※この作品はR-18です。

淫魔王ハジメは世界最強   作:木崎楓

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封印の吸血姫

 そこから先、ハジメは苦戦した……というわけではなかった。

 というのも、次の階層に着いたら、すぐに地下拠点を作り、そこを中心に地下から探索を進めていったからだ。

 そのため基本的に魔物と遭遇することは無く、安全に進むことができていた。

 

 とはいえ、途中で厄介な階層もあった。

 例えば、タールのような液体が地面を覆うフロア。

 ここについては、地下拠点が作ることができず、真正面から、魔物と戦いながら攻略せざるを得なかった。

 

 他だと、毒ガスで満たされたフロア。

 地中であれば、ある程度は毒ガスの影響を避けることはできたが、完全とまでは行かず、急いで進む必要があった。

 

 そんな危険な場所もあったが、割と簡単に、ハジメは五十階層進むことが出来た。

 

 現在、五十階層の地下拠点。

 “錬成”の技術がかなり成長したこともあって、地下の岩石を、滑らかに加工することができるようになった。

 そのため、凸凹とした地面で眠る、ということはなくなっていた。

 

 それはそれとして、ハジメは無言で上を見ていた。

 この上に、妙な場所があるのだ。

 既に次の階層への道は見つけているが、その前に、最後にそこだけ確認しようと思ったのだ。

 

 無言で“錬成”を発動すると、ハジメは天井にあたる部分を変形させ、穴を開けた。

 その穴に向けて大きくジャンプして、地下通路から出る。

 

「さーて……一体何があるのやら」

 

 飛び出した目の前にあるのは、高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉と、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していた。

 

 明らかな人工物、何のために作られたかは分からない。

 だが確実に言えるのは、中に何かがあるということだけだ。

 

 鍵穴らしい鍵穴も無いし、扉に刻まれた魔法陣も、完全に未知のものとなっている。

 おそらくは、相当昔に作られたもので、今では知られていない特殊なものなのだろう。

 

 分からないので、とりあえずハジメは、扉に触れて“錬成”を発動しようとする。

 その時、

 

 バチィイ!

 

「うわっ!?」

 

 まるでハジメの魔力と反発するかのように放電が走り、ハジメの手を弾き飛ばした。

 直後に、さらなる異変が起きた。

 

――オォォオオオオオオ!!

 

 突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。

 その出処は、扉の両隣の巨人の彫刻。

 扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が、周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。

 

「やばっ“錬成”!」

 

 即座にハジメは逃げを選択し、足元に穴を開けると、事前に作っておいた地下通路へと落下、もとい避難するのであった。

 落下し着地すると、すぐに天井を閉じる。

 ズドォンと、かなり大きな音はしたが、こちらには大きな影響は無い。

 

「とりあえず逃げ切れた、か?」

 

 とりあえず逃げることはできたっぽいので、安堵するハジメ。

 そして、ここでハジメはあることに気が付いた。

 

「……よく考えれば、扉の向こうまで掘って、その後に外に出ればよかったな」

 

 ずっと、扉の先を見ようと考えていた。

 でも今のハジメの能力であれば、普通に扉を開けなくても、地面を“錬成”で掘って進み、扉の奥辺りの場所で、天井から外に出ればいいだけの話なんだから。

 扉の先に進むには、扉を開けなければいけない、そんなちょっとした固定観念に囚われた結果、楽な方法を忘れてしまっていた。

 

 その方法を思い付いたら、すぐに実行する。

 “錬成”で道を伸ばしていき、扉があったであろう場所から少し通り過ぎた先まで進む。

 そして、天井に穴を開ける。

 “気配感知”を使っても、魔物っぽい気配は無かったので、多分大丈夫だろうと信じ、天井に開けた穴から外へ出た。

 

「っと」

 

 とある鉱石を用いて作った簡易的なカンテラを持ち、軽く穴から飛び出す。

 

 灯りでともしてみると、そこは大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく並んでいる。

 そして何より、部屋の中央辺りに浮かぶ立方体の何か。

 そこに、一人の金髪の少女が埋め込まれていた。

 上半身から下と両手を立方体の中に埋められ、顔だけが出ている状態となっている。

 

「っ、だ、誰……?」

 

 突然出現したハジメに、少女は驚く。

 それもそうだ、こんな地面の下から出てきたのだから。

 

(女の子、しかもこんな小さい……小学生高学年……10 〜12歳くらいか? なんでそんな子がここに……)

 

 ハジメ視点、彼女は金髪の美少女、この環境でやつれていてもなお、可愛らしいと思っていた。

 見た目的に、おそらく小学生高学年から、ギリギリ中学生くらい、つまりパッと見の年齢は十歳台前半か。

 

「あの、お願い……助けて……!」

 

 助けてと、お願いされたものの。

 ハジメは、どうするべきか一瞬迷った。

 なんせこんな場所に隠されるようにして閉じ込められているのだ、危険な存在の可能性がある。

 

「……お前は、何でこんなことになってるんだ?」

 

 とりあえず、聞いてみる。

 変なことを言ってきたら、放置して先に進めばいい。

 

 そう思っていると、少女はポツリポツリと、話し始めた。

 

「私、先祖返りの吸血鬼で……すごい力持ってて……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 少女の話を、黙って聞き続けるハジメ。

 どうやら彼女は、今は存在しない吸血鬼族の王だったらしい。

 聞くところによると“自動再生”という固有魔法を扱えるらしく、それ故に、魔力が尽きない限りは不老不死なのだという。

 その能力を恐れられたのか、彼女はここに封印されたのだ。

 

「……たす、けて」

「……」

 

 切なそうな、辛そうな声。

 ハジメは少し俯くが、頷き、彼女を封じている立方体の方へと歩を進める。

 

「ちょっと待ってて。色々やってみる」

 

 そう言って、ハジメは少女を封じる立方体に触れる。

 かなり硬いっぽいのは分かるが、触感的には金属というよりかは、シリコンとかに近い気がする。

 

 そこに、魔力を流し込む、“錬成”して、変形させる。

 バチバチと、魔力が外部に漏れ出る。

 魔力への抵抗が高く、あまり浸透してくれない。

 というかそもそもこの感覚的に、普通の金属とかじゃない。

 

「クソっ、面倒な……!」

 

 流し込む魔力量をさらに増やし、集中する。

 針の穴に糸を通すように、目の前の立方体に魔力を染み込ませていく。

 じわりじわりと浸透していくと、立方体の表面が溶け出してくる。

 これまでと同じ要領で、奥へ奥へと魔力を流し、流し、立方体を包み込むくらいまで魔力を流し込む。

 

 すると、立方体は一気にドロリと溶け出し、少女は封印から解放された。

 

 それなりに膨らんだ胸部が露わになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。

 一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせるほど美しかった。

 そのまま、体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。

 

「くぁぁ……疲れた……」

 

 ハジメも、その場で大の字に転がる。

 普通の“錬成”とは違うことをしたせいで、想像以上に疲れたのだろう。

 練度が上がっていたからか、魔力的には割と余裕はあったが、疲れるのは疲れるというもの。

 

 ゆっくりと身体を起こすハジメ。

 それとほぼ同時に、少女が抱きついてきた。

 細い腕と身体、弱い力で、ハジメの胸に身体を寄せる。

 

 じっと、ハジメの顔を見つめている。

 顔はほぼ無表情だが、わずかに頬は高潮しており、その紅の瞳には、彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 そして、震える声で小さく、しかしはっきりと、少女は告げる。

 

「……ありがとう」

 

 長い間、閉じ込められていたのだろう。

 独りぼっちの孤独の中で、死ぬことも、狂うこともできず、全てを諦めていた。

 そんな中、突然現れたハジメが、助け出してくれた。

 胸に、脳に、ハジメが強く焼き付いた。

 

 ハジメは、少女の頭を撫でる。

 そして上着を脱ぐと、少女の肩にかけた。

 

「とりあえず、一旦外に出ようか」

 

 そう言うと、ハジメは少女を姫抱きにし、最初に作った穴の中へ入っていった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 少し歩いた先にある地下拠点。

 地面と壁は整備され、部屋の中心には焚き火が、それと光る鉱石を用いた即席のランプがあり、それなりに明るい。

 

「案外何事もなかったな」

 

 そう言うハジメは壁にもたれかかっていた。

 隣には、少女がハジメに身を寄せている。

 

「……そういえば、名前、なに?」

 

 少女は囁くような声でハジメに尋ねる。

 言われてやっと、そういえば言ってなかったなと、ハジメは気が付いた。

 

「南雲ハジメだ。それで、君は……」

 

 少女は「ハジメ、ハジメ」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。

 そして、問われた名前を答えようとして、思い直したようにハジメにお願いをした。

 

「……名前、付けて」

「え? 思い出せないのか?」

「……ううん。もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」

「いらない……まぁ、そうか。なら考えてみる……」

 

 辛かった過去を忘れたいとか、そういう思いなのだろう。

 

 ハジメは色々と考えてみる。

 大切な名前なのだ、じっくりと思考を巡らせ、何がいいか、どれがいいか、考えに考える。

 そして、一つ決めた。

 

「“ユエ”なんてどうだ? 僕の世界のとある国では“月”を意味するんだけど……」

「……ユエ? ユエ……ユエ……」

「ん? あれ、それでいいのか?」

 

 これまた少女は、ハジメの言った名前を何度か口にして、頷いた。

 

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

 

 そう言うと。

 少女は、ユエは、ハジメに抱きついた。

 

「……好き」

 

 そして、ユエはハジメの唇を奪った。




・南雲ハジメ:ユエにめっちゃ好かれた。

・ユエ:既に魅力にやられている。



 ユエは封印を解除される前から、ハジメの魅力の影響を受けています。封印を解かれたことによって、高感度が天元突破しました。

 ちなみに、サソリ魔物は登場しませんでした。なんせ扉を正規の方法で開けなかったので……。



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