 

しかし、後半の最後の部分は解読不可ということで放置されていたが、其れを武雄が読むことが出来る悪魔を召喚したことで事態は一変してしまう。

猫を殺すのはある神が現し世を観察する目の代わりであったことらしく、その力を利用して陣を作成。

更に、強力な物へ変貌させるべくウェブ上のDDS.net*2からカジュアルサマナーやビギナーバスターを捕獲して生贄とした。

 

母親が其れを知る事は殆どない。

 

原口武雄は警察でも特異的な存在と相手をする部署へと捕縛された以上、もう一生をかけて償う事とするだろう。

 

尚、原口美代子はこの報告を聞いた後、口止め料の意味合いでの多額の報酬を置き、何処とも知れぬよう消えていなくなる。

 

動物保護団体は神室町の団体と合併、今も忙しなく活動を続ける。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

???

 

必要最低限の明かりのみが廊下を照らす。

 

ただ1人、剣呑な顔つきでその廊下を歩き、向かうのは第3保管室と表示された部屋。

 

男は部屋のドアノブを回し、扉を開ける。

 

中は明かりのない暗闇に支配された空間。

男が右手で近くの壁へ手を触れていくと照明のスイッチを見つけ、点灯させる。

 

明かりは、手前から順番に部屋を照らし始め、中の状態を見ることが出来るようになった。

 

「………増えたな」

 

男が呟く。

 

場を埋め尽くさんとするソレは、白い結晶で出来た彫像めいたもの。

人の形を型取り、精巧なアート作品に思われる其れ等を目で細めては一瞥していく。

 

「今年に入って100件。これ以上情報封鎖も限界に来ている」

 

誰に伝えるわけでもなく呟き続けては部屋の通り道を練り歩く。

 

「相手の目的は未だ掴めず、何を意味しているのかが分からない。だが…」

 

部屋の中腹辺りで足を止め、腰を捻って上体のみで後ろを見る。

 

「……し(・)か(・)し(・)ロ(・)ト(・)の(・)妻(・)は(・)う(・)し(・)ろ(・)を(・)顧(・)み(・)た(・)の(・)で(・)塩(・)の(・)柱(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)

」

 

一度何の気なしにネット上で検索した文章を思い出す。

 

創世記。

カトリック等で語り継がれているソドムとゴモラを滅ぼした天の火を見てしまった末路を表す言葉だ。

 

その成れの果てが今此処に立ち並ぶ。

 

「………終末思想は過激派だけにしてほしいね」

 

一つため息をついては前を向き、ゆっくりと足を進める。

 

倉庫の点検と称したサボタージュ行為を出来るだけ時間をかけて行う。

 

其れがこの男のルーチンワークであった。

 

だからこそすぐに終わらせられる其れを行った結果。

 

「………嘘だろ?」

 

何時から起こっていたのか。

 

その場にあったはずの彫像が砂状に変わり果てているのを確認出来た。

 

「……こりゃ、騒ぎになるねぇ…」

 

その騒ぎの渦中に巻き込まれる事を想像し、辛気臭い顔が更に辛気臭くなる。

 

 

彼の名前は〔後藤喜一〕。

 

公安部に属する警部補であり、ヤタガラスから出向している【デビルサマナー】でもある。

 

 

 

            to be continued

*1:
受けるダメージを軽減させ、味方をかばう

*2:
デビルバスター用のネットワークサービス






神室町へ帰る頃には、既に陽は沈もうとしていた。

「……はぁ……」

力ない足取りには徒労感しか感じられず、吐かれたため息は重いものであった。

「仕方がない。もう終わったんだ」
「ですが…」
「むしろ初めての仕事で此処までヤバい事起こってるとは誰も思わないだろ?…いやヤバい事したのはこっちかも知れないけど」

明らかに落ち込むティーを宥めるように八神がフォローを入れるも、考えてみたら低軌道上から杭を撃ち込む行為を行った自分達の方が騒がせたと思い出す。

「不発弾処理で爆破しか無いでホント済むとは思わなかったな…」
「まぁ、あの公安に睨まれたらどんなメディアでも無理だろ」
「だよねぇ…」

あの後、3人は誓約書として今回の出来事を特定の関係者以外口外禁止を念押され、なかった事にされた。
如何なる方法で規制しているのか、好奇心は猫を殺す事を考えて口を噤む。

「腹減ったな…。こういう時は肉でも…」
「前に食べたでしょ?そんな頻繁に行けないって…」

随分と前では?と思いつつ、焼肉は駄目出しされてしょんぼりする海藤。

「……あれ?」

ふと項垂れていたティーの顔が疑問を作る。

「何だか匂いません?」
「……ああ。何だか…美味そうな匂いがする」

ビル内の事務所に続く階段上から流れてきている事が分かる。

だが、事務所に誰かがいる訳がない。

「……綾部のやつか?」
「せっせと料理作るタチには見えないけど?」

考えられたのは一度事務所に侵入し、デスクに悠々と座っていた前科のある綾部刑事だが、エプロン姿で料理をするイメージは皆無に等しい。

であれば誰か?

「〔真冬〕ちゃん?」
「だったら電話掛けてくるだろ?」
「それもそうか」

次を考えて見るも、連絡が無い事を懸念して除外。

「〔星野〕君は?確か主夫も兼ねて〔龍〕の所で修行中とか」
「彼だって連絡するじゃないか」
「う〜ん?じゃあ誰だよ本当に!?」

考えられる人物は全員連絡先を持っている為、確実に一報入れてくる事は間違いない。

では一体誰なのか?

不安が募りながらも遂に事務所前の扉へ辿り着く。

匂いは間違いなく、事務所内から発されていた。

「………行くぞ?」

八神の声に2人は口を閉じたまま頷く。

ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回すと鍵はかけられていない。

そのまま気付かれないように回し、閉じられた扉を開けられる様になれば、意を決し。

「…誰っうわっ!!?」

扉を開けた瞬間、内部に居たであろう人影が八神のジャケット襟首を掴み、床へ叩きつける。

「なっ…!?やろっ「動かないで下さい」…ぁっ…」

加勢に海藤が乗り出そうとするも、こめかみ付近に硬く冷たい触れ慣れた感覚の物を突きつけられ、握り締めた両手を上へと広げ、ホールドアップさせられる。

「………何やってるんですか〔ガウェイン〕、〔ガレス〕」
「あっ!?お嬢様!!お久しぶりですぅ〜!!」
「すまないな。そろそろ帰ってくると思って食事を用意していた。キリタンポ鍋というのを作ってみたが?」

八神を抑える男、白く髑髏が描かれたバラクラバを被り、ポップなSHIBAINUロゴマークのエプロンを着けた〔ガウェイン〕。
海藤に突きつけた消音器装着の自動拳銃(SIG P230)をしまい、ティーへ満面の笑みを見せる少女〔ガレス〕。

家主が出ている間に何が起こったのか、其れを知るのは拘束が解かれて食事を行った後になる。


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