玄関口、後ろから夕雲を縫い留める。
哨戒で付着した潮の匂い、仕事終わりの夕雲型の制服が、禁忌の気配を漂わせていた。
ここはまだ日常の領分だ。シャワーも浴びず、靴も履いたまま、私の情欲はモラルの分水嶺を容易に飛び越えようとしている。
「これからキミを犯そうと思う」
びく、と肢体が震えた。
左手は胸に、右手は下腹に。
服の上から産毛に触れるつもりで指を滑らせる。男の体格でがっしりと少女の背中に覆いかぶさりながら、指先だけは繊細に赤子を扱うように撫でていく。
いいところには触れない。
胸は肋骨から鎖骨までをなぞり上げ、下腹はへその下あたりを丁寧に。敢えて単調に繰り返していると掠れるような吐息を漏らし始めた。思わずキスをしたくなったが我慢した。まずは責めたてると決めていた。
耳たぶにそっと口を近付けて、息を送りこむように囁いた。
「ずっと考えていたんだが……」
やや指を深く押しこんで僅かな弾力を確かめる。
胸の手はふにふにと乳房の柔さを確かめるように。下腹の手は奥の子宮に熱を送りこむようにさわさわと。
「優しくするか、苛めてしまうか……」
少女の吐息が少しずつ荒くなってくる。
「どちらがキミの好みなのかな」
汗ばむ肌から甘い匂いが立ち昇る。20代で無くなってしまう少女特有の甘いニオイ……名前は何といったか、身体をまさぐりながら記憶を探ったが浮かばない。何度か吸って、諦めた。この匂いがたまらない、それでいいじゃないか。
舌を伸ばして首筋を舐めてみる。少ししょっぱい気がする。潮のせいか、汗のせいか。何度も這わせて味わってみる。
「待って、ください……シャワーを……」
「浴びなくていい」
耳を噛む。
「ん、くぅ」
ぬらぬらと耳を舐めしゃぶりながら、先ほどは触れなかった部分――左手は乳首に、右手は性器に触れていく。
「ひ、はぅ、……ぅ」
押しこむ。
擦る。
摘みあげる。
逃れるように身をよじられるがそんな程度で逃がしはしない。
右手をスカートの中へと潜りこませる。未成年の柔肌を手のひらで直に感じながら下着の中へと五指を侵入させると、瑞々しい太腿がぎゅうと挟みこんでくる。構わずに中指と薬指の二本を軽く立て、入り口の周りをこすってやる。
「く、ぅうっ」
小刻みに続けると夕雲の声が上ずった。
腰が浮き、弾力のある尻が私の陰部に押しつけられる。
指を這わせて陰部の形を確かめてから前触れなしでクリトリスの根元を押し潰すと、艶のある嬌声があげられた。しかしすぐに止まってしまう。
見れば夕雲は下唇を噛みしめていた。
ひきつった白い首筋を見ていると征服欲が沸々と立ち昇ってくる。
弱点を容赦なくこすりあげ、間断なく刺激を与え続けると夕雲の背が弓のようにのけぞった。艶のある長髪がふわりと広がるが、それでも夕雲は声を漏らさない。
まずいな……。
苦悶の表情にますます股ぐらが熱くなってくる。
指先にぬめりを絡ませながら、再び耳元で囁いた。
「夕雲」
ぞわりとうなじが震えた。
「止めてほしかったら言いなさい」
膣穴に指を突き立てた。
「――あっあっぃっぁあ」
やや深く挿入し、恥骨の裏あたりを押してやる。
身をよじり、逃げようとするのを左腕で抑えながら、容赦なく擦り上げる。
「はぅっ、く、ぅううう……!」
細い声と同時に、指がぎゅうぅと締めつけられる。
全身を硬直させ、びくびくと痙攣する身体を抱きしめながら、私はほとんど間をおかず右手の動きを再開させた。
「あッ――ま、待っ」
過敏なほどに反応し、腰が跳ねる。
指を更に奥へと進ませる。掌で恥丘を覆うような形で浮かせ、指二本を深く根元まで挿入する。奥側を広げるように指を開いて、肉をかき出すように動かしてやる。
「やっ、だめ……いっ、いぁああッ」
震える耳朶に口を近寄せて、
「どうした?」
「いっ、いまはッ、い、ま、はァ」
「今は?」
「だめ、だめ、う、ぁっ」
「だめ? どうして?」
「い……いき……イキ、ました、からぁっ」
「そうか。イったか」
太ももには痙攣が走り、うなじに汗も浮いている。指先に絡む愛液は粘りを増して、爪先立ちになって少しでも膣肉を弄り回す男の指先から逃れようとしている。
「それで?」
いっそう強く抱き留めて、震える横顔を見つめて問いかける。
無論のこと右手指は膣穴を擦り続け、更にクリトリスにも刺激を加える。
夕雲は限界まで身をのけぞらせる。口を開き、「あぅ、ああ」と鳴いた。
「イキ、イ、キ、まし、たぁ……」
「うん。イったな。それで?」
「やめ、や、めて……くだ、さ……」
「止めてほしいか」
「ひっ、あっ、うぁあ」
「夕雲」
膣壁がうねって挿し入れた指を締め上げる。それでも動かし続け少女に喘ぎ声をあげさせた。
「やめ、て、くだ、さ」
「夕雲」
いっそ優しげに囁いた。
「だめに決まってるだろ?」
玄関口、靴も履いたまま、仕事終わりの恰好で私は夕雲を苛め抜く。
これは夢ではない。けして夢の時間などではない。
例え彼女が部下であろうとも、歳の離れた少女であろうとも、けして関係を崩したくない心地良い距離感の相手だろうとも、一切関係ない。人生の果てまでも手に入れる。そう決めた。
与えるべきは快楽と安堵、そして満足感。
万が一にも逃げ出そうなど思えないように悦びの沼に引き摺りこんでいく。
「……うっ! ……あ、ああ……っ!」
二度目の絶頂。
しがみついてくる膣肉を、最後は丁寧に撫でてやる。
指をゆっくりと引き抜く。粘りけのある汁が橋となってぬるりと垂れる。
「はっ、は、……ん、は……ふあ……」
息も絶え絶えといった少女の身体をやんわりとこちら側へと寄りかからせる。玉のような汗を拭ってやり、朦朧と潤んだ瞳を見つめながら優しくキスをする。
「は、ふ……は……あ……」
「すまない。キミがあんまり可愛いものだから」
乱れた制服の隙間、汗ばんで紅潮した肌からたちこめてくる甘い匂いに鼻腔が蕩けさせられる。
――唐突に思い出した。
ラクトリン。
20代で無くなってしまう少女特有の甘いニオイ。
後ろから優しく腕を回しておなかのあたりで交差させ、後頭部の匂いを胸いっぱいに吸いこんだ。
まだ夜は長い。
次は優しく愛してやろう。