※この作品はR-18です。

Triangle   作:ちま

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メダル女学園。主カミュ、カミュセニャ

メダ女についての考察と独自設定:1. 外観は3(4?) 階建て 2. 先生や職員の宿舎がない 3. 受験生や保護者が泊まるための部屋がない 4. 女子寮に旅人を泊めるのはちょっと考えられない 5. 例えDQHのようにルーラストーンがあるとしても食材を大量かつ頻繁に買い出しに行くのは大変 以上のことから、このお話では校舎東棟2階は先生・職員の宿舎、3階はゲストルーム、校舎裏手に畑や畜舎があるという設定にしました。


第9話 白樺の森の学び舎

 勇者一行は宮殿前の人魚にクエストの報告をすべく海底王国ムウレアを再び訪れた際、女王からメダチャット地方にある女学校の校長を訪ねるべき、との助言を得て西の海へとやってきた。

 メダチャット西の島を過ぎ、左方にシスケビア南の島を通り過ぎて奥へと入り込んで行くと、崖に囲まれた狭い袋小路の海の中に光の柱が見えてきた。

「女王サマの言っていた通りね。真っすぐ向かうわよ~~♪」

 シルビアが意気揚々と舵を切る。そして着いた光の柱でマーメイドハープを奏でて白光の渦潮に潜り、気の遠くなるような距離を経て浮上した先は、閉ざされた海だった。

「学校は北の方角にあるはずじゃ。北へ進むぞい。」

 船着き場に降りると地図を確認しながらロウが言い、皆が頷く。魔物を蹴散らしながら進み、左手に湖を通り過ぎた処で立て札を見つけた。そこには二股に別れた道の左側に行くと王立メダル女学園があると書かれていた。

 一行が白樺の木々が両脇に生い茂る小径を北西へと進んで行くとやがて道が開け、アーチ状の門の向こうに大きな建物が見えた。

「あれがきっとそうね。」

 ベロニカが前方の建物を見て呟いた。

 

*

 

「類まれなる才能を持つあなたを我が校の客員生徒として認めましょうぞ!」

 校庭で偶然出会ったメダル女学園の校長に請われて学園の中庭にある小屋-校長室-を訪れたイレブンに校長が言い、次いで渡されたメダルスタンプ帳に所持しているメダルの数だけ押印していく。結果、スタンプ25個を達成し、イレブンは校長からメダ女の制服をもらった。

 

「メダルの見返りにシルバーオーブが手に入る、ってことじゃなかったんだな。」

 イレブンが校長室から出て廊下で待っていた仲間に校長から言われたことを説明すると、カミュがガッカリしたように言った。

「それでも折角ここまでやってきたのですから、情報を集めてみては?」

「そうね。手分けして学園の人から話を聞きましょう。」

 セーニャとマルティナの提案に皆が頷き、1時間後に今の場所に集合することを決めて相棒組は校庭、マルティナ・セーニャは校舎1階、他の三人は校舎2階と、それぞれ情報収集に取り掛かった。

 

 一時間後。

 情報収集に駆け回った結果、赤い制服のスケバン・ハンナ、副校長のグレース先生、リップスのブリジットから、計3件のクエストを引き受けた。

「・・・うーん、シルバーオーブに結びつくような手がかりはなかったね。」

「授業をしている教室には入れなかったの。終業を待って生徒や先生に訊いてみるのはどうかしら?」

 イレブンにマルティナが言い、一行は校舎南東にある教室の前で待つことにした。やがて授業が終わり、教室から出てきた人たちに片っ端から尋ねた結果、ミチヨ先生から『怪鳥の宝玉』という本が図書室にあること、生徒会長アイリスからは下級生のノントトが銀色の宝石を持った極楽鳥を追いかけて迷子になったことがあることなどを聞くことができた。

「よし。次は図書室に行ってみようぜ。」

 カミュの掛け声に一行は図書室に向かった。

 

 図書室にはノントトと受付にスライムつむりのチコがいた。チコはなぞなぞを考え中、ノントトは学校一の読書家で図書室の本を全部読んだということだった。アイリスの言をノントトに確認すると確かに『銀色の宝石を持った極楽鳥』を見たとのことで、ついでにミチヨ先生の言っていた『怪鳥の宝玉』という本のことを尋ねたらすぐに見つけて渡してくれた。

「『怪鳥の宝玉』に依ると、どうやらシルバーオーブはここから東にある『怪鳥の幽谷』にあるみたいだね。」

「『メダ女の七不思議』って本に『窓際のローズさん』てのがあって、不慮の事故で命を落としたメダ女の生徒が夜の自習室に現れてただじっと窓の外を見つめている、って話だ。何か伝えたいことがあるのかもな?」

「イレブンちゃん、不思議な鍛冶のレシピブック『おしゃれダイアリー』を見つけたわよ。」

「私も『ネックレスカタログ』を見つけましたわ。」

「ふむ。『メダル王物語』はなかなかよい話じゃったわい。」

「『魔物の背中で弁当を』って本、けっこう面白かったわよ。」

「ローザン・クロティアさん、とても素敵な女性だったようね。」

 イレブンが『怪鳥の宝玉』を読んでいる間、他の仲間も役に立ちそうな、あるいは興味深い本を見つけていた。

「・・・あっ!もう夕方!?」

 皆が本の内容や感想を話す中、橙色に染まった窓を見てマルティナが慌て出した。

「どうしたの?」

 ベロニカが不思議そうにマルティナを見上げ、セーニャは何かを思い出したように手を口に当てた。

「クエストですわ!校庭へ向かいましょう!」

 

『私の青春をここに埋めるわ。夕方、思い出の木の影が伸びる先へ。どうか受け取って私の親友。』

 図書室に卒業生が残した古い日記の伝言を調べるというグレース先生のクエストだった。一行が校庭に行き、北西隅に植えられた大木の夕陽に伸びた影を辿ると、影の先、白い花が円形に植えられた花壇で小箱を発見した。

「それじゃな。」

「早速グレース先生にご報告に行きましょう。」

 ロウが頷き、マルティナが小箱を大事そうに持ち上げた。

 

「あの時ケンカなんかせず、ちゃんとおめでとうと言ってあげてたらと何度も何度も後悔していたの・・・・。」

 小箱の中に入っていた手紙を読んで、グレースが一筋の涙を零す。そして同封されていた赤いリボンをそっとマルティナに差し出した。

「・・・あなたを一目見た時、私の親友の若い頃にそっくりだと思ったの。きっと似合うわ。このリボンはあなたがつけて?」

 グレースの親友が自身の母だと知ったマルティナも濃紫色の瞳に涙を浮かべて『思い出のリボン』を受け取った。

 

「もうすぐ日が暮れるわ。どうする?イレブンちゃん。」

 シルビアが今夜の寝場所を確保していないことに気づき、イレブンを振り返った。

「いざとなればルーラがあるけど・・・校庭の片隅にテントを張ってもいいか訊いてみるよ。」

 イレブンが食堂のカウンターにいる、白衣を着たセクシーなルージュ先生に訊きに行くと、意外にも学校に泊まってもいいという答えが返って来た。

「本来なら受験生や保護者を泊めるためのものなのだけれど、あなたたちは何か事情のある旅をしているようだし、三階東側のゲストルームを使ってもいいわ。厨房や食堂も空いているときは使ってもいいわよ?」

 ルージュはイレブンに微笑んでアイシャドウの濃い片目を瞑って見せた。

 

「・・・というわけでゲストルームに泊まれることになったんだ。学生さんたちが夕食を終えるまで食堂や厨房は使えないから、それまで自由時間にしよう。」

 イレブンの通達を受けて皆が散って行く中。

「セーニャ、少し話したいことがあるんだが・・・ここじゃ何だから外へ行かないか?」

 カミュはセーニャに立てた親指で外を指し示し、先に歩き出して食堂のドアから校庭へと出た。もはや黄昏時で遥か上空が藍色に染まっていた。カミュが落ち着いて話せる場所を探して辺りを見回すと、すぐ右にある大木の向こう側にベンチがあった。ハンナは今はいない。

「とりあえず座ろうぜ。」

 カミュがベンチに腰を下ろすとセーニャも彼の隣りに座った。

「・・・あー・・、その、船の上で、俺たち将来の約束をしただろ?」

 少ししてからカミュが緊張した面持ちで切り出した。

「ええ。」

「だから、もうデーティングを終わりにして俺たち、恋人同士にならないか?」

「・・・・・・。」

「セーニャ?」

 カミュが黙り込んだセーニャの方を見る。濃くなり始めた夕闇に彼女の金髪が暗く染まっていた。

「・・・・今はまだ、デーティングを終えたくありません。」

 暫くして、セーニャが言った。

「・・・けど、俺はイレブンと十分な時間付き合ったぜ?あんたとマルティナだってそれなりの時間を過ごしただろ?話せば二人ともきっとわかってくれる・・・」

「できません!」

 セーニャはかぶりを振った。

「カミュ様のこと、好きです。ですがきっと旅の間しか・・マルティナ様と一緒にいることはできない。だからせめて・・・旅の間だけは、マルティナ様と素敵な思い出を作りたいのです。デーティングを続ければ、カミュ様もイレブン様と過ごせますわ。」

「いや、だから俺は・・・」

「カミュ様・・・。」

『イレブンが好きなわけじゃない。』と続けようとして、いつかの船での時のようにまたもや遮られた。両手を組み合わせ必死な眼差しで見つめるセーニャに、カミュはそれ以上何も言えなくなってしまう。カミュは後ろ頭を掻きながら小さく溜息を吐いた。

「・・・ああ、わかった。それなら、旅を終えるまでは・・・このままの関係でいよう。」

「カミュ様・・・ああ!ありがとうございます!」

「んむっ・・・」

 セーニャに不意打ちでキスされてカミュははにかむように微笑む彼女をただ見つめることしかできなかった。

 

*

 

 夕食は料理人のドーソンさんの厚意で賄いが出された。皆が礼を言って食卓に就く。

「明日は怪鳥の幽谷に行ってみよう。」

「うむ。無理はせず、キリのいい処まで進んだらちょくちょくルーラで戻るのがよいじゃろう。」

「午前中はお手伝いしなくちゃだし、その後少し休んでから出発しましょ?」

 校舎の裏手には広い畑と牛舎・鶏舎があり、学食のための食材の一部を時給自足で賄っていた。シルビアの言う『お手伝い』は宿泊させてもらう代わりに労働を申し出たことによる畑仕事や家畜の世話で、一行の申し出にルージュはいたく感心し『好きなだけいてくれていいわ』と言ってくれた。

「うん、そうだね。・・・カミュ?どうしたの?随分静かだけど・・・」

「え?あっ・・・ああ、俺、学校なんて入ったことなくてさ。何もかもが新鮮で・・・ちょっと圧倒されてたんだ。」

「・・・お城にも闘技場にも入ったことあるヤツが何言ってんのよ。」

 ベロニカがスプーンを口に運びながらボソッと呟く。

「カミュ様のお気持ち、わかりますわ!広々とした校庭、花々が咲き乱れる花壇、壮麗な学び舎、奥ゆかしい緑色の絨毯に可愛らしいスズランの形をしたランプ!ああ、夢のような学校です!」

「私の母は、こんなに素敵な学校で少女時代を過ごしたのね・・・。」

 両手を組み合わせ、目を輝かせながらセーニャが言うと、マルティナも感慨深く呟いた。

「・・・そう言えばカミュが昼間読んだ本、『メダ女の七不思議』だっけ?食べ終わったら『窓際のローズさん』に会いに自習室に行ってみる?」

 イレブンがニコニコしながら提案すると、カミュは顔を引き攣らせた。ホムラの里の蒸し風呂で小さな女の子を幽霊と勘違いして腰を抜かした彼を知っているイレブンは安心させるようににっこり笑った。

「みんなと一緒ならきっと怖くないよ?」

「おっ・・・俺は別に怖くなんか・・・」

「じゃ、決まり。行こう?」

「え。・・・あ、ああ。」

 渋々同意したカミュに皆が小さく笑った。

 

 夕食後、一行は『窓際のローズさん』が現れるという校舎北東の自習室――昼間、シスター・ノエル先生がいた教室へと向かった。

「もし何か伝えたいことがあるなら、聞いてあげないと。」

 イレブンが楕円形のシーリングライトと壁のスズラン型ランプの優しい光に照らされた廊下を歩きながら言った。

「・・・ここだね。」

 自習室に着き、ドアを横に滑らせる。窓際に、小さな人影があった。制服を着たオカッパ頭の少女だった。少女に皆がゆっくりと近づき、イレブンが話しかけると少女は驚いて振り返った。

「あたしが見えるの?すごい、すごいわ!」

 そしてローズと名乗った幽霊は自身がいつ死んだのかと心残りがあって成仏できない旨を語った。だがその心残りが何かを聞き出すことはできなかった。

「またね。」

 会話のループにこれ以上訊き出すのは無理と判断し、イレブンはローズに別れを告げて仲間とともに教室を出た。

「心残りがあるならさっさと言えばいいのに。」

「お姉様。話したい気になるのを待ちましょう。」

「少し時間を置いた方が良いようじゃの。」

「またこの学園に来ることがあるかも知れないわ。」

「そうよね。今日はもう遅いし寝ましょ♪」

 皆の会話をシルビアが締めくくり、一行はこれで解散し休むことにした。

 

「それじゃ、アタシとロウちゃんが相部屋になるわね~~!」

「あたしとセーニャとマルティナさんは三人部屋を使うことにするわ。」

「あ、おい・・・」

 東棟の三階に着くや否や、カミュが何か言う前に皆さっさと行ってしまい、イレブンとカミュがその場に残された。

 ――またこのパターンかよ・・・

 カミュが既視感に溜息を吐くと、イレブンの手が肩に置かれた。

「君がセーニャとデートしている間にみんな部屋を下見してたんだ。僕たちはこっち。」

 先に歩き出したイレブンの後についてカミュは客室の一つに入った。ベッドと小机、クローゼットがあるだけの質素な部屋だった。

 カミュが割り当てられたスペースに荷物を整理していると、背にムズムズするような視線を感じ、振り向いた。イレブンが優しい眼差しでカミュを見ていた。

 ――・・・うっ。二人きりになるとイレブンはいつも今みたいな目で俺を見るよな。何だか居心地悪い、っつーか、落ち着かない、っつーか・・・

「カミュ。」

「お、おう!?」

 カミュは裏返りそうになる声で少しビクつきながら答えた。

「・・・寝る前にお風呂一緒に入らない?」

「へ?一緒に風呂、って・・・」

「明日は朝から労働しなきゃだから、あまりその・・・遅くまで起きていられないでしょ?」

 ――?・・・順番に一人ずつ入ったって、んな時間がかかるようなモンでもねえと思うけど・・・

「マルティナもさ、ほら、ダーハルーネで激しい雨に遭ったとき宿屋に駆け込んでセーニャと一緒にお風呂入ったんだって。」

「ああー・・」

 ――きっと雨に濡れて、順番に入っていたら待っている方が風邪引いちまうと思ったんだろうな。

「けどそれは・・・」

「カミュ・・・ダメ?」

 イレブンが子犬のような目でカミュを見る。

「・・・あー・・」

 ――ホントに俺、イレブンのこの目に弱いよな。ま、一緒に入った方が時間の節約になるのは確かだけどよ。

「まあ・・・そうだな。なら、一緒に入るか?」

 後ろ頭を掻きながら答えると、イレブンはぱあっと明るく顔を輝かせた。

「じゃ、じゃあ早速入ろ?」

 イレブンが頬を紅潮させ、ウキウキした様子でカミュの手を引く。それがまるで暖かい日に小川で水遊びするのを待ちきれない子供のようでカミュは思わず笑みを零した。

 

 そして。浴室に入ってからカミュはすぐにイレブンの意図を勘違いしていたことに気づき、後悔した。




次は怪鳥の幽谷。
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