「そこの渋くて、格好いいおじさまーっ」
振り返ったキング・ブラッドレイは、私のことかねと近づいてきた長身の少女を見た。
黒っぽい服、スカートも短い【セーラー服】姿の長身の彼女にに違和感を抱いたのも無理もない。
一応というか、ここは軍の施設内だ、どこから来たのだろう。
だが、相手はお構いなくといったように目の前に立つと、じっと顔を見た、いや、眼帯、黒いアイパッチを凝視した。
そして男の手首を掴むと、来てといわんばかりに歩き出した。
「お待たせーっ」
医務室のドアを開けて元気よく入って来た彼女はベッドに近づくと、もう大丈夫だからと、にっこりと微笑んだ。
「おじさま、アイパッチ、取って」
何を言い出すのか、言われたブラッドレイ、本人もだが、マルコー、スカー、そしてハル本人もわけがわからないという顔で視線をブラッドレイに向けた。
「た、高田ちゃん、何を」
「おじさまの目よ、赤い石なら大丈夫、本当は、(あれが)いいんだけど、突然のことでちょっと無理だし」
そういって、すっと手をブラッドレイの顔にかざした高田は硝子さーんと名前を呼んだ。
「準備おっけー、聞こえるー、はーい、反転○式ーっっっ」
突然、高田延子、彼女の手が光った。
驚いて身を一瞬、退こうとしたブラッドレイの目からアイパッチがはらりと落ちた。
鏡を見た美夜は驚いた、右目が赤い、いや、充血しているわけではない、黒目の眼球が赤いのだ。
だが、それは長くは続かなかった、次第に別の色に変わっていった。
「き、綺麗っ、凄い、綺麗な青」
うっとりとした表情で高田が叫んだ。
左目が黒で右目が青、これが白猫とかならばオッドアイとかで、まあ可愛いとか、綺麗な猫ちゃんね、とか羨ましがられて美談になるのだが、三十路女だと、それはない。
ううっ、こんなことってと彼女は落ち込んだ、眼鏡をかけたり、カラーコンタクトを入れて黒目に偽装するという方法もある。
だが、生憎とどちらも好きではないのだ。
ショックで落ち込む彼女を前にして、そんなに落ち込まないでと励まそうと言葉をかけた。
そのとき、高田延子の身体が少しずつ、透明に透き通り始めた。
「くっ、時間がないってこと、とにかく目は大丈夫だから、あとは身体の傷、お医者さんに見て貰って、それとこれ」
「高田ちゃん、嬉しいけど」
手渡されたのは電子マネーのカードだ、こちらでは多分、使えないと思う、その言葉に高田は顔を歪めた。
「だったら、ツケにして」
「パンダ君の分も」
「あっっ、何」
パンダという言葉に高田延子の顔が一瞬固まった、というか、目つきが悪くなった。
「人間じゃないから、駄目」
両手で大きな×印を作った、容赦なくだ。
そのとき、どこから入ってきたのかパンダが大きな声で叫んだの、ひどい、差別だと。
「パンダに人権はない、あと美夜さんのこと守って、怪我したら学長が、あんたをボコるから」
そう言って、いや、捨て台詞を残して高田ちゃんは消えていった。
「なんだあっ、化け物が、俺様に勝てると思っているのか、まったくよおっ」
全身緑色の巨大な怪物、エンヴィーは自分の腕が切り落とされたことに驚いた、だが、すぐに再生する。
「こ、このっ、糞がああっ、人間が、ゴミ屑があっっ」
怒りが込み上げ、攻撃するが、それを無理なく躱すハゲ親父、組屋鞣造(くみやじゅうぞう)は笑っていた、楽しくてたまらないというように。
反対にエンヴィーはというと、ハゲで、見た目、変なおっさんという相手に初めて得体のしれないものを感じていた。
「ははっ、いいねぇ、そうこねぇとなあ」
今までの相手は物足りなさすぎた、楽しませてくれよ、お前なら立派な呪具が作れそうだと鞣造はにやりと笑った。
ギャグとシリアスが混じってしまった。