※この作品はR-18です。

淫魔王ハジメは世界最強   作:木崎楓

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戦闘全無視

 眠りから覚めたハジメ。

 カバンを枕にして眠りはしたが、それ以外が硬い地面なので、あまり寝付きはよくなく、明らかに疲労が残っている様子だった。

 

「……探索、いや、それより食事だ」

 

 一応、水なら何とかならなくはないため、すぐ死ぬということはない。

 だが食料は流石に無いため、やがては衰弱し、いつか餓死してしまう。

 

 とはいえここは洞窟、木の実どころが、草すら生えていない。

 魔物を殺して食べる……と、理由は不明だが、数十秒で死ぬらしいので、食べるべきではない。

 

「本当にどうすればいいんだ? 神水っぽいのはあるけど……コイツがあれば、魔物の肉を食べても死なない……死ぬ前にどうにかなる可能性は……」

 

 しかし毒物込みだとしても、食べられるのは魔物肉くらいなので、生き残るためには、奇跡に賭けて神水と一緒に食べるしかない。

 

「やるしかない、か」

 

 ハジメは決意し、魔物を殺すために色々な準備を始めた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 迷宮のとある場所に二尾狼の群れがいた。

 

 二尾狼は、四~六頭くらいの群れで移動する習性がある。

 単体ではこの階層の魔物の中で最弱であるため、群れの連携でそれを補っているのだ。

 この群れも例に漏れず、四頭の群れを形成していた。

 

 周囲を警戒しながら岩壁に隠れつつ移動し絶好の狩場を探す。

 二尾狼の基本的な狩りの仕方は待ち伏せであるからだ。

 しばらく彷徨いていた二尾狼達だったが、納得のいく狩場が見つかったのか、其々四隅の岩陰に潜んだ。

 後は獲物が来るのを待つだけだ。

 その内の一頭が岩と壁の間に体を滑り込ませジッと気配を殺す。

 

 これからやって来るだろう獲物に舌舐りしていると、ふと違和感を覚えた。

 

 二尾狼の生存の要が連携であることから、彼らは独自の繋がりを持っている。

 明確に意思疎通できるようなものではないが、仲間がどこにいて何をしようとしているのかなんとなくわかるのだ。

 

 その感覚がおかしい。

 

 自分達は四頭の群れのはずなのに三頭分の気配しか感じない。

 反対側の壁際で待機していたはずの一頭が忽然と消えてしまったのだ。

 どういうことだと不審を抱き、伏せていた体を起こそうと力を入れた瞬間、今度は仲間の悲鳴が聞こえた。

 

 消えた仲間と同じ壁際に潜んでいた一頭から焦燥感が伝わってくる。

 何かに捕まり脱出しようともがいているようだが中々抜け出せないようだ。

 

 救援に駆けつけようと反対側の二頭が起き上がる。

 だが、その時には、もがいていた一頭の気配も消えた。

 

 混乱するまま、急いで反対側の壁に行き、辺りを確認するがそこには何もなかった。

 残った二頭が困惑しながらも消えた二頭が潜んでいた場所に鼻を近づけ匂いを嗅ぎ出す。

 

 その瞬間、地面が突然一気に凹み、大きめの穴に落ちる。

 同時に、上からぐにゃりと蠢く岩石によって、二尾狼は押しつぶされていく。

 

 窒息、圧迫、圧縮。

 

 暴れようにも、天然物の岩石を砕くことはできず、やがて二尾狼の骨は折れ、砕け、動かなくなるのであった。

 

「うーん、ハメ技みたいだ……まぁこうしなきゃ倒せないんだけどさ」

 

 地面がうねり、穴が空き、そこからハジメが現れる。

 彼はずっと、地面や壁の内側で密かに敵を待ち続け、隙ができた所を不意打ちしてきたのだ。

 

 だが不意打ちとはいっても、単純に攻撃するのではない。

 彼がやったのは、“錬成”で密かに落とし穴を作り、そこに魔物を落とし、その後に落とし穴を埋めるために再び“錬成”を使用するという、ただそれだけだ。

 しかしそれだけで、よほど巨大な相手か、無酸素でも生きられる固有魔法でもない限りは、生き埋めにして窒息させ、殺すことが出来るというわけだ。

 

 ちなみに、どうやって敵の居場所を探っていたのかというと、雫の持っていた“気配感知”の技能を使用したのだ。

 雫は眷属であるため、ハジメも彼女と同じ技能を扱えるわけだが、それを利用して、壁や地面の中から相手の居場所を探り、不意打ちをしかけたのだ。

 

 ハジメ本人の戦闘力は高くないし、眷属三人のステータスや技能を総合したとしても、ここにいる相手にはほぼ勝てない。

 故に不意打ちに頼るしかなかったのだ。

 

「さっ、持って帰ろう」

 

 ハジメは生き埋めにして殺した魔物を外に出して、引きずりながら帰るのであった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 ハジメはこの広い階層の地面の下に、迷路のような空間を作っていた。

 その用途は、魔物を狩るため、安全地帯の準備のため、探索のためなど……とにかく色々と理由はある。

 地下なので基本的に敵対的な魔物には捕捉されにくいため、色々やるには都合が良かったのだ。

 

「ほい到着」

 

 死んだ魔物についても、そんな地下通路を経由して運んできた。

 拠点である、整備された大きめの空間に戻ってくると、ハジメは簡易的に作った包丁で魔物の肉を強引に切り出し、焼き始める。

 

 そしてしばらくして焼き上がると、ハジメは側に神水を用意し、深呼吸をして、肉に喰らいついた。

 

「っ、臭い……」

 

 肉食だからだろう、今まで食べてきた肉より圧倒的にまずい。

 塩胡椒でもあれば、味が変わったかもしれないが、今はそれすらないので、我慢して口へと運ぶ。

 

「……食えなくはないけど」

 

 まずいし硬いけど、全くダメではない。

 とりあえず、焼いた肉の塊については、ハジメは少し時間をかけたものの、完食することができた。

 

 完食したのだ。

 

「……?」

 

 普通は、食べてから数十秒で死ぬというのに。

 あろうことか十分くらい経っても、身体には一切の変化が無い。

 

「魔物肉は毒ってのは……ウソ、なのか?」

 

 流石にこれには、ハジメも困惑した。

 人間が食べたら死ぬはずの魔物肉を、平然と食べきって、ケロッとしているのだから。

 

「……ま、いいや。多分僕は例外なんだろうな、特異体質とかの」

 

 理由は分からないが、とりあえずそう結論付けて、ハジメはもう少し魔物肉を焼いて食べた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 その後ハジメは数日かけて、コソコソと地下通路を作りながら安全に探索を続け、次の階層への道を見つけた。

 ただ、上の階へ戻るための道は無い。

 そうとなれば、前へ進むしか道は無い。

 

 修行とかして魔物と戦える力をつけるより、さっさと進んで脱出して帰る方がいいということで、ハジメは神結晶や神水を回収すると、次の階層へと向かった。




・南雲ハジメ:基本的に魔物は不意打ちで殺す。今の自分では勝てない、あるいはかなりキツいと判断し、戦闘は可能な限り避けるつもり。



 今作のハジメは、魔物肉を食べても特に何も起きません。死にかけることもなければ、肉体が変質することもありません。もちろん、強化もされません。
 要するに、魔物が別の魔物の肉を食べた時と同じように、ハジメが食べてもただの食料として消化されています。

 今回もコメントいただけると嬉しいです。
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