真・女神転生〜ジャッジメントデビルサマナー〜 作:葉隠小太郎
それは、イエス・キリストを信じる信仰による神の義であって、すべて信じる人に与えられるものである。そこにはなんらの差別もない。すなわち、すべての人は罪を犯したため、神の栄光を受けられなくなった
ローマ人への手紙 3章22節 23節より
引き金を引く。
銃口から散弾が飛び出し、その猛攻がシャドウを消し飛ばす。
宮本の持つ
繰り返す事3度。
空を跳ね、シャドウ達の攻撃を難なく避けてから発砲。
散弾の雨あられを真っ向から受け、爆ぜ消え、漸くパレスの主へ辿り着く。
「…地獄に墜ちろベイビー」
引き金を引き、散弾が飛び散り、主たる〔織斑一夏〕へと当たり、後ろへと押し飛ばされた。
「…ガッ…!?」
散弾の大部分が直撃すればそのノックバックは凄まじく、青年は飛ばされながらも、受け身を取り、立ち上がる。
「……銃刀法違反…だな」
「生憎ウチの業界じゃあ珍しくもない」
「とんでもなく恐ろしい業界だ」
裏社会に足を踏み入れる事は生死のラインをタップダンスするようなもの。
銃口を眼前に突きつけられながらも軽口を吐く織斑の姿を見て、何か良からぬことを企んでいると踏み。
「生憎此処で死んでおいてくれ」
引き金に指をかけようとした時。
「…!?」
背筋に冷たい感覚を帯び、身体を半回転ステップを踏み込み、後方へ向けた。
「……誤算だったな…ファック…!」
銃口と視線の先に立つ女性の姿を確認し、ギリッと音を立てて歯噛みする。
「…ごめんなさい。
「想定外…ってわけじゃ無かったが…」
翠玉色のショートカット。
アンダーリムフレームから覗かせるエメラルドグリーンの瞳。
地味な見た目とのギャップを感じさせる豊かに実った肢体。
男を狂わせるとは彼女を指すと言っても過言ではない。
そう宮本は評価する目の前の人物に問い掛ける。
「〔山田真耶〕さん。君が【パレス】の主か?」
「ええ。
彼女はハッキリと答える。
別段隠し立てするつもりは無かったであろうが、此処まであっさりと答えられると更に警戒を強く持ってしまう。
其れでも、全てを知るために宮本は問いかけ続ける。
「…どうして君が主であるのに"裁かれている"?普通なら判事か弁護士…もしくは裁判長を務めるのが
宮本の疑問はこのパレスの主であれば通常、体制側にいる筈という至極真っ当な考え。
山田真耶は主であるも、まるで裁かれては断頭台へ連れて行かれる姿を晒していた故に不可思議に思えた。
しかし、その疑問に答えるように、真耶はクスリと笑みを浮かべ、答える。
「当たり前ですよ?
「……何だって?」
まったく持って理解出来ない。
パレスの主が死ねばどうなるのか頭で反芻させ、ふと気が付く。
「………"死刑"をしてどうするつもりだ?」
「あら?気になります?ではイケメンな"オジサマ"にお応えしてあげます」
笑みを崩さず、むしろ気が付いたことで嬉しさを表現するように口端が大きく吊り上がった。
そんな悪巧みを披露することに歓びを覚えた子供の如く、真耶は答える。
「…だって
『メーデー!メーデー!!攻撃を受けている!誰か応援部隊を!?』
『何でだ!?銃が効かない!!?』
『助け…ギァァァア!!?』
噛み砕かれ、切り刻まれ、圧し折られる。
\カカカッ!!/
〔電気椅子のサウスウィック Lv41〕
\カカカッ!!/
〔試し御用のアザエモン Lv38〕
\カカカッ!!/
〔執行のムッシュ・ド・パリ Lv40〕
電気椅子を持った執行人が【マハジオ】を唱え、複数人の隊員を感電させ、瀕死に追わせる。
試し御用が日本刀を振るい、左肩から右脇腹迄を袈裟斬り、絶命させる。
幾つもの断頭台へ連れて行かれれば、黒く変色した錆だらけの斧で何度も頚椎を叩きつけるように切断される。
見るも無惨な処刑場が広がる中、隊唯一の女性は銃を投げ捨て、その場から逃げていた。
『…嘘…嘘嘘嘘嘘嘘!!何で!?どうして!!?』
あり得ない。
その思考が脳内を支配する。
彼女達は厳しく、様々な訓練を行ってきた。
常に新しい装備を手にし、其れを巧みに扱ってきた。
処刑人は此方側であり、たとえ悪魔と言えども薙ぎ払ってきた経験はある。
だが、その自信も無様に砕け散った。
訳の分からない存在は皆【物理耐性】を有していた。
属性弾へと切り替えて撃つものの、抵抗虚しく前衛がことごとく殺され、嬲り者へと変わる。
屈強を誇った自らも、涙を浮かべて逃げるしか出来なかった。
『はぁっ…はぁっ…はぁっ…』
故に気が付かなかった。
【シバブー*2】
『イギィッ…!?』
\カカカッ!!/
〔絞首軍曹 ウッズLv22〕
突然身動きが取れなくなり、苦悶の表情でその場に立ち尽くす。
つま先立ちで、首元に何かが巻き付き、圧迫されている。
それは俗に言う、荒縄による首絞めであり、女の首が圧迫され、呼吸もままならない中、両手を入れて出来る限り呼気を得ようと藻掻く。
しかし、辛うじてつま先立ちで立てていた状態の中、上へと無理矢理持ち上げられ、其れが釣り上げられたアンコウの様に為す術の無い姿を晒すこととなった。
「ガァっ…ご…ヒュ……」
視界の毛細血管が鬱血し始め、赤く染まりかけていく。
顔の表情も青ざめていき、脳へのダメージが始まろうとした中。
「アァァアア゛ア゛ア゛ア゛!!!」【鬼神楽*3】
一発の拳がシャドウの頭蓋を砕き爆ぜる。
首を絞める者が居なくなり、そのまま地面へと倒れ込んだ。
「がぁはっ…コヒュゥ…コヒュゥ…」
「大丈夫ですか!!しっかりして下さい!!」
女は年端の行かない少女から生死確認の言葉を聞く。
朧気ながら視界に映るのは、紛れもなく連絡のあった〔宮本真之介〕の同行者の姿。
────何故?
先ず最初に感じたのは疑問であった。
両脇に腕が通され、引き摺られながら血の回りにくい脳内で考えていくものの、それ以上の答えは得られない。
場合によっては殺すことも辞さないつもりであった。
宮本の行った行為はそれこそ
疑問を解消出来ぬまま、引き摺られた先は調停を行うであろう会議室。
ドアが開かれ、中へと入ると同じ様に負傷した部隊員達が数名寝かされていた。
「…
「【傷薬*4】飲んで下さい」
「ぐえっ…」
問われる前に一本の栄養ドリンク瓶の中身を飲ませられる。
描いてあるハゲチャピンの壮年男性イラストと今にも聴こえてきそうな中毒性の高い曲が脳内を駆け巡る。
「確かにサトミタダシのおくすりは効きますね。意外とリーズナブルですし…」
(いきなり何を飲まされたんだ…)
「あっ、BINDもあるから【ディスパライズ*5】も使いましょう」
「ぐぇぇぇ…」
緊急性が高い故に無理矢理飲まされた。
正直に言えば、あまり美味なる物では無く、微妙な甘ったるさと調合された薬効成分で思わず身震いする味わいを創り出している。
散々な目に遭いながらも、女はある程度体力も回復し、即座に動く事はせずに、大人しく寝そべる事を選ぶ。
(…最早作戦行動も取れんな…)
首を動かせる範囲の中で視界に映るのは、四肢が無事であるのは自分のみ。
少女が喪失した腕や足の欠損部に紐状に千切った布でキツく縛り、出血を抑える。
場合によっては先程の傷薬を飲まされ、消毒用エタノールで患部を拭ったりするなど、少なからず適切な治療行為が施されていく。
(齧った程度では無さそうだな)
初めての行為であろうたどたどしい手付きであるが理に適った治療で隊員達も疲れ果てて眠る者も居る。
「……ふぅ…一応止血は出来た…」
喪った部分から止めどなく出血していた患部も止血パットらしき素材で覆われ、保護がされている。
生の足で歩く事は難しい可能性はあれど、一刻も争う命の危険が無くなったことは間違いない。
少なくとも少女の賢明な治療で、これ以上の犠牲者は無くなったと見た。
『……良い腕だな』
「…ふぇっ!?」
『ふっ…通じないか…』
通じるはずもない。
方や日系人で女の方はアイルランド人。
訛の強い英語で問われるが、まったく何が何なのかを理解することは難しく、半ば諦める。
『……早く行け。見なかった事にしてやる』
「…?えっと…(何を言ってるのか全然分からない…)」
少女から目線を離し、何も見ない様に顔を覆う。
ある程度ジェスチャーを交えさえすれば伝わるかもと苦し紛れにしてみる。
其れを理解したのか、少女はバックパックからある物を置き、立ち上がっては部屋の扉へ歩き。
「………あ…グ…goodluck!」
どう伝えれば良いのか考えた後に女へと向かいながら言い放ち、部屋から出ていった。
『………ふっ、この状況で
唯一知っているポジティブな言葉を選んだだけであるものの、今の状態ではブリティッシュジョークと然程変わらない代物と捉えられる。
女は忌々しい表情でため息を付く中、指先に硬い感触を覚え、其れを見る。
『………どうやらジョークじゃなかったみたいだな』
置かれていたのは悪魔を倒した際に落とす【魔石】と呼ばれる物体。
使うと何故か体力や傷などを治癒する能力があり、サマナーを含めた業界人は頻繁に利用する。
女は笑う。
本当の意味で見逃さねばならない事を。
なけなしの消耗品をわざわざ使った事を。
『……では。生き足掻くとしましょうか…』
奇しくも少女の願いに応える様に、女は立ち上がり、吐いた息を思いっきり吸う。
絶望に飲まれたまま死ぬよりも必死に生きる事を選んで戦う方を選び、残された仲間と共に地獄から脱する為に。
考えを纏めてみながら、何時でも戦えるように準備をする。
まず1つ。
彼女、山田真耶がパレスの主なのか?
答え。
半分正解で半分不正解。
その理由は、彼女の身辺調査と残されていた遺留品から推測される性格から。
山田真耶は所謂几帳面で天然な部分が垣間見えるおっちょこちょいな人間性。
眼の前に映るのは外見こそそのままであるが、時折見せる立ち姿や手の位置等を見ると、派手さや大胆な部分を見せがちなオープンセクシャルスタイルと想像させる。
ここが、半分不正解の答え。
そう、あの山田真耶は、心理学的に言えば二面性の裏側。
言わば、
次に2つ。
では織斑一夏は一体何なのか?
これについて答えは不明瞭。
想定するにも判断材料が少なすぎて何とも言いようがない。
パレスによって産み出された認知存在とも異なる様子が見られ、実在する人物と想定しておく。
最後に3つ。
「……最後に聞かせてくれるか?色々と知りたいわけだからさ?」
「………良いですよ♪隅々まで知り尽くしてあげます♡」
彼女に質問するのは不味かったかも知れない。
妙な匂いと感覚を狂わせんとする雰囲気が漂い始めていた。
だが其れでも、問うべきなのは彼女の方だと唯一の手段として考えた以上、河を渡るべきだ。
「じゃあ……
「……はいっ?」
投げかけた質問に彼女は人差し指を真っすぐ伸ばして顎に当て、首を傾げるポーズを取った。
まるでさも当たり前な事を述べられて拍子抜けしたみたいにも見えてくる。
流石にもう少し詳細に聞かないと駄目かも知れない。
「君がパレスの主であれば裁く側に立つべきで、裁かれる立場になるのはおかしいって思ったんだ。誰もが疑問に思う様な気がしたんだが…?」
「……ああ〜♪そうでしたか〜♡♡」
漸く伝わった。
少なくとも彼女自身にもそれなりに考えられた理由なのかも知れない。
山田真耶は目を閉じ、うんうんと頷きつつ問いへの答えを考えた後に口を開いた。
「…だって、
────成る程。
「罪に対する重しを外す快感はとても良い物でしょ?」
「まぁ、勝手に外されても困るけどな?」
悪党だったら尚更重しは一生付けてて欲しいものだ。
「でも、ちゃんと受付で傍聴券取ってない人達は闖入者扱いで半分以上殺してしまいましたがまぁ仕方がないでしょ?」
どうやら知らぬ場所でよく分からない勢力が入り込んだと思ったら虐殺されてるらしい。
哀れな追手には哀悼の意を示しておこう。
「では続きを」
ニンマリと笑い、人差し指を立てたまま前へと出し、問いの答えを続けて述べる。
「……教会の懺悔室って有りますよね?木製の部屋2つ分の中に匿名の告発者と司祭か修道士が入る所です」
「ああ。時々お勤めしてるシスターの娘にパパ活する事をお赦し下さいと懺悔したりしてる」
「度し難いですね♪」
そんな社会常識的発言されると困っちゃうな。
「まぁ、後々でそんなスケベな人には相応の罰を与えるとして…、気持ちよくなりますよね?罪を告発すると肩の荷が下りるとか背負ってたものが軽くなるとか?」
たしかに其れはあるな。
勝手に荷を下ろされても困るのは被害者側だけれど。
「其れってある種…"オナニー"と同じカテゴリーになるじゃないですか?罪を認めれば今までの
……これって同意しないと駄目かなぁ?と思う。
つまりこの裁判ごっこは、彼女がエクスタシーによがり狂う為の苦行と何ら変わらない事だと言う。
まぁ、仕事に於ける様々な行為もその苦行を乗り越える先に解消出来る行為をする事でストレス発散にもなるわけだが、此れは流石に「あ〜ハイハイ、分かりましたウンウン」で納得するには少々キツイな。
「つまり、登山して頂上に辿り着いた時の達成感的なヤツ?」
「ですね♪登山したこと無いですけど♡」
どの様にエクスタシーを感じるかとか、人それぞれ故に仕方がないが、彼女の場合は少々退廃的過ぎて不味そうだが。
「締め付けが激しいとか、戒律が強いとかその辺も中々素晴らしい背徳感得られるので病みつきになりますよ?」
多分分からない方が良い。
分かりみしてしまったら多分Mr.ピンヘッド出てきそうなのでご遠慮願いたい。
「意外とノーマルな性癖みたいですね」
「守備範囲は広いと思うけど、其処まで倒錯的な物は無い」
此処は断言しとこう。
半分思考を他所に置いといたが、間違いなく彼女が
そして、誠に遺憾ながら彼女を倒さなければならない事。
ちょっと位は"わからせ"しても良いよね?
「……分かってくれないのですね?」
「分かりたくもないな」
「そう…では…」
怒りであろうか。
自分の事を共感出来ない俺へ見つめるその視線には禍々しい感覚を覚える。
衣服が破れ、現れるのは黒いエナメル加工されたボンテージロングコート。
手には俺の趣味ではない棘付きウィップを振るい、床に火花が飛び散る。
当たったら引き裂かれそうだと少々ヒヤリとした。
「ふふっ…後悔しても遅いですよ?」
「残念だ。コッチも
「あれっ?」
彼女は気付いただろうが、もう遅い。
「さぁ、ショータイムだ悪戯野郎共!!」
撒いた種が芽吹くように、周りに喚び起こす。
4本ある管を抜き、封を開ける。
『パネェぜ…!パネトーネ!!』
\カカカッ!!/
〔堕天使:シェムハザ〕
『ラララ〜ライ!!ラララ〜ラブラドールレトリーバー!!』
\カカカッ!!/
〔堕天使:アザゼル〕
『今日はさぁ…ぬのハンカチが何と重版決定したって言うんだぜ?』
\カカカッ!!/
〔堕天使:シャムシエル〕
正直に言おう。
黄色いアフロと鼻毛を使うヤツとかオレンジ色の金平糖に手足と顔面の付いたヤツとか全身プルプルの酢醤油掛けるところてんめいたヤツとか何でイロモノめいた悪魔使ってるんだろ?
まぁ、スキルとか色々と使えるから何とも言い難いが。
『ってなわけで開幕【フォッグブレス*6】!!』
ところてんから異様な毒ガス吐き出すなんて食品衛生管理者が見たらムンクの【叫び】みたいな顔するだろう。
「…あらっ?」
「なっ…!?」
早速効いた。
であれば此方側が更に有利にする。
『すかさず、男の方から【真理の雷*7】だ!!』
鼻毛を通して強烈な電流が織斑一夏へと当たる。
シェムハザには自動スキルとして【魔術師の導き*8】と【疾風迅雷*9】を持っており、貫通と更なるダメージを与える事が可能。
プラス、【電撃プレロマ】が相乗効果として相手へ尋常ならざる攻撃力を与えるだろう。
『止めに【ディスタブ*10】じゃぁ!!』
波状攻撃の要である万能属性で止めの一撃を加える。
どんな物でも防げる訳もなく、このまま吹き飛んでしまえば良いと思うが。
「………無理か」
土埃が上がる中で見定める。
【Resist】
「あらっ?どうしたのかしら?」
どうやら電撃に耐性持っていたのか?
だが"左眼"で見た際には、
嫌な予感がした。
「まさか…」
「ふふっ♡私の肢体に"酔い痴れて"♡♡」【ファイナルヌード】
不味かった。
恐らく、【狂い咲き*11】も持っていたのかも知れない。
それに、精神相性かと思っていたんだが、
「………はい、裁判長。御命令を」
「ふふふっ♡」
残念なことに宮本の装備内には【
仲魔は全員魅了され、裁判長の配下となる中。
『…わぁ…やべぇぇ…』
ゆるキャラめいた三等身。
目には光がなく、ガチャで狂うギャンブラーな表情を持つオレンジ髪のナマモノ。
\カカカッ!!/
〔堕天使:アンドラス〕
召喚された4体目は部屋の端から一部始終を見ては、韋駄天の如く走り去っていくのだった。
to be continued