Original Phantom of the Opera 始まりはゲームから 作:木桜 春雨
彼女はどこに行った、だが一人で捜すのは限界がある、パリの街について詳しくないことを、このときほど悔やんだ事はない。
時間を無駄にはできないと思った。
まずは浮浪者の子に声をかけて金を渡すと、親子を捜すように頼んだ。
人探しをするなら浮浪者、大人ではない子供だ、家のない住処を転々とする子供はうってつけだ。
「セーヌ川の近くで見かけたよ」
子供はにやりと笑った、その笑顔は意味ありげで追加の金貨を見せ、続けろと促した。
その日の夕方、川の近くを歩いてみた、彼女の姿を探す為にただ、宿を出たのだとすれば地下にいる可能性がある。
人目を避けるにはいい場所だ、しかし、不安を感じてしまった、危険がないとは言い切れないからだ、父親がいるなら大丈夫だと思うのは杞憂だ。
女性連れなら襲われるだけでてはない、乱暴された挙げ句、人身売買で売り飛ばされるという可能性だってある、貴族は愛玩動物、ペットのように可愛がる為に外国人の女を飼うこともあるのだ。
いや、乱暴された挙げ句、金や女に飢えたごろつきなら口封じの為に。
考えたくはなかった、そんなことは。
彼女に初めて会ったときのことを思い出す、肩口までの癖のない髪、目や肌の色を体つきはフランス女のように肉感的な情欲を感じさせるものではなかった。
だが、子供のような未成熟ではない。
最初は私の顔、仮面をつけていることに驚いて不安というよりもいぶかしげな表情だった。
だが、自分は悪い人間ではないと説明して話を続けていると表情が少しずつ変わってきた。
普通なら信用などしないだろう、疑ってかかるのが当然だ。
だが、一定の距離を保ち、自分は旅回りの見せ物小屋で働いていると話してしまった。
普通なら、そんなことは話すべきではないのだが、このときは説明して、警戒心を抱かせては駄目だと思ったのだ。
今になって思うのだが、あのときは必死だった。
会話が進むと、彼女の表情が変わっていくことに気づいた。
仮面をつけている理由を当たり障りのない口調で私は説明すると、彼女の表情がわずかに曇った。
「人を見た目で判断したり、嫌悪するのは」
「ああ、だが、君も私の顔を見れば」
彼女は頷くと最初は驚くかもしれないと静かに言った。
「それは人として、いけない、恥ずかしいことよ」
彼女が私をじっと見る。
「あなたはフランスの人、青く見えるのだけど」
突然、そんなことを言われて、すぐにはわからなかった、目の色のことだと気づいた。
このときまで、いや、今まで目の色のことなど自分は気にかけた事がなかったことに気づいた。
今更だが、彼女に見られているということに視線に恥ずかしさを感じたくらいだ。
綺麗と言われ、返事に困ってしまい、言葉が出てこない。
日が暮れると捜すのも大変だ、それに動き回ることはせず、どこかでじっとしているのかもしれないと思った。
今日は、ここまでで最後にしようと、川の下水口に入ろうとしたときだった。
かすかな音と気配に振り返った、土手から降りてくる人間の姿を見つけたのだ、杖をついている、まさか。
私は思わず叫ぶように名前を呼んだ。
声に気づいた相手が顔を上げてこちらを見た、彼女だ、間違いない、だが、足どりがふらつくような、危ない、動かないでくれというつもりだった、ところが、彼女はの体はぐらりと揺れて、そのまま土手をから滑り、いや、転がり落ちた。
慌てて駆け寄り、助け起こそうとした。
怪我は、足は大丈夫かと思ったが、彼女の姿を間近で見た私はすぐには言葉が出てこなかった。
頭にストール、いや、布を巻いていたのだが、それがずれていたので頭が見えた。
髪が不揃いに切られ、だが、それだけではない、顔には青痣だけではない(火傷か、これは)
「ムッシュ、あなた、もしかしてエリックさん」
右頬がひどく腫れている、目が開いていない、もしかして見えていない。
私の姿を左目で見ようと顔を動かすと、ほっとしたように笑う。
「ああ、私だ、掴まって」
立ち上がろうとした彼女だが、私が腕をとろうとすると低い声を漏らした。
そのとき杖を持っていた腕に布が巻かれていることに気づいた。
「ラウル・シャニュイ、貴族の次男坊様」
男に名前を呼ばれて青年はすぐには返事ができなかった、恐怖を感じたからだ、ぞっとするほどの。
やっと続きをUPできました。