男女比1対9の幻想郷に転生した魔理沙くん(♂)のお話 作:チノちゃん
男女比1対9の幻想郷に転生した魔理沙くん(♂)のお話
幾千もの綺羅びやかな流星と紅白に染められた光弾が辺りに飛び交う。
相手を傷付けるよりどれだけ魅せられるかを主観に置いた攻撃の応酬は舞い散る花弁のように美しい。
張り巡らされた弾幕の網の隙間を縫うように飛行する少女は一枚のカードを掲げ、高らかにその技を宣言した。
「──夢想封印」
「……げ」
しまったと思った時にはもう遅い。
紅白の巫女を中心に広がった七色の光弾が無防備に身を固まらせるこちら目掛けて殺到していた。
瞬間、衝撃が身体を駆け抜けて視界が暗転し、目の前が真っ白になる。
爆煙の中、上下感覚が掴めない状態で力無く浮遊感を味わいながら、墜落していくと、地面に激突する寸前でふわりと優しい感触に受け止められた。
どうやらまだ死んでいないらしい。
辺りに立ち込める砂塵に咳をしつつ、霞む目をこじあけると、黒髪に大きく真っ赤なリボンを身に付けた絶世の美少女の勝ち誇った笑みが視界一杯に広がった。
「これで私の三戦三勝ね──魔理沙」
「……俺の負け、かぁ」
途端にどっと全身を巡る疲労感を感じて脱力する。
自分と同年代の異性に横抱きにされているという現状は男として屈辱の極みだったが、抵抗する気力も湧かない。
この状況で暴れた所で軽くあしらわれるのは目に見えているし、枯渇した魔力の供給に一刻も早い休息を肉体が欲していた。
霊夢はそんなこちらの状態を見透かすように微笑みかけながら優しく地上に降り立つと、俺を神社の縁側にそっと横たえた。
(やっぱり霊夢はカッコいいなぁ……)
決して言葉には出さないが、内心で感嘆の声を洩らす。
美しい黒髪を風に靡かせ、空を自由自在に舞い踊る霊夢の姿は、まるで自分の理想をそのまま体現したかのような存在だ。
実力も然ることながら、本人のその何者にも媚びない超然的な在り方も、強い意志を宿す凛とした眼差しも、見る者を惹きつけて止まない。
それは“前世”では決して拝めることのなかったリアリティある博麗霊夢の姿であり、本来物語に過ぎないはずの夢想が現実として目の前にあるというこの奇妙な感覚にはいつまで経っても慣れる事がなく、俺はこうして彼女の姿に目を奪われることがしばしばあった。
──『東方Project』それは幻想郷という、外界から隔離された世界を舞台に人妖神が引き起こす様々な異変をスペルカードルールという特殊な決闘法を用いて少女達が解決していくSTGのシリーズである。
独創的なBGMに世界観、魅了溢れたキャラクターの数々が受けて、漫画や小説といった様々な派生作品を産み出すまでに至り、果てには饅頭型になったキャラが動画で解説したり茶番劇をするのが定番と化すというちょっと他に例を見ないコンテンツというのが東方の特徴だった。
『霊夢』や『魔理沙』といった自機勢は最早名前が独り歩きして、原作知識が皆無でも認知している人は多いだろう。
かくいう俺も数多ある二次創作から東方の沼に入り込んだ口だった。
幻想入りシリーズとか、在りし日は時間も忘れる程に見入った物である。
──だが自分が幻想入りするともなれば話は別だ。
それも、よりにもよって『博麗霊夢』と対を成すもう一人の主人公──『霧雨魔理沙』に転生するなんて。
「魔理沙……どうかした? さっきからボーッとしちゃって……私に負けたのがそんなにショックだったワケ?」
呆ける俺を訝しむようにして霊夢がこちらの顔を覗き込む。
一瞬の硬直。直ぐ様我に返った俺は服に付いた土埃を払いながら立ち上がると『霧雨魔理沙』ならこう返すだろうと自信満々に胸を張りながら声を張り上げた。
「今日はちょっと調子が悪かっただけだ! ……次は絶対俺が勝つ!」
「………………」
しかし予想していた反応は見せず、貼り付けた能面のような表情を浮かべた霊夢が俺に向かって、じりと近付いて来る。
「な、なんだよ……」
その瞳に宿る冷たい光に気圧されて一歩後退ると、視線を逸らした。
空を飛ぶ程度の能力とはよく言ったもので、霊夢は時折掴み難い突飛な行動を取ることがあるが、最近は特にそういった行動が顕著になりつつあった。
その全てを見通すかの様な視線を向けられると、まるで『お前は偽物』だと『本物の魔理沙はどこ』だと。霊夢にとっては知る由もない事のはずなのに、そう訴え掛けられている様で底冷えする気分にさせられる。
本当に、どうせ転生するならモブ人間か妖怪であればどれだけ良かったことか。
そうして幻想郷の片隅でひっそりと暮らして、偶に原作キャラの姿なんて見られたらそれだけで充分だった。
それでも、元より前世から小心者だった俺がリスクを冒してまで魔法を学び、弾幕ごっこに興じ、霊夢に近付いたのは偏にこの肉体の本来の持ち主である魔理沙に与えられるハズだった才能と未来を潰すのが余りにも惜しいと考えているからである。
前世から『東方Project』のファンだった俺の推しは何を隠そう『霊夢』と『魔理沙』。
王道過ぎて陳腐に感じる人も居るだろうが、一周回ってそれが良い、それがベスト。俗に言う『僕の見つけた真実はレイマリ』という奴だ。
後は単純に俺が居なくなった事で生じる霊夢の負担が怖い。
弾幕ごっこは飽く迄、力量差を埋める為の公平な決闘法であって、相手を殺める事を目的とした戦いではないのだが……それでも死ぬ時は死ぬし、東方のシリーズに依っては割りと洒落にならない異変が起こるのでなるべく原作通りにしたいというのが俺の本音である。
まあ既に俺が霧雨魔理沙を名乗っている時点で原作通り進行するのか甚だ疑問ではあるが、少なくとも紅魔郷、妖々夢、永夜抄、風神録とその他にも今の所は順調に異変は解決していっている。
ので、いくら俺が偽物といえど霊夢との信頼関係はそれなりに築けていると思っていたのだが……。
如何せん博麗霊夢という人間は異様と表現しても良い程鋭い勘の持ち主である。同時に人妖限らず何者に対しても平等だ。
俺が隠している事など既に把握していて、次の瞬間には『アンタもうウチ来ないで良いから』……侮蔑の表情と共にそう言い出しそうな恐ろしさは間違いなく持っていた。
そして俺は、前世からの推しにそんな態度を取られよう物ならショックで暫く寝込むかも知れない。
そこまで想像して、俺は無意識の内に膝を震わせてしまっていた。
博麗霊夢は強く、輝かしく、何者にもそまらない孤高の存在で、本来なら俺みたいな凡人が関わって良い人間ではないはずなのに、浅ましくもこの関係を手放したくないと思ってしまっているのが俺という人間の本音だった。
「……魔理沙」
沈み込んでいた意識がぐいと引き戻される。自然と俯いていた顔を持ち上げると、夜空より尚深い黒を湛えた瞳と視線が重なり、思わず身が強張った。
ともすれば互いの鼻先がくっ付いてしまいそうな距離まで霊夢が接近している事に気が付いて、ぎょっと身体を引こうとすると、いつの間にか腰へ回されていた腕がそれを許さない。
ふわりと甘い香りが鼻腔を擽った。
恐らく霊力で強化しているのだろう。華奢な身体からは想像も出来ない怪力で抱き寄せられ、思考する暇すら与えられずに俺は拘束された。
まるで逃げる事を許さないと言わんばかりに、腕の力が一層強まる。
次いで開けた両足の間に霊夢の足が差し込まれ、獲物をマーキングするかのように身体を擦り付けられる。
生々しい肌と肌が触れ合う感触。互いの熱が共有される感覚に羞恥と困惑で綯い交ぜになった感情のまま口を開閉させていると、一連の動作で沈黙を保っていた霊夢が一言。
「魔理沙、可愛……」
「…………は?」
その言葉の意図を問い質すより先に俺はあっさり解放された。
狐につままれた様な感覚で目を瞬かせる俺に、霊夢はその形の良い唇でにんまりと綺麗な弧を描く。
「私よりチビの癖に調子乗ってんじゃないわよ。ば〜か」
ぴんと指で弾かれた額を抑えると同時にけらけらと無邪気な笑いが境内に響く。
俺は暫し呆然とした後、漸く揶揄われたのだという事実に気が付いて、怒りとも羞恥ともつかない急速な感情の込み上げに頬が火照るのを自覚した。
「なっ……! 背はこれから大きくなるんだよ!」
「あっそ。それじゃあ早く大きくなんなさいよ。……私を越えるぐらいに、さ」
こちらの抗議を軽く受け流しつつ、霊夢は縁側に腰掛ける。そしてぽんぽんと隣を叩いて座るよう促して来た。
一瞬の躊躇の後、俺は小さく溜め息を吐いてから大人しく腰を降ろす。
こうして横並びになると分かり易いが、確かに霊夢の方が俺より一回り近く身体が大きかった。
それは霊夢の発育が特段よろしい……という訳ではなく、単純に家に籠もっては魔法研究に没頭していた俺が、碌な運動もせずに栄養も偏った生活ばかりをしていたツケである。
要するに自業自得という話だが、それはそれとして同年代の女子に身長で負けているのは男として傷付くものがあった。
今更な話だが俺──霧雨魔理沙は男である。
原作では間違いなく少女であった『魔理沙』の身体がどうして男性として産まれたのか。肉体に俺という異物が入り込んだ所為か、はたまた別の要因があるのか定かではないが、TSしていた場合の苦労を想像すれば前世と同じ性別というのは俺としては心底有り難い事だ。
その上見た目はハリウッドでもお目にかかれ無い様な金髪の美少年である。
流石にスカートは履いてないが、白のシャツに上下セットの黒いベストとズボンという出で立ちは、自分で言うのも何だがかなり似合っているのではないかと思う。
原作の面影を色濃く残しながらも美少年化した己の容姿を見て、そのポテンシャルの高さに自分が自分で無い様な感覚に陥るのは一度や二度の話ではない。
流石に霊夢と比較すれば明確に劣るが、大抵の物事はそれなりに熟せる才能もあるし、前世の自分とは雲泥とも呼んで良いスペックの違いに戦慄したのは記憶に新しい。
しかしそんな肉体でも欠点がある。
一つはまるで伸びる気配が無い身長……これは自分の年齢を考えたら将来に期待するとして、もう一つは『霧雨魔理沙』として過ごすのに明らかな不都合を引き起こす物──
「……ねぇ、魔理沙。今日も泊まっていくわよね?」
不意に声を掛けられて、思考に沈んでいた意識が浮上する。
すっかり茜色に染まった雲を眺めながら、何気なく、といった風に放たれた霊夢の言葉に背筋が凍り付いた。
原作の魔理沙なら一にも二にもなく肯定していた問いに俺は答えることが出来ない。
どれだけ魔理沙の行動を準えて、言動を模倣しようとも覆し難い性差の壁という物がそこにはあった。
「えーっとぉ……今日は、家に帰って魔導書の解析をしようと、思ってたんだが……」
「はぁ? そんなもん後で良いでしょ。もう夕飯もアンタの分まで買っちゃったんだから、泊まっていきなさいよ」
苦し紛れの言い訳も霊夢は柳眉をぴくりとも動かすことなく却下するので俺の冷や汗も加速する。
いや、こんな少女相手に何を意識してるのか。前世を含めたら一回り以上歳下の子供だぞ? と、冷静に指摘する自分が居るのも事実である。しかし、一度意識してしまったんだから仕方ない。
最初は良かった。あの時は俺も霊夢も今よりまだ幼かったし、言動も子供らしさを感じさせる物ばかりだった。
初対面こそ憧れのヒーローに会いに行く様な感覚で神社に足を運んだ俺も、霊夢のその在るが儘といった態度に惹かれて打算抜きで関わる様になり、良い友人関係が築けたと思っていたのだが……。
ちらりと隣を窺うと、端正な横顔が目に入る。
すっと通った鼻筋。伏し目がちでも強調される長い睫毛に透き通る白い肌。赤みがかった唇は化粧なんてしてないだろうにぷるりと艷やかに潤っていて、妙な色香を感じさせる。
この頃は身体の凹凸もはっきりしてきており、明らかに少女から女性へと羽化しつつある霊夢の艶姿に俺は動揺が隠せなかった。
その上で最近の霊夢はいきなり抱き着いて来たり、先ほどの様に無言で身体を擦り付けて来ることが非常に多い。
霊夢はどちらかというと過度なスキンシップを嫌う方の人間だったはずなので、どうして突然そうなったのか本当に理解出来ない。まあ、霊夢の事だから気まぐれだろう。
それでもまだ耐えられたのだが、先日遂に決定的な事件が起こった。
何時ものように博麗神社で駄弁って、そのまま一泊する流れになった時のことである。
寝室を開けば当たり前の如く用意された二枚の敷布団を見て、俺は流石に苦言を呈した。
『お互いにいい歳になったんだし、流石に同衾は辞めにしないか?』
それに対する霊夢の返答が、
『は? 新しい部屋掃除すんの、めんどい』
……である。
それでも尚食い下がって説得してみれば、『……何。アンタ、意識してんの?』揶揄う様にそう言われてしまえば何も言えない。
そうして半ば流される様に寝床を共にしたのが悪手だった。
ガラッという襖の開閉音に目が覚ます。
霊夢が厠にでも行ったかと、再び襲い来る眠気に身を委ねようとしたのだが、数分後に俺の意識は一気に覚醒へと引き戻された。
何を寝惚けてるのか、厠から戻って来た霊夢が俺の布団に潜り込んで来たからである。
寝ぼけている霊夢はそんな俺の意思など御構い無しに、まるで抱き枕のようにぎゅうぎゅうと抱き着いてきて、その柔らかな四肢を身体に絡めてきた。
首筋にかかる甘い吐息と寝間着越しに感じる感触。そして全身に吸い付く様な極上の柔肌。
『はぁ……?! ──オイ、馬鹿離せ……!!』
思わず素っ頓狂な声が漏れてしまうがそれでも霊夢は止まるところを知らない。更には俺の背中へ回した腕の強さを少し強めて、ぐりぐりと此方の胸板に頭を擦り付けてきた。
霊夢の髪から香る匂いのせいか思考がクラクラとする。
押し返そうにもガッチリホールドされていて全く身動きが取れない。俺が暫く悪戦苦闘していると、ふと下腹部に違和感を感じる。
恐る恐る視線を下げれば、霊夢の太ももが俺の股の間に差し込まれていて、俺の男として最も大切な部分に霊夢の膝が宛行われていた。
──幾ら何でも寝惚け過ぎだろ……。
『ばっ……おま……! それは、洒落にならないって……!』
必死に抗議の声を上げるも、暖簾に腕押し。
まるで俺の存在を無視するかの様に霊夢の行為はエスカレートする。俺の股の間に差し込まれた脚が、すりすりと丹念に擦り上げる様に往復し、それに伴う様に下腹部に熱が入り始める。
極めつけは『ちゅっ』というリップ音だった。首筋から頬に掛けて何度も繰り返される柔らかい感触。次いでぺろりと、水気を帯びた生暖かいモノが首筋を這う感覚にぞくぞくとした痺れが全身を駆け巡って──
『────あっ』
瞬間、酷く懐かしい快感が脳裏を掠めて、俺は間抜けな声を漏らした。
むくむくと股間に血流が集まり、あっと言う間にその体積を拡大させていく。
布団の上からでもくっきりと分かる程盛り上がったそれは男として当たり前の生理現象で、しかし、今世では初めてとなる感覚。
──実に十数年振りとなる臨戦態勢だった。
その後の事は思い出すだけで気が遠くなる。
舐り、擦られ。永遠とも思える時間、霊夢は俺を拘束し続け、その間俺はただ一方的に与えられる刺激を享受する他なかった。
やがて、一頻り弄んで満足したのか。ぴたりと動きを止めてぐうぐうと寝息を立て始めた霊夢を見て、俺は慎重に布団から抜け出すと足早に厠へ向かった。
──めっちゃ出た。
それ以来、霊夢と顔を合わせるとどうにもぎこちなくなってしまう。確かに前々から綺麗な顔をしているとは思っていたが、“そういう”対象では無かったはずなのに。
ふと霊夢を目で追っている自分が居て、一方的な気不味さを抱いてしまう。
きっと霊夢は純粋に同年代の友人ともっと遊びたいと、そう思ってるだけなのだ。本人は口が裂けても肯定しないだろうが、百戦錬磨の博麗の巫女ではなく、異変解決と妖怪退治以外はこの広い神社でぽつんと一人、掃き掃除をしながら暇を潰している霊夢の姿を見てしまった以上、強くそう思う。寂しくないはずがないと。
だから『霧雨魔理沙』は居なくちゃいけなかったのに。俺では彼女の代わりになることは出来ない。それなら、どうすれば──
「あ、そうだ」
ぽんと、手を打ち合わせた霊夢の言葉に現実へ引き戻された。居間の奥へと足早に引っ込んだ彼女は、暫くして上等そうな日本酒を両手に、にっこりこちらへ笑い掛けてくる。
「これ、妖怪退治の御礼に里の人から貰ったのよ。私一人じゃ飲み切れないから、今日はこれで晩酌しましょ!」
「いや、俺は……」
曖昧に返答しながら俺はあることに気が付いた。酒か、酒……。そう、酒である。
──酒を浴びるぐらい飲んで気絶しちゃえば、霊夢に欲情することも無いのでは?
思い付いたと同時に、それが妙に名案に思えた俺は一も二もなく霊夢に同調していた。
「──そう、だな。今日は飲むか。夕飯はどうする? 手伝うぜ」
「……それなら野菜を切るの手伝ってくれる?」
互いに取り留めのない会話を交わしながら、俺は台所へと向かって行く。
こちらを見る、霊夢の瞳が獲物を定めた獣の様になっている事にも気が付かないで。
俺はただただ友達との談笑を楽しんでいた。
・霧雨魔理沙(♂)
主人公。物心付いた時から魔法研究に熱中していた為に世間知らず。
故に男が異常に少ない事や女がやけに性に奔放な事にまるで気が付いていない。
魔理沙くんにするか、魔理沙ちゃんにするか最後まで迷った。
※評判が良ければ続きます
魔理沙くんの魔理沙
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デカ魔理
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ショタ魔理