真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜 作:葉隠小太郎
第一話 夏の祭典
空気の流れに湿気と熱気を運び、太陽が空高く仰ぐようになった頃。
アパートの一室でただ静かに走らせる音のみが場を鳴らす。
原稿用紙にコマ割りが成され、その中へ様々な絵が描かれては追加され、人物と風景が重なり合う。
「……………」
小さく、とにかく小さく誰にも聴き取れないほど小さな声で呟きながらそのページに己の創造物を描き込み、生命を吹き入れては物語を産み出していく。
彼女は漫画を描いていた。
たが、商業漫画作家という訳ではなく、ごく普通のWebページデザイナー兼コピーライターである。
これまでに多くのデザインを手掛けては売り文句等を創ってきたが、本来は漫画を描くことが生き甲斐のアーティストであった。
しかし、数々の漫画出版社の編集からは没と打たれ、賞レースにも参加したものの、佳作にも入らず、心を折るには充分過ぎる程に叩きつけられ続けた。
それでもと別の仕事をしながら同人誌という形で唯一人描き続けて早5年。
SNSサイト等で宣伝や没になった作品を投稿してみたところ、評価数は10日で10000いいねが付いた。
其処で先ずは50部程知り合いの印刷所に刷って貰い、其れを製本してから近所の即売会に参加。
すると午前中に完売。
後日追加で刷って貰い、同人誌販売ショップへ納入すると重版が決まった。
お陰で税務署に申告しないと難しい額まで出てしまったので嬉しい悲鳴が出た。
そして今年5年目の夏。
日本全国のみならず世界各地に点在するおまいらが集まる祭典、【コミックマーケット】に応募、当選が決まった。
彼女は思わず頭を振ってヘドバンをすることとなる。
「……あづぅ…」
そんな言葉が出れば出るほど、熱気を感じる気がする。
夏の暑さは何度も経験していても変わることのない其れに顔を渋くしわくちゃにしながら宮本は用意していた甘酒を一口飲む。
飲む点滴とまで言われている食材であり、知り合いの酒蔵から麹菌を貰って炊飯ジャーで作ったもの。
ご飯が麹の糖化でドロドロになったものを直ぐに急速冷凍機に小分けにしておき、必要量を出しては冷蔵庫に入れておく事で夏でも心配なく食べることが出来る。
夏というのは食品の取り扱いが最も注意しなければならない時期である。
黄色ブドウ球菌が繁殖しやすく、バーベキュー等で生焼け肉を食べてカンピロバクターやサルモネラ菌に感染し、救急搬送も珍しくはない。
たとえ調理済みの料理でも"ねと"という糸を引く状態をよく見ずに胃腸炎を起こすケースもあるので気を付けねばならない。
ということで早速。
「ん?はい宮本診療所です」
所の固定電話の着信を取り、耳につけて聞き取りをする。
「ええ、はい…そうですね…恐らく細菌感染だと思われます。吐瀉物や下痢で出た汚物は次亜塩素酸で消毒を。後は出来る限り水分の補給を優先して下さい……はい」
都道府県各地で設立されている救急安心センターからの電話である。
♯7119を電話で押すことで救急搬送が必要かどうかを当番の医師や看護師が聞く事でその場で出来る応急処置や心身的に動揺している通報者の代わりに救急車を手配する。
宮本は直ぐに通報者の住所を書き記し、繋げたまま別の回線に変える。
「こちら宮本診療所。救急搬送が必要な患者が1名。重度の細菌感染による食中毒と思われます」
繋げた先、付近を担当する消防署へと出動要請を行う。
その後は救急隊の到着から搬送までの状況説明、病院に到着してからは現場の医師と情報交換を行い、処置が済んだことを確認後、これでようやく終わる。
が、食中毒の怖い所は。
「……またか」
大勢の人間がなりやすいケースも多く。
「分かりました、そちらに向かいます」
イベント等で出店していたキッチンカーから大勢の食中毒患者が出たという事例。
宮本が想像するのはウエルシュ菌のような短い潜伏期間かつカレーから出たという所からの症状を想定。
恐らく調理していた食材などを放置したか、カレーを冷蔵庫等で冷却させなかった事が原因と思われる。
其れ等も食品衛生学を学びさえすれば理解できる物であるが、その知識のないまま行う従事者も少なく無い為注意が必要である。
宮本は急ぎ、鞄に点滴や抗生物質、注射器と換えを必要量より多目に詰めては現場に向かうべく走り出していく。
…………
「というわけで、皆も気を付けよう」
「怖いな日本」
「別に諸外国だって珍しくないぞ?アメリカ行った時にレタスやら葉物を洗う洗剤もあるほどだ」
「アフリカマイマイに付いてる広東住血線虫でしたっけ?神経系に侵入して肉芽腫形成や髄膜炎起こすみたいですよ?」
「うわぁ…」
食中毒はなにも細菌やウイルスだけではない。
人畜共通感染するアニサキスやサナダムシ等の寄生虫は魚の可食部に生息しており、鯵のタタキや鰹の土佐焼きに付いている場合と急速冷凍をしていないサーモンに卵が産み付けられている場合もある。
ちなみに。
「何故イスラム教で豚を食べたらいけないと言われているか、その主力な説が、
「ミヤモト、時々何処を見て言っているんだ?」
豚肉は充分加熱して食べましょう。
ムハンマドはせめてそう言っていれば理屈として間違っていなかったと思われる。
とはいえ日本でも豚肉を食べられるようになったのは江戸後期以降であり、ちょっとした歌に『楊貴妃はきれいな顔して豚を食べ』という薬膳的な意味合いでも使われるようになるのだったが。
「というわけで今日は内臓料理といこう。豚タン丸ごとを塩茹でし、ネギと辣油味噌を好みのつけ加減で食べて欲しい」
「う〜ん!コリコリと歯ざわりの良いタンにネギと辣油味噌が良く合いますね〜!思わず麦サワーが進む」
「アルカスない世」
「何処で覚えてきたんだニアスちゃん!?」
ボイルされた豚タンを舌鼓しながら、ビールを飲む。
その姿は40代男性の様に見えた。
「続いてもつ煮。大根とこんにゃくも一緒に煮込んだので良い感じに染みてると思う」
「ぷるぷるモチモチ。味噌味でモツ特有の臭いが抑えられて良い感じ」
大きめいちょう切りの大根とこんにゃく、大腸や小腸等の其々違う食感の部位が楽しめるモツは歯切れ良くも柔らか過ぎず、絶妙な噛み応えを残してある。
「後は豚のレバーを生クリームと混ぜて作ったパテ。茹でてネギダレを掛けた物。にんにく醤油で漬けたのをソテーにしたものをご用意しています」
「相変わらずマメな事してますね…」
「つい凝っちゃって…」
豚の内臓を食べる事あって様々な料理が並ぶ。
其れ等を皆で舌鼓する中、宮本の端末から着信が鳴り始める。
「ん?どちらさんだ?」
今日は少なくとも救急の当番ではない筈。
そう思いつつ、表示された画面を見て納得する。
「……もしもし、〔姫〕ちゃん?」
目を細め、若干息を吐いてはそのため息の理由が頭の中を反芻する。
多分あれだな?と言わんばかりの表情には対になっているない世とニアスも首を傾げる。
『………宮本ニキ殿ぉ…』
「どうしたのさ。まだネームの段階で駄目になってるのか?」
『ぐぇぇぇ…』
「当って欲しくなかったなぁ…」
どうやら図星らしく、その声は道路に轢き潰されたカエルの断末魔のようだった。
「今度は何にハマッちゃったの?」
『ハマったっていうか…そのぉ…』
(…………駄目だこりゃ)
此れには思わず頭を抱えるしか無い。
「…明日そっちに行くから。うん」
『すみません…』
通話を切り、宮本は食事に戻る。
急に予定が決まった事には少々ネックはあれど、致し方なしと考えながら、食べ進めていると。
「電話の主は誰だ?」
此処に居る三人が共に思う中、最初に切り出したのはニアスから。
宮本はその視線の意味合いを理解し、ため息を吐いてはその事を口にしていく。
「〔刑部姫子〕さん。前に即売会で衝動買いしてからの付き合いだよ」
「即売会?同人誌の?」
「ああ。【コミファン】*1の売り子を急遽やってな?コスプレもやらされたよ」
「ほぉぉ…」
(ない世ちゃんの顔が緩んでる…)
あらぬ想像をしているない世に呆れを感じる友奈。
「っで?急遽呼び出しとは?」
「アシ仲間がお子さんの胃腸炎で手が離せなくなったらしい」
「成る程…」
尚、ゲームに現実逃避していたことは間違いない。
とはいえども、仲間が一人居ないだけでも相当な負担が伸し掛かる事は変わらず、宮本へ助けを求めるその声には応えねばならないと覚悟を決める。
ただ。
(なにするんだ…)
基本読み専門の宮本に何を期待するのか少々不安な部分も存在している。
「……さて、〔千代女〕ちゃん。今回はどうするのか分かるかな?」
「イエスマム、姫子パイセン」
ビシッっと規律正しい敬礼をするこの娘は私と同じく志を持った同人戦士の〔望月千代女〕ちゃん。
若干ロリっぽいけれど同じ歳なので心配はない。
我々は今回あの伝説のイベントである【コミケ】にサークル参加が認められた事を期に、少しばかり所でないレベルで立ち向かわねばならない。
今回は完璧に自身の"オリジナル"で勝負する。
二次創作ばかりであったが、少しづつノクターンや笛吹きで打ち貯めていた小説を原作として漫画にするつもりである。
「ですがパイセン」
「なに?千代女ちゃん?」
「流石に宮本殿にはちゃんと話すべきかと…」
「……そりゃ無理だ」
「えぇ…」
こう話すように、一つ問題点がある。
そう、私達がこれからやるのはファンタジーであるが同時に…。
「其の為には、宮本さんのチンポ借りないと駄目だよね!!」
「ちくしょー、読者が忘れていたであろうこれでもR-18仕様なメガテンっていう事を全面に出してきました!?」
もろちん色々と考えては見ましたよ?
海外のサイトに課金しては無修正の黒々デカチン見たり、ディルドを触ってみたりはしてみましたが。
「……やっぱ宮本先生のとか比べてみたいじゃん?」
「この脳内ピンク。馬鹿だ」
「って言ってて千代女ちゃんも業務用ポチってるじゃない?」
「…はっ!?しまった!!?」
届いてる144回分のコンドームの箱はどんだけやるんと思いつつ、その気にさせるつもりなのは同様みたいだ。
「……でもホイホイ付いてくるんでしょうか?」
「多分付いてくるでしょ。大小選り取り見取りなのは間違いないし」
「………確かに」
今までの素性的にも宮本氏ならば虎穴に入らずんば虎子を得ずのメンタルで飛び込む事も考えてもいいだろう。
「ただ、拙者とは違って、最近偏った生活している姫子パイセンはダメージ受けると思いますけど?」
「ぎゃぁはぅっ!!?」
其れは言わない約束。
とはあれだけど、スカートに乗ったこの駄肉を見るとちょっとヒェッとなってしまう。
此れをハンドルのごとく掴まれた先には自爆するしかない。
「夏…!夏までにはっ…!?」
「既に夏ですし、後二週間ですし」
「さぁ!始めていこう!!」
大丈夫大丈夫。
ちょーっとオレンジジュースという名のスクリュードライバーを飲ませれば忽ちイチコロになるから!
「………(其処まで甘くはないような気がする)【尚貫通済】」
「というわけで資料資料【未貫通】」
「………お…おう…」
〚なお、気になって時間より三十分早めにやって来ては聴診器で聞き耳を立てていると、とんでもないことに巻き込まれたと後悔する〛
…………
一つ述べれば宮本には毒物は効かないに等しい。
体内へと入った異物は全て肝臓による毒素排出にて行われ、直ぐに尿として出る。
睡眠導入薬や象も直ぐに回ると言われる麻酔薬も2時間程度で排出されてしまう代謝能力を持っている。
故に、アルコールには弱いものの、化け物じみた代謝能力で直ぐに復活出来る。
その直ぐも。
「イェーーーイ!!おしぼり振り回せーーー!!!」
「イェーーーイ」
「……いえーい」
現在進行系でスクリュードライバーがただのオレンジジュースへと変わるほどである。
「飲んでるかぁーー!!」
「うん、飲んでる飲んでる」
「イェーーーイ」
比較的強い筈のオロチ系蛇っ子千代女も策に溺れてすっかりと血の巡りが良くなった顔つきになり。
「あぁ〜!また負けたぁ〜」
「脱がなくて良いから、野球拳じゃないから」
刑部も同じくへべれけな顔で身体をふらつかせ、着ていた服のボタンを外し始める。
一応、其れを紳士的に止めるも。
「あぁっん…///其処弱いんだけどぉ…♡///」
「わざとらしく言わなくても良いでしょ?全く…」
酒の魔力か調合していた生薬がアルコール分と反応して陶酔状態になりつつあるのかも知れない。
徐々に大胆になっていく千代女と刑部の二人に対し、「酔っとけば良かった」とこの状況を後悔しつつ、飲むのも馬鹿馬鹿しくなって別に用意しておいた烏龍茶で茶を濁す。
「あっ…つい〜!」
「脱ぐな脱ぐな」
「忍法早着替えの術!!」
「着替えられてないし、脱げてるし!?」
だがエスカレートする事には変わらず、既に下着姿へ変わり果てていた。
「先生みてぇ〜〜!資料用にポチっちゃったエロランジェリーだけど〜!!」
「エロいで御座るな〜!!因みに拙者は我が身に合わせてマイクロビキニをチョイスしたです!」
「見ないぞ?絶対に見ないぞー!?」
「指の間がガラ空きなのは説得力皆無で御座る」
男の性には勝てず、視界を押さえたものの、指の隙間からガッツリと見える為全く意味がない。
千代女の着るビキニは確実にプールやビーチで泳ぐに不適切な薄さと布面積の少なさ、そしてエナメル質という水着あるまじき素材という明らかなセクシャルアイテムとなっている。
一方で刑部のランジェリーは黒の透け地で出来たキャミソールワンピースに紐で結ばれたオープンクロッチショーツという攻めたデザイン。
これにはその気にならずとも精力的にも上げざる得なくなる。
「ってことでごかいちょー!!」
「イェーー!ごかいちょー!!」
「って何俺のズボンに手をかけてるの!?ってかベルト外して!?」
まるで魚の鱗を取るように着ていた服をひん剥かれ、あらぬ姿へと変わりつつある。
「きゃーー!!男の人呼んでーーー!!!」
「おらっ!大人しくしろーーー!!」
「しなければもっと乱暴にするぞーー!!」
此処で聞こえるのは男の声か女の声かで状況は変わるものの残念ながら甲高く出してるだけの男なので周りに人が居ても「おっ、そういうプレイか?」と生暖かい目で見られるだけに終わるだろう。
まるでアメリカの子供がクリスマスプレゼントの箱の包装を破るように服は取られ、恐らく銭湯か手術位でしかならないであろう真っ裸に変貌された。
「……もうお嫁にいけない…(´Д⊂グスン」
「ふへへへぇ…これも…資料の為…だからね…!」
(若干シラフになってるで御座る)
半分ほど酔いが冷めてる状態になりつつある刑部に心の中でツッコミを入れるも、まあまあムラついている状態の千代女には止める理由もない。
何せこれはR-18タグだから。
「ってな訳で御開帳!!」
とはいえ、シラフでやれない為にストゼロ(まぁあのアル中チューハイ)を一気に飲み、宮本の脚を無理矢理広げるのだった。
「……おっ…おぉぉ…」
刑部は画面上なりアダルトグッズのディルドなりで一応臨戦態勢のペニスと言う物を見続けてきた。
経験は時として確実な必要性は無いものの、エロ漫画家である以上、男性器というノーマルに必要なブツを見ることは見ないとでは雲泥の差である。
亀頭の形や浮き出た血管、色や形と反り具合、皮に包まれているかいないかも見なければ出来るものではない。
なお、宮本のペニスについて言うであれば、平均よりは大きめであれど無修正で見た海外製AVの男優とは異なっている。
(ふむ、硬さは十二分で御座るし、意外と紳士的なチ◯ポに見えますな…)
モノホンを見て固まる刑部と一応見慣れている千代女というペニスレビューアー状態の中。
「………まだ見るん?」
「ヒャッ!?ヴェェッ!?」
「驚き方がきたねぇ」
流石に宮本もおっぴろげはキツイので座り直す。
「っで、感想は?」
「少なくとも馬鹿の一つ覚えの如くデカチンにすればいいと妖獣ペニス移植するよりは紳士に満ち溢れてるで御座る」
「所々闇深い感想あって反応に困るんだよね」
悪魔犇めく裏業界で珍しくない行為をされていた経験もある彼女にとっては宮本のペニスも判定的には高評価に値するらしい。
「ふ…触れるのは…アリ?」
「別に俺のナニは噛みつきはしないよ」
但し、凶暴ではあるがというのを追記。
「いっそ段階すっ飛ばして処女膜貫通式やれで御座る」
「ちょっと千代女ちゃん!?」
「ってかパイセンは陰キャすぎてそのままだと蜘蛛の巣張るレベルで御座るよ?宮本殿なら良い方の経験になるから大丈夫で御座る」
「ギャァァァアアア!!?」
まさか御年2(P)歳で未だ未経験という事をバラされ、顔を覆い、膝をついて其の場にうずくまってしまう。
「………大丈夫?」
「お嫁にいけない……いや…もう腐るしか無いかぁ…」
末代までの恥と思っているだろうが、その末代が君だよと読者の代わりに記載しておく。
「……まぁ…うんその…」
これにはどうするべきか、真っ裸の男が腕を組んで考える姿は少々描写し辛いのではよ言ってくれ。
「将来の保証とか諸々については今後考えるとして…」
「宮本殿、セックスする時に其れは野暮で御座るよ?」
この男、若干重めに考える節がある。
「そんなビジネスライクで出来る状況じゃないよね?」
「コンドームであれば沢山あるから大丈夫で御座るが?」
「うおっ!?業務用やんけ!?」
取り出されたラテックス不使用のコンドーム(脅威の0.01mm)144袋入りの箱を見せられ、驚き、思わず固まる。
「安心安全サトミタダシ製で充分使えると思いますが?」
「用意良いなほんとに…」
ヒットポイント回復するならと頭の中に反芻するメロディー。
これが聴こえてきたらジャズ関係なく洗脳されている可能性を示唆されるだろう。
「ってな訳でパイセン」
「……んへ?」
埒が明かないのでと一言述べ、刑部の身体をひっくり返し、其の場に寝かせた後。
「四の五の言わず散らせて女になっとれ、で御座る」
「ヒェェェ…」
手で隠す事をさせぬように両手を拘束し、脚を閉じさせないように固定させ、全て余すこと無く眺めて見える状況に変えさせられた。
「………大丈夫なの?」
「そのおっ勃て具合では説得力皆無で御座るが、挿入れちまえば良い聲で啼くで御座るよ?」
「………出来る限り優しくする」
恐らく恥ずかしさで前に出れないだけと豪語する千代女に若干戸惑いつつもこのままではと思い。
「………行くぞ?」
「……(コクッ、コクッ)」
顔を真っ赤に染めて目を回す中、もうどうにでもなれとこの状況に流されるまま、刑部は身を差し出したのだった。
この続きの模様は、幕間の方で。
診療所から少し離れた西新宿のマンション。
6階建てでかつ、エレベーターは荷物運搬用を2つと5階まで昇る人を載せられる方の2つ。
最上階の全ての部屋をぶち抜いて造った宮本のセーフハウスは今日も新たなセフレを増やしていた。
「もっこり♪もっこり♪もっこり♪もっこりちゃんの…パラダイス…!!」
「えぇ…」
「少々はしたないぞ?」
両手に花と言わんばかりに侍らせるない世に困りながらも動けないでいる〔マイ・ナツメ〕、そのパートナーの〔スカサハ〕は呆れていた。
「いやぁ〜♪かわい子ちゃんを侍らせるのは良いよね〜!!心のもっこりが満たされてく…!!」
「おい、新人。何とかしてくれ」
「歴から言えば私の方が上なので」
「きゃぁ〜!私を奪い合わないで〜!!」
最早カオス。
こればかりは友奈も遠くから眺める事しか出来ない。
「…で?我等を放置して主人はどうした?もしかして別の女に現抜かしてるのか?」
「だとしたら?どうするつもり?」
「では抜かせぬくらい果てさせるのは?」
「………良いアイデア」
ただ、争い合うのではなく、利害関係が一致したことによる
今後の宮本を使った行為での条約が結ばれる事は宮本自身知る由もなく、いくつか憲章めいた条文に書き記すカキタレーズを尻目に何度目のため息を吐く。
元々数えられる訳が無い為、友奈は止めているのが正確。
後、時刻的にそろそろ風呂の時間と言うことで湯を沸かすべくスイッチを入れるために立ち上がると。
この夜遅くにインターフォンが鳴る。
恐らくエントランスホールから部屋番号をプッシュして呼んでいるのだろう。
友奈はそのまま玄関先の応対へとボタンを押して通話を始める。
「もしもし?どちら様ですか?」
あくまでも相手の様子をうかがう為の掛け声。
防犯用のボイスチェンジャーで野太い男の声で相手は聞こえているだろうが。
「久しぶりじゃ、友奈どの」
相手は特に狼狽えることも驚く事も無く、そのまま話しかけ、通話の主が友奈だと直ぐに理解し、嬉々とした声色で話しかける。
その様子に友奈は気が付いた。
「あっ、〔一条〕叔父様?」
「ほっほっほっ、左様左様。息災じゃったかの?」
一条と友奈から呼ばれたのは白粉を塗ったような肌と独特の丸い形に切り揃えられた眉、時代錯誤に見える烏帽子と宮中で着けるような羽織りを着込んだ中年男性は、扇子で口元を隠しながらコロコロと笑顔を見せた。
「お久しぶりです。父の葬儀以来ですね」
「うぬ。もう"3年"も経ってしまったか…これを早いと申すか、人並み程度の歩みと申すか、分かれるでおじゃるの…」
年単位で会わないとなるとその再会も色濃く強く感じられる。
〔一条三位〕
帝より賜りし官位であり、多くの名家筋を纏め上げる見えない立役者であり、舞台の裏方役でもある。
「……あっ、立ち話もあれですから上がって下さい」
「うむ、今行こう」
エントランスホールにはコンシェルジュの代わりに護り神が2人居る。
〔三宝荒神〕と呼び、元は仏教であるが日本に伝来した際、神道でも信奉され、家では竈門を司る神仏として祀られている。
そんな護り神から許可を得て、時代劇の撮影と勘違いされそうな服でエレベーターを乗り、上へと昇る。
其処から6階の階段を登り、辿り着いた先の玄関に。
「こんばんわ。夜分遅くに申し訳ない」
「一体どうしたんですか?連絡してくれれば良かったのに…」
「まぁ、家主には散々連絡を入れてるが居留守使っている可能性とその可能性を示唆して【鎹鴉】を送ったのだが…」
「成る程、無視されていると」
ではスカサハの言う通り、そういう事をしている訳だと判断。
最後の最後までため息を吐くのだった。
「宮本には後で伝えれば宜し。ちょっと話をしにきたのだ」
「話?」
一体何なのだろう。
一条を案内し、近くの椅子に座ってもらいながら友奈はキッチンへと向かい、冷蔵されたコーヒーをポットへと入れ、沸かした湯を鍋に注ぎ、加熱し始める。
「皆も聞いてくれるか?」
「ん?何だ?」
「聞いて良いものですかね?それ…」
「別に取って食うものじゃない。ただ…」
これから話すことに関係があるのか早速傾けるスカサハと若干戸惑いが隠せないマイ、そしてない世を小脇に抱えつつニアスが聞く様子を見せるとさてと言わんばかりに咳をきり。
「………我等"ヤタガラス"から頼み事よ」
少し重い表情で述べる。
to be continued