日本の地獄として、有名な血の池。
そんな血の池を思わせるこの場所において、響いている音楽が聞こえる。
俺は、その音楽に惹かれるように、ゆっくりと歩き、その場所に辿り着く。
「相変わらず、引き続けているのか、太夫」
俺の声を聞いてから、後ろに振り返らず、そのまま三味線を弾いていた。
「まったく、こんなあちきに何の用だ」
薄皮太夫.この血の池で三味線を引き続ける女。
その姿は、顔はウミウシを思わせるように思わせ、人ではなく異形である事が一目で分かる。
彼女は、外道衆の紅一点。そして、総大将・血祭ドウコクの側近。
いや、正確にはだったというべきだ。
「……俺の事を恨んでいるのか?」「恨むと言われてもね、ドウコクの奴は、あれで、満足そうだったからね」
俺は、外道衆のボスであるドウコクと正面で戦い、そして、殺した。
「ドウコクの奴は、あれで楽しそうにしていたよ。あいつは、正面から一対一で戦えるあんたを気に入っていたよ」
そう言いながら、演奏を続ける。
ドウコクは、シンケンジャーの世界でも、封印の文字がなければ、倒せなかった程に強い存在だった。
俺が対抗出来たのは、オーマジオウの力があったからだ。
だが、ドウコクは最後まで、どこか楽しそうにしていた。
そして、あの頃から、太夫は、ドウコクの傍にいた頃もそうだったが、今の姿も変わらない。
そして。
「あいつとの勝負でもあり、約束を一つ、果たす為にも来たからな」
「勝負とは」
三味線の演奏を止めて、こちらを見てくる。
それは、ドウコクとの最後の決戦の話でもある。
「お前を取る事だ」
その言葉に対して、太夫は何も言わず三味線を持ち上げてから弾き始める。
それを見て、俺はため息をつく。
俺の言葉に対し、太夫は何の反応もない。
「それは、どういう冗談だい」
「冗談ではないな、ドウコクの女だったお前を俺の女にする。それで、最後の戦いになる」
「あちきごときに何が出来ると思っているんだい?」
三味線の演奏を続けながら言う太夫に対して、俺は、笑みを浮かべる。
その瞬間に、太夫の顔色が変わり、三味線から手を離す。
「本気なんだね」「あぁ、勿論」
俺の返事を聞いた太夫は、深く溜息を吐いた後で三味線を地面に置く。
「はぁ、本当に、お前もドウコクも、なんであちきのような女を狙うんだが」
それと共に、こちらを見る。
「……良いよ、ドウコクの代わりにあんたの誘いに乗る。けど、あちきの心を取れるかは、分からないよ」
「あぁ、そうさせて貰うよ」
そう、これまでとは違う行為が、始まろうとしていた。