そして平野は時坂に誘われる。それは彼が人生で初めて味わう淫蕩の快楽である事は今の彼は知る由も無かった。
少女は平野の右腕をガッチリと掴んでいた。そして我に帰った平野は叫ぶ。
「や、やめろ! 君まで落ちる! 頼むから離してくれ! 俺を死なせてくれ!!」
「何を馬鹿な事を言ってるんですか! 死んだら何もできなくなるんですよ! 勿体無い……じゃなかった、命を粗末にしないでください!!」
一瞬だけ少女の言葉が何故かワントーン落ちたが、説得の声の力が勝っていた為に平野は気にしなかった。と言うより、今にも落ちそうなこの状態で気にする余裕も持てなかったのである。藻掻く平野の腕をむんずと掴み後ろにジリジリと引き寄せる少女。見た目よりも力があるらしい。結局、少女の献身によって平野は落下せずに済んだ。落下防止のフェンス際で二人は膝をつく。二人とも全身汗だくだ。
「とにかく、一度落ち着いてください。話はそれからゆっくりと」
平野は少女の言う通り従った。
フェンスを昇り、内側に戻る二人。少女がカバンの中から水入りのペットボトルを取り出すと平野に手渡してきた。
「どうぞ飲んでください。気持ちが落ち着きますよ」
そして少女に促されるまま、五百ミリリットルのペットボトルの水を一気に飲み干す平野。最後に水分を口にしたのは二時間程前だ。喉も乾ききっていただろう。
「ようやく落ち着いてお話ができますね。私は剣道部一年の時坂 久美と言います。貴方のお名前は?」
「二年の平野 孝一……元・野球部だ」
「先輩だったんですね、失礼いたしました。さっき先輩が取った行動と元・野球部と言うのはもしかして関係しているのではないのでしょうか?」
「! ……鋭いね。ああそうだ。だから死のうと思ってさ」
「何があったのか教えてくれますか?」
「……君に話してどうなるってわけでもないけどね」
平野は久美に事の顛末を説明した。最後まで言い切ると平野は大粒の涙を流した。
「何もかも無くしちまった……全部アイツのせいで! 何もかも奪われた!! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!!」
膝を抱え悔し涙を流す平野の頭を久美が抱きしめた。彼女の優しい匂いが鼻をくすぐる。その柔らかな乳房の弾力が心地よく、一瞬だけは石橋への憎しみを忘れることができた。
「先輩……誰だって辛い時や悔しい時はあります。今まで良く我慢してきましたね。でも今だけは私の胸で沢山泣いて良いですからね」
「! ……――うわぁあああああああああああああああああああ!!」
頭を撫でられ一気に感情をせき止めていたものは崩れていった。平野はそのまま泣きわめき石橋への憎しみ、そして志乃を取られた悔しさと今でも捨てきれない彼女への愛情を吠えたてた。
涙もようやく止まり、心がようやく軽くなった平野は久美へ感謝の言葉を述べた。
「……ありがとう時坂さん。ようやく落ち着く事が出来たよ」
「どういたしまして。先輩……貴方が死んだら、きっと悲しむ人が居ます。だから生きてください」
「何だか君に心配かけちゃったね……うん。もう死のうだなんて思わない」
「そうですよ! 本当に勿体ない!!」
そう言うと久美は平野の手を握る。そして提案をした。
「! そうです先輩、今から一緒に来てください。傷ついた先輩をしっかり癒してあげます!」
屋上に置いてあった荷物を持って久美はそのまま歩き出した。久美の手の暖かさに平野は少し照れくさくなる。
七月の夕方はまだ陽が高い。時間はまだ五時だ。一階まで降りると校舎の中でも一番奥、旧校舎へ向かった。旧校舎へ向かう間に平野は男子生徒たちの噂を思い出す。廊下の途中に鉄扉が出てきた。防火扉かと思われたが若干造りが違って視えた。久美は鞄からカードキーを取り出しカードリーダーに読み込ませる。数秒待つとガコンと大きな音が聞こえて人間が出入りできるくらいの小ぶりのドアがゆっくり開いた。平野の頭の中で噂の詳細が浮き彫りになっていく。
―― この学校の旧校舎、厚い鉄扉の向こうには通常使わない別の保健室「第二保健室」があるという ――
―― そこには本校舎に滅多に顔を出さない特別な保険医が居て、主に男子生徒の心のケアを行っているらしい ――
―― 更にそのケアは保険医だけでは無く、一部女生徒たちも部活動として参加している ――
―― そこに集まる者たちの正式名称は「保険互助会女子部」 ――
―― 通称『クソビッチ部』 ――
鉄扉から先に進み長い廊下を歩く。あまりに建物が奥まっているせいか廊下の窓を見ても生徒の姿は全く見えない。歩いていくと遠くから動物の鳴き声らしきものが聞こえてきた。どこかで猫か犬が盛っているのだろうか? 廊下の突き当りが見えてきた。いよいよその声が大きくなって聞こえてくる。久美が手前の引き扉を開ける。
「雪乃先生、失礼します」
「ひゃあああああああ♡♡ もっと、もっと攻めて♡ んあぅ♡ 姫子の♡ おマ✖コも♡ お尻マ✖コも♡ どんどん、どんどん突いてきてぇええええええええ♡♡♡」
ドアを開けたその部屋では、ベッドの上で妙齢の女性が男たちに膣と肛門を容赦無く貫かれ快感に身悶えて嬌声をあげていた。
「こ……これは?」
「流石に驚きますよね? 私たち保険互助会の活動です。今日は……アニメ研究会の皆さんですね」
久美はホワイトボードに貼られていた予定表を確認した。直後、女教師を貫いていた男たちが呻き声を上げながらおびただしい量の精液を放つ。
「はうぁあんっ!♡♡ あふぅっ♡ ひぁあああん!♡♡ あぁあああああああああんんっ♡♡♡♡」
前と後ろから同時に攻められる快感。そんな快楽の渦に揉まれ、感覚はどんどん絶頂まで高められていく。そして──
「んはぁあ♡ イクッ!♡♡ イグゥウウッ!♡♡♡ あぁああ~~♡♡♡♡」
姫子は絶頂に達した。だが、それでも二人は動きを緩めない。それどころか──
「あぁああんん♡♡ イッてるのにぃ♡ また激しく動いてるぅううう♡♡♡♡♡♡」
さらに激しく抽挿を続ける。二人の生徒たちからの、姫子への奉仕はまだ終わらない。そして……
「んああああああああああ♡♡ またイッちゃうううううううううう♡♡ おマ✖コもお尻マ✖コも大量のザーメンドボドボ注がれてまたイッちゃうううううううううう♡♡♡♡♡♡」
女性の膣と肛門に大量の精液が注がれ逆流している。生徒たちの男根が引き抜かれるとコポコポと精液が泡をたてて噴き出す。女性は火照った呆け顔で自らの膣に手を宛がい零れて来る精液を掬って、手の中に溜まった精液をジュルジュルと飲み下して微笑んでいた。
「ウフフ……やっぱりザーメンは搾りたてに限るな。この臭い、この味……生命そのものを飲み干している感じが実にたまらない……♡」
「お愉しみのようで何よりです。姫子先生」
「ん?」
久美の声に気付いた姫子がホワイトボードの前に立っていた彼女に顔を向けた。
「何だ久美じゃないか。来ていたとは気付かなかった」
「ええ。私の声も聞こえないくらい皆さんのケアに勤しんでいたみたいですね」
「うむ。すっかり楽しんでしまったか。さて君たち、立つことは出来るかね?」
姫子の声に男子生徒たちはすっかり虫の息だ。恐らく先ほどの射精の前にもう数発くらい姫子から搾られていたのだろう。良く見ると奥のベッドでも何人かうめき声をあげてグッタリと寝ころんでいた。いったいこの部屋で男子生徒たちとどのくらいの回数セックスしていたのだろうか?
平野が呆然としていると久美がお茶を用意してくれた。
「どうぞ召し上がってください」
「あ……はい。頂きます」
口に含むと鼻をくすぐる優しい香りがした。先ほどの驚きも幾分かは落ち着いた。
「では私たちの部活動について簡単に説明させて頂きますね」
久美から”保険互助会女子部”の説明が行われた。だいたいは噂の通りで校内の男子生徒に身体を提供し性的経験を促すものとの事。実際フィクションで見られるような幸せな学生生活を送れる生徒なんて能力に優れた者、運が良かった者だけとなる。この部活はそんな寂しい生徒たち、女子との性体験を渇望する男子生徒たちへ何かしらの報酬と交換で校内でも指折りの美少女たち、そして色気立つ保険医との性体験を経験させるというものだ。
「まぁお陰で”クソビッチ部”とか俗な呼び方もされているがな」
裸体に白衣だけ纏った保険医・雪乃姫子がお茶をすすりながらボヤいた。
「それだけ私たちの活動が認知されてきている証拠です。快く思わない女生徒も居るようですが、基本的にそのままでも男子生徒が寄ってくるのですからお互いの不利益にはならないはずです」
久美が姫子のボヤきに応える。
”保険互助会女子部”を利用するのは女子生徒との交流が無縁な男子生徒や男子教員が主となる。また社交的な女生徒に抵抗感がある者も利用していた。だがこの部活には絶対ルールが存在していた。それは……。
「童貞であること。それ以外の者が利用したい場合は部員から厳しい審査が行われる」
眼鏡を光らせながら姫子が二杯目のお茶を飲みながら呟いた。
「厳しい審査……ですか?」
「ええ。そのままでも女生徒が寄ってくる方や女の子に乱暴をしそうな方はお断りする事が多いですね」
久美も姫子の言葉に続けた。この部活はあくまで童貞男子や寂しい独身男性の為のものだとの事。その為、一度ここに訪れたものは何か特別な事情が無いと再びここに来ることは難しくなるそうだ。
「私たち好みのチ✖ポをしているとか、どのくらいセックスが上達するか経過観察をするとかだな。或いは彼女と別れてトラウマを負った男子生徒とかも特例で呼ぶ事もある。勿論見返りは頂くがな」
そう言うと姫子は親指と人差し指で円を作りニカッと笑った。その笑顔に平野は嫌そうな顔で返した。
「学生から金取ってるんですか……?」
だがそれを久美が訂正する。
「お金とかじゃないんですよ。定期テストで一定以上の成績を出して頂くとか、そこまでの成績が見込めない方は特別補修に参加して頂いたりしています。また部活動をされている方は部活で成果を出して頂いたり、帰宅部の方は部員募集している部に入部して頂くとかです」
「結構現実的なんですね……」
実際これがこの学校の利益を生んでいる。”良い性体験が良い人生を歩ませる” これがモットーらしい。
「さて遅くなったな。私がこの第二保健室の保険医・雪乃 姫子(ゆきの ひめこ)だ。宜しくな」
「あ、はい……」
そう言うと姫子は孝一に右手を差し出した。思わず握り返すも孝一の視界には白衣から見え隠れする姫子の乳房や乳首が気になってしまった。白衣から覗いている姫子の肌はその名前の通り白く、またキメが細かかった。顔立ちから辛うじて二十代半ばと思われるが、その屈託の無い笑顔から零れる魅力はまるで十代少女のようにも見える。髪は金髪。北欧系の顔立ちにも視えたが目鼻口のパーツの造形は日本人の顔立ちにも視えた。実の所初対面と言うわけでも無かったが、何分入学式の時に教師の列に並んでいたのを見かけた程度だ。こうして直接対面し言葉を交わすのは今日が初めてである。
「そんなに緊張する事は無いぞ、平野孝一くん」
「! なんで俺の名前を?!」
「おいおい、これでも一応保険医だぞ? 全校生徒の顔くらい知っているさ。君は確か野球部だったね……今日は部活じゃないのかい?」
「! ……野球部は辞めました」
「おや、これは初耳だ。久美が君を此処に連れてきた事と繋がりそうだね」
ニヤリと笑うその美貌に胸がドキリとした孝一は口中の唾をゴクリと飲み下した。
「何があったか、教えてくれないか?」
「はい……」
筆者の唐です。序章第二話”ボーイ・ミーツ・ビッチガール(2)”をご覧になって頂きありがとうございます。
アンケートのご協力ありがとうございました。改めましてこちらでも次話投稿に関してのアンケートを行いますのでどうかご協力をお願いします。
前回11/4か5を目安にとお伝えしていましたが、アンケートの否定意見が無かったので考え直し、今回前倒しで更新させて頂きました。
今回は保険医・雪乃姫子の塗れ場でした。短めでしたがその分濃い目にしたつもりです。如何でしたか?
筆者の練り込みが甘かったもので登場人物(予定)の苗字が姉妹で無いのに被るわ、竿役2人、孝一と石橋で名前の漢字表記が被るわと、それに今日まで気付いてなかったとか……なかなか阿呆な事を実施していたのだと気が遠くなりかけましたが、これも怪我の功名と感じ、改めて表記し直しを実施しました。お時間ある方はご覧頂ければ幸いです。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=302633&uid=432240
さて順当に行けば次は11/4か5に更新となります。1週間1本ペースで行けたら幸いですね。とは言え宣伝申し訳ありませんが、あくまで別作のこち亀ギーツが主となっていますので、そちらの更新次第で変更となります。ご了承お願い致します。
では次回にまたお会いしましょう。
この小説の続きを、
-
読みたい。
-
読みたくない。