※この作品はR-18です。

魔導具師ダリヤはうつむくしかない…   作:リモバイ

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契約書と別れ

 

 

 

 

 

「おお、ロセッティ商会長。 お久しぶりですな!」

 

「はい。 お久しぶりです」

 

「いやはや、なかなか予定が合わず…、魔導具製作のお礼を直接言うことが出来ず申し訳ない」

 

「い、いえ! こちらこそ、ご挨拶もできず…、っ」

 

 

ネイトリー商会長オートスの言葉に、ダリヤが慌てて頭を下げる。

 

するとダリヤのチョーカーとニップルリングとを繋げたチェーンが緩み。

 

顔を上げた際に再度引っ張られ、乳首が刺激され、その瞬間、クリトリスまで快感が走ってしまう。

 

気が抜けた瞬間とはいえ、ダリヤは何とか声をあげることを堪え、取り繕った。

 

 

「…、…っ、お会い、できて、幸いです」

 

「ははは、こちらこそ。 しかし、前回打診した折はお疲れだったようですが、今回は大丈夫ですかな」

 

「ぁ、…はい。 前回は、少し…」

 

「まあ、魔導具製作というのはかなり魔力を使うようですし、気を抜くことが出来ず、消耗が激しいと聞きますからな」

 

「…、…はい」

 

「ああ、立たせたままで申し訳ない! どうぞ座ってください。 ロセッティ商会長と、少しだけお話をさせて欲しいのですよ」

 

「ぁ…。 あの、すみませんが――」

 

「おや。 やはりお疲れでしたかな? それは良くない! さあ座って、楽にしてください。 おい、ロセッティ商会長に疲労に良く効く茶を頼む!」

 

「あ、あの」

 

 

固辞しようとするダリヤをオートスがなだめ、予定していたお茶を出すためにメリアへと指示を出す。

 

 

「――かしこまりました」

 

「それと…、おお、あったあった! こちらの都合で呼びつけたようなものですし、魔力ポーションも飲んでもらいましょう」

 

「っ!? い、いえ! そこまでは…っ」

 

 

ダリヤとしては、魔導具製作から来る疲れではないが、かなり消耗している今、なるべく早く辞して帰りたかった。

 

そんなダリヤに対し、用意さえすれば断ることはないだろうと、噂で集めていたダリヤの性格を知るオートスがなりふり構わず時間を稼ぎ始める。

 

 

「なんのなんの! ロセッティ商会長のおかげで魔導具開発が捗って儲けてますからな。 これくらいはさせてもらわないと」

 

「…っ。 で、ですが」

 

「ああ、魔力での消耗はさほどでも無いのですかな?」

 

「っ、そう…、です」

 

「でしたらお茶だけで良さそうですな。 ポーションは持ち帰ってもらいましょう」

 

「――お待たせしました」

 

 

ダリヤが断りの言葉を発する前に、お茶の準備を終えたメリアが告げる。

 

その言葉に、ダリヤは少しだけうつむき、目を伏せた。

 

用意された2人分のお茶がメリアの手でテーブルへと置かれ、断り辛くなったダリヤが『一杯だけなら』と、固辞することを諦めた。

 

 

「おお、用意出来たみたいですな。 さあ、ロセッティ商会長も座ってください。 これはかなり効くと評判なのですよ」

 

「……では、少し、失礼します、…っ」

 

 

そう言ってダリヤはソファへと腰を下ろす。

 

その際、トラセーによって責められ続けたアナルが、座ることで刺激され、腰から胸にまで疼きが走る。

 

身体を硬直させ、かろうじて声を出すことを抑えたダリヤだったが、それでも、ただ『座っただけなのに』と思うことで更にゾクゾクとした甘い痺れが背筋を伝っていき、淫らな吐息を漏らすこととなった。

 

そのせいで、ダリヤは本来気に掛けるべきことを素通ししてしまい、流されてしまった。

 

だから、オートスがお茶を一気に飲み干すのを見て、ダリヤは同調行動をとってしまう。

 

 

「では私もいただくとしますか。 ………ふうっ。 少し苦みはありますが、疲労に効くと思えば…。 どうぞロセッティ商会長もどうぞ飲んでください」

 

「あ……。 はい」

 

 

この一年、ダリヤが接してきた相手は自身に対し、ほぼ全員が善良な人たちだった。

 

だからか、いつごろからか、本来持つべき警戒心が薄まっていた。

 

相手の善性を信じすぎていた。

 

今まではそれで良かった。

 

悪意から守られていたし、身を守る術として完全防毒の腕輪もあった。

 

 

「いただきます」

 

「ええ。 効果は保証しますよ」

 

 

しかし、ここにいるのは下卑た欲望を隠し持った男で、その男の部屋の中だった。

 

そして今、ダリヤは完全防毒の金の腕輪を着けていない。

 

トラセーの前で裸になった際に外し、カバンに入れたままここに来てしまっている。

 

ダリヤはそんな無防備な状態でオートスの強引な勧めに流されてしまった。

 

疲れていたとはいえ、備えることがあたりまえの、貴族となるというのに――。

 

 

「ん…」

 

 

ダリヤがカップの取っ手を摘まみ、持ち上げ、口に付ける。

 

チョーカーと、乳首とに繋がれたチェーンに気を取られながら、少しづつソレを嚥下していく。

 

口内に苦みが広がり、少しだけ顔をしかめてしまう。

 

オートスのように一度で飲み切ることが叶わず、ダリヤは一度、カップから口を離した。

 

 

「…ふぅ。 ……確かに、少し、苦いですね」

 

「ええ。 ですので私はいつも一気に飲んで終わらせるのですよ。 疲れたままよりはマシですからな」

 

 

カップから目を離し、味の感想を呟くように告げる。

 

するとオートスが、自身が先ほどしたように助言をし、それを素直に受け取ったダリヤがまたカップに口を付けた。

 

 

「んっ…」

 

 

『こくっ、こくっ』と、控え目に、だが勢いをつけるため、はしたなくも喉を鳴らしながら飲み干していくダリヤ。

 

お茶にしては違和感のある苦みは疲労に効く成分のせいだと自身を納得させ、オートスも同じものを飲んだからと、無意識のうちにその推測を補強させた。

 

そのせいで、ダリヤの中の、何か変なものを混ぜているのではという疑念は覆い隠されてしまう。

 

そうして、オートスが用意し、メリアが淹れたお茶を飲み干したダリヤが、カップをテーブルへと戻した。

 

 

「………はぁっ。 …んっ」

 

「いい飲みっぷりですな。 ああいや、女性にその言い方は失礼でした、申し訳ない! しばらくすれば効果が実感できるはずですが、その間に少し話をさせてもらいましょうか」

 

「……、ぁ。 あっ。 ごほっ! んっ、んんっ!」

 

「おや、大丈夫ですかな」

 

「い、いえ。 …んっ。 はいっ、大丈夫ですっ」

 

 

お茶を飲み干したダリヤが、一瞬だけ意識を飛ばし、ぼーっとしてしまったが、すぐに意識を取り戻して返事をしようとする。

 

しかし、そのせいで意識を取り戻した際、首を振ってしまい、乳首が刺激され、声が出てしまった。

 

誤魔化すように咳払いをし、何も考えずにオートスに強く返事をしたことで話が始まる。

 

媚薬効果、自白効果、思考力低下効果、そして苦みで味を調える役割を持った薬を混ぜられたお茶を飲まされたダリヤが、その効果に気付かぬまま。

 

オートスの姦計に陥ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、れ…?

 

ここ、は。

 

――オートスに薬を盛られ、数分後には朦朧とし始め、それでも薬の効果でそのまま会話を続けていたダリヤの意識が少しづつ覚めてくる。

 

 

「いやー、ははは。 話していると少し暑くなってきましたな」

 

 

この、人は…。

 

オートス、会長…?

 

どうして、彼…、が。

 

――ややぼんやりとだが、意識だけが戻り、オートスと対面する形でソファに座っていることに気付いたダリヤは、内心動揺したまま、現状を把握しようとする。

 

 

「…、そう、です、ね」

 

 

…っ。

 

声、が…っ!?

 

――虚ろな目で無表情、そんな状態でソファに座ったまま、ダリヤの身体は動かない。

 

 

「こんな時は服を脱ぐのが一番ですな。 ロセッティ商会長も一緒に脱ぎましょう」

 

 

っ!?

 

何、を…っ!

 

――当たり障りのない言葉を続けていたオートスが、もう充分に薬は回っただろうと、ダリヤにとって異常なはずの提案をする。

 

 

「…は、ぃ」

 

 

っ!?

 

私、何をっ。

 

あ、えっ。

 

どうして、身体が…っ。

 

――ダリヤの意思とは裏腹に、身体だけがその異常な提案を受け入れ、ゆっくりとした動作で肌を晒していく。

 

 

「おお、いいセンスの下着ですな。 それにそのチェーン、どこに繋がっているのですかな?」

 

 

どうして、どうしてっ!?

 

嫌っ、やめてっ!

 

脱がないでっ!

 

――チョーカーから伸びたチェーンが、下着に覆われているとはいえ、ダリヤの形の良い乳房に、その頂点に続いていると、オートスにはすぐに見てとれていた。

 

 

「……乳首に、つけた…、リング、です」

 

 

嫌っ!

 

やめて、言わないでっ!

 

見ないで、見ないでっ。

 

――トラセーや、いつもの彼らという、ある意味で信用の出来る男性たち以外の前で、淫らなアクセサリーを着けた自分を見られている。

 

 

「ほう! どんなものか見たいですな! ブラも外してもらいましょうか」

 

 

やめてっ。

 

これ以上は嫌なのっ。

 

もう、これ以上…っ、堕ちたく、ないのっ!

 

――ダリヤの脳裏に、塔の屋上での出来事が浮かび、意識内で激しく抵抗するも、ダリヤの身体はオートスの願いを遂行するため、口を開く。

 

 

「……はい」

 

 

ああ、そんな…っ。

 

見せない、で…っ。

 

お願いっ、お願い、だから…っ!

 

――後ろに手を回し、留め具を外して、そのままブラをひざの上に落としたことで、ダリヤはオートスの前で胸を晒した。

 

 

「おお…、確かにリングですな。 トラセーも良い趣味をしている。 ロセッティ商会長はそのリングのことをどう思っていますかな?」

 

 

やめて…。

 

やめてぇ…っ。

 

――初めての、ほぼ接点のなかった男に、淫らな装飾品を着けた胸を見られ、羞恥の極みにあるダリヤが、更にその装飾品についての質問に答える。

 

 

「……いたい、のが。 きもち、いい…、です」

 

 

ちがう…、違う、のっ。

 

気持ち良く、なんて…っ。

 

――今の、薬によって剥き出しにされたダリヤの深層心理が、偽りを許さず、真実を口にしていると、意識内のダリヤも分かっていた。

 

 

「はははっ。 痛いのが気持ちいいか! そうかそうか! いいじゃねえか、ちょっとここでオナニーしてみろ!」

 

 

っ!?

 

この、人っ!

 

――ダリヤの身体に、完全に薬が回ったと確信したオートスが、調子に乗って本性を露わにし、口調を本来のものに戻してダリヤに余興を始めさせようとする。

 

 

「…わかり、ました」

 

 

…っ!?

 

嫌っ!

 

駄目ッ、やめてッ!!

 

――ダリヤの手が、最近のお気に入りの自慰を始めるため、ニップルリングの輪っかの中に上から中指を入れ、前へと引っ張り、人差し指で乳頭を、爪で擦るように動かし始める。

 

 

「…っ、は、ぁ…っ。 は、……ぁ、……、ん゛、……はっ、ぁ、はぁ…っ。 ぁっ…」

 

 

ああっ。

 

あっ、いやっ。

 

それっ、だめっ!

 

――瞳に光が戻らない状態で、無表情のままの顔をオートスに向け、ダリヤの身体は、指は、激しく動いて乳首での自慰を続けている。

 

 

「んん…、おかしいな? 本来はもっと喘ぐはずなんだが…」

 

 

いやぁ…っ。

 

それっ、すごいっ。

 

引っ張りながら、カリカリ…ッ、しないでっ。

 

――動くことも喘ぐことも許可されていないダリヤの身体は、びくりびくりと小さく跳ねることと、熱っぽい吐息を漏らすことしか出来ない。

 

 

「は…っ、ぁ…、ぁ…っ、ぁっ。 はっ、はぁ…っ、は……、っ! ぁ゛…っ、ぁ…っ」

 

 

気持ち、いいっ。

 

ああ、いやっ。

 

声っ、出なっ、い…っ!

 

――ダリヤの意識が身体に反映されることはなく、オートスの望みを叶えるためだけに動く身体は、自身の一番良いところを責め、絶頂し続けている。

 

 

「はッ…。 あ、は…っ゛、ぁ…。 ン、ふ……っ、ぁ゛…ぁ、は……ぁ゛っ」

 

 

いくっ!

 

イくっ、イくっ!

 

乳首でイキますっ!

 

イって…っ、イってます…っ。

 

おねがいっ。

 

もうっ、止まってぇ…っ!

 

――今のダリヤは意識が無いのと同じような状態であるため、声を出して快感を逃がすことも、足を開いたり、のけ反ったりという反応が出来ないため、意識内の心も身体も、よりダイレクトに快楽を受け取ってしまっている。

 

 

「…媚薬が効きにくい体質、か? それともトラセーがすでに何か盛ってた…か?」

 

 

イくっ。

 

イってるっ。

 

またイくっ、乳首でイくっ…。

 

もう、やめて、やめてぇ…っ!

 

――こもる快感が許容値を超え、ダリヤの身体が細かく震え、絶頂し、股を濡らしても、姿勢は固定したまま、生理現象ゆえにどうしても出てしまう吐息じみた喘ぎを吐きながらも、指は止まることなく、乳首を責め続けていた。

 

 

「ぁ゛ッ。 はぁ゛…ッ。 あっ、は……っ、は…っ。 は、ぁ゛…ッ。 はっ、はっ…、は、ぁ゛…ッ」

 

 

だめ゛…ッ。

 

これ…っ、おわらな゛…っ。

 

つら、い゛…い゛い゛っ。

 

こんな、の、もうっ…ッ!

 

拷問っ、みた、い゛……っ。

 

――ダリヤが意識内で何度イこうとも、身体がなんど絶頂しようとも、指は機械のようにただただオートスの指示通り動き、自ら快楽拷問を行い続けている。

 

 

「……ちっ! もういい! そんなんじゃ乳首イキするまでどれだけかかるか分からねえだろ!」

 

 

っ!!

 

ふぅ゛…っ、ぅ゛っ、ふぅ゛ぅ゛ぅ…ッ。

 

とま゛…っ!

 

止まったっ!

 

あ゛っ。

 

だめっ、まだっ、余韻、で…っ。

 

~~~…ッくぅ!

 

ああっ、でもっ。

 

指、離れて…っ。

 

良かっ、た…っ。

 

――自らの意思で声を発せないダリヤは、その身体は、オートスの望むような、乱れ狂う反応こそ出来なかったが、それでも何度も甘イキを繰り返していたため、薬の効果が、言葉を、発させた。

 

 

「は…っ、ぁ゛…っ。 は…、ぁ゛…っ。 ぁ゛…、ん………、いえ」

 

 

ちくび…、ジンジン、して、る。

 

身体が、熱、い…っ。

 

ショーツが、もう…っ。

 

あんなの、初め、て…っ。

 

――意識内のダリヤは、この、止めて欲しくても止めてくれなかった乳首責めのせいで、思考がままならなくなっている。

 

 

「あん?」

 

「…、今の、で…。 …は、ぁ…。 ぁ…、は……っ。 何度…も、イキ、ました」

 

「…ッ、今のでか!? いや、何て言った! 何度も…!?」

 

「……は、い。 …数える、ことが、できず…。 申し訳、ありません」

 

「っ、はははっ! 流石トラセー! ここまで仕込んだか!」

 

 

今、あのときの、魔導具を使ったら、私…っ。

 

一晩中っ、ずっと…っ。

 

それ、に…っ。

 

改良してる、って。

 

言ってた、から…っ。

 

今、だと…、もっと…?

 

…っ!

 

だめっ、イくっ。

 

想像っ、だけっ、で…っ。

 

――拷問のような乳首責めによりスイッチが切り替わり、淫欲に支配されてしまった意識内のダリヤは、男を誘う、性処理用に開発された魔導具のように、意識を染めてしまっていた。

 

 

「ククッ、いいじゃねえか。 おい、ダリヤ。 トラセーの調教のせいで、最近ハマってる変態行為はなんだ?」

 

「……塔に、帰ったら、服を、脱いで。 …裸のまま、過ごす、ことです」

 

っ!!

 

あっ、ああっ。

 

それ、は…っ。

 

――夜、塔に帰り、扉を閉め、作業室に入ってチョーカーを外した後。

 

 

「露出癖まで持ってるのかよ。 もちろん裸で過ごしただけじゃねえだろ?」

 

「…は、い。 月が、隠れる、と。 階段を、降りて…、昇って、…裸のまま、窓の…そばを、横切って、見られる、かも…と、興奮、して、いまし…た」

 

 

違うっ、違うっ。

 

誰もいないって、確認してた、だけでっ。

 

だからっ。

 

――シャワーを浴び終えて、ふと、『このまま服を着なかったら、どう…なるのだろう』と思ってしまったことが、何度もあった。

 

 

「そのまま、屋上に、あがって…。 そこで」

 

 

っ。

 

だめっ。

 

やめてっ。

 

違うのっ、あれは、違うっ、から、ぁ…っ。

 

――初めて実行した時、ぞくぞくとした快感が背筋を走り回り、そのまま、一階まで明かりも灯さず、裸で降り、作業場に置いたチョーカーを手に取って、着け、ニップルクリップと防水布を持ち、屋上まであがって。

 

 

「それまで、隠れて…いた、月が、出て、いた…ので。 もし、見られたら、って…、思っ…て」

 

 

ここでしたら気持ちいい、かも、なんて、思ってないっ。

 

ちゃんと、見られないように屈んで、移動したものっ。

 

変態、なんかじゃ…っ。

 

見られたく、なんて…っ。

 

――屈みながら屋上を移動して、中央で、防水布を敷いてから、裸のまま仰向けに横たわって、両乳首にクリップを嵌めて。

 

 

「そのまま、屋上で、外、で…。 真上に、ある…、月を。 見ながら…、乳首を…苛める、自慰を、しまし…、た」

 

 

胸に着ける魔導具が欲しいなんて思わなかったっ!

 

声を出したいなんて思わなかったっ!

 

見られるかも、なんて…。

 

してほしいなんて…っ。

 

私…、私…っ。

 

――見られないよう、隠れながらも、トラセーにアナルセックスをされる時のように、股を大きく開いて、その時の行為を思い出しながら、屋上で、外で、裸のまま、自慰をした。

 

 

「ん…、乳首? なんだ、ディルドは使わねえのか。 それにクリも弄らなかったのか?」

 

「…はい。 ……ディルド、は、…持って、いま、せん。 クリ…トリスは、……怖い、ので、…あまり、使い…、ま、せん」

 

 

――意識内のダリヤが顔をうつむかせ、イヤイヤと頭を振っている。

 

 

「ハッ! クリもディルドも使わねえヌルいオナニーってことはよ…」

 

「……」

 

「なおさら、トラセーの調教の日が楽しみだったんじゃねえのか?」

 

 

っ!

 

あっ。

 

あ…っ。

 

やめ、て…。

 

言わ、ない…で。

 

おねが、い。

 

――オートスに晒し続けているダリヤの胸は興奮で膨らみ、固くしこった乳首とともに、チョーカーに繋がれたチェーンをぴんと張ってしまっている。

 

 

「……は、い。 前日、から。 準備、を…して、その、日の、朝……、薬、で、お尻…を、中、を。 綺麗に、して」

 

 

……っ。

 

…しないと、ダメ、だからっ。

 

トイレで、お尻で、なんて……、私…っ。

 

――変えたばかりのショーツはすでに肌に張り付くほどに濡れたまま、身体は小刻みに、断続的に震えている。

 

 

「今日は、何を…される、の…と。 こわ、く…て。 こわく……、て」

 

 

……変え、られた…から。

 

気持ち良く、なる…ように、された、から。

 

――意識内のダリヤが、どれほど言い訳をしても、オートスに届くわけもなく。

 

 

「思い、切り…。 何度…も、何度、も。 …っ、お尻の、穴で、ぁ…っ。 は…っ、ぁっ。 せ…っ、せっくす。 …される、って。 …、…っ」

 

 

………っ!

 

全部っ!

 

トラセーっ、さんのっ!

 

せい…っ、だか、ら…っ。

 

――現実のダリヤが、ダリヤの、本当に想っていること、隠したいこと、気付きたくなかったことを言葉にし続け、甘イキを繰り返している。

 

 

「きたい、して…まし、た」

 

 

~~~ッ!

 

…っ、っ!!

 

――心の奥底に押し込めていた、気付きたくない、淫らな気持ちを晒しだされ、意識内のダリヤがそれだけで絶頂し、それに連動するように身体も、『ビクッ、ビクッ』と快感に震えた。

 

 

「ククッ。 マゾで、露出狂で、アナル好きか。 やっぱりトラセーは最高だな」

 

「…っ、は…ぁっ。 は……、っ」

 

 

言葉、だけ…で…。

 

こんな…っ、どうし、て…っ。

 

――ダリヤの身体は、もう、トラセーによる開発、徹底的な快楽攻めと意図的な禁欲期間を繰り返すことで、ここまで淫らになってしまっていた。

 

 

「だが俺も中々のもんだぜ? おい、メリア! 服を脱いでこっちに来い」

 

 

…っ!

 

ぇ、…っ。

 

――ダリヤが逃げられないよう、ドアの前に立たされていたメリアが、数瞬、目を瞑ってうつむき、メイド服を脱いでいく。

 

 

「こいつはな。 トラセーの女だったんだが、トラセーがお前に執着してる間に堕として寝取ってやったんだ」

 

 

っ!?

 

そん、な…っ!

 

――下着姿となったメリアが、目を開き、歩いてオートスの隣に立ったかと思えば、悲し気な目でダリヤを見て、ショーツを脱ぎ、ブラを外してその姿を見せた。

 

 

「どうだ、良い趣味のピアスをしてるだろ? 前も後ろも散々犯し倒してやって、ようやく最近ピアス穴を空けることを了承させたんだぜ」

 

「……」

 

 

ひど、い…。

 

――メリアのその両乳首には、横からピアス穴が空いているのが分かるよう、ニップルリングが通されている。

 

 

「なあメリア。 ダリヤに説明してやれよ、お前がどうやって俺の女になったかをよ」

 

「………、なって、ません」

 

「…ああ?」

 

「私、は…。 トラセー様の」

 

 

メリア、さん…。

 

――メリアが裸でうつむいたまま、震えながらオートスに反論しようとすると、オートスが頭をガシガシと掻きながら大声でわめき散らす。

 

 

「……あー? メリア、お前。 あんなに『オートス様のチンポ気持ち良いです』って叫んでおいて、まだトラセーの元に帰ろうとしてんのか?」

 

「っ!?」

 

「今度、クリにピアスを嵌める約束までしたってのになあ?」

 

「ひっ! い…っ!」

 

――オートスの言葉に、メリアが怯えしゃがみこむ。

 

 

「おお、そうだ。 ダリヤに説明してやれよ、俺との関係をよ。 そうしたら今の不始末は許してやる」

 

「…っ!?」

 

「言わねえなら…」

 

「っ、言いますっ! 言います、からっ!」

 

「ククッ。 それでいいんだよ」

 

――メリアがそのまま座り込み、顔を両手で抑えながら口を開いた。

 

 

「………私、は。 オートス様、の……、お、おん……、っ」

 

「…っ」

 

 

メリア、さん…。

 

泣いて…。

 

ひど、すぎる…っ。

 

――メリアがしゃくり上げながら言葉を続けようとする。

 

 

「私、は…っ。 でも、…ああっ。 でも…っ」

 

「……ゃ、…っ」

 

 

やめてっ!

 

言う必要なんてないっ!

 

こんな人っ、こんな、人っ!!

 

――自身の現状すら忘れ、メリアの境遇に涙して、義憤に駆られて叫び続ける意識内のダリヤ。

 

 

「おいおい、メリア。 さっさと言えよ。 トラセーより俺を選んだって」

 

「…っ!」

 

「それに、ダリヤに言いたいこともあるんじゃねえか?」

 

 

っ。

 

私、に…?

 

――オートスがニヤニヤとメリアを見下ろし、上半身裸のダリヤに向けて言葉を促したことで、メリアがダリヤへと、泣きはらした顔を向け。

 

 

「……、……っ。 ……トラセー様、を、…取らないで」

 

「っ」

 

「クハハハハッ!!」

 

――ダリヤの身体が、震える。

 

 

「う…っ、うぅ……っ! ぅっ…、ぅ…っ」

 

「…っ」

 

「そりゃあ、そうなるよなあ! 俺に抱かれてる間、ダリヤはずっとトラセーの寵愛を受けてたもんなあ!」

 

――トラセーからの媚薬とオートスに盛られた薬の効果が混じり、自由の利かなかったダリヤの身体が、時間が経ったことでようやく、自身の意思で口を開いた。

 

 

「…最低っ」

 

「……あん?」

 

「最低、です。 貴方は、絶対に、許され、ません」

 

「…なんだ? どうして話せる? 薬が切れたか?」

 

――ダリヤからの思わぬ言葉にも、焦ることもなくオートスが近付き、ダリヤのあごを手で持ち上げ、顔を向けさせた。

 

 

「っ!」

 

「どうした? 動かせるのは口だけか? ほら、手を動かしてみろ」

 

――目の前に立つオートスに対し、ダリヤは、キッと強く目を向けて反抗の意思を伝える。

 

 

「…ふん。 動かせるのは口と顔だけか」

 

「謝って、ください」

 

「あん?」

 

「メリアさんに、あや、…ぐっ!」

 

「調子に乗るなよ? 今からこいつと同じように俺に犯されるんだよ、お前はよ」

 

――オートスの手に力が入り、更にグッと顔を上げさせられるダリヤ。

 

 

「ぐ…っ、う…っ」

 

「ふんっ。 …まあいい。 考えようによっては薬で人形にしたまま犯すより、今の方が愉しめるかもな」

 

「…っ、かはっ。 かは…っ」

 

――ダリヤの顔から手を離し、服を脱ぎ始めるオートス。

 

 

「泣いてるメリアは鬱陶しいが、それもまたアクセントだ。 ダリヤも泣いて、俺を悦ばせろよ?」

 

「…っ!」

 

「ククッ。 俺のチンポも中々だろ? これでお前のマンコを嫌というほど抉ってやるよ」

 

「やめ…っ、やめ、て…っ!」

 

「予定より時間は食っちまったが、ようやくだぜ」

 

「来ないで…っ! いやっ!」

 

「ククッ。 身体が動かせないと抵抗も出来ないよなあ? ほら、股が開いていくぞ?」

 

――オートスがダリヤの両足首を持ち、ゆっくりと左右に割り広げていくと、そこには濡れそぼったショーツが存在していた。

 

 

「いやっ! いやっ、いやあ…っ!!」

 

「ククッ…、今更脱がすのも面倒だ。 このままズラして挿入てやるよ」

 

――ダリヤの動くことの出来ない足から手を離し、オートスが自由になった手でダリヤのショーツに手を伸ばす。

 

 

「いやあああああっっ!! 助けてっ、ヴォルフっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その、ダリヤの助けを呼ぶ叫び声が響いた時。

 

激しい破砕音とともに扉が開かれた。

 

 

「………状況を」

 

 

鍵のかかった扉を魔導具で壊し、トラセーが会長室へと入り、部屋内を見まわしながら感情を抑えた声で問いかける。

 

泣いていたメリアはトラセーの声に顔を上げ。

 

現状を認識したオートスが喉をひゅっと鳴らして顔を上げ。

 

助けを求めたヴォルフでは無く、トラセーが来てくれたことにダリヤは気付き、涙を流して安堵した。

 

 

「聞こえないのか、オートス。 ……状況を、話せ」

 

「……ッ!!」

 

 

トラセーの本気の声音に怯えたオートスが、ダリヤから離れ、尻もちをついて後ずさる。

 

誰も口を開かないまま、開け放たれた会長室の前にトラセーの子飼いの者たちが立ち塞いで中の様子を隠す。

 

更に、盗聴防止の魔導具扉を起動した上で、壊した音に驚き近寄ってきた従業員たちを散らしていった。

 

 

「………」

 

「ち、ちが…。 違うんだ、トラセー。 お、俺は」

 

 

トラセーがダリヤの元に足を進め、ソファに股を広げたままの姿を隠すよう、上着を被せる。

 

オートスがトラセーの本気の怒りを悟り、弁解を始めている。

 

 

「ぁ…」

 

「……申し訳ありません、ロセッティさん」

 

 

次いで、ソファの斜め前に座り込んでいるメリアの手を取り、引き寄せ、抱きしめた。

 

本来の、トラセーの容赦の無さを知っているオートスが、なんとか怒りを鎮めて貰おうと頭を回転させようとするが、恐怖のせいで上手くいかず、思考を停止させている。

 

 

「トラセー、様…っ」

 

「…すみません、メリア。 ここまでされていたと気付かず」

 

「…っ、トラセー、様っ! トラセー様ぁ…っ!」

 

 

メリアの胸に、ピアスが嵌められていることに気付き、それがオートスの手によるものだと同時に理解したトラセーが、悔恨の念とともにメリアに謝罪した。

 

泣きはらしていた目を更に潤ませ、メリアはトラセーに抱きしめられ、その体温を感じたことで安堵を覚え、涙を流した。

 

そこでようやく、メリアのことも弁解しなければならないと気付いたオートスが、口を開く。

 

 

「違うんだ、聞いてくれトラセー。 俺は別にお前の女を取ろうとしたわけじゃないんだ」

 

「一人はどこでもいいからカーテンを取ってきて目隠しを。 もう一人は私の机の3番目の引き出しから契約書を持ってきなさい。 これが鍵です」

 

「かしこまりました」

 

「ちょっと魔が差しただけなんだ。 分かって、分かってくれるよなトラセーっ。 なあ、ト、トラセー?」

 

 

オートスの弁解を聞き流し、部下へと指示を出しながらトラセーは、上着をかけられたまま動いていないダリヤを目で確認する。

 

数秒の間、じっとダリヤを観察したことで、動かないのではなく、動けないのだと気付き、薬を盛られたのだと理解した。

 

無視をされていると理解したオートスが、事態のまずさを、想定よりはるかに悪いことを認識し、更にじりじりと後退った。

 

 

「メリア」

 

「…はい」

 

「ロセッティさんの介抱のため、少し離れます」

 

「っ!?」

 

 

トラセーの言葉に、メリアは『捨てられる』『やっぱりロセッティさんを』『嫌』『許してください』と怯え、抱きしめ返していた腕の力を強くする。

 

 

「…大丈夫です。 今更かもしれませんが、私は貴女を、メリアのことを大切に思っています」

 

「…っ。 トラセー、様っ」

 

「だから、少しだけ」

 

「…、本当…っですか?」

 

「ええ」

 

「………わかり、ました」

 

「…いい子です。 服を着て、待っていてください」

 

「ぁ……。 ん…っ。 ちゅぷ…っ、ん。 ………ぁは、ぁ」

 

 

トラセーがメリアの身体をぎゅっと強く抱きしめ返し、顔を寄せ、安心させるようキスをした。

 

涙を流したままのメリアは、実際以上に久しぶりに感じるトラセーからの口づけを受け、とろんとした顔で多幸感に震えながら手の力を抜いた。

 

ダリヤは薬の効果で動けず、その2人の様を見ることは叶わなかったが、聞こえてきた音から何が行われたのかを理解し、耳を塞ぎたくなった自分に驚いた。

 

 

「……ロセッティさん。 体が動かないのだと推測しますが、声は出せますか?」

 

「……出せ、ます」

 

「っ、良かった。 その薬の効果は分かりました、解毒剤を用意します」

 

「あり、が、とう…、ござい、ます」

 

 

ダリヤはオートスに犯される直前の、激情時とは違い、安堵し落ち着いてしまったことで再び言葉が途切れ途切れになってしまっていた。

 

その、言葉を返すことに必死になったことで、ダリヤは先ほど浮かんだ心の衝動を、無意識のうちに蓋をすることが出来た。

 

広げられていた足を、上着で隠しながら優しく閉じ、姿勢を楽にさせるため、横抱きにしてダリヤをソファに寝かせる、トラセーの介抱を受けながら。

 

 

「っ、解毒薬ならそこにある! ちゃんと、解くつもりだったんだ! お、驚かせようとしただけでっ!」

 

 

そんなオートスの言葉に、そこでようやくトラセーが反応する。

 

そのまま机の上の小瓶に目を向け――。

 

それを取らず、部屋の中で後ろを向き、待機している一人に声をかけた。

 

 

「聞こえていましたね? すぐに倉庫に向かって紫の瓶の解毒剤を持ってきてください」

 

「分かりました」

 

「ト、トラセー? そこに、机に置いてある! 本当なんだっ! それをっ、ひっ!!」

 

 

そんなトラセーの行動に驚き、声を荒げるオートスに対し、トラセーは酷く醒めた目で見下ろして口を閉ざさせた。

 

ダリヤとメリアに、あれほどまでに横暴に振る舞っていたオートスが、怯えるように醜態を晒している。

 

そのことに、ダリヤは二人の力関係を察し、『本当に、助かったんだ』と心から安堵したことで、張っていた気が抜け、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安心したことで寝入ってしまったダリヤを見て、トラセーは好都合かと思い、オートスに対して口を開いた。

 

 

「オートス会長。 貴方には二つの選択肢がある」

 

「っ! な、なんだ?」

 

 

呼び捨てではなくなったことに、オートスが幾分落ち着きを取り戻し、トラセーの沙汰を聞き入れようと身を起こした。

 

 

「一つは、貴族となるロセッティさんに狼藉を働いた自責の念から、遺書を書いて毒をあおること」

 

「…ひっ! ま、待てっ、待ってくれっ!」

 

「もう一つは、二度と私たちに姿を見せないよう、私の指定する、遠く離れた場所へと向かい、そこで永住すること」

 

「っ!? わ、わかった! そっちだっ! そうする! そうするっ! ありがとうっ! ありがとうトラセーっ!!」

 

「……路銀と1年分の生活費は持たせます。 ですので、拘束を受け入れ、今から馬車で隣国へと連行されなさい」

 

「い、今から!?」

 

「…立場が分かっているのですか?」

 

「ひっ!? わ、わかった! 分かってる! い、今からだな! おい、誰かっ、誰でもいいっ! 早く俺を拘束しろ!」

 

 

ズボンを下ろしたままの姿でトラセーの子飼いの部下へと命令するオートスだが、誰も動くことはなかった。

 

喚くオートスをしり目に、トラセーが一人に声をかけ、馬車へ走らせ、もう一人には今書き上げたメモを渡して、倉庫から罪人用の拘束具を持ってくるよう指示を出した。

 

安心したように、すやすやと寝息をたてるダリヤの姿を目に入れ、トラセーは扉を壊した時のことを思い返す。

 

 

『助けてっ、ヴォルフっ!!!!』

 

 

危機的状況に、自分ではなく、ヴォルフの名前を呼んだダリヤ。

 

そのことに、分かり過ぎるほど理解させられた。

 

先ほど行われた開発時ですら、既に思い知らされていたというのに、更に追撃を食らった気分だと、トラセーは自嘲し、再度、また、胸を痛めた。

 

『結局、ロセッティさんは。 ダリヤは、ヴォルフのものになるのだな』と、ついに奪えなかった、ダリヤの処女と心を遠いものに感じ、トラセーはゆっくりとダリヤから目を離し、うつむいた。

 

―――その姿を、メリアはずっと、見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ロセッティさん。 本日は、本当に申し訳ありませんでした」

 

「……いえ。 私も、腕輪を…。 防毒の腕輪を着けていなかった私の不注意も、あります」

 

 

仮眠をとったことで更に時間が経ち、薬の効果が薄れ、解毒剤を飲むことが出来たダリヤは、平時のように動けるようになっていた。

 

そんなダリヤに対して頭を下げ、トラセーは何度も謝罪を繰り返していた。

 

すでにオートスには遠いところに行ってもらったと、二度と会うことは無いと伝えている。

 

それでも、自身に関係する人物が起こした不祥事に、トラセーはダリヤへと許しを乞うための努力を惜しむことはなかった。

 

 

「それに、…助けて、くれましたから。 だから……、もう、いいです」

 

「……、ありがとう、ございます」

 

 

ダリヤは、もうリングもチョーカーも着けていない。

 

今日まではと言ってしまっていたトラセーが、もうそんなことをする必要は無いと外していたからだった。

 

濡れ湿ったままだったショーツも替え、今はもう、本当に、性的な服装ではなく、普通の、普段の恰好だった。

 

 

「…ですが、流石にこのまま、ロセッティさんの好意に甘えるわけにはいきません」

 

「…?」

 

「一年前、交わした契約を。 破棄…、いえ、完遂したことにしましょう」

 

「っ!?」

 

「期間まで、もう10日程しか無いと。 だから、後1回だけと、そうロセッティさんは思っているはずです」

 

「…は、はい」

 

「ですが、これは私が今まで週に1度あるかないかで調整していただけで、やろうとすれば毎日でも呼ぶことが出来たのです」

 

「…っ!! そ、それ……、では」

 

「…ええ。 本当なら、私は最後の週、ロセッティさんを、数日間セックス漬けにするつもりでした」

 

「っ!?」

 

 

トラセーの言葉に、ダリヤは無意識のうちに考えないようにしていた、その内容を想像した。

 

ぞくぞくと背筋に甘い痺れが走り、身体が震え、身を守るように胸の前で腕を交差する。

 

 

「…っ、セックス…漬け……っ?」

 

「ええ。 そうすれば、もう。 私から離れられないだろうと…、そう、目論んでいました」

 

「っ、……っ」

 

「ですが、今日………、ロセッティさんに拒絶されたことで理解しました。 私に、その目はもう無いのだと」

 

「………ぇ」

 

 

トラセーが自嘲するように顔を横に向け、うつむいてダリヤの顔を見ることなく言葉を続ける。

 

 

「だからもう、こんな契約は必要ありません。 こちら側の不手際であんなことも起きましたし、謝罪も含めて契約の完遂とさせてください」

 

「ぁ……っ」

 

 

ダリヤが声を思わず漏らす。

 

本来、喜ぶべきであるはずなのに、ほんの少しの困惑と落胆が胸に浮かんだことで素直に喜ぶことが出来ない。

 

そんな心情から、ダリヤの口から、そんな吐息が漏れてしまった。

 

 

「ヴォルフへはもう、何もしません。 貴女の献身で…、彼も。 私も……」

 

「……っ」

 

「ただ、…ひとつだけ」

 

 

トラセーがそう言って顔を上げ、ダリヤを見つめる。

 

その時にはもう、ほんの少しだけ惑うような顔をしていたダリヤが、ヴォルフの名を出されたことハッとして、元に戻っていた。

 

 

「この契約は完遂しましたが、契約期間内のことは、無かったこととして扱ってください」

 

「…ぁ」

 

「貴女は私に、どこも触れられていないし、私も、貴女に触れていない」

 

「っ」

 

「これで、ロセッティさんに醜聞が広がることはありませんし、私も、生きていけます」

 

「…っ!」

 

 

そう、この関係が漏れてしまえば。

 

ダリヤはその先のことに気付き、考え至った。

 

『自分はもう、誰かと結ばれることはない』、それはもう、自身の中で、あの、婚約破棄後から折り合いをつけていた。

 

しかし、この関係が漏れてしまえば…。

 

あの、ダリヤに対して過保護なスカルファロット家のこと、『トラセーさんは……』と、そう、直感的に確信してしまった。

 

そうなればもう――元々漏らす気はないとは言え、ダリヤとしては頷くしかなかった。

 

 

「開発していた通信用魔導具については、設計図を含めた書類を渡します」

 

「っ!? ほ、本当にあったのですか」

 

「…はは。 流石に、これだけのことをする、…したのですから。 1ヶ月ほど前には、作成は終わらせています」

 

「………凄、い。 …っ! 設計図も、ですかっ?」

 

「ええ。 ロセッティさんには''手伝ってもらっていた''ので、当然、把握しているはずですから、ね」

 

「…っ!」

 

 

その、前世の現代文明を知るダリヤにとって、それがどれほどの偉業かは分かり過ぎるほど理解していた。

 

だから、単純に、純粋に、トラセーと、その子飼いの魔導具師たちのことを、ダリヤは。

 

―――凄いと、思った。

 

 

「機能も限定的で、大きさもかなりのものですが、王家に捧げた後は、あちらで開発を続けてくれるでしょう」

 

「っ!? 開発に携わらないのですかっ?」

 

 

思わず大きな声をあげてしまうダリヤに、苦笑するように返すトラセー。

 

 

「私たちも、流石にこれが国家案件だと理解しています。 関わることはしませんし、恐らく神殿契約で縛られるでしょう」

 

「ぁ…っ」

 

 

そう言われ、ダリヤは確かにそうなるだろうと、いや、そうなるはずだと思い至った。

 

今までは、本当に通信用魔導具が開発されているとは思っていなかったことで気付けなかったが、本来これは国防にも関わる重大案件だった。

 

それに、この開発が進むことで、魔物討伐部隊の安全度にも…。

 

そこまで考えが回り、ダリヤはトラセーに対し、今までと違う目を向けるようになった。

 

 

「今まで、ありがとうございました」

 

「ぁ…、あっ。 い、いえ。 その…、こちらこそ、…ありがとう、ございます」

 

 

気持ちの整理がつかないまま、ダリヤは思わず礼を言ってしまった。

 

そんなダリヤに苦笑し、トラセーは内心を隠し、おどけるように言葉を続けた。

 

 

「いえ。 こちらも大変、素晴らしい思いをさせてもらいましたから」

 

「…っ!!」

 

 

ダリヤがトラセーの指す内容に思い至り、身体を固くする。

 

 

「はは。 すみません、何も、無かったですね」

 

「……、そう、…です、ね」

 

 

そう言ったきり、トラセーは口を閉ざし、契約書に火をつけ、その存在を消し去った。

 

ダリヤはそれを見つめ、『終わったんだ』と、開発の記憶と、心に少しだけ残った傷に蓋をした。

 

 

「では、これが設計図です。 ロセッティさんにも、王城から呼び出しが来ると思いますので、早めに読み込んでください」

 

「はい」

 

 

トラセーがダリヤに書類の入った封筒を渡し、馬車の前まで見送る。

 

ダリヤはカバンの中に収め、最後にトラセーへと言葉を送る。

 

 

「それでは」

 

「はい」

 

「……今まで、お世話になりました」

 

「…ええ。 ありがとうございました」

 

 

そう言ってダリヤは馬車へと足を進め、トラセーは、『……未練だ』と、その後ろ姿を見ることを止め、商会の中へと戻った。

 

これで、1年を経たず、二人の契約は、関係は終わった。

 

会うことも、無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――それから半年が経つまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 















ダリヤさん。

危なかった。
今までは寸止めを繰り返されるか、じりじりと炙る程度の快感を続けられるかしか経験していなかったため、今回のような絶頂しても責め続けられる乳首への快楽拷問が、脳に記憶されてしまった。
自室での乳首オナニーでは、絶頂以降、ある程度までは続けることが出来るが、何度繰り返してもこの時のようにはいかず、ある日を境に諦めることを決めた。
露出オナニーについては、これ以降、塔でヴォルフと食事をとった夜に行うことが多くなったが、ある日を境に止めることを決めた。
開発された証であるニップルリングやチョーカーは、幾たびか、装着することはあったが、ある日を境に止めることを決め、箱に入れて封じた。
次はセックス回。


トラセー。

商会長になった。
魔導具を献上し、無事国家案件となったことでその功績を譲ることを受け入れ、時期を開けた後、メリアと結婚するためのお墨付きと資金を貰うこととなった。
しばらくして、画期的な避妊具開発に成功し、商会を潤わせた。
メリアと結婚したあとも、ダリヤへの未練は残り続けたことで心因性の勃起不全に苛まれている。


メリア。

トラセーが好きで好きでどうしようもなく愛していたため、どんなことを言われても受け入れていた。
オートスに調教され、身体に穴まで空けられ、奴隷宣言までさせられたことで割と絶望していたところに、今回のことが起きた。
トラセーから抱きしめられ、大切だと告げられ、キスをされたことで持ち直し、後に婚約の打診を受けたことで幸せに打ち震えた。
ダリヤのことは嫌い。
それでも、オートスに堕とされた上、女遊びを続けるトラセーと結ばれることは無いと思っていたところに、婚約することが出来たのでとてもとても感謝している。
オートスの女だったと周囲の従業員に認識されているのを逆手にとって、数年前からトラセーと想いあっていたメリアがオートスに卑劣な手段で犯されていたのだと、トラセーが話を作って広めた。
それは多数の貴族家から疑惑の目を逸らすためというトラセーの頼みだったので受け入れた。
盛大な結婚式をトラセーに挙げてもらい、幸せの絶頂が到来した。
性生活については、トラセーの勃起不全はあっても、ペニスを慰め続けている。
自身は抱きしめられ、触れられるだけで心が満足している。
ただ、トラセーが辛そうにすることがあるので、思い悩んでいる。


オートス。

遠いところに行った。
ダリヤやメリアのことは、トラセーがそこまで本気だとは思っておらず、いつもの遊びだと高を括っていた。
今回、薬の効果が出るまで待つのは良かったが、その後の予定にない時間の浪費のせいでレイプ未遂で終わる。
思いのほか、ダリヤの男を無意識に誘う言動にあてられてしまったのが原因。
ダリヤにチクオナさせたりメリアを使ってトラセーにマウントを取ったりダリヤと問答しなければレイプ出来ていた。
遠いところに行った。



スカルファロット家。

ダリヤの出向が終わったことで、トラセーの監視の数を減らした。
更に、トラセーの欺瞞情報を鵜吞みにすることは無かったが、メリアと結婚し、一人の妻だけを愛すと衆人の前で誓ったことで、ダリヤ関連の監視対象から外した。

結婚式の内容を知ったヴォルフは、トラセーが本当にダリヤとは何も無かったのだと安堵した。
時が進み、ヴォルフが男爵となり、立場が同じになったことで、ダリヤに気持ちを告げる。
その告白に戸惑い、受け入れることから逃げるダリヤに対し、何度も何度も想いを伝え続け、ある日の出来事をきっかけにして、結ばれた。




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