真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜 作:葉隠小太郎
スタッフが違うからか、それとも壊れ故に引退させたのか分からないけれど結構変わりやすいのよねスキルと思うこの頃。
(偽典やらTRPG系も引っ張ったりしてます)
「宮本先生。どうやってテトラカーンを付けてたサマナーを倒したんですか?」
医院内での食事中、唐突に友奈から問われたのは、この間解決した異界の主であるデビルサマナーについて。
物理攻撃を反射させるテトラカーンについて聞きたいことが多くあるようだ。
「ふむ。友奈ちゃんはテトラカーン等がどのような魔法なのかはご存知で?」
「ええ。物理攻撃…例えば【ATTACK*1】とか、物理属性に関するスキルを反射させる魔法ですよね?」
「その通りだ。じゃあ例えば【せつなみだれうち】は?」
「物理属性ですね。全体に複数ダメージを与えるタイプです」
せつなみだれうち。
一時では射撃スキルだったりするがレイピア等の突きを主とする武器での近接攻撃にも該当したりする。
全体だったり前列グループだったりと使い手によっては仕様が違う部分があるので、まぁそれくらいと覚えておいた方が良い。
「じゃあこの【せつなみだれうち】をテトラカーンで返したらどうなる?」
「あっ…えっと……
「うん…やっぱその考えか」
「???」
宮本は顎に手を当てて考えてから用意してあるホワイトボードを引っ張って出す。
これでどうするのか。
マーカーを使い、書き始めた。
「先ずはテトラカーンの性質は反射。物理耐性とは異なり、自分の前にシールドを設営するイメージを持っておこう。貫通スキルがあると思って殴りかかったら馬鹿を見るからね?」
「自分の身体についてる能力と自分の前にシールドを作る違いですね…」
此ればかりはテキストの書き方が悪かった。
一時期では物理属性の反射耐性を付けると書いてあったケースもあり、物理貫通持ちが殴りかかってから錐揉み回転しながらすっ飛んでいった事もある。
「では此処から問題」
ホワイトボードに1つ問題としてあるものを書いていく。
「【至高の魔弾】はテトラカーンで跳ね返されるか?」
【至高の魔弾】
万能属性の単体攻撃ではトップクラスの威力を誇り、これを覚える銃使いは一流と言われている。
「えっと…確か【至高の魔弾】は…物理攻撃だから…跳ね返される?」
「うんすまない。正直この問題はめちゃくちゃ意地悪だった」
「えっ?」
一言謝り、ホワイトボードに書いていく。
内容は
【至高の魔弾は使い手に応じて全く異なる】。
「えぇぇぇ…」
「仕方がねぇじゃないか。俺も知った時ビックリした」
至高の魔弾は実は【銃撃スキル】か【力依存の万能属性】か【物理属性】かで別れている。
ある世界では上半身に独特の入れ墨を入れた青年が放つ特殊物理というカテゴリーの万能属性攻撃になり。
またある世界では銃撃スキルとして特大威力を誇る攻撃になり。
またある世界では雑に万能属性スキルになる。
「曰く、同じ名前でも物が違うケースに該当するんだと思う。大陸での同一神とか似たような食べ物的な意味合いみたいに」
「じゃあ物理属性のつもりでテトラカーンしたら万能だったとかもあるんですか?」
「あるな多分。同名で違う効果ってのはTCGとかじゃ珍しくないし」
そういった事故例は少なくはない。
現に宮本も同じ様な苦い事故を経験し、自身で出来る限り検証を行った物である。
「昔…って言っても2年前に一度だけ万能を吸収しやがった悪魔と殴り合いした時あって、血反吐吐きながら倒した記憶があるんだよね…」
「万能って何なのかな?」
因みに過激派メシアンからは3000万$で手配されていたりする。
恐ろしい話である。
「さて、という前置きをしておいてからハッキリと言うと…サマナーの持っていた【テトラカーン】と主悪魔の持ってた【テトラカーン】は同名で違う効果の魔法ということになる」
「えぇぇぇ…」
驚くのも無理はない。
ペルソナシリーズとメガテンシリーズで全く違うというなにこれふざけんな案件である。
しかもメガテン各作品でも【1ターンの間反射させる】場合と【一度だけ反射】の場合があるし、味方全体か単体かの違いもある。
〔妖鬼:キンキ〕の放ったテトラカーンは味方全体に一度だけ反射させるタイプ。
場合によっては全体攻撃全てが使用者に返ってくる事となったであろう。
しかし相手側にもう一度波状攻撃を放ったことでサマナーである鷹岡明は唯一弱点の物理を補う為に自身にテトラカーンを付けたのだろう。
知ってか知らずか此れが【味方単体に反射させる】タイプであったことでキンキは倒され、自身も負けた要因だったとされる。
「…それにしても、妖鬼キンキには物理耐性持ちですよね?普通通らないんじゃ…?」
「まぁ、俺は【物理貫通】持ってるから。テトラカーンに関しても【万能属性】でぶん投げてたし」
「ぶん投げで万能?」
| 九頭:双竜顎 | 敵単体に対して万能相性ダメージ(魔都東京200Xの真空投げ同等) |
|---|
テトラカーン、マカラカーンは万能属性を防ぐことが出来ない。
其れを知り、友奈は成る程と納得した。
(……まぁ連中は、他のタネについて流石に鳩に豆鉄砲状態だっただろうがな…)
他のタネ。
つまり、エネミーサーチで2つ【DEAD】のマークがついた事について。
悪魔召喚アプリを使うサマナーどころか、通常のCOMPを使うサマナーでも驚くであろう。
『ねぇねぇ。お前SSR当たったんだろ!なぁ…!!お前SSR当たったろ!!』
『マカロニウェスタン…ウェルダンで頼むぜ…!』
『それよりところてん食べない?今なら酢ガラシも付けちゃうよ?』
かたやハイライト薄め、オレンジ色のヘアーにシュシュと謎の挙動の行うアホ毛を持つ二頭身。
かたや丸いフォルムに棘状の突起物に手足の生えた可愛さの欠片もないゆるキャラ。
かたや全身がプルプルと青みがかったゼリーが雑に人型を造形している風なナマモノ。
それ等と共に。
『ヘイお待ちっ!』
『『『ギャァァァ!!!』』』
黄色のアフロヘアが目立つ長身の男がラーメン三杯此れ等の頭へと叩き込む。
余りにも熱かったせいでのたうち回るのであった。
「……ふっふふ…アッハハハハ♪」
最初は驚いた。
昔観たコメディ映画のゴーストみたいな愉快さとアホらしさが其処にあったからだ。
因みに、乱闘騒ぎはルール違反らしいので血みどろな状況にはならないと宮本から念押しされ、当初のおっかなびっくりな事も今は感じなくなり、むしろケラケラと笑うようになった。
\カカカッ!!/
〔堕天使:アンドラス〕
『お嬢がケラケラと笑うのは良い証拠だな』
「……まぁそうでありたい」
まだまだ色々とあるだろう。
そう思いながら、宮本は今日という夜を過ごしていく。
関東圏内 某所マンション
リクルートスーツに身を包んだ女性が1人、ため息をつきながら階段を昇っていく。
辺りは既に暗く、午後9時半と針が指し、帰宅時間の中でも遅い方に当たる時刻に差し掛かっていた。
「……はぁ。疲れたなぁ…」
彼女はコンサルティング業務を請け負う会社の社員であり、初めて任された新装開店のスーパーマーケットを宣伝していく事となった。
地域一帯の客層や過去遡れる所までスーパーのチラシを見つけてはどのような商品を売買していたかを調査。
売れ筋になるだろう定番商品から他では売っていない珍しい商品を見つけては仕入れ担当と協議し、進めていく。
後はチラシとWEBに載せるだけ。
コンクリート製の階段を昇りながら自身の住む階に到着する。
「……あれ?」
おかしい。
そう思って踊り場から前後左右に周りを見回してみる。
チカチカと点滅する廊下の照明。
所々で蜘蛛の巣が大きく広がって作り。
部屋の灯りなどが見える。
何時もの光景そのもので、変わったところなど無い。
しかし、先程の状態はまるで"自身の家で無い"みたいだった。
「……疲れてるのかな?」
ため息を大きく吐いて、歩いていく。
気の所為だと思いながら、
神室町から少し離れた新宿区内の一画。
壮厳精彩な空間の広がる大聖堂は様々な色合いの硝子を嵌め込んで創ったステンドガラスは"十字教"に於ける開祖の姿を模し、人々を見つめ続ける。
此処は【新宿言峰教会】
500人以上の人々を収容出来る大聖堂には匿名で罪を告白する懺悔室等がある。
「…Amen」
トゥニカと呼ばれる濃紺のワンピース型の衣服にウィンプルと呼ぶベールタイプや頭巾タイプの被り物を着け、ロザリオを首に掛けた修道士達が祈りの言葉を述べながら、洗礼を行う。
清貧潔白。
主を信じ、祈り、毎日の糧へ感謝する。
飽食の時代で失われた仁慈礼節の心が此処に在るかのようだと誰かは思いながら、祈るであろう。
そんな空間の中、宮本は椅子に座り、目を閉じては奏でられる音色を聴く。
大聖堂の主祭壇に鎮座する巨大なパイプオルガンから流れるのは
[フーガト短調BMV578]のバッハであろう。
厳粛な雰囲気と重なり合うことでみだりに邪な事をしようと考える者は少ないと思われる。
オルガンは3つ並ぶ鍵盤と足鍵盤から多くの音色を奏でる事が出来る。
或る者はこれを【呼吸をしない怪物】と呼んだとか。
演奏は続けられる。
一人の女性が淡々と細い指で
白銀に近い色合いの髪はウェーブがかったセミロング。
線の細い身体つきからは、少々痩せぎす過ぎると何時も感じている。
演奏が終わった。
拍手が鳴り響き、演奏者の女性が椅子から立ち上がり、ぺこりと頭を下げる。
その動作1つでも清廉さを感じさせ、修道士達の見本と思われるだろう。
宮本は女性と目が合う。
宮本が手を振り、彼女は小さくため息を吐き、目線をそのまま大聖堂の横にある修道院の通路へ向けた。
「ごきげんよう。ドクター宮本」
「ごきげんよう。シスター〔カレン〕」
大聖堂から離れ、2人がいるのは修道院の中庭。
毎日の手入れがなされている花壇の隣に置かれているベンチに座る。
〔カレン〕
そう呼ばれた
「いつもながらにしていい演奏だったと思う。まぁ其処まで詳しくはないけれど」
「ふふっん。ドクターの褒め言葉程度ではなんの足しにもなりませんが、素直に受け取っておきましょう」
口ではこう述べるも、その仕草や朗らかに笑う所を見る辺り、満更でもない様子。
これには宮本も笑顔を見せるのだった。
「調子はどうだい?身体の痛みとか霊障の感覚とかで気持ち悪くなったりする?」
「いいえ。ドクターの献身的な治療のお陰で歩いていても息が上がったり、鈍痛で眠れぬ夜もありません」
「なら良かった。ちょっと手を借りますよ」
問診からカレンの手を取り、手首の皮膚下にある脈動を測るため、人差し指と中指の二本を置く。
そのまま目を閉じ、ゆっくりと呼吸を行い、血流や鼓動を通して測定を行う。
一秒…二秒…三秒と小さく吹く風の音のみが場を鳴らす中、静かに目を開ける。
「…うん、大丈夫だ。何時もの処方箋を持ってきたから朝夕食後に飲んで、ちょっとストレッチをしたり身体を動かせば健常者と変わらない生活スタイルになるよ」
「ありがとう御座います。ストレッチに関しては
「……──なんのことかな?」
「とぼけるのもお好きですねフッフッフ…」
目線を逸らす宮本の姿に感づいたのかカレンの手から赤い布が飛び出し、鍛え上げられた体躯をみるみる内に巻き上げ、拘束、逆さまに持ち上げられ、見事フィッシングされたのである。
「アギャッ!?」
「よよよ…。私は悲しいですわ…。「グッへへへ〜!治療費代わりにお前の身体を性的に食べてしまうわぁ〜〜!!」と言ってあれやこれや人に言えぬような仕打ちをしては罪深い行為をし続けたのに…」
「異議あり。事実無根で支離滅裂な証言であります!」
心にも無い事をさめざめと泣く真似をするカレンに宮本はそもそもそんな事は述べた記憶はないと反論。
「却下。被告人は極刑を処します」
「セイラム魔女裁判も顔負けな私刑やんけワレェ」
しかし超スピード処理の前では勝つのことは出来なかった。
というよりも内容の割には妙なノリの良さと吉本新喜劇めいた一コマの中で、何処からともなくツケ打ちの音が鳴る。
実際には鳴っていないが、2人の間で出来た脳内イメージが具現化したと思って欲しい。
「さて。下手な芝居はこれくらいにしておきましょう」
「結構お尻の貞操とか怖かったんだけど?ヘル・レイザー顔負けなヤツ出そうで恐かったんですが!?」
「流石に尿道姦は趣味でないのでご安心を」
「じゃあ【マグダラの聖骸布】解いて?徐々に絞ってきてるけど?」
「それとこれは別です」
「そんなぁ〜」
悲しきかな。
みだらに手を出した
「……んっあっ…!?」
「うん?うわっお!?んぎゃっ!?」
聖骸布の拘束が緩み、頭頂部から地面へと落ちた。
如何に強い人間であろうとも、流石に全体重掛かった落下は痛いだろうし、そもそも石畳なので尚更痛い。
土の中に眠るカブトムシの幼虫の様に身体を丸め、頭を押さえて悶絶する宮本は何が起こったのか、カレンの方を何とか見ようと視線を合わせる。
「…っはぁ…ぁっ…くっ…」
神に総てを捧げる修道女は身体を縮こませるように身を悶えさせる。
肩と二の腕を両手で掴み、震える姿は寒気に襲われた様に感じられた。
「…っぐぅ…だ…大丈夫か…!?」
痛みを堪えながら宮本は立ち上がる。
カレンの吐息も短いテンポで繰り返されており、厄介な状態になっていることを証明している。
目で身体の幾つかの箇所を視認し、調べていくと彼女を蝕む原因が理解できた。
「…"霊障"か…!?」
所々で修道服に滲ませる赤い鮮血と、震えの原因がそうだと判断する。
直ぐに処置をしなければならない。
持ってきていた鞄を手に取り、カレンを抱き上げる。
────軽い。
前の彼女の状態を知っていた故に油断していた。
完治という物はなく、健常者であった頃はもう戻って来ない事を思い出すべきだと医者になってからずっと身に沁みていた筈なのに。
自身の馬鹿さ加減に苛立ちを募らせ、足早に向かうのは修道院の最上階。
カレンが寝起きするのみに与えられた部屋へと走らせる。
階段を音を立てて昇り、最奥の部屋のドアを開く。
直ぐに閉め、簡素なベッドと衣装箪笥のみの部屋が痛々しさを更に感じ取られるが、今はそれどころではない。
「…っぐっ…はぁ…はぁ…ふぅっ…」
カレンを寝かせる。
身体中。苦痛による冷や汗で濡れており、直ぐに鞄から吸水ガーゼを手に取り、静かに触れて吸い取っていく。
「…ごめん。破くよ」
このままでは埒が明かない。
手に取った衣服を除去用のハサミを取り出し、修道服の裾から一気に切り裂いていく。
簡素な作り故に直ぐ切り開いていくと彼女の身体が露わになっていく。
「…………」
所々に巻かれ、赤く湿った包帯。
霊障によって生傷が絶えず、右眼の視力も殆ど機能していなかった事を改めて思い出させる。
今出来ることは1つしか無い。
奥歯を軋ませ、苦しげに吐く息を続ける少女に酷な事をせざる得ない大馬鹿者と罵りたくなる中。
「…ドクター…良いん…です…から…」
カレンの手が頬に置かれる。
痛みを堪えて震えながらも、彼女は1人の信仰者として宮本へと語りかける。
「貴方は…良い人……です…」
「…な訳無い」
これからすることを考えたならば尚更と嫌悪を覚える。
其れでも、せめてどうにかなるならば。
「………今から犯す」
「ハイ」
「もう戻らないぞ」
「ハイ」
せめて親愛であってほしかった。
何も出来ない少女のあられもない裸体を晒す姿を見続けながら、服を脱ぎ、男がベッドの上へと乗り、彼女の身体へと手を伸ばした。
「……貴方はけだものって名前のフレンズですね」
「酷いっ!?」
シーツに包まり、顔を隠したまま行為後最初の一言を放つ。
「女誑かし、節操なし、ヤリチン、性豪絶倫お猿さん」
「返す言葉もありません」
ベッドの惨状を見たならばその言葉も間違いないと認めるしか無かった。
「まぁ…これで当分はオカズに困りませんし…(ボソボソ)」
「ん?んんっ?」
「せいっ…!」
聞こうとした瞬間、顔面を掴まれ、斜め75度程捻じ曲げられた。
とても人体から発せられたら不味い音を鳴らす。
「……………(チーン)」
(もうお嫁に…いえ、そもそも行けませんか…。貰ってくれるならば別ですけど)
倒れた宮本を流し目に、いつか来るかもしれない未来に想い馳せつつ、いそいそと替えの服を着替え始めるのだった。
「……ドクター」
「………へい」
修道服の袖を通し終え、1つ咳払いをした後に宮本へと声をかけると直ぐに正座を始める。
やはり高レベルの超人故に並大抵の頑強さではない。
「1つ依頼を」
「何なりと」
「……実はウチの教会で懇意にしているデザイン会社のデザイナーが行方不明になっていまして。そちらの調査をお願いします」
「デザイナー?」
「ええ。クリスマス会や行事、冠婚葬祭等も手広くこなしておりまして、ウチではポスターやチラシのデザインをしてもらっています」
「成る程」
言峰教会では割りとミサや十字教的なイベントを主催する開放的な教会である為、外部の会社との交流も多い。
特に近所との交流の為に神室町の子ども食堂や炊き出し、トー横キッズ等の未成年者との相談窓口もしている。
この事から、外部の企業も地元を利用し、目の行き届く範囲で交流を行っている。
「そのデザイナーの名前は?」
「〔山田真耶〕。社会人としてシスター達の相談も受けてくれていた女性です」
「山田さんかぁ…。了解」
依頼内容を服を着ながら聞き、了解を行う。
「こちらが居なくなった女性の写真と入社時の履歴書。後住んでいたマンションの住所と部屋番号です」
「あ……(履歴書どうやって手に入れたんだろう…)」
いつもの裏ルートか。
そう考えつつ、カレンから情報を受け取った。
「後、もう一つ」
「うん?」
宮本の目の前へ人差し指一本を立てて突き出し、ため息をつきなが答える。
「此方側で1人派遣した代行者の救出をお願いします。名前は〔ライナー・ブラウン〕。彼は
「代行者も居るのか…」
代行者。
その名を聞き、宮本は眉間に手をやる。
神罰の代理執行人、そう呼ばれる異端審問官達であり、数多くの魔を滅ぼし、時には身勝手な思想の元に人間にも執行する十字教の過激戦闘集団といった所。
少々面倒くさい。
そんな顔になる宮本へ、カレンが仕方が無しと呆れたとおもいつつ口を開く。
「………〔ラビアン〕をお使い下さい。丁度将来に向けた異界潜りを終えましたので」
「ラビアンって、あのおっぱいとケツの大きい可愛いクレリックの娘さん?」
「ええそうです【ガシッ!ギリィギリィ〜!!】」
「アダダダダ!!?」
いつの間にか取り出したとされる巨大ペンチにて万力のごとく宮本の頭に挟み、絞り上げた。
ちょっと鼻の下が伸びていたのが癇に障ったのだろう。
「どうせ痩せぎすで気持ち良くないですよね?」
「んなこと思ったこと一度としてアガガガァ!!?」
流石にこれは痛いらしく、甘んじて受けるにも両手でおさえては軽減しようと抵抗するのだった。
尚、何処で買ったのか知る由もないものの、今後折檻用として採用に至ったらしい。
某マンション
「此処が失踪多発している団地か」
陽が沈む時刻、斜めに日差しが1人の女性が立つ場所まで木の陰を長く伸ばす。
長い髪が風でゆらりとはためくのを押さえ、彼女は古びた共同棟の1つを見ては視線を横へずらす。
夢の残骸と称されるニュータウンであったこの建物も、かつては多くの人々で賑わい、多くの商店や施設で埋め尽くされていた。
しかし、少子高齢化によって学校は統合を繰り返し、遠くの学校へと向かう以上、去るものも多く、残った人々は年金のみの生活となって維持費を払うしか出来なくなっている。
このまま風化し、消え去っていくような無情さと体験した事が無いはずの奇妙なノスタルジーを感じたのだった。
「……良し。先ずは聞き込みだな」
歩を進ませ、まず向かうのは失踪者の隣近所の部屋。
過去に団地ぐるみでのオリエンテーリングや宴会等を行っていた記録があり、まだ少なくとも繋がりや連絡などを持っているかも知れない。
彼女はそう考え、所々塗装に亀裂の入った壁を見ながら階段を昇っていく。
to be continued