※この作品はR-18です。

真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜   作:葉隠小太郎

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第四話

 

 

日本で活動するデビルバスターは殆どの場合、協会への登録を行う。

 

かつては【人外ハンター商会】の名称が昭和後期に使われていたものの、サマナー等も含める事で現在は【デビルバスター協会】と改称。

自分達が合法な手続きで活動していることを証明し、社会活動の一環として悪魔の討伐や間引きといった職務に全うする。

 

尚、ヤタガラス構成員もメシア派もガイア系も登録が義務付けられており、未登録者は場合によって鏖殺案件と言われている。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

デビルバスター協会都庁支部オフィス内

 

 

協会の支部が都庁置かれている理由としては、都から要請されるケースが多い事と、都議会の迅速な手配が主とされる。

 

同時に許可などの申請をする第三セクターやら嘱託的な組織故に都庁内にオフィスを構える事は決しておかしくもない。

 

但し、一般人からは見える位置にあるわけでもなく、都議会の一部や都職員のつなぎ役しか知らされておらず、基本オフィスは都庁地下を通る【旧丸ノ内線】短絡線に設営されている。

 

入り方については。

 

 

「……アクセス開始、入場許可を」

《確認、サマナー〔佐々木琲世〕おはよう御座います。本日もお日柄が良いと判断されます》

「判断基準が良く分からないな…」

 

西新宿駅の奥まった空間、ただの壁である場所に登録されたCOMPをかざし、操作を行うと、ガチャガチャと音を鳴らしてブロックが動き、人二人分の幅の道が出現する。

 

「相変わらず、ギミックに凝り過ぎ」

「それも浪漫だよ?」

 

もっと他にやりようはあったのでは?

そう感じた〔郡千景〕は呆れつつも隣で顔を輝かせる琲世を見て仕方なしと諦めの表情を取る。

 

入口に関しては他にも複数箇所存在するが、一番ギミック等の拘りが強い場所は此処のみ。

恐らく黒い男達の映画か、ウィザーディングな世界映画を見て再現したくなったのだろう。

どちらも世間一般には秘密な存在であるから尚更。

 

琲世、千景は現れた道を歩き、壁が閉じていくのを気にせず緩やかな下り坂を進む。

通路は少し薄暗く、古い外灯が先を照らすのみである意味では雰囲気づくりの為らしい設計にはもう少々別の部分を見るべきでは?とも思う者は千景以外にも居たであろう。

 

ただ、それでもと願う者も少なからず居たが故に、そのまま建造が進められてしまったと考えられる。

 

そして少し長い道程だが、両開きの扉が見えれば目的のオフィスへと到着する。

 

二人は扉の前へ立つ。

 

数秒間の時間が経つと、扉はゆっくりと動き始め、重い音を鳴らしながら開かれていく。

 

「Welcome…デビルバスター協会オフィスへようこそ」

 

扉の先に立っていたのは1人。

 

風もないはずの場所でマントが若干揺らめき、その見た目からは紛う事無く【魔術師】の姿をした男。

 

彼の名は〔ドクターストレンジ〕

 

〔スティーブン・ストレンジ〕と呼ばれる、都庁支部のオフィスマスターであり、魔術師集団【マスターズ・オブ・ミスティック・アーツ】の一員である。

 

「また変なギミック作ってどうするつもりですか?」

「ハッハッハ、そう言うのも粋な計らいという物だろ?少しくらいは遊び心も考えて欲しいね」

「遊び心というより予算の私的利用ですこれは」

 

千景による突き刺さるような言葉にストレンジの顔も釣られたかのように引き攣ってしまう。

 

「利用者数を増やす努力ってやつだよぐんちゃん」

「……まっ、カネキの様な物好きがどれくらい増えるのやら…」

「いつになく、ちくちく言葉が強い」

 

こだわる所が違う。

 

不特定多数の人々が使うならば利便性や機密性の保持が最優先だと言いたげにため息をつく。

 

それでは気を取り直し、オフィスの内装について説明を行う。

 

少しばかり大きなエントランスホールの予定だった場所は木製丸テーブルに木のジョッキ(雰囲気なので樹脂素材)と料理が所狭しと並べられている酒場に変貌。

多くのバスター達がノンアルコールを片手に飲み明かす場と化している。

 

「まんまパブとかBARね」

「冒険者の集う集会所って感じで良いんじゃないかな?やる事結構似てるし」

 

琲世の言う通り、この酒場には依頼等を貼り出されたボード等もある為、そのままでは?と度々言われる。

 

「よ〜ぅ!佐々木と嫁さんじゃねぇか…!!」

「久しぶりだなぁぁ…!!」

「ええ。確か年越し以来ですね」

「ひさぁ〜」

 

頭はトサカの様に伸ばした髪以外全てスキンヘッドという男と出っ張りの強いショルダーアーマーにレザージャケットを羽織った男という若干柄の悪そうな姿の二人組から挨拶をされるも特に気にする事無く普通に返した。

 

装備の関係性と言うべきか、他のバスターも表通りで歩けば奇抜な格好をしている者も多く、中にはバッグ等に銃器や刀剣類を所持している。

 

彼らにとっては特に珍しくはなく、これから悪魔と戦う者達や既に戦い、目的を果たした者達が入り混じって存在している。

 

そんな憩いの場でもあるエントランスホールを通り、目指すのはオープンバーカウンターとなっている店。

 

【ゲイツオブヘル】

 

デカデカとネオンサインが上がるカウンターに1人、濃密感漂うスキンヘッドの黒人男性がショットグラスを十個並べられた所にテキーラのボトルを注ぎ、ピタリと均一に入れる。

 

「どうもマスター」

「佐々木か。今夜も連中が騒ぎ立てて来やがる」

「みたいですね。【ファイヤーボール】を一つ」

「ふっ、痺れるようなホットなヤツだ」

 

琲世が注文を行い、マスターは其れを作る。

 

世界的に有名なホットソースをグラスに20ml入れ、ドイツの誇る蒸留酒、シュナップスを注ぎ、最後にシナモンスティックでマドラー代わりに混ぜ、提供される。

 

文字通り痺れるようなホットなカクテルを手に取り、一気に放り込むよう口内へと注ぎ入れ、喉を一つ鳴らして飲み込む。

 

此れには注文から一部始終見ていたカウンター席に座るサマナー達も思わず口笛を鳴らして驚き、手を叩く。

 

「相変わらずそれくらいじゃ無いと冴えない様子だな」

「陶酔する暇も無いですがね」

「だったら、コッチも一つやって貰いたい事がある」

「………ええ」

 

空のグラスを下げ、新しく作るのはモヒート。

刺激の強いカクテルで覚醒させる行為には千景の顔も文句の一つは言おうと思うも。

 

「アイスミルク、ダブルだ」

「カルーアは駄目なの?」

「お子様に飲ませる物じゃねぇよ」

 

純正十勝産牛乳が注がれたグラスを目の前に出され、致し方なく口を噤む事とする。

 

「すまんが今回は場合によっては対(・)人(・)戦(・)を想定してくれ」

「対人?ガイアかメシアかどちら?」

「一応ガイア寄りだ」

 

細長いグラスにミント、ライム、ガムシロップを入れ、スプーンで潰しながらホワイトラムとトニックウォーターを注ぎ、軽く混ぜ、ペーパーコースターと写真を挟み、琲世の前へと出す。

 

「"八部連合阿修羅会"直系団体【紅塵会】。その会長である〔田山〕の身辺調査を頼む」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

部屋の中で木霊すのは紙へペン先を走らせる音。

 

原稿にコマ割りされた箇所にはネームと呼ばれる下書きと台詞の入った部分にペンを入れ、人物を浮かび上がらせる。

 

厄介極まりない作業の中。

 

「………終わるのこれ?」

 

ふと、我に返ったマイは彩色の手を止め、口から吐露する。

 

終わる終わらない兎も角、何故同人誌を描いているのか?

其れを考えてしまうと消せなかったブロックが重なる様に問題が大量に落ちてくる。

 

残りあと一週間。

 

素人同然の自分達が初めて同人即売会というディープな世界に踏み出す事となったのか遠い昔に感じるほどだが。

 

「ヘイヘイヘイ。あと半分だから頑張ろーー!!」

「と言うより何故我らもやるのだ?」

「人海戦術は古今東西使われてる荒業よ?ガンバガンバ」

「全く……」

 

手を叩いて発破をかけるない世にスカサハはため息を隠せないものの、今何とかしなければならないのは理解出来る。

 

「実際問題、出来が悪くても出さなきゃサークルとしてままならないでしょ?」

 

けろりと正論を吐くところもいじらしさを感じ、仕方がないとさえ思わせた。

 

但し、巻き込んだのはない世自身であり、全くの未経験なマコトやスカサハには難易度が高く、その点は考慮されていない。

 

「ナイヨ、此処まで終わったけど次は?」

「うわっ、早っ…!?」

 

唯一、デザイナーの勉強をしていたニアスは苦も無く流れるようなペンさばきで仕上げに入っており、そのスピードは本職でも舌を巻くと考えられる。

担当していたページはもはや色さえ塗れば漫画として成立させられる程、描き込みがなされており、修正の必要が無いとさえ感じた。

 

「このまま行けばコピ本も…!?」

「其れは駄目。バンド・デシネやっている友人もそれで身体を壊した」

「うーーーん。いや、このペース保てばイケると思うよ?」

「お前はチーターが時速120km走れるからと言って1時間走れるでしょ?と思っているのか?」

「………ウボァァ…」

 

ニアスからの正論はハートへ突き刺さる。

 

その通りだ。

最高時速はコンディション全てをもってして行われるレベルであり、其れを長期間行える事を想定されていない。

 

故にそんな馬鹿な考えで物事を測る行為は断じてよろしくないのである。

 

「兎も角、今の本を完成させてから考えるべき」

「ニアスちゃんからのぐうの音も言えない正論はマジパネェ」

 

流石に此れには何も言えない。

 

取り敢えず、今の作業を終わらせてから次にという事でお開きにしようとした矢先。

 

「あっ、刑部先生との合同誌ならイケるか?」

「馬鹿か?」

 

またしても阿呆らしい言動に思わず口から吐露されるも。

 

「………『やろう』、だってさ?」

「馬鹿が二人いたな…」

 

いつの間にかグループチャットで提案され、向こうの刑部からもオッケーサインが出る。

こればかりはニアスも顔を押さえてどうしようもないと項垂れるのだった。

 

「って、合同誌って何をやるの?」

「そもそも初サークルと何をするつもりか分からん」

 

最早蚊帳の外となっているマイとスカサハはこれから来るであろう厄介事にどうする事も難しいと思いつつ、ペンを走らせるのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

東京 錦糸町 某所

 

 

銃声が鳴る。

 

右往左往に爆走する黒のセダンのフロントに一つの影が飛び乗る。

 

「Hello!ニーハオ!グーテンモルゲン!チャオ!!」

 

古今東西の挨拶を発しながら、50AE(50口径)仕様の自動拳銃(IWI Desert Eagle)を二丁構え、引き金を絞り続ける。

 

フロントガラスは防弾性を有しているものの、的確に放たれた弾頭はクモの巣状にヒビを入れ、矢継ぎ早に次の弾頭が押し、5発目で貫通。

運転手の胴体に複数被弾した。

 

「ザッケンナコラー!スッゾコラー!!」

 

助手席の強面男が二連装散弾銃を取り出し、フロントの男へ発砲。

けたたましい音が鳴り響くと共にフロントガラスが飛び散ると。

 

「Bye Bye Baby〜〜!!」

 

散弾銃を持っていた両腕が肩ごと斬り裂かれ。

 

「グワーーー!!?」

 

二つの刃で頚椎を切断。

 

操作が不可能になったセダンはそのまま電柱へと突撃。

影は直ぐに身体をくるりと回転させ、アスファルトの地面へ華麗に着地した。

 

「……さてさて。どうもこんばんわ。今日も皆自分のムスコをゴールデンフィンガーで種まきしてるかい?因みに今から茄子とか西瓜が植え時だよ?」

 

そう言いながら何処か別の場所(ユニバース)に向けて語りかける。

 

赤と黒を基調とした全身スーツ。

特殊合金仕様の日本刀を二刀背に差し、大型の拳銃を二丁扱う。

 

男の名前は〔ライアン〕…。

 

「まーて待て!!ちょっと其れはカナダの俳優で俺ちゃんとは無関係よ?」

 

あっ、いや?グレイマンの方を言おうとしただけで?

 

「そっちはゴズリングだ馬鹿!!」

 

でも、同じくカナダ出身だろ?ヒゲの生え加減でちょっと区別し辛いと思うんだけど??

 

「俺ちゃんみたいにイカした傭兵は俺ちゃんだけなんだよ!今度間違えたらテメェのシャンプーボトルにゴールデンウォーターぶち込むぞ!!」

 

一瞬、乗っ取られてしまったが改めて紹介する。

 

彼の名前は〔デッドプール〕

もしくは〔ウェイド・ウィルソン〕

 

よくよく間違えられるが〔スレイド・ウィルソン〕でも〔デスストローク〕でもない。

 

銃も使うし、刀もよく使うし、目茶苦茶人殺しする傭兵だが他人の空似だ。

 

ヒーリングファクターと呼ばれる超人的な再生能力と人並み外れた身体能力、そして傭兵として数々の修羅場をくぐり抜けたマーシャルアーツと独学の二刀流に卓越した銃器の使い手。

 

並びに、多くの場所で死にまくった事で冥府の河の渡し守から。

 

「来んな馬鹿」

 

と現世に還ってくる事、両手両足百人分。

 

といつの間にか悪魔ですらざっくばらんに殺せる程までになったスーパー無責任ヒーローであるが。

 

今夜はマスク越しの白目も顰める事態に発展している。

 

「………オーイァー…かーちゃんハメハメはーー!」

 

煙を上げるセダンの後部座席には誰も居ない。

 

少なくとも極道向けの店から出て、迎えの車に乗ったことを確認したが、降りた様子は見当たらない。

 

だが、座席の足下を見てみると丸(・)く(・)ポ(・)ッ(・)カ(・)リ(・)と(・)穴(・)が(・)開(・)け(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。

 

「………切って下に出たって訳ね?」

 

荒事に慣れている極道の一員である事を再確認し、デッドプールは辺りを見回す。

 

「……彼処か?」

 

見つけたのは増水した雨水を貯水させる為のU字側溝のグレーチングと呼ばれる蓋。

 

マンホールでは到底持ち上げるに至れない重さであるが、こちらの場合は大の大人であれば片側だけ上げることも可能。

 

そのまま何処かの貯水槽へと逃げる事が出来る。

 

「という訳でイッツ髭の配管工になった気分でグローリーホールダイブ!!」

 

であればデッドプールも同じくグレーチングを上げ、滑り込むように下水溝へと入っていく。

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

男は走っていた。

 

男は所謂ヤクザ組織の三次団体組長であり、シノギと言えるものは消費者金融と生活保護費の受け子。

最近では半グレなどを使い、特殊詐欺や美人局を使った脅迫も入っているものの、殆どは上部組織への上納金として稼ぎを出さざる得ず、事務所経営は口元まで水に浸かった状態まで迫っていた。

 

故に、少しばかり組織が扱う商品を少しばかりちょろまかし、其れを別ルートで売買した所、莫大な収入源に変わった。

 

男は思う。

 

恐らく、上にバレて消しに来たのだと。

 

部下のクローンヤクザが瞬く間に二人惨殺された事に恐怖して逃げているものの、追いつかれる可能性があり、その顔は未だに安堵の表情にはなれない。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

どうやって殺されるのだろうか?

生きたまま何処かの海に沈められるか、私有地の山中で生き埋めの可能性も考える。

 

どちらにせよ、息苦しいまま事切れる未来しか無い事だけは分かった。

 

「……逃げてやる…!?絶対に!!」

 

ストレスで肥えた腹を揺らし、剝げかかった靴底に怒りを覚えつつも足を止める事はせず、走り続ける。

 

そんな決死の逃避行だが。

 

「動くな。ピッグマン」

 

重い貴金属の鳴らす音が場を響かせ、男の足元のコンクリートを削り取る。

 

放たれた弾頭は、其れこそデッドプールと同様の50口径であり、男は遂に追いつかれたかと背筋に冷たさを覚え、顔を引き攣らせる。

 

しかし同時に疑問が芽生えた。

 

何故前から?

 

この一本道状態の下水道は地上の道路と地続きではない。

先回りし、追い詰める算段もあったかも知れないが、場所によっては別の下水道に向かってしまいかねない。

 

内部構造を知っているならば兎に角。

 

「おい、聞いてるのか?」

 

よくよく見れば若干身体の大きさが異なって見える。

腕周りの太さはまるで大黒柱のようで、血管すら浮き出て見える。

 

分厚い胸板とそれに見合う体格はラガーマンやプロレスラーに相当する巨漢であった。

 

何よりも、その男は独(・)特(・)な(・)形(・)の(・)銀(・)色(・)の(・)ヘ(・)ル(・)ム(・)を(・)被(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)。

 

「……誰?」

「俺の事を知らねぇのか?」

「少なくとも何処でも認知されてる風な言い方は良くないと思うが?」

 

本当に何者なのか分からない為に思わず問いかけてしまった。

 

パツパツの赤いシャツにイーグルらしいシンボルマークが付けられた格好の男はヘタをすれば渋谷ハロウィンでしか見れないへんてこさを醸し出している。

 

そう。

 

この男の名前は〔クリストファー・スミス〕

またの名を〔ピースメイカー〕、"平和の使者"と自称する狂人である。

 

「まぁいい。どうせあの世で俺にぶち殺された奴らから聞けるだろ?」

「ちょっ…!?ちょっと待て!?」

「あん?命乞いだったら直ぐ眉間に!?」

 

風穴を開けると言いかけた瞬間、ピースメイカーは頬に掠めた感覚で身体を屈ませて飛び込み前転で避ける。

 

次の瞬間、ピースメイカーの居た場所から爆ぜた様にコンクリートが飛び散り、強烈な銃声を響かせる。

 

「チッ…!?」

 

ターゲットである組長を狙う者がもう一人居る。

 

ピースメイカーの顔が強張り、お返しと言わんばかりにロングバレルの大型拳銃(Desert Eagle)を構え、同発分撃ち返す。

 

お世辞に広いとは言えない下水道に反響する銃撃音は互いに膠着状態を生み、決定打にかける事態へと為していく。

 

護衛か何かか?

 

但し、狙いは定まっているも、この暗さでは組長に当たりかねない。

だが、其れを意に返さない様子からガードマンの類とは異なる事も撃ち続けながら感じ取れる。

 

であれば一体何者?

 

このままでは埒が明かない。

 

ピースメイカーも追撃してきたデッドプールも考えは一つ。

 

「おんどりゃっ!!?」

「なっ…!?」

 

デッドプールはピースメイカーの銃撃を受けつつ、突撃。

此れには巨漢もその身をたじろがせ。

 

「チェスト!!!」

 

二刀が襲い掛かる。

 

「クソッ…!?ソニックブーム!!」

 

このままではナマス切りにされる。

その前に、着けているヘルムの音声認識機能に向けて声を張り上げ。

 

青白い衝撃波が周り一帯を覆い、デッドプールの身体が弾かれ、スーパーボールの様に壁へと激突した。

 

「ギャッ!?グエッ!?ゴウランガ!!?」

 

あまり高くない天井から地面まで複数箇所跳ねるように当たり、全身複雑骨折を起こす。

其れだけでは済まさず、筋繊維は肉たたきで解されたかのようにぐちゃぐちゃに、大脳等もシェイカーと同じく頭蓋内で振られてクリーム状になる。

 

最後には転がってそのまま軟体生物かの如く地面へ突っ伏すのだった。

 

「………全く」

 

邪魔は入ってしまったがこれで終い。

 

銃撃戦に巻き込まれまいと必死に頭を隠し、壁の隙間で蹲る組長の男を見つけ、言い放った。

 

「持たせたな」

「ひっ…!?お、お、俺の…金をやるからっ!?み、見逃し…してくれっ!?」

「あぁん?何のことだ?」

 

組長の言葉の意味が理解出来ない。

 

其れもそのはず。

 

デッドプールもピースメイカーも目的の為にこの男を殺しに来たのだが、その目的に組長の組織は関係ないのである。

 

「俺はテメェの支持する馬鹿議員の阿呆息子がやりやがった事故の件で来た」

「……はっ?」

「まさか"強姦"を隠蔽するのに事故に仕立てやがった事は記憶に無いなんて言わせるんじゃねぇぞ?」

 

ピースメイカーの表情は変わらないが、その声には怒りと侮蔑の色が混ざっていた。

 

事故当時の資料と被害者女性の有り様は口にすることも憚れる程。

慣れていた筈のピースメイカーも思わず吐き気を催す程の邪悪さで怒りをぶつけた壁が向こう側まで貫通してしまった。

 

故に。

 

「まぁ、その息子も鼻とペニス削がれて五体不満足にしといたんだがな?」

「ひ…ぇぇぇ…」

 

尚、父親の方はデッドプールがやったであろうか、トマホークで頭をかち割られ、マネキン人形とヤリあった芸術作品へ変貌させられていた。

 

「さて、後はテメェの首を切っ「ガチョーーーン!!」ガハッ!?」

 

一発撃とうとした時、ピースメイカーの身体がくの字型に曲がり、転がされた。

 

其れは、デッドプールの飛び蹴りが原因である。

 

「ようよう!ゴリマッチョ君!毎日練乳デコレーションと称してパンケーキにザー汁かけちゃう方かな?」

 

下品な言動を言い放ちながら、何事も無かったように倒れているピースメイカーへと向かって足を進める。

 

此れにはピースメイカーも驚きを隠せないでいた。

 

「ってめぇ、デッドプールか!?」

「よう!そう言うアンタはイカれた平和の使者さんじゃねぇか!DCExtendedUniverseから来たの!?」

 

これはあれだ。ワイスピの突然現れた弟並みの衝撃の真実ってやつだよ

 

「ドミニクに弟出来てたなんて母ちゃん3人も産んでたのかって思ったけどさ!!」

 

まぁ、敵役のステイサムも長男だし結構多いんじゃないの海外だと?

 

「そうなの?」

 

と、虚空に向って語りかけるデッドプールにピースメイカーも顔を顰める。

 

狂人。

 

猫が何も無い筈の場所を見つめるように、何処か理由のわからない事を話し続ける様子は多くの業界人も不思議さとその歪さを怖がって協同はしない者も少なからず居る。

 

一説には悪性腫瘍に蝕まれ、再生能力の影響で醜悪な顔面になってしまったことで心を壊してしまったと言う。

 

何処か遠くに行ってしまったとかつての恋人にも捨てられ、失意の底に立たされた男。

 

其れがピースメイカーの知る限りの評価である。

 

「大丈夫か?おまえ、前に増してヤバくなってそうだが?」

「はっ?俺ちゃん基本的にヤバいのがデフォなんだけど?」

 

この間は夢の国主体なのにR指定映画作ってもらったからねぇ?爪生え男とようやく共演したみたいだし。

 

今までコックのディックをホールにゴーシュートしていた男にどの様な基準が適応されるのか、筆者でもわからない時がある。

 

さて、お互いの素性が知れた所で一つ悪い所が判明する。

 

「………クソッ、逃げられた」

「ファットマンの逃げ足の割には上手いな」

 

組長が居た場所には丸く、黒い焦げの跡が残されており、其れが逃走したことを示す。

 

デッドプールの白い目が細く、悔しそうな表情になると共に、ピースメイカーも頭を悩ませる。

 

「ファ◯ク!!あんにゃろう今度あったらドタマにホール用の穴こさえて挿し込んでやる!!」

「怒ってもどうしようも無理だ。第一お前が邪魔をしなければかさねその通りになってたんだぞ?」

「いいや!テメェの場合はホモダチ用の"やおい穴"作ってファッ◯するだろ絶対に!!」

「やはりてめぇはクソだ」

 

呆れるピースメイカーにおちょくるような態度を示すも、ナチズムファザーによって仕込まれた鉄拳が入り、地面へと突っ伏してしまう。

 

「あ〜…効いたぁ…」

「…所でてめぇはあの野郎をどういう風にしろって頼まれた?」

「あん?…そりゃぁ…アニーに出てきそうなちっちゃな娘からお姉ちゃんの仇って豚さん貯金箱から出してきた五千円札もらっちゃったからなぁ…」

「なるほど。そりゃやるな確かに」

 

小銭しか入らない貯金箱に頑張って入れたであろう折り目のついた五千円札が頭に浮かぶ。

 

恐らく、ヒーローであればセブンティーンアイスを買って好きなフレーバーを渡しているだろう。

 

その後、依頼通りに某巨人漫画の作家が喜びそうな前衛的芸術作品に変える事は間違いない。

 

「………まぁいい。セカンドプランは練ってある。邪魔した借りを返してもらうぞ?」

「……分かった。やってやる」

 

このままではバツの悪いと言わんばかりに立ち上がり、協力の意思を示す。

 

「所でそのセカンドプランってのは?」

「簡単だ」

 

デッドプールの問いにピースメイカーは少し間を置き。

 

「……現阿修羅会直系音羽会直下竹下組組長」

 

 

「〔輝村極道〕をぶち殺す事だ」

 

 

 

to be continued

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