ハジメは、ハルツィナ樹海やライセン大峡谷付近にあったブルックという街で補給を終えた後に、ライセン大峡谷の探索を行っていた。
「ハァァアアッ!」
とは言っても、大峡谷の魔物は、オルクス大迷宮を攻略したハジメにとっては大して強くない。
なのでシアの育成も込みで、迷宮を探していた。
「うん、いいね。武器の使い心地はどう?」
「本当に使いやすいです! 振り回すだけで凄い威力ですし!」
シアに渡したのは、巨大ハンマーだ。
ブルックの街で特殊構造を組み込んだ特性ハンマーを作ったのだ。
その名は“ドリュッケン”。
彼女の素の身体能力と魔力による身体強化が凄まじいため、特に技量がなくてもぶん回すだけで、そこら辺の魔物は軽く蹴散らすことができるほどだ。
加えて、魔力を込めて振り回すことで、エネルギーを噴射させて勢いを上げて、火力上昇に繋げることができる。
「よかったよかった。この大峡谷だとシアの力が必要になるからね。迷宮探し、頑張ろう」
「はい!!」
そうして迷宮探索を進める。
ユエも戦ってはいるし、魔物も倒せてはいるが、魔法を放つというスタイルであるため、魔力が分解される大峡谷では、かなりしんどい状況であった。
体内から空気中に魔力を放出すると、その魔力が分解されるので、人間が使う魔法はほぼ全て、威力が減衰してしまう。
通常の倍以上の魔力を使わないと、通常時の威力にならないのだから、魔法主体のユエはしんどいだろう。
一応、固有魔法の“自動再生”は普段通りに扱えるが。
だがシアの場合は、体内で魔力を回すことで身体強化を行い戦うスタイル。
この場合、別に威力の減衰はおきない。
ハジメの場合も、武装を顕現させるのに魔力は消費するものの、それ以降の操作については一切の消費無しで扱えるので、基本的には普通に戦える。
なので基本、ユエには体力と魔力を温存してもらって、ハジメが“宝剣”で敵を斬り刻み、シアが“ドリュッケン”で敵を叩き潰していた。
何だかんだで二日ほど、虱潰しで探索をしていたが、中々見つからず。
少しずつやる気も減ってきた時だった。
「あれ? ハジメ様、横道がありますよ?」
「ああ、確かに」
峡谷に、細い横道を発見した。
こういう所も見逃さないように細かく探索してきたので、今回もしっかりと見ていこうと先へと進む。
〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟
その先に現れた、少し広めの空間。
そこには、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字で文字が掘られていた。
「……これは」
「迷宮、でいいのか?」
まさかこんな形で『迷宮がありますよ〜!』とアピールしてくるとは思わず、ハジメも少々困惑していた。
ただ、多分本物ではある、と、ハジメとユエは感じていた。
「ミレディ・ライセン……確かオスカーの手記に出てきてたし、本物、と考えていいのか……」
記された名前的に、本物なのだろうとは思うが。
それ以上に、文体があまりにもチャラ過ぎて、嘘臭く感じてしまう。
こういう迷宮を作る人なんて、基本的に厳かな雰囲気がある印象があったからこそ、そう感じてしまう。
「トラップの可能性もあるし……斬り刻むか」
念には念を入れて。
ハジメは周囲に数百の“宝剣”を出現させ、音をも上回る速度で回転させ、破壊の限りを尽くす。
特にこの看板が存在する付近の壁を、ひたすらに破壊しまくる。
「……あ。ハジメ」
「道があります!」
すると、道が現れた。
隠し扉っぽいのがあったらしい……が、ハジメの無差別破壊により、色々と壊れて道が出来たらしい。
とは言っても、出てきたのは大部屋みたいな場所だ。
そしてその大部屋には、黒い矢が落っこちていた。
おそらくは、何らかのトラップなのだろうが、ここから先も、多くの危険があることは容易に想像できる。
「なるほど、トラップか……でも、力技で行けるな」
だが、今のやり方でトラップも丸ごと斬り裂くことができた。
ならここからも、同じ方法で進む。
おそらく本来の正攻法であれば、ちゃんと冷静にトラップを対処する必要があったのだろうが……ハジメの武装に規格外のパワーがあったばかりに、力技が通ってしまった。
ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッッ!!
破壊に破壊に破壊を繰り返した末に。
ハジメ達は、最深部の大部屋へとたどり着いた。
そしてそこで待っていたのは、全長が約二十メートルはある、巨大なゴーレムだった。
「えぇ〜……ウッソでしょ、まさかこんな力技で攻略されるとは思わなかったよ本当にさぁ……」
おそらくはここの主なのだろうが、やはりと言うべきか、とんでもない力技による攻略に、心底困惑しているようだ。
「なんというか……すみません。力技が、できてしまったもので……」
「いやまぁ、想定外の攻略法だったけど、そういうのもアリだよ、うん。でも直す側の苦労も考えてほしいなぁっていう、それだけの話」
話してみるが、声質は女性っぽい。
女性の声に何らかの加工を施したかのような、そんな感じに聞こえる。
「……改めまして! みんな大好き、ミレディ・ライセンだよぉ~、よっろしくぅ!」
そんな声で心機一転、今度は明るい感じに挨拶をした。
「あ、はい。南雲ハジメといいます。トータスの外、異世界から来ました。後ろの子はユエとシア、二人は普通にトータス出身」
「ふーん……異世界ねぇ」
「元の世界に戻る手段と、あとは僕の能力を何とかするために、迷宮攻略をしている所です」
挨拶されたので、ハジメも軽く挨拶を返して、自分の事情を話す。
せっかく話し合いができる相手なのだから、可能な限り話しておこうと思ってのことだ。
「へぇ……というか、何でトータスに来たの?」
「エヒトに召喚されたらしいです」
「はぁぁぁ〜……あのクソ神、異世界にも迷惑かけてんのかよ。悪いねぇ、なんか」
「いや、別に大丈夫です……」
「でさ、もう一つ。何か別の理由もあったっぽいけど、そっちは何なの?」
「あー、ちょっと長くなるんですが……」
続けてハジメは、自らの能力についての説明を始めた。
自分の持つ“魅了”は、女性以外には作用しないが、効果を抑えることはできない上、効力が飛び抜けて強いこと。
そのせいで、姿を認識しただけでも、意図せず女性を魅了してしまう可能性があること。
そして、オルクス大迷宮を攻略して得た神代魔法から、この能力を何とかできる可能性を見出したことを、簡潔に説明した。
「なるほどなるほど……中々に難儀な能力だねぇ。神代魔法があれば、確かに何とかできるかもしれない……でも、力が無い奴らに渡すわけにはいかないなぁ」
「じゃあ、戦いでも始めますか? でも……はっきり言いますと、あなたに勝ち目はありませんよ?」
「生意気なこと言うねぇ……じゃあ、覚悟してよっ!」
ゴーレムはモーニングスターを振り回し、戦闘体勢を取る。
ハジメもまた、第七の宝具“猟銃”を出現させ、それを何も無い場所へ向け、撃つ。
ズバァン!!
「……何をしたのかなぁ?」
何かが放たれるということはなく、攻撃っぽい痕跡すら見えない。
ゴーレムは困惑して、振り回していたモーニングスターを止める。
「これは第七の宝具“猟銃”、あらゆる因果や障害を無視し――」
ズガァン!!
「――狙ったモノを、確実に撃ち抜く」
「え、は……核が、直接攻撃、された……?」
弾丸は、ゴーレムの装甲を無視し、内側に宿る核を直接貫く。
「言ったでしょ? 勝ち目は無いって」
「ハハハ……これはまた、とんでもない力だねぇ……ビックリだよ」
最初は困惑していたようだが、状況を理解し、ゴーレムは乾いた笑い声を上げる。
規格外の魔法、それを用いた武器……明らかに、神代魔法を超えたものだった。
「形はどうあれ、君は勝った。でも、どこから話そうかな……話したいことが多過ぎて、まとまらないや」
「……」
「君は……かなり訳アリみたいだし、細かい話もしたいし……うん。私のいる所までおいで、そこで詳しく話そっか」
その言葉を最後に、ゴーレムは完全に停止する。
そして、淡い光となり、天へと昇っていった。
と、同時に、壁の一角が光を放つ。
上方の壁にあるので浮遊ブロックを足場に跳んでいこうと、ブロックの一つに三人で跳び乗った。
と、その途端、足場の浮遊ブロックがスィーと動き出し、光る壁までハジメ達を運んでいく。
先程の言動からして、おそらくは本体のいる場所に進んでいるのだろう。
そして、終着点にたどり着くとそこには、
「やっほー、さっきぶり! 私が本物のミレディちゃんだよ!」
ちっこいゴーレム……ミレディがいた。
「お、おう、よろしく」
軽く挨拶をして、ハジメは周りを見渡すが、これまでの迷宮とは全く様相が違った。
部屋自体は全てが白く、中央の床に刻まれた魔法陣以外には何もなかった。
唯一、壁の一部に扉らしきものがあり、おそらくそこがミニ・ミレディの住処になっているのだろう。
そしてミレディについては、巨体版と異なり人間らしいデザインだ。
華奢なボディに乳白色の長いローブを身に纏い、ニコちゃんマークの付いた白い仮面を付けている。
「正直、試練はアンタ……ハジメだっけ? 以外何もやってない気がするけど……いいや、みんな突破ね。ほら、この魔法陣に乗って! そしたら神代魔法が手に入るよ!」
言われた通り、ハジメ達は魔法陣の中へ入る。
それを確認すると、ミレディは魔法陣を起動した。
今回は試練をクリアしたことをミレディ本人が知っているので、オルクス大迷宮の時のような記憶を探るプロセスは無く、直接脳に神代魔法の知識や使用方法が刻まれていく。
ハジメとユエは経験済みなので無反応だったが、シアは初めての経験にビクンッと体を跳ねさせた。
ものの数秒で刻み込みは終了し、あっさりとハジメ達はミレディ・ライセンの神代魔法を手に入れる。
「これは……重力操作の魔法?」
「そうだよ~ん。ミレディちゃんの魔法は重力魔法。上手く使ってね! ハジメとあと金髪ちゃんは適性ばっちり! 修練すれば十全に使いこなせるようになるよ!」
「……あれ? 私は?」
「あんまりかなぁ? 体重の増減くらいはできるんじゃないかな?」
「ウッソぉぉぉお!?」
どうやら、手に入れたのは重量魔法らしい。
名前の通り、重力を操作する魔法のようだが、ユエの適性がかなりあるらしい。
そしてユエはハジメの眷属であるが故に、ハジメにもその適性がコピーされている。
つまり、ハジメも高い適性を持っているというわけだ。
「……さて、こっからが本題。ハジメ、君の話を聞かせてほしいな。なんかちょっと興味が出ちゃって」
そうして、やることは全て終わったところで、ミレディがハジメにそう言った。
とはいえ、ハジメもどこから話せばいいのか、正直分からずにいた。
「う~んと……そうだ、まずステータス見せるか」
少し考えた末に、色々と話しやすくするためにステータスを開示しようと、ミレディにステータスプレートを渡した。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル22
天職:錬成師
筋力:35 [+同調2080]
体力:35 [+同調4110]
耐性:35 [+同調1700]
敏捷:35 [+同調5250]
魔力:35 [+同調13600]
魔耐:35 [+同調18230]
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+高速錬成][+消費魔力減少]・魔力操作・魅了[+常時発動][+効果上昇Ⅱ][+効果範囲拡大Ⅱ]・眷属作成・同調(9)・武装顕現(王)・封印[+解放Ⅰ][+解放Ⅱ]・言語理解
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「ほうほうほう……“魔力操作”持ちで、眷属作成……は見たことないね。あと武装顕現とやらも」
ミレディも相当長く生きていたのだろうが。
それでも、ハジメの持つ“眷属作成”と“同調”、それと“武装顕現(王)”は見たことがないと言った。
「それにこの“魅了”も……効果とそれが及ぶ範囲が広がるのは分かる。けどそれが常時発動するってのは……それも聞いたことないなぁ。練度が上がってくと、普通は制御も容易になってくもんだし」
「……一応、理由に心当たりはあります」
「へぇ。で、どんなの?」
「僕には……前世の記憶があります」
そうして始まったのが、ハジメの持つ前世の記憶についての話だ。
とは言っても、ハジメはほとんど何も覚えていない。
覚えていたことといえば、まずは前世の自分は淫魔王と呼ばれ、世界の敵となっていたこと。
世界の敵になった理由は、存在するだけで無差別に美しい、または可愛い女性を魅了しまくって、眷属にしたから。
最期に、勇者に眷属もまとめて殺され、転生したこと。
そして今の自分は、おそらく前世の力を引き継いでいる、ということだ。
他にも、自身の能力についての話も、簡単に説明した。
「なるほどねぇ……ちょっと失礼」
何か考えた後、ミレディはハジメに近寄り、その胸にゴーレムの手を当てた。
同時にハジメは、自分の中に何かが入り込んでくるような違和感を感じた。
何となくではあるが、自分の中を、ジロジロ見られているような、そんな感覚。
そんな違和感というか、気持ち悪い感覚が発生してから約一分で、その感覚は消え去った。
ミレディは頷きながら、告げる。
「あー……無理だね、その能力を何とかするのは」
「え……」
「能力が、魂と結び付いている。だから下手に弄ったら、最悪君が死ぬ。封じようとしても、魂ごと封じることになるから、君の自我も封印されることになる」
それは、能力を何とかする方法は無いという、どうしようもない現実だった。
「魂とかそういうのに干渉できる神代魔法があってね。それを利用して、君の内に眠る能力を精査したんだけど……対処は無理、やれば高確率で死ぬ。あと、もう一つ分かったことなんだけどさ……」
「ん?」
「君の身体は人間だけど、魂は人間のそれじゃない。多分、前世の影響だろうね」
おそらく前世の影響で、魂が人間の形ではなく、どちらかというと魔物に近い形状をしていると、ミレディは告げた。
だからこそ、固有魔法が使えるし、魔力操作も可能なのだ。
「でも、魔物と呼ぶにも違和感あるし、混血なのかな? その影響で、能力にバグが生じてる……んだと、思う」
「思うって……」
「いやさぁ、だってこんなの初めてだし。どう頑張っても推測にしかなんないって」
ハジメは内心驚いていた。
確かに前世の自分は、純粋な淫魔じゃなかった……気がする。
だが、そんな自分ですら言い忘れるくらいのそれを、こんな形で見抜かれるとは思わなかった。
「……それに、能力だけで言うならエヒトより質が悪いし。多分前世はさ、美女や美少女なら認識しなくても勝手に魅了してたんでしょ?」
「多分」
「ヤバいってレベルじゃないでしょそれ。この世界でも最終的にはそうなると考えると、もう災害みたいなもんだって……」
災害と同じ扱いをされることに、何とも言えない表情を浮かべるハジメ。
確かにその通りだと自覚しているからこそ、何も言えなかった。
「多分後ろの金髪ちゃんとウサギちゃん、眷属になってるんでしょ?」
「はい」
「他にも眷属っている?」
「ハイリヒ王国の王女と、一緒に召喚された仲間の中に二人。あと兎人族に四人」
「ウッソぉ……王女にも手を出してるの……? いやまぁわざとじゃないんだろうけどさ……でも」
ミレディは問いかける。
「全員、君から見たら凄い美人なんでしょ?」
ハジメの“魅了”は女性にしか効かないが、その中でも美人や美少女にしか効果が及ばない。
歳をとった人や、こう言うのはアレだが不細工な人は、何故か“魅了”の影響を受けない。
「うん」
「あーやっぱりね。無意識に魅了する相手を選別してるって感じなのかな?」
“魅了”して、眷属にするのだとしたら、もちろん好みの見た目の人のほうがいいに決まっている。
わざわざそうじゃない人を魅了する必要性も無い。
そう考えると、前世でも美人以外眷属にしていなかった理由も分かる。
「さぁ、もう少し能力について考察しよっか」
◆◇◆◇
ミレディの豊富な知識のおかげで、ハジメは自身の能力についての理解を深めることができた。
まず“魅了”について。
①ハジメの好みの女性のみが魅了される。
②非常に強力で、神代魔法ですら効果を無力化はできない。
③魅了された人間は、眷属にしなかったら多大なストレスを受け、高確率で自殺する。
そして“眷属作成”について。
①眷属化した人は、いかなる方法を使用しても元に戻すことはできない。
②眷属となった人は、ハジメに絶対服従となる。
新たに分かったのは、能力がとんでもなく強力であるということだ。
それこそ、普通の魔法では当然ながら、神代魔法ですら対処不可能なレベルである。
ミレディいわく、神代魔法のさらに上に概念魔法というものがあるらしいが……それを利用すれば何とかできるかもしれない、といった感じらしい。
ちなみに、“武装顕現(王)”についてだが、これにより出現する武具は、概念魔法レベルの非常に強力なものらしい。
そうして色々と理解を深めた後に、ミレディはあるものをハジメに渡した。
それは金属製の目隠しのようなものだった。
「これは?」
「目隠しだよ。目が見えなくなるけど、かなり精密な魔力探知ができるから、日常生活は支障無いはず。にしても、まっさかコレが有効活用される日が来るとはねぇ」
「なるほど……」
早速、目元に取り付けてみると。
当然ながら、視界が完全に真っ暗になる。
が、ユエとシアがいた場所に、人型が浮かび上がる。
魔力の濃淡、密度を視ることにより、周りの景色をちゃんと認識することができていた。
ただまぁ、精確な様子とか、色とか、人の顔や表情とか、そういうのは分からなくなってしまったが。
「これがあれば、不本意に誰かを“魅了”することも少なくなるでしょ」
「うん。本当に助かるよ」
「んで、後はこれ」
だがそれらのデメリットを差し置いても、人の顔が分からなくなったことにより、“魅了”が発動しにくくなった。
それはハジメにとって、何よりも嬉しいことだった。
そしてもう一つ、ミレディはハジメに渡した。
「攻略の証、ライセンの指輪! あと他にも……君は錬成師みたいだし、鉱石とかそういうのもあげちゃうね!」
上下の楕円を一本の杭が貫いているデザインのライセンの指輪に加えて、さらに虚空に大量の鉱石類を出現させる。
元々渡す気だったのだろうか、大盤振る舞いだ。
「僕達としては嬉しいけど……いいのか?」
ハジメは自分の宝物庫に、ミレディから受け取った鉱石と仕舞うが、同時に少し不安にも感じた。
もちろん、たくさん物をもらえたのは嬉しいが、何かあるのではないかと、そう思ったのだ。
「いいよ。君達は必ず、神殺しを行う。そう確信しているからね」
「まぁ、帰るにしても何にしても、エヒトが邪魔してきそうだしなぁ。ありがたく受け取っとくよ」
「うんうん。後は……そうだ! 他の大迷宮の場所、教えとくね! あの時から相当時間も経ってるし……多分、大迷宮の情報も失伝しちゃってるでしょ」
「確かに。王都で調べた感じだと、オルクス大迷宮とグリューエン大火山? 以外は場所すら分かんないって感じでした」
「よし、じゃあ地図出して!」
そうして、ミレディは地図に色々書き足していく。
大迷宮の場所や、その特徴について、大雑把ではあるが、的確に必要な説明を書き入れていく。
そして数分で全て書き終わり、ハジメに渡した。
「はいこれ。残りの攻略も頑張ってね」
「ありがとうございます」
改めて、ハジメは頭を下げ、礼を言った。
「……よし、やることは全部やった。じゃあみんな、魔法陣に乗って。迷宮の外にワープさせるからね」
言われた通り、ハジメ達三人は魔法陣の上に乗る。
すると魔法陣は光を発し始め、転移の術式が起動し始める。
「さて……じゃあみんな、頑張ってね。君達のこれからが、自由な意志の下にあらんことを……」
そんなミレディの言葉が聞こえると同時に、ハジメ達の視界は光りに包まれた。
◆◇◆◇
そして、気付いたときには。
「迷宮の入口、か」
ハジメ達は、迷宮の入口に立っていた。
入り組んだ場所ということもあって、基本的には誰にも見つからない場所だ、当然他には誰もいない。
「……ユエ、シア。無事だね?」
「んっ」
「もちろんです!」
「よし。じゃあ行こうか」
迷宮攻略の目的を果たした三人。
彼らは新たな迷宮を攻略するために、また新たな場所へと歩を進めるのであった。
・南雲ハジメ:ゴリ押しで迷宮突破。ミレディには若干申し訳なく思っている。
・ミレディ:ボッシュートはしなかった。それをやって、その先でハジメが誰かと遭遇して“魅了”を発動したらヤバいので。