※この作品はR-18です。

淫魔王ハジメは世界最強   作:木崎楓

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解放

「潰す……よくも、あんなとんでもない悪夢を見せてくれたな……!」

 

 苛立ちがマックスになったハジメ。

 今まで出し渋っていた神水を飲むと、傷付いた肉体の再生速度は増し、急速に失った部位が戻っていく。

 

「火、風、光……」

 

 そして、これまでとは比べ物にならないほどの高火力範囲攻撃を放つ。

 まずは暴風で爆炎を爆ぜさせ、敵の身を焦がす極光を放つ。

 

「水、闇……」

 

 次に黒く鋭い氷塊を、無差別全方位にバラ撒く。

 ヒュドラに当たれば、その部位を中心に、氷が溶けるまで、あるいは砕けるまでずっと、熱が奪われ続ける。

 

「まだだ……まだ足りない……!」

 

 超高火力、加えて持続的に負荷をかけられ、ヒュドラはどんどん弱っていく。

 が、決定打はまだ打てていない。

 強烈な一撃を入れて吹き飛ばさなければ。

 

 そう思った時だった。

 

「“天灼”」

 

 ハジメの後方から、ユエの魔法が放たれる。

 複数の頭の周囲に六つの放電する雷球が取り囲む様に空中を漂ったかと思うと、次の瞬間、それぞれの球体が結びつくように放電を互いに伸ばしてつながり、その中央に巨大な雷球を作り出した。

 中央の雷球は弾けると六つの雷球で囲まれた範囲内に絶大な威力の雷撃を撒き散らす。

 

 ズガガガガガガガガガッ!!

 

 その攻撃に巻き込まれた、青、黄、黒の頭は消し飛んだ。

 これにより、回復役の白頭を守る存在は消えた。

 

 ユエがペタリと座り込む。

 魔力は枯渇寸前で、息は荒い、もう充分には戦えないコンディションだ。

 しかし、ユエが追い込んでくれたおかげで、勝ち筋ができた。

 

「貫け」

 

 ハジメの風の魔法が、白頭を貫く。

 

「ここまで来れば楽勝だ」

 

 これにより、回復役と盾役が消えた。

 故に残りの頭はあっさりと、ハジメ一人だけで倒したのであった。

 

「……思った以上に、キツかった」

 

 六つ全ての頭を倒したハジメは、ユエの元へと近付く。

 疲れているようではあるが、肉体的には無事なようだ。

 

「ユエ、大丈夫そうだな――」

「ハジメ! 後ろ!」

 

 一歩ユエの方に進むと同時に、彼女の切羽詰まった声が響き渡る。

 そこには見逃していたのか、あるいはここまでずっと隠れ潜んでいたのか……七つ目の、銀色の頭がハジメ達を見ていた。

 それはユエの方を向き、直後、極光を放った。

 

「くっ!」

 

 予備動作の無い一撃。

 ユエとハジメとの距離はそれなりに空いている。

 とはいえ、平時であれば何とかユエの元に辿り着き、そのまま抱きかかえて逃げられただろう。

 しかしハジメは、自動再生があるからと、無理をしてしまったが故に、そこまでできない、身体が動かない。

 

 直感的にそれを感じたハジメ。

 彼はユエの元へ駆け、手を勢い良く伸ばすと、

 

 ドンッ!

 

「えっ……」

 

 ユエを、突き飛ばした。

 これでユエは極光に当たらない。

 当たるのは一人、ハジメだけ。

 

 極光が、ハジメを飲み込んだ。

 眩い光が、辺りを包み込む。

 すぐ近くにいたユエは、かなりの衝撃も相まって、思わず目を閉じてしまう。

 

 極光が収まり、ゆっくりと目を開けるユエ。

 

「……ッ!」

 

 そうして現れた光景に、言葉を、失ってしまった。

 ハジメは目の前で、ドクドクととめどなく血を流し、倒れていたのだから。

 おそらく極光の影響だろう、全身の肉がゆるやかに溶け出して、崩壊へと向かっているのが分かる。

 

「ハジメ!」

 

 ユエが焦燥に駆られるまま痛む体を無視して駆け寄ろうとする。

 しかし、魔力もほぼ空で力が入らず転倒しかける。

 それでも急いで、ハジメの元へと駆け寄る。

 

 うつ伏せに倒れこむハジメ、その下には血の水溜りが出来上がっていた。

 自動再生はあるので、死ぬということは無いだろうが……普通なら死んでいる出血量とダメージだ。

 

 ユエは急いで神水を飲ませようとするが、そんな時間をヒュドラが待つはずもない。

 今度は直径十センチ程の光弾を無数に撃ちだしてきた。

 

 ユエはハジメを抱えると、力を振り絞ってその場を離脱し柱の影に隠れる。

 柱を削るように光弾が次々と撃ち込まれていく。

 光弾の一つ一つに恐ろしい程のエネルギーが込められている、恐らく一分も保たないだろう。

 

 ユエは急いで神水をハジメの傷口に降り掛け、もう一本も飲ませようとする。

 が、ハジメはほとんど反応が無く、大半が口から零れ落ちてしまう。

 無理矢理口を押さえて飲ませると、やっと神水の効果が出始めた。

 しかし、傷があまりにも大き過ぎるせいか、再生修復があまりにも遅い。

 

「だ、ダメ……ハジメ……!」

 

 柱ももう保たない。

 

「戦わなきゃ……ハジメを、守らなきゃ……」

 

 ユエは神水を飲んで、柱の影から出た。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメは夢を見る。

 

 前世の、淫魔王の姿が映る。

 彼はどうやら、工房のような場所にいるらしい。

 

「ねぇ████、ここまでやる必要ある?」

 

 その側にいる少女が、淫魔王に尋ねる。

 淫魔王はどうやら、十二の武器を作り上げているらしい。

 数ヶ月の時間をかけて、じっくりと、ひたすらにこだわりを持って。

 そこまでやる必要があるのかと、少女は気になったのだ。

 

 少女の顔は見えない。

 おそらく、淫魔王の眷属なのだろうが……。

 

「全ては、君達を守るためだ」

 

 そんな少女に、淫魔王はそう言った。

 

 淫魔王は、自分の手で眷属となった女性を守ることを望む。

 眷属の中には、魔法や武術に長けた者もいて、ハジメよりも技量的に優れている者もいた、というより多かった。

 それでも彼は、彼女達を戦わせたくはなかった。

 

「今は、僕は自分の能力のせいで、世界中から狙われている。もちろん、眷属の君達も狙われることになる」

 

 今は、戦いの真っ只中。

 淫魔王が世界の敵となり、全世界から淫魔王を殺すための刺客が送られてくる。

 それに自分だけで対処するには、力が必要なのだ。

 

「元はこれも君の能力だけど……思考とアイデア次第では、何でも作り出せる。この力で、君達を守るための最強の武具を作るんだ」

 

 この武具も、そのためのものだ。

 圧倒的な力も、全ては眷属を守るため。

 そのためであれば、何だってする。

 

「複数の魔法を利用して、心や感情から武具を生成するんだ。それをさらに応用して、武具の生成に指向性を持たせることで、毎回同じ武具を作り出せるようにもできる」

 

 心の底から湧き出る、魂のような何か。

 そこから生成される武具とは、一体どれほどのものか。

 魔法とは心が原動力、その底の底にある魂から発露されるモノは、何よりも力強い魔法……いや、武具となる。

 

「……よし」

 

 淫魔王は立ち上がる。

 

「顕現しろ」

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 柱から飛び出たユエをヒュドラの銀頭は睥睨し光弾を連射する。

 必死で回避して、何とか反撃を行おうとするも、ユエの体力は限界に近い。

 それに元来、彼女は魔法中心の後衛での戦いをしてきたため、体術は得意ではなく、すぐに追い詰められていく。

 

 そして、遂に光弾の一発がユエの肩に直撃した。

 

「あぐっ!?」

 

 痛みに呻き声を上げながら、吹き飛ぶ勢いそのままに立ち上がり再び駆ける。

 痛みで動きが止まった瞬間、たたみ込まれる、だから動き続けなければならない。

 自動再生は始まるが、いつもより遅い。

 極光の影響で、再生に影響が出てきているらしい。

 

 そうして、あっという間に追い詰められていく。

 

 再生は遅く、どんどん傷付く身体。

 移動速度は遅くなり、回避が追いつかなくなっていく。

 そして、ヒュドラの攻撃が、腹に直撃してしまった。

 

「うぅ……うぅ……」

 

 体が動かない。

 動かなければやられるというのに、身体が言うことを効かない。

 ユエはいつしか涙を流していた。

 自分ではハジメを守れない、それがあまりにも悔しくて。

 

 銀頭が、倒れ伏すユエに勝利を確信したように一度「クルゥアアン!」と叫ぶと光弾を撃ち放った。

 

 終わったと、ユエは絶望した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 しかし、攻撃はやって来なかった。

 顔を上げてみると、そこには、

 

「盾……なに、これ」

 

 純黒の大盾が浮かんで、ヒュドラの無数の光弾を引き寄せ、完璧に防いでいた。

 

「……ハジメ!」

 

 ハジメがやったんだと、数秒間を置いて察したユエは、後ろを向く。

 

 そこでは、依然としてハジメは倒れている。

 しかし、片腕をユエの方に向けて伸ばし、指差していた。

 

「ユエは、死なせない……!」

 

 小さな声だが、確かにそうハジメが言ったのを、ユエは聞いた。

 ハジメはゆっくりと、ふらつきながら立ち上がる。

 

「……武装、顕現」

 

 そして、さっきよりもはっきりとした声で、言う。

 するとハジメの衣服が変わっていき、黒衣のローブのような、あるいはロングコートのようなものへと変わる。

 その内には黒光りする鎧が輝いている。

 

 何より、ハジメの周囲に突き刺さる十二の武器。

 双剣、槍、大盾、大剣、銃……あらゆる種類の武器がそこにはあった。

 

「さぁ、終わらせよう……」

 

 ハジメはその中の双剣を選び握る。

 同時に他の武器は消え、これまでとは比べ物にならないほどの速度でユエの前へ出ると、銀頭に向けて斬撃を飛ばす。

 

「グゥルアア!?」

 

 たったのそれだけだが、明らかにダメージを受けている様子だ。

 苦しみながらも光弾を乱れ打ちにする、が。

 

「守れ、そして斬り落とせ」

 

 大盾がユエの前に現れ、光弾を防ぐ。

 そしてハジメの前に来た光弾は……見えない何かによって斬られ、消し飛んだ。

 ハジメが斬った様子は無い、何か別のモノが、相手の攻撃を斬ったのだ。

 

「……なんだろうな、この感覚」

 

 不思議な感覚だった。

 これまで戦闘経験はほとんど無かったはずなのに。

 この戦い方は、身体が何となく覚えている。

 

「いい、ものだ……!」

 

 ハジメは一気に突進するように駆け出し、跳び上がる。

 

「クルァァァアア!!」

 

 もちろん、眼前に来た敵を、銀頭が攻撃しないわけがない。

 銀頭はハジメに向けて攻撃を行うが、

 

「無駄っ!」

 

 大盾を側に出現させ、それを足場にして跳躍し、軌道を変える。

 

 トンッ、トンッ、トンッ!

 

 大盾を足場に、あっという間に銀頭の真上までやって来ると、最後に天に大盾を出現させ、それを蹴り、重力と共に銀頭へと迫る。

 

「うらぁァァアア!!」

 

 ザシュッ!

 

 これまでとは比較にならない鋭い斬撃。

 その斬撃は雷のように、銀頭からヒュドラの身体へと伝っていき、肉体を破断していく。

 そしてヒュドラの肉体は、バラバラに崩れていき、崩壊した。

 

 バタリと、ハジメは地面に落ち、倒れる。

 

「ハジメ!」

 

 すぐにユエは駆け寄ると、ハジメはゆっくりと立ち上がる。

 

「ユエ……無事で、よかった……」

 

 そう言ってユエの手を握ると同時に、ハジメは、意識を手放した。




・南雲ハジメ:死にかけたら前世の夢を見て覚醒。武具についての詳細は今度。

・ユエ:今回はあんまり活躍してない。精神的に色々しんどかったらしい。



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