真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜 作:葉隠小太郎
北海道は元々蝦夷と呼ばれる大地である。
大和朝廷によって征伐され、生き残った部族が宗谷海峡を渡って辿り着いた話や、流氷の出来る時期を見計らって渡ってきた大陸出身民族の話もある。
其れ等を纏めて【アイヌ】と呼び、狩猟と農耕を両立する古代から脈々と繋げてきた先住民族が住んでいた。
今も北海道の地名はアイヌによって命名された場所が多く、其れ等を当て字にして読んで伝えている。
そんな古さを持つ大地にもう一つ伝説が存在する。
かの中華大陸における王朝【殷】の時代、百機悪仙を従えし鬼女〔妲己〕が殷王を誑かしては酒池肉林三昧繰り返し、逆らう者は声にも出せぬ非道な罰を与えて拷問死させていた。
その時代、飢えて死ぬ者も多く、暴利な税を課しては徴兵を行い、周辺諸国へ戦を仕掛けていた中。
遥か遠い山奥の農村に異形の化け物が現れる。
熊のような大きな体躯は周りの山々を優に超えて、背には蝙蝠の羽根と思わしきモノを生やす。
体表は鎧の如く硬くびっしりと並び、頭は蛸のような顔をしていたと言う。
化け物は腹が減っていた。
一つ気まぐれに美味そうな人間を食べてしまおう。
そんな万年に一つあるかないかの考えを帯びてやって来たのだが、一目見てガッカリしたようにため息を吐き出す。
「のう主達。此処に丸々と肥って瑞々しく、食いごたえの有りそうな者は居ないのか?」
化け物は比較的健康そうな者に聞く。
「いえいえ。我が村は飢饉で畑に穀物もなく、なけなしの米すら王の近衛兵に税として取られてしまいました…」
返ってくるのは悲痛な思いのみ。
化け物は目を細めてうむうむと唸り、髭の脚を撫でて考え始めます。
彼にとって時間はさしたる問題ではなく、東から陽光を差して西に沈むまでを数百回繰り返した後の朝、目を見開いて口を開く。
「おい、其処の者」
「はい?何でしょうかお釈迦様?」
「違う。我が名は……ええいそんな事は良い!!」
考え込んでいたせいで最初に話しかけた者は人身御供として生き残った者達の糧となってしまった。
その間に、化け物をいつしか釈迦如来と勘違いし、人々が祈りを捧げると、不可思議なブヨブヨのナニカが現れ、村人達の身体を纏わりついたのであります。
すると病に侵されていた者はすっかり元気になり、肌にハリが戻ります。
飢えていた者はナニカの身体から出来たブヨブヨの物を食べると、みるみるうちに腹が膨れ、喉を潤した。
これにより、化け物を釈迦如来の化身として崇めることとなった。
「おい、其処の者達」
化け物は健康そうな男女を集める。
「我が動きを見て覚えよ。貴様達の敵たる悪仙を屠る御業を授けてやる」
化け物はそう言い、見た目で大丈夫そうな者達に自らの力を見せ、其れを身を以て再現せよと無茶難題を放り投げたのである。
尚、訳も分からぬまま見様見真似でその動きを再現していくと、身に宿る何かが生まれ、徐々に変化しようとしていく。
割れぬはずだった巨大な岩石を正拳一つで木っ端微塵に変えた。
百年を超える大木を蹴りで一発、叩き折った。
その者達は、見違えるように力が蓄えられ、その使命を持って殷の王都へ向かった。
悪仙はみるみるうちに斃された。
強力な宝貝を持ってしてもその拳は止まらずに頭骨を砕き、滅した。
如何なる誘惑も通さぬ鉄壁の心で防ぎ、術者を倒した。
遂に、妲己の首を刈り取り、悪しき王朝は敗れ、新たな国である【周】が誕生する。
拳法を学んだ拳士達は心より喜び、新たな王を迎え入れた。
素晴らしき王によって国は少しずつ良くなり、平穏な世界を手に入れる。
拳士の一人が化け物に礼を言う。
「ありがとう御座います。礼として我が身をアナタに捧げましょう」
その身をもって、化け物に捧げる事を選ぶ。
しかし化け物は鼻を鳴らし、口を開く。
「ふん!貴様は不味そうに肥えている。それでは脂身もアクだらけで渋そうだ」
あることないこと訳も分からず拳士は仕方がなく化け物の長話を静かに聴き続け。
「よって、最も丸々太った者を用意するまでお預けにしとく!!空腹は香辛料とよく言ったものだな!!」
ガッハハッと笑いながら、重い腰を上げて立つ。
そのまま地響きを立てて山の向こうへと去っていった。
唖然とする拳士は瞬きを数回繰り返した後、化け物が腹を立てて何処か遠くへ去ったと考えた。
ただ、拳士が老年に差し掛かった辺りで化け物が照れ隠しに吐いていた戯言だったことを判明させ、小さく微笑みながら沈む太陽と共に目を閉じ、生を終えた。
北海道へ到着。
「はい!急いで急いで!!」
「「「「またですか!?」」」」
急ぎ南千歳駅へ走る。
ジャンボ機から降りてすぐ、顔色も良くなった宮本や琲世が多めに荷物を持ち、一行は駅へと向かう。
幸いな事に交通ICカードが使えるので乗り降りには不便しない。
到着3分前にホームへ入れた一行は休む暇ない移動に若干辟易していると宮本が口を開く。
「登別に到着したらホームセンター及びセイ○ーマートに寄りますので各自必要最低限の物資を買いましょう」
「「「「……はぁ…い」」」」
これには理由がある。
本土仕様の物資と北海道での装備では異なる部分が多く、嵩張ることになるので用意はほぼ衣類のみとなっている為。
「まぁ、地域で売られてる製品の方が信頼性あるのは間違いないけれど」
「そもそも校外学習って何をするの?」
「あ…簡単に言うと…」
ある程度事情を知る琲世にとってはまぁ懐かしい雰囲気を感じつつ、あまりピンと来ていない千景へ説明する。
「一週間、異界付近にベースキャンプを造って潜るを繰り返す事」
「成る程。私達がよくするやつね」
片手を握りこぶしで手を叩き、納得する。
言わばフリーランスのデビルバスターが行う【異界散策】というもの。
地方の自治体や所有者に管理された異界は主にビギナーの修練場に指定されており、基本的に街の郊外に位置する。
しかし、奥地などの人の出入りがし難い場所は管理者の通報の元、フリーランスか場合によっては退魔組織に依頼し、完全に潰すことが決められている。
余程大きい場所や霊地であるのを除き、完全消滅が最も最善の方法であるため。
「ベースキャンプは近くに人の入れる温泉も出ているので、開拓も必須項目としてビルドしましょう」
やって来た電車へ乗り、各自シートへ座ってから宮本が説明をしていく。
「温泉入れるのは嬉しい〜♪」
「作らなきゃいけないの分かってる?」
「うっ…うん!分かってるよぉ…」
入浴可能な場所であったことを嬉しいと思う樹だが、姉の一言で一気に現実へと引き戻されてしまう。
尚、無い場所であった場合は、ドライシャンプー等で補わなければならず、獣避けも必須である。
「私、校外学習というのは初めてですね。基本こんな感じに慌ただしいのですか?」
「あ…まぁ………かな?」
シノアの言葉に友奈は少々困惑気味に答える。
あまり遠出をする性格でも無く、航空機での移動も初めてに近い彼女も、驚きは絶えない。
「今日の所はベースキャンプ地に向かい、設置と夕食を行わねばならない。如何に午前中と言えども山は日が落ちるのも早いからテキパキ素早くしないと確実にバッドネイチャーになります」
「だからこんなに朝早く…」
「正直に言うと若干遅れが出てるので2班に別れて装備を整えましょう」
「えっ!?」
宮本のタイムスケジュール的には遅れが出ているらしく、アナログ式腕時計を見ては端末を確認する。
「佐々木は食糧の方を。非常食含めて4日分を選定して欲しい」
「分かりました。飯盒等は?」
「使い方面倒な割に量も入らないから使わない。本当に
「相変わらず厳しすぎませんか?」
「こんなのピクニックだ。本当ならSASスタイルで行きたいがそれもキツイ」
引率者二人の会話を聴き、嫌な予感をしては少々顔を青ざめさせる四人。
程なくし、電車は降りる駅へ到着。
ホームからロータリーへと出ると。
「よし、と」
白のハイエースと黄色の車体のバンが現れる。
「うわ、これが噂の【ハイエース】?」
「はい、そうです」
琲世のハンドヘルドPC型COMPから出現させた白のハイエースは噂悪魔の一つとして語り継がれている存在。
【ファック・ザ・ハイエース】
名前の酷さには由来があり、かの【クリス・ザ・カー】の様に未解決事件である婦女連続誘拐事件の犯人が使ったとされる謎のタクシーから来ているとされる。
この悪魔もその噂から、犯人の条件に見合う女性を狙い、吸い込むように拉致させる特性を持っている。
但し、現在の所は琲世の手持ちということもあり、一定の条件の元安全安心な乗り物として重宝されている。
一方で宮本の使う悪魔はある種職業故に起因している。
【黄色い救急車】
1970年代に出ていた都市伝説の一つ。
当時精神的な疾患、つまり心療内科的な治療もまだ確立されていない部分が多く、異常をきたした患者を無理矢理押し込めて病院に連れて行く救急車があったとされ、其れが黄色い車体の救急車と噂されていた。
その由来は様々で、新幹線の線路点検用のドクターイエロー。
高速道路や国道の整備等で使われる黄色の車体のパトロールカーは赤いパトランプを使う為、其処から出たという説もある。
実際にはその様な車体の救急車は存在せず、様々な憶測と見た目だけそっくりなものから複合されたケースの噂悪魔と考えられている。
此等の悪魔は総じて戦闘能力が低いものの、見た目だけは其処まで不可思議に思われず、そのまま道路を走る事ができる為、希少価値が高い。
特に遠征が多い琲世も、場所を取らずに長距離ドライブ可能なハイエースは恐らく手放すことは無いと考えている。
但し。
「………乗って大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ!?」
噂が噂なだけに、乗ることへの抵抗感は間違いなく存在する。
必要最低限の装備をイメージするには中々難しいと思われるかも知れない。
自衛隊では第一空挺団が訓練の際に持っていく装備が、軽機関銃とその弾倉、その他装備約15kg。
背嚢内にはオカズ、缶飯、オヤツ、水筒、ジュース等の食糧からポンチョ、雨具、防寒着、数日間の着替えを含めた一人分の装備で約16kgを背負う話もある。
無論軽量化もされている昨今であるが過酷さは据え置きであるので変わりないと考えられる。
今回の場合、現地調査とキャンプを目的としており、人数分のテントと寝袋等も用意せねばならない。
銃火器は持たないグループであることをが幸いであるものの、それを使うデビルバスターも少なからずいる為更に過酷さを強いられる事となる。
付近のWO○KMANと併設されたホームセンター。
「……まさかベビーパウダーが必須になることってあるんですね…」
「リュックが重くなること想定だから擦れるのを軽減する目的だよ?」
目立つ色合いの防寒着とリュックの使い心地を決めつつ、使うものを選んでいく友奈。
「リュックも防寒着も結構派手な色してるのが多いよね…」
「それは遭難する可能性を踏まえて保護色になりにくい色合いが求められてますからね。デザインでオリーブドラブとか迷彩柄はアホの極みですよ?」
「シノア、結構慣れてるね?」
「まぁ、家業でその辺慣れてますし」
と、経験者のごとく靴擦れ等を考慮したトレッキングシューズをサイズ別に出し、丁度いい物を姉妹二人に選別させる。
靴は登り降りでも重要なもので、通気性を選ぶか断熱性能を選ぶかで違ってくる。
今回、夏に向かう北海道と言えども夜は冷え込む事を想定し、多少暑くとも断熱材を使用した物をチョイスされていく。
「そろそろ集合」
「「「はやっ!?」」」
食糧を買い込んだ琲世はまだ途中の少女達へ無情な一言を浴びせるのだった。
二時間半後…。
「………ちと遅いな」
夕方までは4時間近くある中、焚き木にポットを沸かし、その中の白湯を飲んで待つ。
あれから直ぐに宮本はベースキャンプ地に先回り、安全確保とテントの設置を行っていた。
本来であればレクチャーしつつ見守る事を考えていたものの、状況が許さなくなり、今回は見送る事に決める。
「テントの設置もしないでよかったか…。まぁいきなり実践は難しいから其れは次の機会にしておこう」
勢い余って彼女達の寝床まで作ってしまったのを悩みつつも、時間の問題という事もあって特別サービスでマットレスも完備しておいた。
後は到着次第、次の工程へ入るのみ。
「………来たか」
風切り音から響く、小さな声が混ざって聴こえる。
疲労困憊の様子が見られ、せっせとマグカップに白湯を用意し、テーブルの上へ置いておく。
「…ぜぇ…ぜぇ…」
「えぇ…まだですかぁ…!」
「もう到着したよ?」
「疲れたぁーー!!」
涙を隠せぬ程に険しい道なき道を通ってきた一行。
「よっ、お疲れさん」
「お疲れじゃないですよぉ…どうしてこんなに遠くに…」
「遠くでもないぞ?停車位置から10km程度の山中を歩くなんて今後よくよくあるんだぜ?」
「……疲れたぁ…!!!」
休む友奈に風、樹。
慣れている様子のシノアはテーブルのマグカップを手に取り、白湯を飲む。
「除け対策してあるみたいですね?」
「まあな。夜中に要らん騒動やられても困るだろ?」
周りを一瞥し、粗方既にベースキャンプを施してある事を琲世が確認すると、各自背負って来た荷物を地面へ置き、中を開く。
「一応、パックご飯は買ってきましたがやはり雑炊系で?」
「ああ。消化効率と手軽さに冷めにくいのがポイントだな。それと…」
宮本が持ってきたと思われる断熱材の包みを開く。
「どうせ、北海道だ。初日くらいは食べて来た気分味わってほしいだろ?」
「あ…成る程…」
中には鮮紅色の身質とマス科の顔立ちをした魚。
「塩引きジャケとついさっき仕留めたヒグマの肉で石狩鍋を作ろうじゃねぇか」
予め手に入れていた鮭の切り身と、大ぶりにカットされたヒグマの肉に一同は驚き。
「わぁ!美味しそう…って!?」
「仕留めた!?ヒグマを!?」
「それくらい出来ることも必須スキルです」
宮本の徒手に対する危険性を改めて知らされる。
尚、仕留めた熊の半分は近くの猟友会に引き取って貰った。
それから数時間後。
東に昇る太陽が西に沈みきった時刻。
持って来た寝具を広げ、河原に湧き出る露天風呂開設等を行い、完全な疲労困憊になった少女達を尻目に監督者二人で鍋の仕上げをしていた。
「……うん、良い具合だ。後はグリュエールチーズとパルメジャーノを上にかけて出来上がりだ」
「皆、煮えたよ」
「「「「はぁ…い…」」」」
流石のシノアも掘ることには慣れておらず、重い足取りで鍋の前へと囲み始める。
「さぶい…」
「6月とはいえ、山は冷えるし今年は冷夏の可能性あるからな」
宮本が煮えた具材を椀によそい、箸を載せて手渡していく。
「お陰でまだ暖房器具出してるってパートのおばちゃんが言ってたね」
「ワイシャツルックで来るものじゃないわこれ」
改めて、地域の寒暖差対策には念を入れねばならないことを知りつつ、受け取った椀をテーブルに置き。
「「「「「「「頂きます」」」」」」」
手を合わせてお辞儀をする。
麹の多い辛口系味噌仕立てのだし汁にキャベツ、人参、長ねぎ、しらたき、熊の肉、塩引き鮭、木綿豆腐、春菊と色とりどりの具材が丁寧に下拵えをされている。
「はっむ…ほふっ…ふぁぁ…」
箸でキャベツと鮭の身を取り、口に含んで咀嚼。
野菜の甘さと鮭と味噌の塩味、そして二種のチーズによるまろやかさが全体を纏め上げ、旨味を凝縮させる。
「美味しい…!!」
「うわ、熊の肉ってこんなに美味しいのね!初めて食べた」
「キャベツのシャキシャキ感がまた良いですねぇ…。煮込み方が上手い」
「汁を吸った豆腐もあっちっ…!」
直ぐに中身を空にし、各々レンゲで掬い始める。
通常の鍋よりも大きな寸胴で作ったものの、育ち盛りの食べ盛り故にものの数分で底が見え始め。
「「「「「ご馳走様でした!」」」」」
最後の一掬いまで綺麗に終わった。
「……中々食べるねぇ」
「追加の食糧も買い出ししないと難しそうですね」
想像よりも遥かに大食漢が垣間見える状況に、調達を目処に考えることとなる。
………
……
…
「じゃあ、お風呂行ってきますが……覗きはだめですよ?」
「しません。ほんとにしないからね?」
20分交代制での入浴時間にて、女子一同を見送る。
その姿が見えなくなった頃、宮本が立ち上がり。
「…さて、行くか佐々木」
「ええ」
焚き木の火を小さくし、二人はベースキャンプから離れ始める。
周りはすっかりと闇に包まれる中で、特に明かりを使うこと無く、一糸乱れぬ足取りで森の中を歩く。
(…相変わらず凄い歩法だな)
茂みの音は小さく、静かに、不安定な足場も綺麗にバランスを取れている。
琲世は宮本の体幹の良さと如何なる場所でも居慣れた様子で歩く姿に驚きを示す。
ある種、仙人の御業とも思えるその力は何処で学んだのか不可思議に思えてくるも、聞くに聞き辛さを覚えてしまう事もあって理屈が分かっていない。
どれほど鍛錬を積めばそうなるのかも、正直に説明がつかない事ばかりである。
「着いたか?」
「……此処ですか?」
宮本が立ち止まると、其処は一箇所だけ木々があけた広場めいた場所。
自然に出来たのか、誰かが整地したのか。
そんな奇妙な場所へやって来た事に一つ少女達の知らない理由が存在する。
「…………」
「…………」
人工的な明かりは一切なく、見えるのはキラキラと光る星空のみ。
「見よ、死兆星が輝いている…」
「それ死亡フラグですよね?」
「座って両手からビーム出してスパァンと衝撃波放つやつ」
「破顔しちゃうやつですけど!?」
ジョインジョイントキィな一幕でボケる宮本にツッコミを入れる琲世。
奇妙にも笑いの合いの手が出そうな空気になってから数秒ほど経ち。
「………さてボケとツッコミはこれくらいにしといて」
コートを翻し、内側に留めていたクナイ型のスローイングダガーを投擲。
空を切り、目に止まらぬ速さで森の闇へと向かう。
カァン!と木の幹に刺さる音が響いてから数秒ほど。
「………危なっ…!!」
茂みの中を誰かが出てくる。
「酷くないですか!?いきなりナイフ投げてくるなんて!!?」
「あれ?当たってた?ごめん」
「頭頂部数cmにスコーン!ですよ!スコーン!!って!!」
(命中率強めですねほんと)
涙目になりながら姿を表したのは一人の少女。
友奈や風よりも大人びて居るが琲世よりは子供めいている年頃で、長いウェーブヘアと前髪を揃えた所は五月人形を思わせる。
「……さて、初めまして宮本真之介さんと佐々木琲世さん」
何処かの制服と思わしきセーラー服を模したスカートをゆらし、一つお辞儀をする。
「私の名前は〔岸波白野〕。北海道【ヤタガラス】の名代の一人であり、今回の依頼者であります!!」
校外学習の裏にあるベテラン二人を巻き込む謎の依頼。
其れがとんでもない大波乱を呼び起すことはまだ知る由もない。
to be continued