※この作品はR-18です。

悪魔の許嫁 〜東京怪奇譚 外伝〜   作:鉄槻緋色/竜胆藍

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──2・ボクは完璧で究極のアイドル!

 

「お清めだよオキヨメ!」

 

 あの後、前後不覚に陥った祥子を放ってまたしばらく待たされ、そして再び現れた翡翠は、白い着物に緋袴の、巫女装束を纏っていた。

 髪も乾かしてサラサラに梳かれ、いつもの赤フレームにオレンジレンズのサングラスをかけている。

 

「可愛いでしょー」

「男なのになんでそんなに似合うの……⁉︎ 」

 

 祥子をして戦慄させるほど、それは良く似合っていた。

 正座で着席した翡翠は、テーブルに置かれた、届け物の封筒を引き寄せて自分の手元に置いた。

 

「ありがとね。今日はウチの用事で行けなかったからさ」

「用事って?」

 

 祥子がいつもの調子で訊いた。

 

「おいクソ度胸かよ」

「えっ⁉︎ 私なんか変なこと言った?」

 

 悠久郎の突っ込みに祥子が狼狽えるが、翡翠がヒラヒラとぞんざいに白い手を振った。

 

「いいって悠久郎。──ボク神主みたいな仕事もやってる身でさ。たまに学校休むのはそのお仕事してるの」

「へえぇ」

「って言うか、悠久郎も亞里亞も、たまに授業抜けてない?」

「あれ? そう言えば」

「おい翡翠。余計なこと言うな」

 

 祥子が小首を傾げたところで、悠久郎が言った。

 

「いや、もう呼んじゃったし、真・委員長だけだと風通し悪いし委員長にも言っといた方がいいって」

「え? なに? 真・委員長だけ知ってる事って」

 

 祥子がきょとんとするが、すぐに眉が釣り上がる。

 

「……副委員長です!」

「うん。ゴーストハンターってお仕事知ってる?」

「国家資格のインチキ宗教とか、迷惑系動画投稿者とか」

 

 それを聞いた翡翠が、黙って悠久郎を見た。

 

「俺は何も言ってねえぞ」

「まあ世間の認識ってそんなもんだよね」

 

 察したのか、翡翠はあっさりと祥子に向き直った。

 

「要は、ボク達は時間を選んでくれないお仕事に就いてるから、学校に許可取った上で──と言うかウチの学校が、そういう前提で生徒採ってるから、ボチボチ授業抜けてるのがいるのは、そういう理由」

「……インチキ宗教が?」

「インチキ宗教は忘れてよー。ボクらも困ってるんだからさー」

 

 テーブルの上にずべーっと上半身を投げ出して翡翠が訴える。

 

「どっちかって言うと、アイドルとか芸能人の学生みたいな生活って思って欲しいな!」

 

 指先でサインを組んで、翡翠がバチバチに地下アイドルっぽいポーズを決める。

 一方、悠久郎は我関せずと茶菓子を齧っていた。

 

「……いやまあ、学校認可って言うなら、私が文句を言う筋合いじゃないけど……」

「まあ細かいことはいずれ説明するよ。 それよりせっかく委員長来たんだからゲームしよ! マリカしよ!」

「いや、私ゲームとかあんまりやらな」

「いいから! こんなのただの玩具だって! 適当にボタン押してればなんとかなるよ! 楽しいよ!」

 

 隣の部屋からカラフルな携帯ゲーム機を幾つか抱えてくると、悠久郎と、祥子にも押し付けた。

 

 

 夕暮れも過ぎて、空には遠くに僅かな緋が残る程度。

 既に地上は街灯が無ければ困るほどの暗さだ。

 駅からも離れ、住宅街にも程遠い、そんな場所を、女子高生が独りで歩いていた。

 校則に準じた服装と身嗜みで、生真面目そうな、いかにもクラスでは委員長と目されていそうな少女である。

 そこに、エンジンの音と共に、後方から強いライトの灯りが差し足元を舐めた。

 ワゴン車が走ってきたようだ。

 女子高生は、僅かに車道から離れて歩いた。

 にも関わらず、後頭部に強い衝撃を受けて転倒した。

 何が起きたのか分からない。視界の端に、ワゴン車の車体が通過する瞬間の出来事だった。

 何にしても、後頭部と、地面へ激突の衝撃で、身体がガクガクと震えて言う事を聞かない。

 やがて急停止したワゴン車から、わらわらと人が降りてきて、女子高生の身体を乱暴に掴み上げると、持ち運び、ワゴン車の中に押し込まれてしまう。

 

(これは──)

 

 最悪の事態。まさか自分が巻き込まれるなんて──!

 

 

「ぎゃあああああ!」

「──また露吹さんちのお坊ちゃんかい」

「いつもいつも何やってるんだろうねえ」

「くわばらくわばら」

 

 日暮れの山村の集落では、村民たちが日常的に会話していた。

 

 

 すぐそこの厩舎から突如、雌馬が狂ったように悲鳴を上げて暴れ出し、柵を破壊して駆け出していった。

 それでも、陰茎と肛門に激痛と衝撃が残り、男は泣きながら股を両手で押さえて悶絶していた。

 ──対象と性別が異なる場合、相同器官にフィードバックが来る──

 

「ッ……翡翠ッ……ゆるっ、ゆるさなっ……!」

 

 

 翌朝の教室で。

 

「ありがとね亞里亞。委員長寄越してくれて」

「いいんだよー。よしよし」

 

 朝から亞里亞の胸に抱かれた翡翠がイチャイチャしていた。

 

「悠久郎も、委員長の護衛ありがとね」

「大したことしてねえよ」

 

 教室に、いつも通り伊井野祥子が入ってくるのを見て、悠久郎がぶっきらぼうに応えた。

 

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