イレブンと二人、ルーラで跳んだ先はバンデルフォン地方・ネルセンの宿屋だった。
「懐かしいな・・・」
明るい日差しの中、カミュが宿とその隣の風車塔を見上げながら呟く。
「うん。君と僕の”初めて”の場所だよね。」
「ははっ・・・」
イレブンの言葉にカミュが軽く笑う。宿屋に入ると早速部屋を取り、宛がわれた部屋へと向かった。
「・・ん・・・」
「は・・・っ・・」
部屋のドアを閉めるなり唇を重ね合い、互いの頬や首、髪を愛撫する。一瞬離れた時、カミュが熱っぽい目で見上げると、イレブンは彼の望みを察して顎を捉え上向かせ、噛みつくように彼の唇に食らいついた。腰を抱き後頭部を抱え込み口内を蹂躙する。呼吸さえ奪うような激しいキスに、カミュは息苦しさに耐えながら喜びの喘ぎを零した。
「はっ・・・、イ・・・レブン、・・・・」
「カミュ・・・」
漸く離れたときには、カミュはフラついて足に力が入らなかった。イレブンの首に緩く両腕を廻し、彼の胸元に凭れかかる。
「・・・なぁ、一緒に風呂、入ろうぜ?」
「うん。」
白い外光に満たされたバスルームの中で、二人は生まれたままの姿になった。ソープをたっぷり入れて湯を溜め始める。イレブンが先にバスタブに入り手を差し伸べると、カミュはその手を取り向かい合ってともに腰を下ろした。湯が溜まるにつれて白い泡が雲のように泡立つ。
「・・・メダ女のゲストルームに滞在していたとき、さ。」
「うん?」
それぞれの手に握られたスポンジで互いの身体を優しく擦りながら、イレブンが口を開く。
「僕がバスルームで君とイチャイチャしようとしたら君はひどく驚いた顔をしたよね?」
「え?ああー・・」
「付き合っている二人がこういうことするって知らなかったの?」
「・・・んなこと今更いいじゃねえか。」
カミュが僅かに頬を染め、口を尖らせる。
「ふふ、そうだね。」
イレブンがカミュの内腿を擦った時に、彼が既に兆し始めているのがわかった。
「・・・・一度ここで抜いておく?」
「ああ。その方がいいかもな。」
ここは旅人のための宿屋で“連れ込み宿”ではない。ベッドに行為の痕跡を残すべきではなかった。イレブンがバスタブの中でカミュの身体の向きを変え、彼を背中から抱き締める。
「・・・そういや、“初めて”のときはどうしたんだよ?俺、途中で寝ちまったけど。」
「それはもちろん、気を失った君の身体を綺麗にしてもう一つのベッドに運んだ後、シーツを手洗いしてベランダに干したよ?」
「そうか・・・寝ちまって悪かったな・・・ん・・・」
イレブンが話しながら、カミュの下腹と乳首に触れる。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
カミュ自身を扱かれながら乳首を弄られて、白い泡の雲の中でカミュが身を捩った。イレブンは頃合いを見て胸を弄っていた手をカミュの双球へと伸ばす。
「はぁ・・・っ!」
双球を揉まれ自身の先端を巧みに弄られてついにカミュが達し、ぐったりとイレブンの肩口に凭れ掛かった。息を弾ませるカミュの顎をイレブンが捉えて唇を重ねる。
「・・・そろそろベッドに行こうか?」
顔を離すとにっこり笑ってイレブンが言った。
二人は裸のままバスルームを出て、ベッドへと縺れ込んだ。口づけながら互いの素肌を探り合ううちにイレブンがマウントを取り、カミュの手首を掴んでシーツに縫い留める。胸の粒を含み舌を絡めるように愛撫すると、擽ったいようなもどかしいような刺激にカミュは細い腰を蠢かせた。
「おまっ・・・、そこばっか・・・!・・・ぁ・・・」
口でたっぷり愛した後、イレブンは片手をカミュの手首から離し、下腹へと伸ばした。
「・・・出したばかりなのにまた濡れてる。そんなに気持ち良かった?」
イレブンの言葉にカミュはカッと頬を染めた。
「た・・・溜まってただけだ!」
思わずそう言い返したカミュにイレブンが追い詰めるように迫る。
「カミュ、強がってないで素直になって?一緒に気持ちよくなろうよ。」
「・・・・・・。」
年上のプライドから『今日を待ち望んでいた』とは言えなかったが、イレブンの真っすぐな双眸に観念した。
「・・・わかったよ。抱いてくれ、イレブン。」
カミュの言葉にイレブンが嬉しそうに微笑む。
「あ・・・イレブ・・・ひゃ・・・」
イレブンの大きな手で腰を掴まれ引き締まった腹や腰骨にキスされた後、中心を口に包まれてカミュは小さく悲鳴を上げ、腰をビクつかせた。
「あっ・・・あっ・・・さっきイッたばっかなの、にっ・・・!」
一度イッて敏感になったモノの先端を舌で、手で幹を扱かれ、空いた手でも双球を弄られて、カミュはズクンズクンと広がる強い快楽に身悶えた。カミュ自身が芯を持ち頭を擡げてくると、イレブンは顔を上げてそこを解放した。
「二度目は僕のでイって、ね?」
「おま・・・あっ・・・!」
イレブンがカミュに覆い被さり、掌と指先で彼の身体中至る処を愛撫し、唇と舌を這わせて吸い、噛み痕をつける。
「あ・・・」
甘美な責め苦が漸く止むと、無防備に放心していたカミュは脚を持ち上げられ、後腔をヌルついた指で触れられたときにはっとして目を開けた。
「久しぶりだから、丁寧に解すね。」
「・・・んな、丁寧にしなくていいぜ?予め・・・解しといたから・・・」
ほんのり赤くなった顔を隠すように片腕で目元を覆いカミュが告白すると、イレブンが口元を緩めフ、と微笑った。ナカを掻き回される、ゾワゾワする感覚。
「今日は俺が動く。」
やがてそこが十分に解れたとき、カミュは起き上がりイレブンをベッドに押し倒した。一方的にやられっ放しは性に合わない。彼に跨り、猛ったモノに慎重に腰を下ろしていく。
イレブンが見上げると、若い肢体を惜しげもなく晒したカミュは午後の明るい光の中で輝くように美しかった。ゆっくりと、イレブン自身がカミュの中へと入り込む。
「あ・・・あ・・・」
指とは比べ物にならない圧倒的な質量。
「・・・・はぁっ・・・」
カミュの中はキツく温かく、イレブンは満ち足りた溜息を吐いた。互いの息遣いの音しか聞こえない中で暫く見つめ合い、怒張が隘路に馴染んだ頃。
「・・・動くぜ。」
カミュが言うとイレブンは微笑んで頷き、彼が動くに任せた。緩く勃ち上がったカミュ自身が互いの腹の間で揺れる。
「あ・・・っ」
雁首がナカのしこりを擦ったとき、カミュは息を呑んだ。すかさずイレブンが大きな手でカミュの腰骨を掴み、そこを狙って腰を突き上げる。
「あぁ、あぁ・・・あぁ・・・あ・・・っ・・・」
しこりを擦られる度に快感が脳天を突き抜け、カミュは仰け反って掠れた悲鳴を上げ続けた。
いつしかカミュ自身も完全に勃ち上がり、透明な先走りが幹を濡らした。繋がったままイレブンが起き上がって、今度はカミュをベッドに押し倒す。カミュがぼんやりと自身に圧し掛かる男を見上げると、明るい光が満ちる部屋の中で彼は神話に出て来る太陽神のように眩しかった。
イレブンの抽挿は徐々に速まり、壊れた人形のように彼の両側でカミュの細い脚が揺れる。
「や・・・っ・・・イ、レブ・・・っ・・・」
最中、イレブンが手を伸ばし、カミュの硬くなった乳首をカリ、と掻くとトプ、と透明な先走りが更に零れ、カミュ自身が痛いほど張り詰めた。それを見てイレブンがラストスパートをかける。そして・・・
「あっ・・・はっ・・・・ああーーっ!!」
カミュの瞼の裏で星が弾け、イレブンは彼の白濁を掌で受け止めた。
「・・・ふっ・・・はぁっ・・・イレ、ブン、」
「僕がイくまでもう少し付き合って?」
「あ・・・っ!おま、・・・激し、過ぎ・・・っ・・・」
蒼い目を潤ませてイレブンを見上げたカミュはより一層激しく衝かれて悲鳴を上げた。
「好き・・・カミュ、君が好きだよ・・・」
額に汗を滲ませながら、イレブンが呟く。
「僕、も・・・もう、すぐ・・・!」
そして絶頂を迎えた。
午後も遅くなり和らぎかけた陽の光が部屋を満たす中、二人は向かい合い裸で同じベッドに横たわっていた。
「カミュ、綺麗・・・」
イレブンの指先がカミュの身体中につけた吸い痕と噛み痕をそっとなぞる。
「この痕が消えないうちにまた君とシたい・・・」
「ふはっ・・・できたらいいな?」
「うん・・・。・・・ねえカミュ、今、幸せ?」
「・・・ああ、とても。」
「それを聞いて僕も嬉しい。」
「・・・お前は?」
「え?」
「お前は今、幸せか?」
「すごく幸せ。」
「そいつぁよかったぜ。」
カミュが笑う。
「・・・・お前と旅を始めた頃、こうなるなんて夢にも思わなかった。」
「カミュ。」
――たぶんセーニャがいなきゃ、こうはならなかった。
「きっかけを作ってくれたセーニャに感謝しなきゃな。」
『・・・・きっと、何もかもうまくいきますわ。』
ファーリス杯の前夜にセーニャがサマディーで言った言葉を懐かしく思い出す。
「僕は仲間みんなに感謝してるよ。もちろん君にも。」
イレブンの言葉にカミュが微笑む。そして彼の澄んだ碧瞳を見つめているうちに一つの夢を思い描いた。
「・・・なぁ、いつか、二人でお宝探ししようぜ?この広い世界には色んなお宝がまだまだ眠ってるかもしれねえ。俺はお前と世界中を回ってそのお宝を全部見つけてみたいんだ。」
「いいね。・・・・眠ってしまわないうちに、そろそろ戻ろっか?」
「・・・・・・ああ。」
*
「あなた!イレブン様!」
「パパ!」
聖地ラムダの西側にある双賢の姉妹の生家に近づくと、家の前で遊んでいた幼子とセーニャが二人に気づいて駆け寄って来た。
「いい子にしてたか?」
「うん!」
カミュが子供を抱き上げると、桜の花びらのような可愛いお口から元気な返事が返った。
「ダーハルーネまで送るよ。」
「それでは両親とお姉様に挨拶してきますわ。」
イレブンの申し出にセーニャが家の中へと入って行った。少しして彼女と一緒に両親と、出会った頃に比べて随分と背が伸びたベロニカが見送りに外へ出てきた。
「たまには寄っていきなさいよね!」
腰に手を当て、口を尖らせるベロニカにイレブンは済まなそうに眉をハの字にした。
「・・・また今度ね?」
「じゃーな。」
「それではお父様お母様お姉様、また来ますわ。」
カミュに抱っこされた幼子も紅葉のようなお手てを振る。そして次の瞬間にはルーラの光が四人を包んだ。
*
「父上!」
「あなた、お帰りなさい。」
カミュ一家を送った後、ルーラでデルカダール城へと跳んだイレブンをマルティナ王女と幼い王子が出迎えた。
「あなたの留守中、何も問題はなかったわ。」
「そう、よかった。・・・いい子にしてた?」
「はい!」
イレブンは私室で市井の服から王族の衣服へと着替えながら、幼い王子に話しかけると元気な声が返った。
「ユグノアからロウ様がいらしてるの。お父様と応接間でお話ししているから会っていったら?」
「そうだね。」
イレブンは着替え終わると我が子を抱き上げ部屋を出て、マルティナとともに応接間へと歩き出した。
「彼、相変わらず?」
「うん、元気だったよ。次は君がセーニャと過ごす番だね。」
「ええ。今から楽しみよ。」
マルティナが嬉しそうに言い、そして思慮深く呟いた。
「・・・やっぱり友情結婚しかなかったわね。王女の地位を取り戻しても自分が幸せになるために法を変えるなんて、おいそれとできるはずもない・・・。」
「今、みんな幸せだよ。もちろん僕も。」
「ふふ、よかった。・・・さあ、着いたわ。」
マルティナは微笑んで応接間の扉に手を掛けた――
◇
「・・・・・・?」
ぼんやりとした目に映ったのは、豪華な応接間ではなく、木の天井だった。軋む首を苦労して動かして横を見る。
「イレブン!気が付いたのか!」
カミュが真っ先に気づいて駆け寄り、他の仲間も彼に続いた。どうやらここはコテージの中らしかった。
「気分はどうだ!?」
「僕は・・・」
「氷の魔女に氷漬けにされかけて気を失ったんだ。」
「ああ・・・」
ミルレアンの森での出来事を朧気ながら思い出す。そして心配そうな顔で見つめるカミュに微笑んだ。
「僕なら大丈夫だよ。」
「もう、目覚めないかと、思った・・・。本当によかったぜ!」
涙を浮かべながら自身に縋りついたカミュを見てイレブンの胸が熱くなる。
「身体が回復するまでしっかり休むといい。」
聞き慣れぬ声に、イレブンは初めて仲間の後ろに立つモノクルを掛けた年配の男性の存在に気づいた。
「あなたは・・・」
「私は魔法学者エッケハルト。君が元気になったら氷の魔女について私が知っていることを話そう。」
魔法学者はそう言って頷いた。
*
紆余曲折の末、氷の魔女を倒してクレイモランを救い、ブルーオーブを手に入れた一行はゼーランダ山を登り聖地ラムダを通り、始祖の森へと入った。
「いよいよ明日は命の大樹のもとへと向かうのね。何か緊張してきたわ・・・・。」
始祖の森・キャンプ地。夜空で輝きを放ちながら浮かぶ命の大樹を見上げながら、ベロニカが呟く。焚火を囲み、セーニャが奏でる竪琴の優しい調べの中、静かに言葉を交わしていたが。
「さっ、みんな。おしゃべりはその辺にして休みましょ。夜更かしはレディの天敵よん♪」
シルビアの言葉に皆、寝ることにした。
「・・・・ねえ、カミュ。」
月光が僅かにテントの帆布を透過する幾分柔らかな闇の中で、イレブンが隣に寝ているカミュに小声で囁いた。
「うん?」
「・・・氷の魔女の魔法で気を失っていたとき、僕は幸せな夢を見ていたんだ・・・」
「夢?」
「うん。旅を終えて数年後?かな。君とセーニャの間に子供が産まれていて、僕とマルティナの間にも。そして君と僕、セーニャとマルティナは今みたいに恋人同士で。」
「・・・・・・。」
――そうだ俺は、プチャラオ村でイレブンと『恋人』になったんだ。
そしてカミュはイレブンがシケスビア雪原で生死の境を彷徨っていたとき、初めて彼を失うかもしれないという恐怖に襲われたことを思い出す。眠る彼の血の気のない、美しい彫像のような顔に生きた心地がしなかった。
「ねえカミュ、きっとそうなるよね?」
イレブンが頭をカミュの方に向ける。
「・・・気が早えな。大樹に着いたって旅が終わるわけじゃねえってのに。」
――俺はきっと、イレブンのことを・・・
イレブンへの気持ちを自覚して顔が熱くなるのを感じ、カミュは彼に背を向けて寝返りを打った。
「でも・・・・そうなるといいな?」
小さく呟き、微笑みながら目を閉じた。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。