「すごい、こんな……糸引いて」
少女の幼い指がさわさわと亀頭を撫でている。
歪な形に沿って往復し、その形、硬さ、熱を確かめている。先走りを摘んで粘液の橋を眺め、ゆっくりと重力に引かれていく様をまじまじと観察している。
早霜は美しく、淫靡で、そして何より幼くて。
鮮烈なコントラストに今さらハッとする。
この女の子はまだ若すぎる。
俺の膝の上で妖しく目を細めている姿を仰ぎ見た。
この肢体を形どる線の細さといったらどうだ。羽のような軽さ。潤いに満ちた肌はシミ一つなく、頭を傾けるたびにさらさらと流れ落ちていく艶のある長髪は生命力に溢れている。熱に浮かされた瞳はこの世の穢れなんて映したこともないといわんばかりに澄み渡っている。
なのに俺は性器を見せつけて。握らせ、更に扱かせようとしている。
だがそれでも。
今夜の俺は彼女のものだから。望まれるまま何でもしてやりたい。やらせてあげたい。
これが罪というのなら喜んでひっかぶろう。
「あのさ、嫌だったらすぐに言ってね」
「……何がですか?」
「俺も触るから」
真っ白な太腿に指を伸ばす。
触れてみて驚いた。吸いつくような肌。華奢な見た目とは違って瑞々しい弾力が詰まっている。
軽く指を押しこんで、手のひらを回し、曲線のラインに伝わせて小ぶりな尻に辿り着く。
普段はスカートの奥に隠されている秘密の場所に侵入してきた男の指に少女はぴくんと身をよじらせる。しかし逃げはしない。こちらに微笑みを向けて許可を示した。少女は指の往復運動を再開させ、くすぐったくなるような快感を送りこんでくる。
「ふ、うう」
「フフ……面白いですね。年下の女の子の細い指で、大人のおちんちん、こんなに感じてしまうなんて」
彼女がしたいこと。
なんでもしてあげたい。
だが俺の意思とは無関係に俺自身は悦びに震えてしまう。
「ああ……固くて太いところよりも、先っぽの柔らかいところの方が……弱いんですね。出っ張ってるところは、ん、びくっとしました。指の輪っかで擦れるように……先っぽまでしごくと……フフ、いいんですね……」
呻く。
呻きながら思う。
彼女が欲しいものはなんだろう。快楽か。愛の囁きか。どちらでもない気がする。じゃあ一夜の温もりか? 早く大人になりたいという好奇心? もっと違う。彼女が本当に欲しいもの、答えは多分知っている。でも自信はない。合っているはずがないって思ってしまう。
だって彼女はこんなに綺麗で可愛くて、落ち着きがあって賢いんだから、俺なんかを欲しがっているなんて都合のいい話があるわけがない。
「上手、だなぁ」
「ん、んっ、ん」
「どこかで、勉強、した?」
「ひどい、ですね。初めて、触った、のに。慣れてるような、言い方、傷つきます」
言いながら下唇をぺろりと舐める。
近付いてきて、ささやく吐息で鼻先をくすぐった。
「知ってます? 艦娘って、街を歩いていると変な人に声をかけられることがあるんです。ナンパ、ならいいですけど、時には変態みたいな人も。有名税とか言って。フフ、失礼ですよね。お兄さんはそんなひどい人じゃないですよね?」
ぬらついた指が性器を這いまわる。
粘液の音がにちゃにちゃと部屋に響く。
背中に当たる壁の薄さが気になって、しかしあえて頭からかき消した。
少女の動きに負けじと張りのある尻を絞るように揉みしだき、下着との間に指を挿し入れた。裏返すようにして下ろしてしまう。
少女は一瞬、身を固くする。が、すぐに動きを再開する。
額同士をこつんと合わせ情欲に濡れた瞳で俺を見つめる。唇を開く。しかし互いにじっと見つめ合ったまま。五秒か、十秒か。混ざり合った吐息の中で理性をとろけさせながら言葉を探す。
曖昧な意識の中で一つの欲求が鎌首をもたげていた。
確認したらどうなるか……。
彼女が本当に欲しいもの。問われたら彼女はどう思う? 屈辱か、それとも見当違いで俺が恥をかくだけか。
余計な問答をしてしまえばせっかく勇気を振り絞って辿り着いたであろうこの一夜を台無しにしてしまうかもしれない。
だったら忘れてしまえ、そんなこと。
彼女がしたいことをすればいい。望みのままに抱き合って、キスをして、求め合う。
何よりちゃんと気持ちいい。それでいいじゃないか。
「そう、いえば、ですけど」
「なに?」
「私、たくさんお酒飲んでますけど、大丈夫ですか? その……匂い、とか」
「いい匂いだよ」
「んっ、あっ? 指っ?」
産毛に触れるつもりで尻に指を滑らせる。逃がさぬよう左腕で引き絞られた背中を抑えながら秘所の周りを撫でていく。内腿から股間までをなぞり上げ、下腹を経由して丸みを帯びた尻へと戻る。
耳たぶにそっと口を近付けて、息を送りこむように囁いた。
「嗅がせてよ。汗の匂いも、
「――っ」
不意打ちで指を押しこんだ。
熱いぬめりを指先にからめとりながら割れ目を擦りあげていくと、少女は逃れようと腰を持ち上げる。全身が密着し、形の良い耳が目に入る。噛んでみる。ぬらぬらと舐めしゃぶる。くぐもった声が漏れ聞こえてくるたびに男としての達成感が生まれる。どうにかして声をあげさせたい。中指と薬指の二本を軽く立てて更に擦り続けていく。
「ぅうっ、んんっ」
全身を硬直させ、びくびくと痙攣する身体を抑えつけながら妙案を思いつく。
指先でクリトリスを探り当て、くるくると円を描く。
少女の背が弓なりにのけぞった。
「――んんん!」
同時、口付け。嬌声を封じこめる。
頭の後ろを抑えつけ、唇同士を密着させる。
視界いっぱいに広がる乙女の眉根がきゅうっとハの字に寄せられる。未知への戸惑い、恐怖、男の腕から逃れられないという諦観。それら混濁した表情にいやがおうにも興奮が掻きたてられる。
「はっ、は、……ん、は……ふあ……」
潤んだ瞳を見つめながらついばむようなキスをする。
脱力した身体を解放してやって、俺の胸元に預けられた小さな頭を優しげに撫でてやった。
汗ばんで紅潮した肌から立ち昇る甘い匂いを嗅ぎながら、秘所にまとわりつく粘りけのある汁をすくい取る。見せつけながら、匂いを吸いこみ、舐めとった。
「薄味だ」
「……へ、へんたい、ですね。だったら私も嗅いじゃいます」
すぅぅ、と首筋に鼻をくっつけてくる。
「ん……男の人って感じ。ん、ふぅ……あなたの匂い、落ち着きます。ん、んん……」
もぞりと肢体を動かして俺の股間に潜りこむ。
「こっちは…………あ、ああっ。すごい、こんなに濃くてえっちな匂い……」
ぴちゃりと生ぬるいお湯のような感触がして、呆けていると得意げな顔が持ち上がる。
俺は知らずに唾を飲みこんで、少女はますますしたり顔。
ああ、また見れた。
初めての顔。
美少女が俺の股間に頭を沈めて、先端に薄桃色の舌を這わせている。信じられないくらいの柔らかさ。むしろ液体の方が近いほどの感触が亀頭の丸みの上を流れていく。動きは大胆になっていき、ねろねろと根元から先端までを舐めあげる。顔が上がった拍子に目が合うと勝ち誇ったように目を細める。
俺の魂はとっくに持っていかれちまっている。
形では奉仕されながら被虐の刻印を焼きつけられているのはこちらの方だった。あの高貴なる口になら噛み千切られても構わない。
水音が響く密室の中で女の濡れ羽色の髪を梳いてやりながら望まれるままに局部を預けた。
「んぷ、っちゅ、はむ……」
濡れ光る唇が男性器を淫靡に咥えこむ。亀頭の傘まで潜りこみ、更に深みへと進もうとするも、止まる。頭を戻して一呼吸。息を整え、先走りと唾液にまみれた肉棒の切っ先に再び幼い口をつけていく。張りつめたエラを飲みこもうと大きく広げ、形のよい眉根に皺が寄る。可愛らしく鼻を鳴らしながら下へ下へと試みる。だが入らないものは入らない。ぷはぁと口を離して、軽くえずいた。
「っぷ、は……はぁ、はぁ。難しい、です……」
「初めてだから」
「でも、私は」
「嬉しいよ。いっぱい頑張ったって分かるから」
「ちゃんとやらないと」
キスをした。
聞きたくない言葉を封じこめ、優しげに頭を撫でて褒めてあげる。
少女は、咥えたばかりだからと離れようとしたが、構わずキスを繰り返す。
合わせた少女の瞳に決意が固まるのが見てとれた。
ぷは、と唇を離してこう宣言する。
「次を、します」
何をする気だろうと思ったら、上着に手をかけて、寸時ためらい、身を起こして壁伝いに手を伸ばす。電灯のツマミをひねって光量を落としてしまう。
真っ暗闇の中、互いの吐息だけがかろうじて耳に届いた。
僅かな光がドアの下から漏れている。殆ど役に立たない。膝の上の少女のシルエットさえあやふやだ。しゅるりと衣が擦れる音。パチリと何かのホックを外す音。膝の上でもぞもぞと動き、ぱさりと何かが落とされて、息を吸いこむ音を聞く。
消え入りそうな声がした。
「だ、抱きしめて下さい……」
「うん。おいで」
ぽすんと腕に収まった。
抱えた身体は燃えるように熱い。
すべすべした肌触り。腕を滑らせて汗ばんだ肌を確かめる。背中、そして肩。
服の感触がしなかった。
どこにある?
指先を下へと伝わせて丸みを帯びた曲線をなぞっていく。
ここは腰。お尻。太腿。
あれ、ないぞ?
何も着ていない……?
「あの、脱いじゃった?」
「……」
「いいの? 君が本当にしたいなら俺は」
「今の私、恋人なんですよ」
闇が滑りこんでくる。
脳に楔を打ってきた。
「あなたが本当に欲しいもの、ありますよね。ちゃんと全部あげますから。何も考えなくていいんです」
まったくの暗闇の中。聴覚、嗅覚、触覚が研ぎ澄まされていく。
汗ばんだ肌。湿った息遣い。鼻にくゆる女の子の香り。
両の手のひらには処女の柔らかく締まった尻がある。陰部に押しつけられた熱い下腹部に興奮が高まっていく。
「こうやってくっついていると分かります。おちんちん、すごいことになってます。女の子を犯してやるって悪い形に……」
肉棒の先端ではっきりと感じる。くすぐるように擦り当てられているマシュマロよりも柔らかな肉の窄まりの感触を。
ねちねちと音が繰り返される。前後に押し当てている。
俺の思考はどろどろに蕩け落ちていく。体中が硬直し意識だけが燃え上がっていくように息苦しい。
「こんなにくっつけてたら、入っちゃいます。セックスになっちゃいますよ? しかもゴムもつけてない生で……。恋人ごっこの相手に本気のエッチ、それもどろどろに濃いのを塗りつけていいんですか……?」
ずぐんと陰嚢が熱をもつ。先端にまで到達しその意思を雌に知らしめる。
今すぐお前を犯したい。
俺自身を押しこみたくてしょうがない。
ほんの少し腰を浮かせるだけでいい。沈みこませ、こじ開けて、ぐりぐりと押しつけて俺の形を覚えさせてやる。
劣情が吐息から漏れていく。歯を噛んで呻いた。
「私の
だったら俺に許可をくれ。
たった一言でいい。俺でいいという許可を。俺がいいという肯定を。それさえあれば俺はいつでも身を投げだせる。
だが闇が告げたのは真逆の言葉、
「お兄さん、言って下さい。そうしたら私、何でもしてあげられます」
「俺が……? 俺が、言うって? 何を言ってほしいんだ?」
「あなたの意思で言ってほしいんです。今度は言わされるんじゃなくて……」
分からない。
俺は全然分からない。
いったい何を言ったんだ?
難しいことを考えるには頭が熱すぎた。
亀頭の先端には女性器。熱いぬめりが俺を待っている。
答え! 答えさえ当てれば!
どうにか捻りだそうと喘ぐ。闇が固唾をのんで待っている。俺の言葉を待っている。言わなければならない。答えは多分知っている。自分の気持ち、俺が一番欲しいもの。それは恋人でもなければ愛でもない。
早霜。
君だ。
君が俺を必要としてくれること。
それだけが俺の望みだ。
けれど俺はどう言い繕ったらいいか分からない。
だって俺は足踏みしているだけの人間だから。自分から欲しがってはいけないんだ。
「俺は――」
突如、部屋に警報が鳴り響く。
耳障りな高音が空気を震わせ続けている。
それはこの日本に住む者なら誰でも知っている、避難勧告の合図だった。