淫獄地域枠 リコ先生は村のみんなのお嫁さん 作:馬門戒明/輪島ライ
臨床研修修了式から2年近くが経って、私は人生で初めての子供を出産しました。
中井戸村は元々無医村だったので入院での出産を受け入れる産婦人科の医院や病院は当然なく、この村で生涯を過ごすことを決めた私は自宅での出産も検討しましたが指導医の四谷先生と正看護師のアイカさん、そして将来の夫3名も私には安心できる環境で出産して欲しいと言ったので私は鳥取市内の産婦人科病院に入院して無痛分娩で出産を遂げました。
昨日の未明に出産したばかりの私は日曜日の昼である今も病室のリクライニングベッドに腰掛けていて、その胸元には生まれたばかりのかわいい女の赤ちゃんを抱いています。
初乳が出始めた乳房を赤ちゃんの小さな口に含ませ、おっぱいを吸わせてあげながら私は自分自身のこれまでの人生を振り返っていました。
鳥取県内に生まれて地域枠で山陰大学医学部医学科に入学し、卒業後に医師国家試験にどうしても合格できず地域奉仕枠に転入して研修医になったこと。
完全に勘違いだったとはいえ、地域奉仕枠の義務を果たすために中井戸村の人々に性的奉仕を繰り返して将来の夫たちに出会えたこと。
初期研修2年目で出会った正看護師のアイカさんと恋仲になって、彼女を人生で初めての女性の恋人にすると決めたこと。
臨床研修修了式の日の夜に将来の夫たちを含めた5名の男性と代わる代わる交わって、思いのままに身体を
そして……
「お疲れ様ですリコ先生。四谷先生にお願いして日帰りでここまで来ちゃいました」
「こんにちはアイカさん。リカちゃんもずいぶん大きくなりましたね」
病室にノックをして入ってきたのはつい今まで想像していた正看護師のアイカさんで、彼女は腕の中にもうすぐ1歳になる女の赤ちゃんを抱いていました。
彼女は大滝
そして、臨床研修修了式の日の夜にアイカさんの膣内にピペットで5人分の精液を注入し、彼女を受精させたのはこの私です。
私はアイカさんの出産が近くなった頃からピルを服用するのをやめて、アイカさんが初めての赤ちゃんを出産するのとほぼ同時に村の男性の誰かの子供を身ごもったのです。
「まーま、まーま」
「リカちゃん、リカちゃんのママは私だけどリカちゃんにはもう1人お母さんがいるのよ。前にも言ったけど、このリコ先生はあなたのもう一人のお母さん」
「りー、りー。まーま」
「アイカさん、よかったらリカちゃんにもおっぱい吸わせてあげましょうか? リカちゃんも私の娘なのでその権利はあると思いますから」
「いいんですか? じゃあリカちゃん、リコお母さんに抱っこして貰ってね。どうぞ……」
私はアイカさんが慎重に差し出してきたリカちゃんを左腕で受け止めると、リカちゃんを空いていた左の乳房に吸い付かせました。
右のおっぱいは生まれたばかりの赤ちゃんに、左のおっぱいはもうすぐ1歳のリカちゃんにちゅうちゅうと吸い付かれ、私は優しい気持ちが先ほどまでの2倍になりました。
「こうしていると、この世界に私たちしかいないみたいですね。この2人の赤ちゃんは血がつながっているかも知れないし、いないかも知れない。ですけど……」
「ええ、2人のお父さんが誰であっても、この赤ちゃんとリカちゃんは私とアイカさんの子供です。ずっと2人で、いえ、家族のみんなで大切に育てていきましょうね」
「もちろんです。……その、また今度でいいので私もリコ先生のおっぱい飲んでもいいですか? 前から憧れてて……」
「もー、アイカさん子供たちの前で何言ってるんですか。頼まれなくたって一杯吸わせてあげますよっ」
私が少し頬を赤らめながら言うとアイカさんは優しく微笑んでくれて、私とアイカさんとの間には既に性欲や恋愛以上の感情が定着しているのだろうと思いました。
生まれたばかりの赤ちゃんもリカちゃんも私の母乳を飲んでいる間にうとうとして眠ってしまい、それからはお互い子供を抱いたままアイカさんとお喋りをしました。
私が入院している間は四谷先生が奮闘していて、ピンチヒッターとして山陰大学地域枠の研修医さんが来てくれているので中井戸村の医療は何とかなっているそうです。
私は新年度からは3年目の
まだ研修医気分が抜けきらない私ですがアイカさんは正看護師としてずっとこの村で私を支えてくれますし、地域奉仕枠の研修医も新たにやって来る予定なのできっと大丈夫だと思います。
そうこうするうちに病室の外で何人もの足音が響いてきて、ノックして入ってきたのは中井戸村の男性たちでした。
今日は日曜日ですし将来の夫たちが訪ねてきたのかと思ったものの入ってきたのはおじいさん2名とおじさん1名で、顔を見ると彼らは村長さんと漁師町の
「敷島先生、この度はご出産おめでとうございます。孝宏は試験前で来られないということで申し訳ありません」
「元気な赤ちゃんが生まれてこれはめでたい! 正継さんが釣り上げた鯛の姿焼きでも持ってきたかった所ですが、流石に身体によくないので産婦さん向けのおやつを持って参りましたよ!」
「リコ先生、最近は腰の調子も良くなって杖をついてここまで来られました。道隆からもよろしくお伝えして欲しいとのことです」
「皆さんどうもありがとうございます。お見舞いとても嬉しいですけど、3人揃って来てくださったのは一体……?」
村の有力者である3人が揃って来たのには何か事情があるのではと考えて聞くと、村長さんは優しい表情で頷きました。
アイカさんはリカちゃんがぐずり始めたのでちょっと失礼しますと言って部屋を出て、私も生まれたばかりの赤ちゃんが泣き出さないか気にしていると村長さんは小さなカバンから封筒に入った紙を取り出しました。
「敷島先生は以前生まれてくる赤ちゃんの名前に悩んでいると仰っておられましたよね。実は孝宏と正継さんと道隆さんが私どもに相談してきて、この3人で赤ちゃんの名前を考えて敷島先生にお伝えすることになったのです。正式な親は敷島先生お一人ですから当然無理強いはしませんが、よろしければこの名前をつけてあげて頂けませんか?」
「それは……すっごく嬉しいです! えーと、この子の名前は……『亜美』? あみちゃんですか?」
村長さんと生塩船長と先代店長さんが3人で考えたという赤ちゃんの名前は「亜美」で、決して珍しい名前ではありませんが私はその由来が気になりました。
「『亜』という文字には亜熱帯や亜種というように何かに次ぐとかやや異なるという意味もありますが、
先代店長さんがしみじみと語った名前の由来に、私は胸が一杯になって何も言えなくなりました。
そして胸元ですやすやと眠っている赤ちゃんを見て、私は語りかけます。
「亜美ちゃん……そう、あなたの名前は今から亜美ちゃんです。お母さんは中井戸村で素晴らしい家族たちと一緒にあなたを立派に育て上げます。私はこれからもお父さんが分からない子供を何人も生みますが、あみちゃんはその祝福された子供たちの最初の一人です」
私が語りかけるとあみちゃんは目を覚まし、この世界の誰よりも素敵な笑顔を私に向けました。
「私とタカヒロお父さんとマサツグお父さんとミチタカお父さんとアイカお母さん、そして村のみんながあなたを大切に守り育てていきます。……生まれくる命のために、私は中井戸村のリコ先生としてずっと生きていきます。あなたにはお父さんがいないんじゃなくて、この村のみんながあなたのお父さんでお母さんなんだよ」
そうしてあみちゃんをぎゅっと抱きしめると私は感涙にむせび泣いてしまい、村長さんと生塩船長と先代店長さんはその様子を微笑ましく眺めていました。
中井戸村のリコ先生は、村のみんなのお嫁さん。
そんな私と生まれくる全ての命に、どうか神の祝福がありますように。
(完)