ギャラクシー・ジャーニー 宇宙騎士キタリヴァン 作:馬門戒明/輪島ライ
キタリヴァンは裸の僕をコクピットに乗せたまま巨人兵器カイゼルフォンを操作してミカロスの衛星城を焼き尽くし、任務を終えたことを確認するとカイゼルフォンを元の姿に戻し始めた。
僕が意識を取り戻したのはカイゼルフォンが宇宙船の姿へと変形を始めたちょうどその時で、コクピット内は無重力といっても突然なくなった足場に僕は裸のまま宙に浮かぶ格好となった。
先ほどまでコクピットであった空間は天井に取り込まれ、無重力の中で僕は背の高い男性に全身を抱きとめられた。
これまで自分をいたぶってきた大人の男性の手つきを思い出して身構えてしまうが、その相手がコンバットスーツを解除した宇宙騎士キタリヴァンであるということはすぐに分かった。
自分の腕の中で怯えた表情をしている僕に、キタリヴァンはあえて顔を見ることなく無重力の空間を泳いでいく。
鋭い目つきに高い背丈、そして銀色の長髪は噂に聞いていた戦闘民族キタの特徴と一致している。
その勇ましい容姿を無言で見上げていると、僕を両腕に抱いたキタリヴァンは重力下の部屋に続くドアを開いた。
「お帰りなさいませ、マスター。その少年は救助対象のグルームドで間違いありませんね」
「その通りだ。ナタリア、彼を君に手渡すからとりあえず風呂に入れてやってくれ。俺は離れていた方がいいだろう」
ナタリアと呼ばれたのは長身に金色の長髪、そして旧世紀のメイド服が特徴的な美しい女性で、彼女は無言でキタリヴァンに歩み寄ると僕を両腕で受け取った。
「承知致しました。グルームドの少年、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「はい、僕は……リューク・K・ミカロスです。戸籍上は、あのミカロスの……」
「それ以上言わなくていい。君はもはやその忌まわしき名前に囚われる必要はない。君は今からただのリュークだ」
「ええ、私もリュークとお呼びします。ひとまずこのままご入浴にお連れします」
「ナタリアさんとですか? そんな、僕はこれでも36歳の男なのに……」
「彼女だからこそだ。今は俺のような大人の男が君に触れ合わない方がいい。気にせず行ってくれ」
キタリヴァンは男たちの性奴隷として扱われていた僕の心情に配慮してくれているらしく、ナタリアさんは無表情のまま僕を両腕に抱いて船内の浴場へと連れていった。
ナタリアさんは脱衣所まで来ると裸の僕を床に立たせ、自分はおもむろにメイド服を脱ぎ始めた。
メイド服の下から現れた真っ白な下着に、僕は慌てて彼女に背を向ける。
「ナタリアさん、僕一人でお風呂に入れますから! そこまでして貰わなくても……」
「お気になさらず、ちゃんと水着を着ます。それに私はヒューマロイドですから」
「そうだったんですね。分かりました……」
今の宇宙ではアンドロイドとヒューマロイドは明確に区別されていて、人型だが機械の外見をしていて人間に使役されるだけの機械はアンドロイド、生身の人間とそっくりな姿をしていて人間に準ずる権利を認められている機械はヒューマロイドと呼ばれる。
ヒューマロイドは一定の条件のもとで生身の人間の伴侶となることも認められているから、ナタリアさんはキタリヴァンの妻なのかも知れない。
ナタリアさんは旧世紀から大きく変わらない浴場に僕を導き、シャワーを取り出すと長年の性奴隷生活で傷ついた僕の身体を優しく洗っていった。
「痛々しい傷痕です。あなたをこのような目に遭わせた悪魔たちには、この宇宙に存在する権利がありません」
「……」
「私はこれまでもあなたのような少年たちを手当てしてきました。醜悪な男たちに辱められた少年に対応するために、私は女性型ヒューマロイドとしてマスターに仕えているのです」
「そんな経緯が……」
ナタリアさんは僕の身体を石鹸を含ませたスポンジで優しくこすりながら自分の存在意義を話した。
性奴隷生活ではまともな女性と触れ合うことなど一度もなく、無表情ながらも優しさに溢れた雰囲気で僕の身体を洗ってくれるナタリアさんは女神のように見えた。
人造人間の僕には父も母もいないが、母性というのはこういう感情を指すのだろうか。
「ナタリアさん、そこは自分で洗います! 流石にそこは!!」
「承知致しました。……申し訳ありませんが、あなたの受けた損傷を把握するためこちらに向いて頂けませんか?」
「えっ? わ、分かりました……」
僕のペニスに手を伸ばそうとしたナタリアさんに慌てて制止の言葉を投げた僕だが、ナタリアさんは僕のペニスを自分に見せるように促した。
業務上必要であれば仕方がないので、僕は気が引けるものの水着姿のナタリアさんの方に振り向いた。
ナタリアさんは恐縮してしぼんでいる僕のペニスをじっと見つめ、数秒後にナタリアさんの金色の瞳が紫色に変色した。
ヒューマロイドには詳しくないが、これは僕の身体の損傷具合を電子頭脳に記録しているのだろうと思われた。