女体指南
「助けてほしい女がいるのよ」
と、弥生に言われたのは、その朝のことだった。
私はカネのことかと思ったが、そうではなかった。
裸のまま眠った弥生は、その肉体を押しつけながら、ペニスを握ってきた。
私はあんがいと元気だった。
もう一週間ぐらい女の肉体から遠ざかっていたから、やわらかい手のひらで悩ましくまさぐられていると、もう一度できそうな気配が起きてきた。
「ふふ」
と、弥生は笑った。そしてこう言う。
「この前、町内会のお年寄りを世話する会で親しくなった奥さんがいてね」
「うん、この頃どこの町でもそんなことをやっているらしいね」
「でね、その帰りに2人で居酒屋に行って話が弾むうちにさ、彼女、オルガスムスなんか感じたことがない。と、言うのよ」
「亭主の一物が粗末か? よっぽど下手くそか・・・・・・」
「それがね、粗末ということはないみたいよ。それに下手でもないみたい。。彼女、何度か浮気して試してみたんですって。そしたら、あそこの大きさもすることも、ほかの男たちとたいした違いはなかったらしいの」
「ふうん、じゃあ不感症、ってやつか?」
「だけど、そんな風には見えないないのよね。美人でグラマーだし、男嫌いでもないし・・・・・・」
「グラマーはあんがい不感症が多いんだよ」
そう言って私は、あまり大きくない弥生の乳房をギュウと握った。大きくはないから、そう型崩れしていない。かといって、小さいわけでもない。
弥生が悩ましく喘いだ。
「ああん、またしたくなっちゃうわ」
「さっきからその気になっているくせに」
「でも、その前に話しておくわ。しれでね、あなた、会ってみてくれないかしら?」
「まさか、抱いてみろ って事かい?」
「そう」
「俺みたいな爺が抱いたって何ともならないよ」
「わからないわ、あなたって、すごくいい男よ」
「おい、おい・・・・・・」
それだけ言うと、弥生はもう肉体を下にずらして、70歳にしては元気なその肉棒をしゃぶり始めていった。
宮崎由紀子と会ったのはその一週間後、同じホテルだった。
確かに美人で色っぽいグラマーだった。
私は昔、〇〇〇良子という女優がいたのを思い出した。
ポッテリとした唇と妖しい切れ長の目が印象的な由紀子である。ただ、彼女の装いは、なんだか一昔前のファッションを思い浮かばせるような、妙にあか抜けない花柄のワンピースを着ていた。
私は正直、弥生の話から同じ年ごろかと思っていたのに、目の前にいる由紀子は30代にしか見えなかった。年がいっていてもせいぜい40代前半だろう。
だったら、たとえ不感症の女性だろうと触れるだけでももうけもの。
そう思うことにした。
フロントのそばにあるティールームで会い、由紀子はかなり緊張したような表情で、
「よろしくおねがいします」
と、言った。
悪い女ではないようだ。ただちょっと真面目すぎるのだ。いや・・・かなり真面目すぎるのだろう。
こういう女の気持ちをほぐしてゆくのは、きっと大変だろう。気持ちをほぐすことが、身体をほぐすことだと、私は思っていた。
「ほんとに私なんかと一緒にベッドに入ってくれるんですか?」
とりあえず、それだけは確認しておきたかった。
巧く口説いて何とかしろ・・・と、
言うのでは70の老人には荷が重すぎる。
私は着るものにあまり凝るたちでもなく、オシャレでもない。ありきたりのグレーのブレザーに、白いワイシャツを着ているだけでネクタイもしていない。
クソ真面目な女が好みそうな服装ではない。
何かしら口に含んでいるコーヒーが妙に苦かった。
目の前の由紀子は、座ったまま深く腰を折り、
「はい。もう、ここまで来て逃げ出したら弥生さんに叱られます」
「いや、そんな事を気にしないでいい。正直言って、私のような爺さんと寝るなんて貴女がかわいそうだと思っているんだから・・・」
「そんな・・・・・・あなたは、わたしが想像していた以上にステキな方です」
「ありがとう」
私がにっこり笑うと、由紀子は急に恥ずかしそうに顔を赤く染めた。
それから、
「失礼します」
と、言っていきなり立ちあがり、ティールームから外に出て行ってしまった。
私は、呆気に取られてその姿を見送りながら小さく呟いた。
「何だよ・・・・・・」
腹が立ったのではない。むしろ半分はホッとしたような気分だった。
精神の病気を抱えているのだろうと思った。
ところが、4~5分たって由紀子は俯きながら戻って来た。
「すみません。急に・・・・・・」
「いや、そんなことはかまわないけど、まだ決心は変わりませんか?」
「はい」
「じゃあ、気が変わらないうちに部屋に行きましょう」
とりあえず由紀子の悩みを聞いてやろうと思っていたのだが、もう、こうなったら、ベッドに引きずり込む方が先かもしれない。
エレベーターの中で、手を握ってゆくと、かるく握り返してきた。
安心はできないが、望みがないでもようだった。
まあ、浮気をしたことがないわけではない女なのだから、こちらもそう意識過剰になることもないだろう。
部屋に入ると由紀子はすぐにバスルームに駆け込んでいった。
おやっと思ったが、バスルームから逃げ出すこともない。
私は、余計なことは考えまいと決め、冷蔵庫からビールを取り出した。
由紀子の風呂は、けっこう長かった。
ビールを1本飲み終えたころに、バスローブをまとった姿で戻って来た。
ソファに座った私が、振り向きながら、
「あなたも飲みますか?」
と、言うと、無表情のまま硬い声で、
「いいえ」
と、言ってソッポを向いた。
「じゃあ、私もシャワーを浴びてくることにしよう」
やれ、やれ、やっかいな女だと、胸の中で呟いた。
弥生が相手なら、いきなりスカートを捲り上げても楽しく交歓できるのに、いま同じ部屋にいるのは、いったい? どういう生き物なのだ・・・・・・。
私がバスルームから戻ると、由紀子はもうベッドの中に入って、目から上だけを布団からのぞかしていた。
とりあえず、ヤル気にはなっているらしい。
横に滑り込んで手を伸ばしてゆくと、驚いたことにすでに裸になっていた。
いい心がけだ。私は少しほっとした。
豊かな乳房、うっすらと脂肪がのって柔らかく波打つ下腹。肌も、申し分なく滑らかだった。
なにしろ、エリートサラリーマンの妻である。そういう肌のケアは、ふだんから金をかけて充分に手入れしているのにちがいない。
太ももも、弥生よりもひとまわりムッチリとしたボリュームがあった。触るのも撫でるのも手ごたえ充分である。
ただ、さすがにあまり反応はない。
「私とキスできますか?」
こんなことをいちいち聞かなければならないところが、70歳の老人である身の悲しいところである。
由紀子は、あいかわらず緊張したような表情で ハイ と、うなずいた。
横から軽く抱きながら唇を当てていった。苦いものを飲み下ろすような顔で由紀子は、私の唇を受けた。
頃合いを見て、舌を差し入れていった。拒む気配はなかった。
勢い込んで、舌を絡めたり強く吸い上げたりしていった。
ところが・・・・・・
由紀子が、ひどく苦しげな息を吐いてくるようになった。
初めは感じているのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
気になって唇を話すと、今にも息が止まってしまうような勢いでゼイゼイと息をした。
これには、私もたじろいだ。
「大丈夫?」
と、聞くしかなかった。
ようやく息を整えて由紀子は、泣き笑いの顔になって答えた。
「私、キスをするのが、とっても下手なんです」
「ご主人とは、あまりしないの?」
「ええ、いつも2~3分で終わってもらうようにしています」
そりゃあ、ご主人が可愛そうだ」
私は、弾力充分の乳房を撫でながらそう言った。
撫でている感触は申し分ないが、由紀子は、ほとんど感じないらしい。
多少、感じているような演技をするが、それもぎこちない。
もったいない・・・・・・
亭主もかわいそうだが、彼女自身だって、女として生まれてきた張り合いがないだろう。
「だけど、主人もキスは下手だし、そんなに興味ないみたいです」
「ふうん、わかるの?」
「そりゃあ、弥生さんからお聞きになっていると思うけれど、わたし、2人と浮気したんです。それで、主人が、とってもキスが下手なのがわかりました。ほかのことはそんなでもないんですが・・・・・・」
「そうか、たぶんご主人はキスで失敗してしまったんだな」
初夜の失敗が尾を引いているのかもしれない。
もともと根が真面目な女だから、
「セックスなんか気持ちいいものではないのだ」
と、思い込んでしまったのだろう。
それに、処女膜を破られたときの痛みのショックもあるだろうか。浜上げされたマグロのようになったまま由紀子は、こう言う。
「わたし、主人を愛しておりませんの」
それは、いいわけだ。
「愛なんか関係ない。いやな男が相手でも、感じる女性は感じる」
私は、ムッチリした太ももの付け根の間にある女の部分に手を伸ばして言ったが、まったく濡れていなかった。
陰毛は濃く密生している。2枚の肉襞も大ぶりでいやらしかった。
でも、濡れていなかった。
それでちょっと苛立ち、この女が哀れにも思った。
「ごめんなさい、わたし、ほんとにつまらない女なのです」
「そんなことはない」
自分をつまらない女だと思っているのなら、まだ見込みがありそうだ」
私は、股間のワレメに触るのをやめ、静かに頬を撫でてやった。撫でられながら由紀子が言った。
「あなたは、ほかの男の人とは違うみたい」
「そりゃあね。年寄だから、あまりあわてない。じっくり楽しんでみたいんだ」
たぶん、亭主も含めた由梨絵が出会った男たちは、みなこの生々しい柔肌を触るだけでいい気持ちになり、勝手に通り過ぎていってしまうだろう。
私は言った。
「キスの仕方を練習してみようか?」
「え?」
「だから、もしこの年寄が気持ち悪くないのなら、あなたの方からあなたのペースでキスをしてきてみなさい」
私は下になって由梨絵を抱いた。
柔らかく豊かな肉の波に包まれる感触は、ぞくぞくするほど気持ちよかった。
由紀子が感じようと感じるまいと、
「やれりゃ儲けものだ」
と、いう男の気持ちはわからなくもなかった。
上になって由紀子は、はにかんだように笑った。いい兆候だ。
私のペニスはもう硬くなってきている。
それが、由紀子の恥丘のふくらみに当たっている。
彼女が少し腰をよじった。
「わかるかい?」
「ええ」
また、ひっそりと微笑む。
「私が、わかるかい と、聞いて、それが何のことかわかったということは、少し感じ始めてきている、ということだよ。さあ、キスしてくれよ」
「はい、こんなの、はじめて」
由紀子は最初は恐る恐る、それからしだいに情熱をこめて舌を絡ませてきた。
私は、ときどき後押しするように絡め返してやった。
由紀子はこのキスのかたちが、かなり気に入ったようだった。
私に下から励まされながら、ずいぶん長い時間続けていた。
少しずつ、少しずつ、腰が揺れてきて、恥丘の肉を押し付けながらペニスをこねまわしてくる。
ようやく唇を離し、
「ああ」
と、由紀子がか細く切なげに喘いだ。
私は、お得意のセリフを吐いた。
「濡れてきたかい?」
由紀子は、こくりと頷いた。
「私のチンチン、咥えてみたくなったかい?」
また、幼い子のようなしぐさで彼女は頷いた。
「私も君のあそこを舐めまくりたいんだ。もう、1時間でも2時間でもしゃぶり回したいんだ」
「ああ、そんなこと、されたことないわ」
「されたら、どうなる? 想像してごらんよ」
「わかんない」
「いいさ。2人で舐めっこしようよ。それが、どんなふうな体位になるか、わかるね君が私の顔の上に跨るんだよ。いやらしいなあ」
「ああ、どうしよう。わたし・・・・・・」
わたしの顔の上に跨ってくる由紀子の大きな白い尻が震えていた。
その谷間からのぞく大ぶりな肉襞の間から、しずくが筋を引いてこぼれていった。
(ここからが勝負だ)
と、私は思って、つい口元をニヤリとさせてしまった。
了