※この作品はR-18です。

淫魔王ハジメは世界最強   作:木崎楓

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神代魔法の使い手

「懐かしいなぁ、ここ」

 

 ハジメ達は現在、宿場町ホルアドにいた。

 

 別段用事がある場所ではないのだが、大迷宮の一つである【グリューエン大火山】へ向かうためには通らなければならない場所たった。

 ハジメは、懐かしげに目を細めて町のメインストリートを歩いていく。

 今日はとりあえずここで休み、明日からまた出発しようと考えていた。

 もしかしたら、香織や雫とも会えるかもしれないし。

 

 そう、考えていると。

 

「ッ!?」

 

 突然のことだった。

 

 ビクッと、シアが大きく身体を震わせると、周囲をブンブンと、挙動不審になったかのように見始めたのだ。

 目を隠して、魔力だけしか見えていないハジメからも、その動揺はよく分かるくらいだった。

 

「シア? どうしたんだ?」

 

 ハジメが尋ねると、シアは最初は慌てた様子だったが、すぐに首を傾げた。

 

「い、いえ……何故か、見知らぬ二人の女性の未来が視えたもので……」

「え? シア、そんなことできたのか?」

「いやいや無理ですよ! 他人の未来を視るにしても、目の前にいない人の、ましてや知らない人のなんて無理ですぅ!」

 

 シアの未来視は、他人の未来も視ることができる。

 とはいえ、見ず知らずの他人の、遠くにいる赤の他人の未来を視ることはできない。

 自分以外の場合は、自分の目で対象を見ることにより、対象の未来を視る、という形になるのだ。

 

 だから、この場にいない見知らぬ人の未来が視えるというのは、相当の異常事態なのだ。

 

「……ちなみになんだけど、どんな人の、どんな未来が視えたんだ?」

「あ、えっと……」

 

 念のため、シアに視えた内容について尋ねてみると。

 

「二人の黒髪の女性が、魔人族の男に殺される所が視えました……。物凄く強い剣士と治癒師だった――」

「ッ、まさか……!」

 

 ギョッと、ハジメは目を丸くして、背筋を震わせる。

 

「ティオ! 皆をまとめてどっかの宿取っといて! 僕は今から迷宮へ向かう!」

 

 それだけ言うと、ハジメは全速力で駆け出し、全てを無視して迷宮へと突っ込んでいった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 光輝達の目の前に現れた魔人族の男。

 ただ、彼の目に映るのは、香織と雫だけ。

 他の人達のことは歯牙にもかけていない、そんな態度だった。

 

「さて、イレギュラーは処分させてもらおうか」

 

 香織と雫、魔人族は二人を指差して言う。

 

「え? 私た――」

「後ろっ!」

 

 二人が身構えるのとほぼ同時に。

 光輝の叫びが聞こえ、反射的にその場から横に跳んだ。

 

 カァァァァアアッッ!!

 

「くっ、ぅぅう……!」

「いっ……はぁ、はぁ……」

 

 そして白い光が、極光が、先程まで香織と雫が立っていた場所に降り注ぐ。

 流石に完全には避けられず、半身がその餌食にはなったものの……おそらくは“武装顕現(妃)”により作られた武装の加護のおかげだろう。

 

「ほう? 極光を耐えるか。本来なら身体が溶けていくはずが、その兆候も無い……」

 

 ドシンと、魔人族の男の隣に、白い竜が舞い降りる。

 先程まではいなかったはずのドラゴン、それがどこからか現れた。

 普段なら神々しさを感じる見た目なのだろうが……この危険な状況では、恐怖の象徴としかならなかった。

 

「くっ……お前! もう絶対に――」

「煩い雑魚は……」

 

 光輝が叫び、魔人族へと距離を詰めようとするが。

 香織と雫を除き、かなり後方へワープさせられたのか、距離が空いてしまう。

 もちろん光輝も、例外じゃない。

 

「こいつらで充分だ」

「ッ!」

 

 三体のワイバーンが現れ、小極光を放つ。

 慌てて回避する光輝だが。

 

「きゃぁぁあっ!!」

 

 しかし、回避したその先には、仲間がいる。

 光輝が回避したことにより、小極光が、仲間の恵里に直撃してしまう。

 

 いや、それだけじゃない。

 

「なっ、恵里!?」

「まずいっ! ロックマウント……じゃないっ! ぐっ、ぁああっ!?」

 

 これまで、この迷宮で見てきた魔物達。

 そいつらがどこからともなく現れ、光輝達に襲い掛かる。

 

 そして、その内の多くが強化されている。

 とはいえ、強化されても今の彼らなら簡単に倒せはするのだが……問題は倒した後だ。

 絶命した魔物は、すべて自爆するかのように小極光を放つ。

 今も、うかつに接近して倒してしまったことにより、檜山大介が極光の餌食となった。

 

 一番弱いネズミ型の魔物でさえも、殺せば極光を放ってくる。

 にも関わらず、まとわりつくように出現したせいで、殺さないとダメージを受ける。

 分からないことだらけで、パニックになって、剣で殺してしまって、さらにダメージを受けてという……最悪な悪循環が、起き始めていた。

 

 

 

 そして、香織と雫。

 

 

 

「く、ぅぁ……っ」

「なにが、おき、て……?」

 

 二人は、一瞬にして敗北してしまった。

 白竜が放った極光、それを回避した二人は……何故か、極光に直撃していたのだ。

 

「ふふ、あの魔法を手に入れておいて正解だったな」

 

 魔人族の男は、笑みをこぼす。

 まさかここまで上手くいくとは、思わなかったのだろう。

 

「しかしまぁ、直撃してもなお、焼き尽くすことが敵わないとは」

 

 とはいえ、香織と雫の頑強さには、少し驚いていた。

 全身が傷だらけで、手足や顔は焼け爛れ、溶け落ち始めている部分もある。

 とはいえ、それもかなりゆっくりだし、装備歯ボロボロだが、守られていた部分はほとんど無事。

 故にまだ死んでいないどころか、致命傷すら受けていない状況。

 

「とはいえ流石に、首を斬り落とせば死ぬだろう」

 

 どこからともなく、魔人族の男は剣を取り出した。

 何も無い空間から出現させた長い剣を持ち、まずは香織の方へと近寄る。

 

「ッ!」

「かお……ッく……」

 

 何とか香織を守ろうとする雫だったが、身体は動かず、手をわずかに伸ばすだけしかできない。

 そして、香織の首に向けて、剣が、振り下ろされる……

 

 ズゴォォォオン!!

 

「ッ!?」

 

 寸前、この空間に轟音が響き渡り、土煙が舞い上がる。

 魔人族の男も、思わず攻撃を止めた。

 

「……最悪の展開は、阻止できたか」

 

 そして、土煙の中から現れたのは……

 

「ハジ、メ……」

 

 クラスメイトであった彼らがよく知る人物、南雲ハジメだった。

 もっとも、目の部分は無骨な目隠しにより覆われているが、それでも、すぐにその人物がハジメだと、多くの人物が理解した。

 

「チッ……今お前と戦うべきではない」

 

 その姿を見た瞬間、魔人族の男は苦い表情をして、一瞬にしてその場から姿を消した。

 同時に隣にいる白竜も姿を消した。

 

「クソ……や、まずはアイツらだ」

 

 ハジメは“大剣”を出現させると、光輝達の所へと向かい、魔物を一体一体斬り裂き、殺す。

 が、極光は放たれない。

 第四の宝具“大剣”による破壊は、絶命時の極光を放つ能力さえをも破壊し、無力化する。

 そして今のハジメであれば、すべての魔物を同時に相手取るなど、あまりにも余裕で、あっという間に、決着はついたのであった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 しかし、だからといってまだ終わりじゃない。

 

「香織! 雫!」

 

 致命傷を受けた香織と雫に、ハジメは駆け寄る。

 二人共ボロボロで、致命傷こそないが、かなり酷い状態だ。

 

「……いや、これならまだ、治せる」

 

 そう言うとハジメは、二人に魔力を注ぎ込み、回復魔法を発動する。

 自分の可能な最大限を、二人に注ぎ込む。

 いやそれだけじゃない、貴重な神水も飲ませて、ついでに傷口にも塗り、何とかしてダメージを回復させようと尽力する。

 

 が、回復はほとんどしない。

 

「なっ、治る……のか?」

 

 まだダメージが少なかった光輝が、後ろから尋ねてくる。

 

「治る、はず。ダメージは大きいけど、回復魔法で治せる範囲の怪我だ。ただ、状態異常……かな? それによるダメージと回復が相殺してるっぽい。治るけど、少し時間が……」

 

 そう呟いていたところで、ついに。

 

「っ、きた!」

 

 回復が、始まる。

 ジワジワと、受けたダメージが治っていく。

 痛みも和らぎ、二人の息も落ち着いていく。

 

 そして、全ての治療が完了した。

 傷跡も、何一つなく。

 

「ハァ、ハァ……終わっ、た……!」

 

 二人の治療が終わり、ハジメはその場にぶっ倒れた。

 

「……けど、まだ、だ。まだ……治さないと」

 

 しかし数秒すると、ゆっくりと身体を起こし、残りの負傷者の元へと歩き始める。

 

「あ! わ、私も手伝うから! ハジメくん!」

「助かる……」

 

 そうしてハジメは、回復した香織と共に、残りのクラスメイトの治療を行ったのであった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 全員の治療が終わり、落ち着きを取り戻した。

 

「それで、南雲で……いいんだよな?」

 

 改めて、光輝に尋ねられる。

 

「うん。諸事情でこの目隠しは外せないから、素顔は見せられないけど……ごめん」

「いや、大丈夫だ。何があったのか色々聞きたいけど……まずは、助けてくれてありがとう」

 

 光輝が頭を下げると同時に。

 

「「「ありがとう!!!」」」

 

 今ここにいるクラスメイトが、ハジメにそう言った。

 

「どういたしまして。……とはいっても、魔人族は取り逃したし」

 

 そんか感じに話していると、

 

「ん? あ!? ちょっ、待てお前……南雲か!?」

 

 この迷宮最奥の空間に、新たな人物が入ってくる。

 

「ん? って、遠藤!? お前どこに……って、メルド団長!?」

「ヤバい奴が出たから、緊急で呼びに戻ってたんだよ……けど色々終わった、っぽいな?」

 

 遠藤浩介、彼が密かに戦場を離脱し、メルド団長達を連れて戻ってきたらしい。

 よくもまぁ、ここまで素早く戻ってこれたなぁと思わなくもないが。

 それも、彼の特異性あってこそ、なのかもしれない。

 

「そうみたいだが……まさか、坊主が生きて戻ってきたとはな……」

「……お久しぶりです」

「無事で、本当によかった……!」

 

 ハジメの無事に、メルドは涙を流す。

 

「しかし、ここが第一の最下層か……」

 

 軽くメルドと挨拶を交わすと、ハジメは周囲を見渡し、そして文字の書かれた石壁を見る。

 

“六つの証を有する者に”

“新たな試練の道は開かれるだろう”

 

「そういえば、最下層にたどり着いたんだな! だがこの言葉の意味は……」

 

 メルドも石壁に書かれた文言を見てみるが、何の見当もつかない様子だ。

 だが、このオルクス大迷宮を攻略したハジメは、真実を知っているハジメは、意味を理解した。

 そして、この先に待ち受けているであろうアレについても、ここで理解した。

 

(いやここ、最後に挑む迷宮だったの? だからあんなイカれた強さしてたのか……)

 

 ゲームで言うなら、この百階層までがチュートリアル。

 ここを攻略した後に、他の迷宮を巡り、神代魔法を獲得し、戻ってきて、そうして真のオルクス大迷宮を攻略する。

 おそらくは、そんな感じなのだろう。

 つまりこの先に待ち受けるのは、ラストダンジョン。

 ハジメはどうやら、バグみたいな方法で侵入し、最初にラストダンジョンを攻略してしまったみたいだ。

 

「……僕なら、言葉の意味は分かります」

 

 メルドの横で、ハジメは言う。

 

「事故のような形ではありますが、僕はこの先に行き、オルクス大迷宮を完全攻略し、神代魔法を手にしました」

「なっ……この先を攻略した!?」

「はい」

「そう、なのか。で、神代魔法とは? 聞いた感じ、神代に使われた……」

「大体そんな感じです。大迷宮を攻略すると、強力な神代魔法を得られます。ここ以外にもう一箇所攻略して、その時も神代魔法が手に入ったので、これはほぼ確実ですね」

 

 これにはメルドをはじめとした騎士団の人達も、驚きを隠せずにいた。

 

「ちなみに、このオルクス大迷宮を攻略したら、生成魔法が得られました。簡単に言うと、アーティファクト作れる魔法です」

「はぁ!?」

「そうだなぁ……例えばこんな感じのとか」

 

 パッと、ハジメはとある制作物を取り出した。

 巨大な大剣だが……パット見は普通だ。

 

「ちなみに、効果は……?」

「この大剣の攻撃で傷が付くと、傷がヒビ割れるように広がっていく。その傷は回復魔法では治療不可……って感じですね。あ、片手間で作ったやつなんであげますね」

「はぁ!? 片手間で作った!?」

「元々錬成師ですし、適性があったので。これくらいなら割と簡単に作れますよ?」

 

 

 

 この後もメルドをはじめとして色々尋ねられまくった。

 神代魔法についてだとか、迷宮についてだとか。

 とはいえハジメは、迷宮の最奥で知った真の歴史等は上手く隠して、いい感じに話せることだけを説明していった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 そうしてハジメ達は、迷宮の外へ出たのだが。

 

「あともう一つ。これは確定してない情報なんで何とも言えないんですけど……」

 

 ハジメは、ふと思い出したかのように言った。

 

「多分魔人族側にも、神代魔法持ちがいると思います」

「ッ!!」

「僕の手に入れたのとは違う……生物を操るような神代魔法とか、そういうのを手にしてるんだと思います。だから、大量の魔物の使役が可能になったとなれば……辻褄が合いませんか?」

 

 あくまで推理ではあるか、ハジメはそう説明した。

 

「それこそ、今回襲ってきた魔人族とか。逃げる時のあのワープも、神代魔法な気がしますし」

「……となると、神代魔法集めが急務になるのか」

 

 メルドは考えながら、そう言った。

 ハジメの推理は割と辻褄が合っているし、神代魔法があるというのも、ハジメによってほぼ確実だと証明された。

 なら、魔人族の神代魔法使いに対抗するため、こちらも神代魔法を得なければ、戦力差は広がるばかりだろう。

 

「なぁ、坊主……いや、南雲ハジメ……」

 

 丁寧に、これまで坊主と呼んでいたメルドが、南雲ハジメと名前で呼んだ。

 

「お断りします」

 

 が、ハジメはメルドが何を言うのか理解したのか、何かを言う前に断った。

 

「多分、別の迷宮に案内してほしいって言おうとしたんでしょうけど、ダメです」

「……それは、俺達が実力不足だからか?」

「はい。もし仮に案内するとしても…………白崎さんと八重樫さん、二人だけです。他のみんなは、言っちゃアレですけど実力不足です」

 

 ハジメは断言する。

 光輝でさえも、これには反論できなかった。

 彼自身も、香織と雫におんぶにだっこだった自覚はあったから。

 二人がいなかったら、百層までたどり着く事もできなかっただろうといことは、分かっているから。

 

「……」

 

 目隠し越しではあるが、ちらりと香織と雫の方に視線を向けて。

 

「では、僕はこれで。明日からはグリューエン大火山に向かう予定なので――」

「待って!」

 

 失礼しますと、そう言おうとした矢先。

 香織が、声を上げた。

 

「さっき、私と雫ちゃんなら、実力的に連れて行ってもいいって、言ったよね……?」

「……言ったね」

「なら、私もついていく!」

 

 香織が、宣言する。

 

「っ、なら私もついていく。神代魔法を……手に、入れるために……」

 

 そして続けて雫も宣言する。

 

「なっ!?」

「ちょっ、ちょっと待て! 二人もいなくなったらそれは……」

 

 主戦力の二人が、ハジメについていくと言い出した。

 ここにいるクラスメイト達からは困惑の、あるいは悲痛の声が上がる。

 いかに彼女らが重要な立場にいたのか、よく分かる。

 

 そんなクラスメイト達を、

 

「……大丈夫。みんななら強くなれる」

 

 ハジメは、鼓舞した。

 

「今は、連れていけない。けど、強くなったら、連れて行くと約束する」

「……それは、本当なんだな?」

「もちろん」

 

 光輝の言葉にも、即答する。

 そして最後に、ハジメは目隠しをわずかに外して、可能な限り女子に視線は向けずに、皆の方を見る。

 

「だから、みんなが強くなることを祈ってるよ」

 

 そうして、目隠しを再び付けて。

 

「白崎さん、八重樫さん。行くよ」

「「はいっ❤️」」

 

 ハジメは、香織と雫を連れて、クラスメイト達の元から去っていった。




・南雲ハジメ:いい感じに香織と雫を連れて離脱。偶然とはいえ、クラスメイトに対してめっちゃ理想的なムーブをしている。

・天之河光輝:ハジメへのヘイトが少し溜まった。けど魔人族を殺してないし、ハーレムを欠片も匂わせてないので、ハジメへのヘイトはほとんど無いようなもの。

・魔人族の男:ハジメには流石に勝てないと判断して逃亡。めっちゃいい判断したと思う。
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