真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜 作:葉隠小太郎
団地妻と聞くとちょっと黒い欲望が湧いて出てくるのは間違いないとぼかぁ思うんだよね。
都内某所
山田真耶が勤めているデザイン会社のオフィスにはイベント用の告知ポスターやスーパーマーケットの売り出しチラシ等の宣伝用の物もあれば。
「嘘っ…すっげぇ修正されてやがるっ…この店っ…!?」
宮本が驚く先、1人のグラフィックデザイナーがPCの前で撮ったらしい写真をマウスで加工する光景があった。
ちなみに神室町で最近出来たファッションヘルスの嬢らしく、元写真からかけにかけ離れた代物を見せられて唖然とするのだった。
「宮本さん…」
憐れんだ瞳で見る友奈。
正直、其れはしないほうが良いと思われる。
一方で。
「お願い!!先っちょだけでいいから!!君のその美貌を撮らないなんて世界の恥だよね!!?」
「あっ、あのっ…私はそのぉ…」
言峰教会から派遣されたクレリック〔ラビアン〕はカメラマンからの強い圧しにタジタジになっていた。
全身を覆うローブを着込んで居るものの、童顔に近いあどけない顔立ちは年下からはお姉さん、年上からは少女相応と見えるだろう。
なおかつ、その豊かな肢体はローブの上から浮き出るように曲線美を生み出している故、むしろ男の感性をくすぐる要因ともなってしまうのだった。
「あの…。そろそろ本題の方を…」
「あっ、ハイ。すみません」
案内人から一言物申され、茶番劇を終えては一行を隣の会議室へと連れて行く。
ラビアンの才能を惜しむカメラマンはシクシクとさめざめ泣いては仕事へ戻っていった。
「……山田さんは去年まで教員をしてたと聞いた事あるんですよね」
会議室のテーブルに、対面で座る山田真耶の上司はため息をついては語る。
「へぇ。教員免許持ってた訳ですか…」
「元々は
湯気の立つ湯呑の中に立つ茶柱を見つけ、何かありそうだと考えつつ、宮本は続けて話を聞く。
「最初の数年は恙無く教師として仕事出来てたみたいなんですよね。ただ勤めてた学校が…」
「此方にもある通り、【秀尽学園】ですね。
「ええ。彼女も言い寄られて困っていた折に辞めて、ウチの会社に入社したんです。私と大学で同窓でしたので即採用しました」
上司からの話で、彼女のこれまでの人生が少しずつ見えてくる。
秀尽学園高校と呼ばれる都内一等地で有名な蒼山一丁目にある進学校であり、優秀な教師陣で固められている。
しかし、元金メダリストという肩書と全国大会出場校という実績を持つコーチが陸上部の部員暴行やバレー部の行き過ぎた体罰指導等を行っていたとは知られず、生徒や別の若い女教員にセクハラを強要していた。
その後、セクハラをされていた女生徒の自殺未遂で罪を自白。
教員を辞職し、警察にも自首をしたとのこと。
「当時は色々とあったけど、立ち直ってウチの仕事に打ち込んでくれたのは助かったんだ。なんせ慢性的に人手不足なのがネックで…」
「じゃあ、彼女の行方不明は中々大変だと?」
「ええ。仕事を放り出して何処かへ、って訳じゃ無いと思うけれど…」
────中々大変そうだ。
少なくとも真面目であった彼女が何も言わずとは思えない。
1つ思い当たる節を考えながら、宮本は質問を続ける。
「彼女の住む部屋には?」
「ええ、無断欠勤なんてと思って私が行きましたが、留守みたいで…」
「何処か旅行とか行かれたりはする人でしたか?」
「いいえ。遠出をするにも電車で一本とか公園位だと聞いた事がありますが…」
「そうですかぁ…」
上司の答えに宮本は1つ確証を得る。
「ありがとう御座います。では山田真耶さんの自宅の方も調査します」
「分かりました。無事に山田が出社してくれるを願っています」
「では」
聞くことは無くなった。
依頼者であるデザイン会社上司からの聞き込みを終え、オフィスのスタッフに挨拶をしてから後にした。
「…山田真耶は外に出ていない」
車を走らせること一時間。
SUV内にて宮本は不動産会社から手に入れた間取り図を見つつ、考えを述べる。
「外に出てないって事は居留守を使ってたんですか?」
「いや、そもそも出れない…違う所に居るって考えが妥当だと思う」
「違う処?」
周りの景色が閑静な住宅街やマンションが建ち並ぶ様子に変わるのを眺める友奈が疑問に思う。
では中で監禁されていると考えたが。
「まぁ。調べてみれば分かると思う」
「ん〜…そうですか…」
まだ判断材料が少ない。
宮本が調査を続けるならばと考え、此処で疑問を投げかける事を止めた。
「んー。到着」
団地にある駐車場に停車。
サイドブレーキを上げ、ドアを開ける。
「此処があの女のハウスね」
「???」
「???」
「通じないボケ程悲しいのは無いよねホントに」
団地と聞いて思い浮かんだボケも双方まだ知る由もない事、故にダダ滑り。
最早金ダライを上から落とすしか場は盛り上がらないだろう。
「さて、気を取り直して管理人から鍵を借りに行こう」
「ですね」
「後、ラビアンちゃんと友奈ちゃんは後詰めでね。お願いします」
「???」
宮本が前に立つのは珍しくはないが、妙に強調することに友奈は疑問を持つが、そもそも直接の交渉役であるから珍しくはない。
そう結論づけて納得する。
実際はうら若き少女2人のアンバランスさが際立つ姿を見続けるのは少々酷な事と、ポジションの問題もあったり故の苦肉の策だったりする。
その後直ぐに年配の管理人付き添いの元、鍵を開けてもらい、山田真耶の部屋の中へと入る。
中は8畳ほどのワンルーム。
ベッドとテレビの置かれた部屋に簡易的なキッチン、トイレと一緒になったバスルームという一人暮らし目的だと見て分かる空間が広がっている。
「………やはり誰も居ませんね」
「居ないことは想定済みだったが…」
────こうも居た様子が見られないとは。
視線を動かし、部屋の要所要所を見ていく。
「…確かに。旅行する様子は見当たらないな」
「どうしてですか?」
「………部屋干ししたままの下着とか火曜日捨てるゴミ袋が纏まってないとか。後は…」
通路に置かれた冷蔵庫を開ける。
「やっぱり」
中から手に取ったのは透明なプラ蓋のパッケージされた刺身の盛り合わせ。
表示された消費期限は三日前、つまり。
「
「あっ…」
宮本の推測に友奈が気づく。
山田真耶は何処かへ出る意志は全く無かった。
ただ、此処で浮上してくるのは。
「問題は何処へ消えたか?だな」
部屋の中央に位置する座敷用テーブルの上を見てはしゃがみ、封筒の束を手に取る。
国民年金基金の催促状、何かの定期購読チラシ、教職員組合の失業保険。
その他etcな書類の中から1つ奇妙な黒い便箋の手紙を見つける。
「………さて行こうか」
「えっ?宮本さん?ちょっ…!?」
何かに気が付いたか、直ぐに立ち上がり、外へと出る。
「何か見つかりましたか?」
「ええっ、手がかりになりそうかな?位には」
「そうですか」
外の通路で待っていた管理人から問われるも曖昧な返事をしつつ。
「あっ、ちょっと気になることがあるんですが?」
踵を返して人差し指を管理人の眼前に突き出す。
「な…何か?」
「他の部屋を見せてもらう事って出来ますか?勿論空いている部屋ですよ?」
「他の部屋も?あんたら警察じゃないよね?だったら駄目でしょ?」
「そうですかぁ〜…まぁしゃあないですね。すいません」
流石に見ることは難しく、管理人から突っぱねられ、宮本は謝罪をしつつ、素直に引き下がる。
「ではこれにて失礼。2人共行きますよ〜」
「えっ?ええっ!?ちょっと宮本さん!?」
「……失礼しました」
一言挨拶した後にそさくさと踵を返して去る宮本を友奈は慌てて走って追いかける。
ラビアンは直ぐ頭を下げてから後を追った。
「………何なんだ?一体」
1人残された管理人は怪訝そうな顔をしながら、鍵を閉めてその場を去っていく。
「さて侵入しよう」
「えぇぇ…」
「ですね。とシスターカレンならばそうおっしゃいます」
「ええええっ…!?」
車内に戻り、先程とは打って変わった発言に友奈は驚く。
大型のSUVを走らせ、別の団地駐車場へと停車。
降りてから直ぐに後部トランクを開け始める。
「
「そうですね。変なギミックは要りませんので頑強さを優先でお願いします」
「了解」
収納されているケース内には様々な金属を重ね合わせた弓と様々なギミックアローが入っており、如何にも荒事向けと考えられる物をラビアンが装備していく。
対して、宮本も用意したとされるケースから12ゲージシェルを並べたホルダーベルトを付け、
「そう言えばあの2つ穴の散弾銃は使わないんですか?」
「ブルパップは俺には合わなかった」
「成る程。確かに装填は面倒だと思いますね。割りと」
「16発入れるのと装填し易いのだと後者選んじゃうのよホント」
宮本は入手した例の散弾銃(DP-12)を思い出すも、失敗の連続で止めた経緯がある。
一時期コレいいなと思って手に入れたらわりかし操作が難儀したり、違う機構のせいで弾詰まりや一部の部品が壊れたりなど、まぁまぁ苦い思い出故に倉庫で肥やしとなる未来がありそうだと思われる。
「あっ…あのぉ…!?」
「ん?どうしたのかな友奈ちゃん」
「あっ、いや、またあの部屋に?行くんですか?」
「いや、行くのは…」
宮本は金属プレートが縫い付けられたグローブを嵌めつつ、友奈に見えるように指を差した。
「上の階だ」
侵入。
所謂ならば家屋や閉ざされた部屋などが該当する言葉だが、今回は山田真耶の住む部屋の上の階に入るのに用いる。
「………良し開いた」
細い金属の棒でドアの隙間から鍵を開ける。
これを世間ではサムターン回しという解錠方法だ。
無論、犯罪になるので詳細は伏せておく。
「犯罪ですよねコレ」
「友奈さん。主は犯罪者の巣窟であるならば致し方なしとお赦しになりますよ」
「いやいや、普通考えて家宅侵入…えっ?犯罪者?」
「お気付きになられませんでしたか?」
祈りすれば良いのか?と十字教の神がどんな存在かを思った矢先、ラビアンのとんでもない言葉に驚くこととなる。
「あの管理人さん。明らかに普通の人とは掛け離れています。袖の下には大きな入れ墨ありましたし、所持していた肩掛け鞄に大型の刃物と
「へっ?へっ…んぐっ!?」
「シィー…あの管理人怪しんでたから静かに」
いつの間に見ていたのか?
とラビアンの観察眼に驚きの声が上がるが、宮本に制止された。
「隠れずに首をギュッとすれば良かったのでは?」
「いやいや。定時連絡とかありそうだし、下手すると他の部屋じゃあソドムとゴモラ状態かも知れないので…」
「……やはり此処は」
「うん。
宮本がため息をこぼしつつ答える。
知ってか知らずか、恐らく知らなかったであろう山田真耶氏は自分が住んでいるマンションが裏業界における見つかれば即逮捕案件な施設だったのだ。
何せ、民事不介入は警察の原則であり、逮捕令状を取らねば家宅捜索は出来ず、仮に取った後でも、既にがらんどうの室内が広がる事だろう。
そんな施設の使用用途は賭博、売春、薬物、違法物売買と数多くの犯罪行為。
半グレ、もしくは組等のグループが所有している事が多い。
「さて、俺先行、2人は待機」
「了解です」
「はい…了解」
説明の合間にドア付近に設置されている可能性があるワイヤートラップや赤外線センサーを調べ、安全を確保する。
ドアを開けるのをラビアンに任せ、宮本は銃口を室内へと向けながら音を立てぬように侵入していく。
内装は先程の部屋と変わらないワンルーム。
通路上のキッチンとトイレ付き風呂場、そして寝室兼居間である部屋が広がるのみ。
ゆっくりと人の気配を探りながら風呂場のドアを開き、中を見て安全を確保。
居間へと向かい、横に立て付けられたクローゼットの内部も確認。
「……
安全確保が出来た。
「……何も無い部屋ですね。ベッド1つのみ…」
「典型的なヤリ部屋だな。必要最低限でベッド下に道具とか置いてある」
「成る程…生めよ育てよ地に満ちよではありますが、快楽目的の姦通は宜しくはありません」
「………あっ、うん」
気まずさが場を埋め尽くす。
まるで自分に問われているかのような思いになりながらも、何も見つからなった部屋を後にする為、踵を返す。
「もう終わりですか?」
「ああ、手間の割には収穫無し。帰って別の方法を立ててみるしかないな…って」
「???」
宮本はしまったと顔を押さえる。
それがどういうことなのか、友奈は謎に思っていると。
「ドクター。良い報告と悪い報告の2つがありますが?」
ラビアンが気が付き、宮本へと目を向ける。
「………良い報告を先に」
「では」
恐らく何方にしても不味い方向に舵切りしているのだろう。
そう考え、せめては良い方を選んだ。
「山田真耶さんの失踪方法が分かりました」
「悪い報告は?」
「それが今起こったことですね」
「デスヨネ」
「??……えっ!?」
確認という意味で宮本は部屋の外へと足を進め、ドアを開くと。
「………こんな事ってあるかよ」
【裁判所】
と記された石標の後ろには、巨大な施設が立っていた。
「……初めて見る"パレス"だな畜生」
毒づきながら、宮本は足を踏み入れる。
石段の先に居ると思われる
マンション 管理人室
「…ええ。ちょっと妙な連中でしてね?優男に見えるけど猛禽みたいな切れ目で長身な奴に似つかわしくない女の子と滅茶苦茶プロポーションの良い女の3人組です」
管理人室内にある卓上電話越しに管理人が語り続ける。
通話相手の言葉を聴き、簡易メモにペンを走らせていく。
「……本家が?珍しいですね。最近シノギがやり辛いって聞いたものですから…へぇぇ〜。そうですか。分かりました…ではまた出迎えの時刻に」
受話器を置き、電話を切る。
柔和な顔つきだった管理人は如何にも"シノギ"の為に人を殺してきた表情をしている。
〔柳龍光〕
其れが管理人をしている男の名前であり、今はとある指定暴力団から雇われている空道使い。
近くにある草刈り鎌を手にすれば琉球空手で利用される鎌術を繰り出し、掃除モップもまた棍術に早変わりする。
そんな武具使いも、少しばかり背筋に冷たい感覚を覚える。
優男と思われる宮本だが、その視線は何時でも射殺すハンター其の物。
もしも男に襲いかかろうとすれば、反撃の機会を与えずに三撃加えられ、昏倒されたに違いない。
他2人、友奈やラビアンを使えばとも考えたが、その前に腕や足をへし折られて倒される可能性も示唆し、手を出すことを止めた。
「あの男。何処かで見た顔だな」
柳の目に映るのは宮本の見覚えある顔つき。
細身ながら筋肉質の身体はしなやかさと強靭さを兼ね揃えた自身の肉体と同じカテゴリーに入る。
但し違うのは、その役割がスプリングや油圧ジャッキ等とイメージしたほうが早い。
宮本の肉体は如何なる場所であろうとも
「………やはり増援を頼むべきか」
数十秒一考した後に再び受話器を手に取ってダイヤルを押していく。
耳からはコール音が3回鳴り響くと受話器を取る音が鳴り、相手から声が発せられる。
「どうもどうも、日頃からお世話になっています。【八部連合阿修羅会】の柳ですぅ〜」
相手に自分の身分を伝える。
「あ〜、はいはい。そうです。ウチの方で少々トラブルがありましてね?お宅の方で人員をお貸し願いたいのです…。ええ、支払いは私持ちで…はい、分かりました。お待ちしております」
相手が電話を切り、柳も受話器を置く。
「………さて、幾ら何でも"主席"所属の精鋭には勝てんだろう」
男は呟きながら、これから起こることを想像し、その時を待つ。
to be continued