淡い緑色の光だけが頼りの薄暗い地下迷宮に、激しい剣戟と爆音が響く。
その激しさは、苛烈と表現すべき程のもので、時折、姿が見えない遠方においても迷宮の壁が振動する程だ。
銀色の剣線が、虚空に美しい曲線を無数に描き、炎弾や炎槍、風刃や水のレーザーが弾幕のごとく飛び交う。
強靭な肉体どうしがぶつかる生々しい衝撃音や仲間への怒号、気合の声が本来静寂で満たされているはずの空間を戦場へと変えていた。
「万象切り裂く光 吹きすさぶ断絶の風 舞い散る百花の如く渦巻き 光嵐となりて敵を刻め! 〝天翔裂破〟!」
聖剣を腕の振りと手首の返しで加速させながら、自分を中心に光の刃を無数に放つ光輝。
そうして敵の魔物を一気に蹂躙し、碌な攻撃もさせずに血肉へと変えた。
場所は“オルクス大迷宮”の百層。
光輝達はなんと、今ここで、誰も到達するに至らなかった最深部へと、たどり着くことができたのだ。
「それにしても、ここが最深部か……」
ここまでの道のりは、長く苛烈だった。
この場にいるのは光輝、龍太郎、雫、香織、鈴、恵里の他、永山重吾を含める五人及び、檜山大介を含める四人の十五人で、メルド団長達は七十層で待機している。
実は七十層からのみ起動できる、三十層と七十層をつなぐ転移魔法陣が発見され、深層への行き来が楽になったのであるが、流石にメルド団長達でも七十層より下の階層は能力的に限界だった。
もともと、六十層を越えたあたりで、光輝達に付き合える団員はメルドを含めて僅か数人で、七十層に到達する頃には、彼等は既に光輝達の足を引っ張るようになっていたのである。
メルド団長もそのことを自覚しており、迷宮でのノウハウは既に教えきっていたこともあって、自分達は転移陣の周囲で安全地帯の確保に努め、それ以降は光輝達だけで行くことにさせたのだ。
たった四ヶ月ほどで超えられたことにメルドは苦笑い気味だったが、それでも光輝達に付き合う過程で、たとえ七十層でも安全を確保できるほどの実力を自分達もつけられたことに喜んでいた。
彼らもまた実力を伸ばしていたのである。
なお、光輝達のステータスは現在、こんな感じである。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:72
天職:勇者
筋力:880
体力:880
耐性:880
敏捷:880
魔力:880
魔耐:880
技能:全属性適正[+光属性効果上昇][+発動速度上昇]・全属性耐性[+光属性効果上昇]・物理耐性[+治癒力上昇][+衝撃緩和]・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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坂上龍太郎 17歳 男 レベル:72
天職:拳士
筋力:820
体力:820
耐性:680
敏捷:550
魔力:280
魔耐:280
技能:格闘術[+身体強化][+部分強化][+集中強化][+浸透破壊]・縮地・物理耐性[+金剛]・全属性耐性・言語理解
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八重樫雫 17歳 女 レベル:72
天職:剣士
筋力:850
体力:960
耐性:710
敏捷:2340
魔力:780
魔耐:780
技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇]・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読・気配感知・隠業[+幻撃]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+集中強化]・武装顕現(妃)・封印[+解禁Ⅰ]・言語理解
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白崎香織 17歳 女 レベル:72
天職:治癒師
筋力:580
体力:780
耐性:620
敏捷:640
魔力:2760
魔耐:2760
技能:回復魔法[+効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作[+遠隔操作][+効率上昇][+身体強化]・武装顕現(妃)・封印[+解禁Ⅰ]・言語理解
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光輝も龍太郎も強い。
だがそれ以上に強いのが、香織と雫だった。
七十階層突破後、メルド団長達がついて来られなくなったくらいから、彼女達は“魔力操作”を解禁した。
それまでも、密かに訓練だけはしていたとはいえ、実戦で使うのは初めてだった……にも関わらず、二人は圧倒的な強さを見せつけた。
雫の場合は高倍率の身体能力強化が、香織の場合は詠唱無しノータイムの魔法発動が、無法と言えるほどに凶悪だった。
それこそ、この十五人の中だと、二人が最強だと思っている人も多いことだろう。
一応、光輝であれば“限界突破”を使えば二人に勝てるだろうが……“限界突破”は能力の前借りのようなもの、効果が切れれば、発動前よりも弱くなってしまう。
要するに、爆発力・継戦能力・その他様々な要素を鑑みれば、香織と雫が強いという結論はほぼ明白だった。
とにかく、迷宮の最深部に辿り着いた光輝達。
だが何故か、ある一定の場所に入って以降、魔物の出現はピタリと止んでいた。
トラップも慎重に探しているが、何一つとして見当たらない。
そうして行き止まりの所までたどり着くと、
ゴゴゴゴゴゴ……!
「わっ!? なになになに!? ちょっとカオリーン!!」
光輝達のパーティメンバーの一人である谷口鈴が、ビクッと小さな身体を跳ねさせて驚く。
そしてそのままの勢いで、どさくさに紛れて香織に抱きつき、その豊満な胸を揉む。
「わっ!? ちょっ、ちょっと鈴ちゃん! どこ触ってるの!」
「え、へへ……少しびっくりしちゃってぇ。えへへ……ここ、落ち着くなぁ……」
変態のおっさんみたい言動をしながら、香織の胸に顔を埋める鈴。
「ちょっと鈴、やめなさい。男子共がおかしくなるでしょうが……」
そんな鈴を、雫がグイッと香織から離した。
余韻で人様にはお見せできない表情でデヘデヘしている鈴を引き離す中、男子は百合百合した空間に、思わず前屈みになってしまっていた。
「……これは、どういうことだ?」
そんな中、光輝が呟く。
朗らかな雰囲気は一変し、全員が光輝の視線の先に目を向ける。
何も無かったはずのゴツゴツした壁。
それが崩れ、内側から文字の書かれた綺麗な石壁が現れていたのだ。
「……つまり、まだ先があるってことか?」
龍太郎が光輝に尋ねる。
「多分。けど、ここに書かれてる“六つの証”を持ってないと、先に進めないんだと思う」
「問題は、“六つの証”が何かって話ね……」
光輝はこの先に進むには、石壁に書かれた通りに“六つの証”が必要だと考えた。
だが雫の言う通り、“六つの証”が何か分からないと、これ以上どうしようもないのだ。
「……とりあえず、今回は引き返そう。このことは、メルド団長に報告しないといけない」
何も分からない以上、これ以上何もすることはできない。
光輝の言葉により、今回はここまでにして帰還することになった。
その時だ。
「流石の実力と言うべきか。私自身が来て正解だった」
光輝達は、ギョッとなって、咄嗟に戦闘態勢に入りながら声のする方に視線を向けた。
コツコツと、足音を響かせながら、その人物は現れる。
赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ、男。
光輝達が驚愕したように目を見開く。
男のその特徴は、光輝達のよく知るものだったからだ。
実際には見たことはないが、イシュタル達から叩き込まれた座学において、何度も出てきた種族の特徴。
聖教教会の掲げる神敵にして、人間族の宿敵。
そう……
「魔人族……」
誰かの発した、恐怖の混じった呟きに、魔人族の男は氷のような冷たい視線を向けていた。
・白崎香織:めっちゃ強い。普通に魔力操作あるだけで、魔法の発動が早くなるので優秀。眷属化によりステータスも伸びているので、直接殴り合ってもまぁまぁ戦える。
・八重樫雫:物理特化型。ハジメを除けば、近接戦だとクラスで一番。多分戦うとなると、対処に一番困ることになる。
・男の魔人族:魔力操作持ちのイレギュラーが二人もいやがるので、部下に任せるのではなく直々にやって来た。氷雪洞窟と大火山の神代魔法を獲得済み。