⭐️痴漢掲示板 狩られる女たち⭐️痴漢小説❤️短編集 イラスト付き有り 作:みなぽん
⭐️電車が走り終点のホーム
電車が静かに減速し始めると同時に、男たちの動きも緩慢になった。長い凌辱の時間が終わる。彼らは満足そうに笑いながら、私たちを置いて列車を降りていった。
私は純恋ちゃんと車両の床に座り込んだまま、動けなかった。下半身は白濁液で汚され、身体中には男たちの痕跡が残っている。純恋ちゃんも同様だった。彼女の身体は痣だらけで、口の端には血が滲んでいた。
「純恋ちゃん……ごめんね……」
私は彼女の手を握った。彼女の指は冷たくて、震えていた。
「なんで謝るの……愛佳は悪くない……」
掠れた声で答える彼女。その瞳は焦点が合わず、虚空を見つめている。
「私が……止められなかったから……」
嗚咽が止まらない。
「違う……私が弱かったからだよ……愛佳を守れなかった……」
彼女は涙を零しながら言った。その顔に浮かぶのは自責の念だ。
私たちは互いに謝り合った。どれだけ言葉を尽くしても、この罪悪感は拭いきれなかった。
⭐️自宅
自宅のバスルームで、私は声を殺して泣いた。
シャワーの湯を最大まで出し、熱い水流で身体を擦る。ゴシゴシと、皮がむけるほどに擦る。なのに、男たちの粘ついた感触は消えない。指先が残した痣の痛みも、奥に注ぎ込まれた白濁の重みも、何一つ消えてくれない。
「あぁ……っ、うぅっ……」
湯音に紛らせて嗚咽を漏らす。お風呂場の鏡に映った自分の顔は、別人のように醜く腫れ上がっていた。
身体の汚れは、いくらでも洗い流せるかもしれない。時間が経てば、内側の痛みも麻痺していくかもしれない。
でも、心の汚れだけはどうしようもなかった。
私は、お湯の柱の下で床にへたり込み、抱き膝を震わせた。
人生に、絶望していた。
こんなことになるくらいなら、あの朝、駅のホームで純恋に出会わなければよかった。いや、もっと前から。彼女に声をかけられなければ、私は一人であの電車に乗り、一人で傷つき、そして一人で朽ちていけばよかったのだ。
私のような人間に関わったせいで、彼女まで地獄に引きずり込んでしまった。
「ごめんね……ごめんね……」
謝っても、謝りきれない。彼女のあの太陽みたいな笑顔を、私の我がままな「守られたい」という甘えが、泥の中に沈めてしまったのだ。
私は、人間のクズだ。
自分の病気のせいにして、彼女の背中に隠れていた。盾にしてもらって、安心しきっていた。なのに、いざという時に私は何もできなかった。ただ後ろで震えて、見ているだけだった。
それどころか——。
「あぁっ……!」
私は濡れた髪を鷲掴みにし、自分の頭を殴りつけた。
目を閉じるな。そう念じても、瞼の裏には残酷な映像が焼き付いて離れない。
男たちに四肢を押さえつけられ、白い肌を晒した純恋の姿。無理やり開かされた脚。そこに食い込む、汚らわしい男のモノ。苦痛に歪む彼女の顔。屈辱に濡れた瞳。口の端から漏れる、悲鳴ともつかない喘ぎ声。
「やめて……見ないで……」
彼女の声が、蘇る。
その時の、純恋の目を思い出す。私を助けようと必死だった瞳が、次第に虚ろに潤み、そして——私がこの光景を興奮して見ていることを知った時の、あの深い絶望の色。
あの瞳が、私を責めている気がした。あの瞳が、私の胸を抉り取る。
「うぁぁぁぁ……!」
やりきれずに、私はシャワーの下で赤子のように丸まって泣き叫んだ。
更に私を地獄へと突き落とすのは、その光景を想起するだけで、身体の奥が疼き、熱くなる自分自身の異常さだった。
親友が目の前で蹂躙されている。その悲惨な光景に、私は確かに興奮していた。自分の意思とは裏腹に、子宮が疼き、蜜が溢れ、声にならない嬌声が喉の奥で反響していた。
人間じゃない。化け物だ。
私と関わったせいで、彼女は体も心もボロボロにされたというのに、私はそんな彼女の姿をオカズにして感じていたなんて。
許されるはずがない。
「死んじゃえ……私なんか……」
暗い水の底のような思考が、容赦なく私を溺れさせる。
私のような人間が生きていていいわけがない。私は周囲に不幸をばら撒く疫病神だ。純恋の光を奪い、泥沼へと引きずり込んだ魔物だ。
洗面台に手を伸ばす。何か鋭いものがないか。この記憶ごと、自分の脳味噌を破壊できるものがないか。
しかし、濡れた指が掴んだのは冷たい鏡だけだった。鏡に映る自分は、涙と湯気でぐしゃぐしゃになった、みすぼらしい女の顔だった。
「純恋ちゃん……」
彼女の名前を呼ぶたびに、胸が裂けそうになる。大好きな人を、私は壊してしまった。
彼女の「あたしが守るから」という言葉が、今は鋭い刃となって胸に突き刺さる。
守れなかった。守られる資格もない。
もう、誰にも救われない。あの電車の中で、私は人間としての尊厳も、親友への誠実さも、全て失ってしまったのだ。
風呂場に冷たい空気が漂い始めても、私は立ち上がることができなかった。
目を開けても、閉じても、世界は地獄のままだった。
⭐️援交
私は家を出た。行く当てもなく、ただ自分を壊したくて。
スマホには純恋からのメッセージが何件も届いていた。「大丈夫?」「今どこ?」「返事して」。その全てを無視して、私は夜の繁華街へと足を向けた。
ネオンの光が淫らに煌めく通り。週末の夜とあって、酔客やカップルでごった返している。そんな中で、私は立ち止まった。
壁際に立つ数人の少女たち。
みんな同じような目をしている。虚ろで、諦めきった目。自分を売ることに慣れきった、達観した目。
私は彼女たちの列の端に立った。ワンピース姿の私は明らかに場違いだったけれど、誰も気にしない。この通りでは、みんな自分の欲望だけを見つめている。
どれくらい経っただろう。何人かの男が私の前を通り過ぎ、値踏みするような視線を向けては去っていった。その度に心臓が早鐘を打つ。逃げ出したい気持ちと、もっと自分を傷つけたいという衝動がせめぎ合う。
「お嬢ちゃん、いくら?」
声をかけられた。振り返ると、初老の男性が立っていた。白髪交じりの髪、上品そうなスーツ。年の頃なら六十代後半だろうか。彼は穏やかな笑みを浮かべていたが、その目は私の身体を舐め回すように見つめている。
私は声が出なかった。代わりに、小さく頷いた。
「じゃあ、こっちにおいで」
彼は私の手を取った。皺だらけの手。その感触に鳥肌が立つ。
連れて行かれたのは、通りから少し外れたラブホテルだった。ロビーで部屋を選ぶ間も、彼はずっと私の手を握ったままだった。まるで逃げ出さないようにと確認するかのように。
部屋に入ると、彼は豹変した。
「さあ、脱ぎなさい」
その声は先ほどまでの穏やかさが嘘のように冷たかった。私は震える手でワンピースのボタンを外した。男は椅子に座り、脚を組みながら私を見ている。値踏みするような、品定めするような目。
「下着も全部だ」
ブラジャーを外し、ショーツを下ろす。裸になった私を、彼はじっくりと観察した。
「若い身体はいいな。でも、ずいぶん傷があるじゃないか」
その言葉に、私は俯いた。身体中に残る昨日の陵辱の痕。痣や抓り傷。それら全てを見透かされているようで、羞恥心が込み上げる。
「まあいい。ベッドに横になりなさい」
私は言われるがままにベッドに仰向けになった。男はゆっくりと服を脱ぎ、私の上に覆いかぶさってきた。老いた身体。皺とシミだらけの肌。それでも彼の息遣いは荒く、目は欲望にぎらついている。
彼の指が私の胸をまさぐる。その感触は昨日の男たちとは違って、妙にねっとりとしていた。しつこく、念入りに、まるで壊れ物を扱うかのように。でも、それは優しさじゃない。執拗さだ。
「あっ……」
思わず声が漏れた。彼の指が私の乳首を摘み、ゆっくりとこね回す。
「感じやすいんだな。若い証拠だ」
私は唇を噛み締めた。まただ。また身体が勝手に反応する。
彼の手が下腹部へと降りていく。太ももを撫でられ、秘部に指が這い入る。
「濡れてるじゃないか」
男は笑った。その笑い声が耳障りで、私は目を閉じた。
彼は焦らすように、ゆっくりと私を犯した。急かず、騒がず、まるで儀式のように。その間、私はずっと天井を見つめていた。古びたシャンデリア。壁のシミ。カビ臭い空気。
身体は反応していた。彼が腰を動かすたびに、私は小さく喘いだ。それでも、心はまるで死んだように冷たかった。
どれだけ時間が経っただろう。彼がようやく果てた時、私は全身が汗と精液で汚れていた。
「ふう……」
男は満足げに息を吐き、私の隣に寝転んだ。そして、天井を見つめながら言った。
「お前、病気だろう」
その言葉に、私は身体を強張らせた。
「何の……ことですか……」
「とぼけるな。さっきから見ていてわかった。お前、犯されるのが好きなんじゃない。それなのに感じてしまう。まるで呪いみたいにな」
彼は私の方を向き、皺だらけの手で私の頬を撫でた。
「パラフィリアだな わしは医者だからすぐわかる」
私は何も言えなかった。図星だった。
「可哀想に。こんな若さで、身体が心を裏切るなんてな」
彼の声は同情に満ちているようで、どこか冷たかった。
「でもな、お前はそれを言い訳にしてるだけだ。病気だから仕方ない。そうやって自分を甘やかして、誰かに依存して、そして傷ついたらまた誰かのせいにする」
違う。違うよ。私はただ……
「そんなんじゃ、いつまで経っても救われないぞ。お前は変態なんかじゃない。ただ弱いだけだ」
「ちが……」
「本当に自分を変えたいなら、こんなところで身体を売ってる場合じゃないだろう。自分と向き合え。病気と闘え。誰かに守ってもらうだけじゃなくて、自分で立つんだ」
彼の言葉は、刃物のように鋭く私の胸を刺した。
「お前みたいな子はたくさん見てきた。みんな、楽な方に逃げるんだ。そして、そのうち本当に壊れてしまう」
涙が込み上げてきた。違う。違うよ。私は逃げてるんじゃない。戦ってる。でも、もう疲れた。もう限界なんだ。
「今日のことは忘れろ。こんなことはもうするな。いいな」
彼はそう言って、私の髪を一房掴み、引き寄せた。そして、耳元で囁く。
「それと、もう一つ。お前の身体は確かに変態だ。普通の女なら、こんなに感じない。犯されて喜ぶなんて、やっぱりお前は変態だよ」
矛盾した言葉。さっきまでの説教は何だったのか。
でも、その言葉が一番、私の心を抉った。
「覚えておけ。お前は変態だ。でも、それを克服できるかどうかは、お前次第だ」
彼は私を離し、ベッドから起き上がった。服を着て、金を置いて、部屋を出ていく。
最後に彼は振り返り、言った。
「さようなら、可哀想な変態さん」
ドアが閉まる音。
私は一人、ベッドの上に残された。
涙が止まらなかった。
「私……変態なんだ……」
純恋が守ろうとしてくれた。それなのに私は、彼女の苦しむ姿に興奮した。そして今、見知らぬ老人にまで変態呼ばわりされた。
違う。違うのに。私はただ、普通に生きたかっただけなのに。
「純恋ちゃん……ごめんね……ごめんね……」
私はシーツに顔を埋めて泣きじゃくった。
もう二度と、彼女に会えない。会う資格がない。
自分が情けなくて、惨めで、そして——こんな自分が生きていること自体が間違いに思えた。
部屋の時計が、無機質に時を刻む。朝が来れば、また現実が始まる。
でも、もう立ち上がる気力なんて、私には残っていなかった。
⭐️引きこもり
カーテンの隙間から差し込む光だけが、時間の経過を教えてくれる。朝なのか昼なのか、もう関係なかった。私は布団の中で丸くなり、まるで死体のように静かな呼吸を繰り返していた。
スマホは電源を切って引き出しの奥にしまい込んだ。画面に浮かぶ純恋の名前を見るのが怖かった。彼女からのメッセージは、私の胸を抉る刃であり、同時に縋り付きたくなる蜘蛛の糸でもあったから。だから、私は糸を自ら断ち切った。彼女にこれ以上泥を塗らないために。私のような人間と関わらない方が、彼女はきっと幸せだ。
「愛佳、ご飯置いておくね」
ドアの向こうから、母さんの掠れた声がした。トレイが床に置かれるコトリという音。
「……」
返事はしなかった。何日もそうだ。最初はノックの音も激しかったし、「出てきなさい」という父さんの怒鳴り声も聞こえた。でも今は、諦めたような深い溜息だけが残る。
私は這い出し、冷めきったおにぎりを齧った。味がしない。ただ胃袋に詰め込むだけの作業。食べ終わるとまた布団に潜り込む。
あの電車での出来事から、もう一週間が経っていたはずだ。学校には行っていない。行けるわけがない。田崎が待っているから。あの男たちが待っているから。そして何より、純恋と顔を合わせる資格がないから。
部屋は荒れていた。脱ぎ捨てた服、読みかけの本、食べ散らかしたゴミ。鏡を見るのも嫌だった。映るのは、目の下にクマを作り、髪はボサボサで、生気のない顔をした「変態」だから。
ある日の午後、玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン。
母さんが出る気配。低い話し声。
「いえ、まだ自室から……ええ、そうです」
心臓が早鐘を打ち始めた。来客なんて珍しい。まさか。
ドアを開ける音。靴を脱ぐ音。そして、廊下を歩いてくる足音。コツ、コツ、コツ。あの音だ。あの生活指導室へ連行された時の、恐怖の足音。
「愛佳くんは出てきませんか?」
背筋が凍りついた。
田崎だ。
「はい……どうぞ、こちらへ」
母さんの気遣わしげな声。階段を上ってくる足音が近づいてくる。逃げられない。窓はないわけじゃないが、ここは二階だ。
ドアノブが回る音。
カチャリ。
「愛佳、先生が見えてるよ」
母さんの声と共に、ドアが開いた。
そこには、あの男が立っていた。
スーツ姿ではない。ラフなネイビーのポロシャツにベージュのチノパンという私服姿だが、その眼差しは教室で私を見下ろしていた時と全く同じだった。嗜虐と欲望が混ざった、ねっとりとした視線。
「久しぶりだね、佐伯さん」
田崎は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「君が学校に来ないからね。心配でね」
嘘だ。心配なんかじゃない。その目は私を食べようとしている獣の目だ。
「……帰ってください」
私は布団を握りしめ、震える声で言った。
「愛佳!」
母さんが私を叱りつける。
「先生がわざわざ来てくださったのに!」
「いいんですよ、お母さん」
田崎は母さんを制止した。
「引きこもりの子にはよくあることです。無理強いは禁物ですよ」
そして母さんに向かってニッコリと笑う。
「僕が話してみます。二人きりでね」
母さんは一瞬躊躇ったようだったが、「お願いします」と深く頭を下げて部屋を出て行った。
パタン。
ドアが閉まる音が、死刑宣告のように響いた。
鍵はかかっていない。でも、逃げられない。下には母さんがいる。叫んだらどうなる? 田崎が何をしでかすか分からない。
田崎は私の部屋の椅子に座り、足を組んだ。
そして部屋の中をゆっくりと見回す。
「汚い部屋だねえ」
彼は鼻で笑った。
「でもまあ、君にはお似合いだよ。淫乱な引きこもりには」
「……何しにきたんですか」
私は唇を噛みしめた。
「決まってるだろ? 君をもらいにね」
田崎は立ち上がり、私に近づいてきた。ベッドの端に腰掛ける。スプリングが沈む感触に、身体が強張る。
「君が学校に来ないからさあ、俺も寂しくてね。あの電車でも君を待ってたのに」
彼の手が伸びてきて、私の髪を撫でた。
「やめて……!」
私は頭を振って逃れようとしたが、彼は私の手首を掴み、ベッドに押し付けた。
「お母さん下にいるよ。君がどんな変態か話してやろうか?」
脅し。そしてそれは現実的な脅しだった。私は声を殺すしかなかった。
「いい子だね」
田崎は満足そうに頷き、私のパジャマのボタンに手をかけた。
「今日は誰にも邪魔されないよ。あの金髪もいないしね」
純恋の名前が出た瞬間、胸が引き裂かれそうになった。ごめんね。守れなくてごめんね。
ボタンが一つずつ外されていく。白い肌が露出する。田崎の視線が肌に絡みつく。
「あーあ、ずいぶん痩せちゃったねえ」
彼は私の肋骨を指でなぞった。
「でもここは相変わらずだ」
胸を掴まれる。鷲掴みにされ、指が肉に食い込む。
「んっ……!」
苦痛と嫌悪感に顔を歪める。でも田崎は構わず私の上半身をまさぐり始めた。
「あの教室での君は最高だったよなあ。俺のチンポを咥えてヨガってさあ」
耳元で囁かれる卑猥な言葉。
「違う……私は……」
「言い訳はいいよ。君の身体は正直だもんな」
彼の手が下腹部へと伸びる。パジャマのズボンの中へ滑り込んでくる。
「やめ……!」
太ももを撫で回し、秘部へと指を這わせる。
「ああっ……!」
触れられた瞬間、電流のような快感が走った。
違う。感じたくないのに。
田崎はニヤリと笑った。
「ほらね。やっぱり淫乱だ」
彼の指が秘唇を割り開き、中へと侵入してくる。
「ヒッ……!」
濡れているのがわかった。拒絶する心とは裏腹に、身体は男を受け入れようとしている。
「こんなに濡らして……学校サボってオナニーでもしてたのか?」
屈辱的な言葉を浴びせられながら、指で内壁を掻き回される。
「あっ……ああっ……!」
声が出てしまう。下に母さんがいるかもしれないのに。
「声我慢してんのか? いいよ、もっと啼いても」
田崎は指の動きを激しくした。秘裂を擦り上げながら、クリトリスを親指で弄ぶ。
「やっ……ダメぇ……!」
頭を振って快楽を拒絶するが、腰は無意識に彼の指を求めて動いてしまう。
「ほら見ろよ。お前の身体はチンポを欲しがってるぜ」
田崎はズボンと下着を引き下ろした。既に猛っている彼自身が露わになる。
「入れるぞ」
拒否する間もなく、彼は私の脚を開かせた。
「いやぁ……!」
突き入れられる。異物が体内を満たす感覚。
「あぐっ……!」
苦痛と快楽が同時に襲う。
「相変わらずいい締まり具合だ」
田崎は私の耳元で荒い息を吐きながらピストン運動を始めた。
パンパンという肉と肉がぶつかる音が部屋に響く。
「あっ! あっ! あっ!」
声が漏れる。快楽の波に飲み込まれていく。
私は天井を見上げていた。汚れた壁紙。シミだらけの天井。
ここは私の部屋だ。唯一の安全地帯だ。それなのに今、私はこの場所で男に犯されている。
「愛佳! 大丈夫?」
突然、廊下から母さんの声がした。
ドアノブがガチャガチャと回される音。
私は息を呑んだ。田崎も動きを止めた。
「……大丈夫です」
田崎が私の耳元で囁いた。
「ちゃんと答えろよ」
私は震える声で叫んだ。
「だ、大丈夫! 勉強してるから!」
喉が張り裂けそうだった。
「そう……邪魔してごめんね」
母さんの足音が遠ざかっていく。
安堵したのも束の間、田崎は再び動き出した。
「いい返事だねえ」
彼は残忍な笑みを浮かべた。
「お母さんがいたのに興奮したろ? おまえはやっぱり変態だよ」
否定したかった。でも身体は更に熱くなっていた。見つかるかもしれないという緊張感が、私のパラフィリアを刺激しているのがわかった。
「ああっ……もっと……!」
口から嬌声が漏れる。
「何? もっと欲しいのか?」
田崎は速度を上げた。
「くっ……! イキそうだ!」
彼が低く唸り、奥深くへ打ち付けた。
「イクゥゥッ!!」
同時に私も絶頂に達した。子宮が痙攣し、男の精液を受け止めるように収縮する。
二人で重なり合ったまま荒い息をする。
田崎は私の中から抜き出し、汚れたモノを私のお腹に擦り付けた。
「やっぱり愛佳とは相性がいいねえ」
「さあ、次はこっちだ」
田崎は私のお腹に擦り付けた汚れたモノを、私の目の前に突きつけた。生臭い匂いが鼻を突く。まだ鎮まっていないそれは、酷く醜く膨張していた。
私は顔を背けた。口にするなんて、そんなこと。
「何逃げてんだ?」
田崎の手が私の髪を掴み、無理やり顔を固定させた。
「ほら、しゃぶれよ変態!これが欲しいんだろ!」
その言葉は、私の脳髄を直接殴打した。変態。そう呼ばれるたびに、心の中の何かが壊れていく気がする。でも同時に、背筋をぞくりと這い上がるような甘い痺れが走る。否定したい。違う。なのに、身体の奥が疼いてしまう。
「いやだ……そんなこと……」
唇を固く引き結ぶ私を見て、田崎は冷酷に笑った。
「拒否権があると思ってんのか? 下にお母さんがいるんだよ。俺が大声出したらどうなる?」
脅し。絶対的な暴力。私は抗えない。
彼は私の口元に自身を押し付けてきた。先走りの粘液が唇を汚す。
「んぐっ……!」
口を開けざるを得なかった。彼は逃さないと言わんばかりに、私の口の中にねじ込んでくる。
異物感。圧迫感。味も匂いも全てが生理的な嫌悪を催すものだった。吐き気がする。早く終わってほしい。そう思うのに。
「んっ……んんっ……」
頭を掴まれ、前後に揺さぶられる。呼吸が苦しい。顎が外れそうだ。
「そうだ、もっと舌使えよ」
田崎の命令に従い、舌を動かす。屈辱的だ。なのに、奉仕させられているという事実が、私の倒錯した性欲を刺激していくのがわかった。口の中で侵犯されている感覚。口腔という粘膜が蹂躙される背徳の快感。
(ああ……また……感じてる……)
自己嫌悪で涙が溢れる。口が塞がって声が出せないのがせめてもの救いだった。
「へえ、意外と上手じゃないか。やっぱり経験積んでるな」
耳元で囁かれる嘲笑。純恋に守ってもらっていたはずなのに、私はこの男に飼い慣らされているのだ。
コツ、コツ。
階段を上がる足音が聞こえた。
心臓が止まるかと思った。母さんだ。
田崎は動きを止めない。むしろ、ニヤリと笑って深く喉奥まで突き入れてきた。
「んぐぅっ!!」
嘔吐感。苦痛。そして恐怖。
「愛佳? お茶持ってきたわよ」
ドアの向こうからの声。
「むぐっ……んんーっ!」
私は必死に声を殺した。田崎は私の頭を離さない。
口いっぱいに彼の欲望を詰め込まれながら、私は涙を流してドアの方を見つめた。
「…いない?じゃあ後でいいか」
足音が遠ざかっていく。
安堵と同時に、見つからなかったことへの歪んだ興奮が込み上げてくる。私は病気だ。本当に病気だ。
「ふふっ、危ないところだったな」
田崎は私の中から引き抜き、自分の手で扱き始めた。
「口に出してやるよ。変態には似合いだろ?」
白濁した液体が私の顔に降りかかった。熱くて粘つく感触。目も開けられない。
「いい顔だねえ」
汚された顔を指で拭われ、その指をまた舐めさせられる。
私はもう抵抗する気力さえ失っていた。ただ、涙と精液でぐちゃぐちゃになった顔で、虚ろに天井を見上げていた。
顔に注がれた白濁を拭うことも許されず、私はベッドの上で喘いでいた。田崎は満足げに私を見下ろし、まだ熱を持った自身を私の頬に擦り付けてくる。
「さて、口は満足したけど……こっちはまだだろ?」
彼の視線が、私の裸の下半身に移る。無意識に太ももを擦り合わせていた私は、ハッとして脚を閉じようとした。でも、田崎の膝が割り込んできて、それを許してくれない。
「やだ……もう、許して……」
「嘘つくなよ。見てみろよ、ここが」
彼の指が、再び私の秘部に触れた。
「あっ……!」
またしても、愛液が糸を引いている。さっきの絶頂など関係ないように、子宮は再び疼き始めていた。身体が、男を求めて震えている。
「こんなに濡らして、指でイキそうになってるくせに。どうしてほしい? 言ってみろよ」
田崎の指が、意地悪くクリトリスを弾く。
「ひっ……ああっ……!」
声が裏返る。否定したい。お願いだから、これ以上私を辱めないで。でも、身体の奥底から這い上がってくる熱波が、私の理性を溶かしていく。
「どうした? 言えよ。変態は素直が一番だぞ」
彼は私の身体を反転させた。力の入らない私はされるがままに、シーツにうつ伏せになった。
「ほら、上げろよ」
田崎が私の腰を叩く。乾いた音が部屋に響く。
「え……?」
「尻だよ。突き出せ。お前がこれを欲しがってるって、自分で証明してみせろ」
彼の酷な命令が、鼓膜を震わす。尻を突き出すなんて、そんな淫らな真似、できるわけがない。獣みたいじゃないか。
「いや……そんな……」
私はシーツを握りしめ、首を横に振った。でも、田崎は私の臀部を鷲掴みにし、強引に引き上げた。
「あぐっ……!」
四つん這いの姿勢を強製される。恥ずかしい。まるで発情した雌犬だ。後ろから全てを見られているという羞恥心で、顔が熱くなる。
「どうした? もっと高く上げろよ。お前の身体は、そうやって男を誘ってるんだろ?」
彼の手が秘裂を割り開き、濡れた穴を露わにする。恥骨の奥が疼き、熱い蜜が溢れ出すのが自分でもわかった。
「ほら、どうしても欲しいんだろ? なら、自分からねだってみろよ」
田崎の先端が、割れ目をなぞる。熱い。入れてほしい。こんな恥ずかしい格好をさせられて、なおさら身体は男を求めている。
抗えない本能が、私の腰を彼に押し付けていた。
「あぁ……ああっ……」
自分の意思とは裏腹に、腰が揺れる。彼のモノを飲み込みたくて、秘唇が収縮を繰り返す。
「欲しいんだろ? 言えよ」
彼が耳元で囁く。背筋にゾクゾクする快感が走る。
「……して……」
「聞こえないな。なんだ?」
田崎が腰を引く。離れていく感触に、私は焦りを覚えた。
「入れて……ください……」
「何を?」
「……チンポを……私の中に……入れてくださいっ……!」
言ってしまった。自分から、犯されることをねだってしまった。
「ハハッ、素直だねえ。よし、入れてやるよ」
次の瞬間、彼のモノが一気に奥まで貫いた。
「あああぁぁっ!!」
言葉にならない嬌声が漏れる。脳裏に白い閃光が走る。犯される。私の身体が、男の形に合わせて作られているかのように、喜びで痙攣した。
「あっ、あっ、あっ!」
田崎は私の腰を両手で掴み、激しく打ち付けた。パンパンという音が部屋に反響する。尻を突き出し、男を受け入れる獣のような姿。これが私なのだ。
「いい締まりだ! やっぱりお前は尻を振ってる時が一番いいよ!」
背後からの徴服感と、羞恥心が混ざり合い、私を狂わせる。
「私……変態……ああっ、もっと……もっと犯してぇ……!」
口から出るのは、嬌声と懇願だけ。理性は完全に焼き切れていた。
犯される快感。陵辱される悦び。それらが私の全てを支配していた。
「母さんが下にいるのに、またイキそうだな?」
田崎の言葉に、また背徳的な興奮が込み上げてくる。
「だめぇ……イちゃう……またイちゃうぅっ!」
「いいぞ、イケ! 変態がイケ!」
彼の最奥への打ち付けと共に、私は再び絶頂の渦に叩き落とされた。全身を痙攣させ、シーツに倒れ込む。田崎の精液が、私の奥深くに注ぎ込まれる感触。
私はただ、涙を流しながら喘ぐことしかできなかった。
⭐️父との爛れた情事
「愛佳! 開けるよ!」
力任せにドアを叩く音。父さんの声だ。もう夕食の時間もとっくに過ぎているのに、呼びに来るなんて珍しい。普段は干渉しない主義だったはずなのに。
「……開けるな!」
掠れた声で叫んだ。田崎がいるから。でも、遅かった。
バタン!
「……っ!」
目に飛び込んできた光景に、父さんの顔が蒼白になる。全裸でベッドに横たわる娘。顔には乾いた白濁がこびり付き、身体は様々な体液で汚れている。そして、その傍らには見知らぬ男が平然と座っているのだ。
「貴様……! 何をしている!」
父さんは田崎につかみかかる。胸ぐらを掴み、壁に叩きつけるほどの剣幕。いつも冷静な父さんがこんなに激昂するなんて初めて見た。
「落ち着いてくださいよ、お父さん」
田崎は余裕綽々といった態度で、襟を正す。
「これは同意の上なんです」
「黙れ!」
父さんは田崎を睨みつけたまま動かない。
でも、その視線はちらりと私に向いた。
私を見る父さんの目が怖い。軽蔑? 疑問? それとも……
「出ていけ! 二度と愛佳に近づくな!」
「わかりましたよ。今日はここまでにしておきます」
田崎は立ち上がり、服を整え始める。そして私の方を振り向き、ニヤリと笑った。
「続きはまた学校でね」
ドアを閉める音。父さんと二人きりになった部屋で、重い沈黙が落ちる。
「愛佳……」
父さんの声が震えている。怒っているようにも、泣いているようにも聞こえる。
「お前……一体何があったんだ」
問い詰めるというよりは、懇願するような口調だった。その声を聞いて、堰を切ったように涙が溢れ出した。ずっと抑えていた感情が一気に流れ出す。
「父さん……私…」
何を言えばいいのかわからない。田崎にされたこと? 学校でされていたこと? 純恋とのこと? 自分の病気のこと?
「……もういい」
父さんは私の言葉を遮るように言った。
「詳しいことは聞きたいが……とりあえず身体をきれいにしろ」
促されるままに浴室へ行き、熱いシャワーを浴びた。泡立てた石鹸で顔を擦り続けたが、白濁が完全に落ちることはなかった。
身体の奥に残る彼の存在感。爪痕のように刻まれた陵辱の記憶。
浴室から出ると、部屋は少し整理されていた。母さんが掃除をしたのだろう。でもその気配を感じた途端、また涙が溢れてきた。私がしていることは家族に対する裏切り以外の何物でもない。
「愛佳、ちょっと話がある」
リビングに呼ばれると、父さんはソファに座ってコーヒーを淹れてくれていた。香ばしい匂いが漂う。
「お前が何か悩みを持っているのはわかってる。でも一人で抱え込むな」
優しい言葉に心が揺さぶられる。父さんだったら……話せるかもしれない。ずっと秘密にしていたこと。誰にも理解されないと諦めていたこと。
「私… の…病気のせいなの」
意を決して口を開いた。
「普通の女の子じゃないの。犯されると……」
言葉を詰まらせる私に、父さんは静かに頷いた。
「それで……田崎って人は?」
父さんが尋ねた。
「あの人は先生だけど……私を犯してて」
「学校に行かなくなったら、うちにまで……」
そこまで言って、言葉が出なくなった。父さんは眉をひそめている。
「とにかく……もうあの男とは関わるな。俺が学校にも警察にも報告する」
父さんの決意表明を聞いた瞬間、不意に不安が込み上げてきた。もし問題が大きくなったら? 純恋に迷惑がかかるかも
「待って……父さん」
声を出した時にはもう遅かった。父さんは電話をかけていた。その表情からは怒りよりも憐憫の方が強く感じられた。
通報が終わり受話器を置いた父さんは私の方を見て微笑んだ。
「これでお前を苦しめた奴らは罰せられるさ」
その温かい笑顔を見てほっとした気持ちと同時に得体の知れない喪失感にも襲われた。なぜだろう? 安堵すべきはずなのに。
その晩私はなかなか眠れなかった。明日からどうなるんだろう?
田崎は逮捕された。その後、登校しようとすると玄関先で父さんに出くわした。
「愛佳……学校行けるか?大丈夫か?」
心配そうな目で見る父さんに対して私は笑顔を作って答えた
『うん……ありがとうね』
そう言って家を出る、何故か胸騒ぎを感じつつ歩き出した
そして教室に入った途端異様な雰囲気に包まれていることに気づいた
みんな私から距離を取り噂話をしているようだった
「田崎にレイプされたってやっぱり本当だったんだ」 「あの愛佳がパラフィリア、信じられねぇ」「憧れていたのに」
教室の空気は凍りついていた。
私が入ってきた瞬間、さざ波のように広がっていた囁き声がぴたりと止み、数十対の視線が一斉に私に突き刺さる。そこにあったのは同情でも憐憫でもなく、明確な嫌悪と軽蔑だった。
「……っ」
足がすくむ。息が詰まるような圧迫感。
純恋が田崎の逮捕の一幕を教えてくれた、
あの日、パトカーの赤い回転灯がけたたましく明滅していた。
校門で警察官に両腕を掴まれ、連行されようとしていた田崎。
「離せ! 私は何もしていない! あいつが!愛佳が誘ったんだ!」
彼は狂ったように叫んでいた。
「あいつは変態だ! 教師の俺を誘惑しやがって! レイプされたくて尻を振ってたんだよ! パラフィリアだ! お前らも気をつけろ、あいつは病気持ちの淫乱だぞ!毎朝、電車で輪姦されて喜んでいるんだぞ 犯されて当然に変態なんだ」
その絶叫は、登校してきた生徒たちの耳に嫌でも届いていた。
みんな呆然と立ち尽くし、あるいはスマホを向け、口々にざわめいていた。
「……あの子、本当にそうなの?」
「信じられない……真面目そうだったのに」
「気持ち悪い……近づかない方がいいよ」
教室のあちこちから聞こえる囁き声が、鋭い刃となって私の心臓を切り裂いていく。
田崎の言ったことは、半分真実で半分嘘だ。確かに私はパラフィリアだ。でも、彼を誘惑なんてしていない。被害者なのに。なのに、彼の言葉だけが独り歩きし、私を「加害者」へと仕立て上げてしまった。
「おい、席立った方がいいんじゃない?」
「触ったらうつるかもよ?」
私の席の周りだけ、見えない壁が築かれている。
椅子に座ろうとすると、隣の男子が露骨に顔をしかめて机を遠ざけた。
「……ひっ」
悲鳴が喉の奥で詰まる。
どこにも逃げ場がない。みんなが私を見ている。まるで汚物を見るような目で。
「あーあ、大変ねえ」
背後から投げやりな声。振り返ると、クラスの中心グループの女子たちが扇子のように口元を隠しながらこちらを見ていた。
「田崎先生も可哀想に。こんな化け物に目をつけられるなんて」
「ほんと。私たちも気をつけなきゃね」
化け物。
その言葉が胸に突き刺さる。
そうだ。私は化け物だ。人間じゃない。
犯されているのに感じてしまう。親友が傷つけられているのに興奮してしまう。
そんな私が、誰かに受け入れられるはずがない。
「愛佳……」
不意に名前を呼ばれた。
その声だけが、この冷酷な世界で唯一の救いのように聞こえた。
純恋が立っていた。
教室の入り口で、息を切らせて。
彼女の姿を見た瞬間、涙が込み上げてきた。
会いたかった。謝りたかった。でも、会いたくなかった。私みたいな汚れた人間が、彼女の輝く存在に触れる資格なんてないから。
「純恋……」
彼女は真っ直ぐに私の方へ歩いてきた。
周囲の視線が彼女にも集まる。
「星野も大変だねえ」「あんなのと友達なんだって?」「気をつけなよ」
冷酷な囁き。でも純恋ちゃんは気にする素振りも見せない。
彼女は私の机の前に来ると、荒い息を整えながら言った。
「愛佳、大丈夫?」
その瞳には純粋な心配しか映っていなかった。
あの時の絶望的な表情とは違う。またあの太陽みたいな温かさを取り戻している。
「ごめん……純恋、ごめんね……」
私は耐えきれずに泣き崩れた。
「私が……私が変だから……純恋を巻き込んで……」
「違うよ」
純恋ちゃんは私の手を握った。
「愛佳は悪くない。あいつが悪いんだよ」
その温もりに触れて、私はさらに激しく泣いた。
「帰ろう。今日はもう無理しないで」
純恋ちゃんが私を促す。
私は頷き、立ち上がった。
その時だった。
「あらあら、お熱いことで」
氷のように冷たい声が響いた。
クラスの女王蜂的存在である女子、宮崎穂乃果だ。彼女はニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「星野さんも大変ねえ。そんな化け物と仲良くしちゃって」
「え?」
純恋が眉をひそめる。
「だって田崎先生も言ってたじゃない? 愛佳は変態の淫乱だって。犯されるのが好きなんだって もしかして純恋ともセックスしてた?きもい」
女王蜂の言葉に、教室中がざわめく。
「やだ……マジで?」
「同性愛なの?」
「きもっ……」
純恋ちゃんの手が震えたのが伝わってきた。
「ちが……!」
私は否定しようとした。
「違うよ! 私はそんなんじゃ……!」
「あら、違うの?」
女王蜂は携帯を取り出し、何かを表示させた。
「でもこれ見ると、嘘とは思えないけどねえ 田崎の流失動画見ちゃった」
画面には映像が映っていた。
それは……あの電車の中での光景だった。
誰かが密かに撮影していたのか? 男たちが私を犯している姿。そしてその横で純恋ちゃんも凌辱されている姿。
映像の中の私は……恍惚とした表情で喘いでいた。
「きゃはは! 何これ! すっごい顔!」
「マジでイクってるじゃん!」
「星野もやってるし……」
教室中が爆笑に包まれる。
恥辱で顔から火が出そうだった。
見られたくない姿を見られた。最も醜い部分を晒された。
「消して! お願いだから消して!」
私は女王蜂に掴みかかった。でも彼女は余裕で私の手を払いのける。
「何よ暴力まで振るうわけ? やっぱり化け物じゃない」
その時だった。
純恋ちゃんが動いた。
バシッ!!
乾いた音が響き渡り、教室が静まり返った。
女王蜂の頬が赤く腫れ上がっている。
純恋ちゃんが彼女を叩いたのだ。
「……何するのよ!」
女王蜂が怒鳴る。
「あんたたちこそ何なのよ!」
純恋ちゃんも負けじと声を張り上げた。
「人の痛みもわからないで! 傷つけることしかできないの!? あんたたちの方がよっぽど化け物じゃない!」
彼女の怒声は教室の空気を一変させた。
みんな息を飲んでいる。
「愛佳は被害者なのよ! それを……こんな風に晒し者にして楽しい!?」
純恋ちゃんの目には涙が光っていた。
彼女自身も映像に写っているのだ。自分の惨めな姿を見られた屈辱。それ以上に、大切な友人を侮辱された怒り。
「行こう、愛佳」
純恋ちゃんは私の手を強く握り直した。
「こんなところに一秒だっていたくない」
私は頷き、彼女と共に教室を出た。
背中には刺すような視線と嘲笑が浴びせられているのがわかった。
でも、繋いだ手から伝わる熱だけが唯一の救いだった。
廊下を歩きながら、純恋ちゃんは言った。
「ごめんね愛佳。私がついてながら守れなくて」
「違うよ……」
私は首を振った。
「守ってくれたよ。あんな奴らの中で唯一……」
純恋ちゃんの手は温かかった。
でも同時に、私の胸には言いようのない恐怖が渦巻いていた。
この温もりは長くは続かないかもしれない。
私がパラフィリアである限り。私の中の化け物が目覚める限り。
いつかまた、私は彼女を傷つけてしまうかもしれない。
それでも今は、ただこの手を握りしめることしかできなかった。
⭐️二人だけの逃避行
学校を出て、私たちは無言で歩き続けた。
行く当てなんてなかった。ただあの場所から遠ざかりたかった。
辿り着いたのは、街外れにある古い公園だった。平日の昼間とてこともあり人影はなく、錆びついた遊具だけが寂しく佇んでいる。
ベンチに座り込むと、ようやく息をつくことができた。
風が吹き抜ける音だけが響く。
「……バカじゃないの、あいつら」
純恋ちゃんがポツリと言った。
「うん……」
私は力なく頷く。
「でもさ」
彼女は続けた。
「映像まで出回っちゃったね……」
その事実が重くのしかかる。
もう逃げられない。あの映像はインターネット上で拡散されているかもしれない。
私たちは学校中のみならず、世界中から見放された存在になってしまったのかもしれない。
「純恋、ごめんね」
私は謝った。
「私のせいで……あんな映像まで……」
「何で謝るの?」
彼女は私の方を向いた。
「愛佳は何も悪くないよ。全部あいつらが悪いんだから」
彼女の言葉は優しかった。あまりにも優しすぎて、胸が苦しくなる。
違う。私は悪いよ。
心の中で叫ぶ。
あなたが犯されているのに興奮した私は、最低の人間だよ。
「ねえ愛佳」
純恋ちゃんは上着のポケットから何かを取り出した。
スマホだった。
「これ見て」
画面にはメッセージアプリが開かれていた。
差出人はクラスメイトたちだ。内容は罵倒や脅しの嵐。
「死ね」「化け物」「学校に来るな」
次々と通知が鳴るたびに、彼女の肩が震えるのがわかった。
「すごいでしょ? 私にもこんなのが来てるんだよ」
彼女は笑おうとしたけれど、その表情は引きつっていた。
「見ない方がいいよ!」
私はスマホを取り上げようとした。
でも彼女はそれを避けた。
「いいの。現実から目を逸らしちゃダメだよね」
純恋ちゃんは画面を消した。
「それに……愛佳一人だけ背負わせたくないから」
その言葉に涙が出そうになった。
彼女はいつだってそうだ。私を守ろうとしてくれる。
なのに私は……。
ふと、自分のスマホを見る勇気が出なかった。きっと純恋ちゃん以上にひどい内容だろうから。
「ねえ愛佳」
純恋ちゃんが私の手を握ったまま言った。
「これからどうする?」
どうするって言われても……。
家には帰りたくない。学校には行けない。かといって行く当てもない。
「わかんない……」
正直に答えた。
「じゃあさ」
彼女は立ち上がった。
「どっか遠くに行かない? …どこまでも」
その提案に驚いた。
「遠く……?」
純恋ちゃんの唐突な提案に、私は耳を疑った。
「でも……どこに行くの? 私たちお金もないし……」
「大丈夫だよ」
彼女は自信ありげに言った。
「少しなら貯金あるし、あとは……」
少し言い淀んでから、小さな声で続けた。
「……愛佳と一緒にいれば、きっと何とかなると思う」
その無謀なまでの信頼が、私には眩しかった。
同時に、その言葉が私の心を動かした。
確かに、このまま家に帰っても居場所はない。学校に戻れば、針の筵だ。
それなら……いっそ、この手を取って逃げ出してみるのも悪くないのかもしれない。
「……わかった」
私は決意を固めた。
「行こう。どこでもいいから……ここじゃないどこかへ」
純恋ちゃんの顔がぱっと明るくなった。
彼女は私の手を取ると、強く握りしめた。
「ありがと、愛佳」
その温もりが、私の凍てついた心を少しだけ溶かしていくようだった。
電車に揺られること数時間。
私たちは地図も持たず、ただ直感で降りるべき駅を選んだ。
降り立った街は、海に近い閑静な港町だった。
夕暮れ時で、空は茜色に染まっている。
「綺麗な街だね……」
私は潮風に髪をなびかせながら呟いた。
「うん……」
純恋ちゃんも同じように風を感じている。
「でも、宿どうしようか?」
持ち合わせは僅かだ。
「大丈夫だよ」
純恋ちゃんは再び自信ありげに言った。
「こっち来て」
彼女が向かったのは、路地裏にある派手なネオン看板の建物だった。
ラブホテル。
「ここなら安いよ」
私の顔が熱くなる。
「でも……私たち未成年だし……バレたら……」
「大丈夫だって。」
彼女はあっけらかんと言う。
そうかもしれないけど……。
躊躇する私を引っ張るように、純恋ちゃんは中に入っていった。
自動精算機の前に立ち、彼女は慣れた手つきでボタンを押していく。
(慣れてる……?)
不思議に思ったが、今は追求する余裕もない。
部屋番号の書かれたランプが点灯し、エレベーターに乗る。
目的の階で降りると、狭い廊下の奥にいくつかのドアが並んでいた。
その一つが、私たちの部屋だった。
ドアを開けると、そこは薄暗い照明の部屋だった。
大きなダブルベッドが中央に鎮座し、壁には鏡張りの空間がある。
独特の甘ったるい芳香剤の香りが鼻をつく。
「わぁ……」
私は思わず声を漏らした。
「ちょっと派手だね」
純恋ちゃんも苦笑する。
でも、その表情にはどこか安心した色が浮かんでいた。
荷物を置き、ベッドに腰掛ける。
しばらくはお互いに言葉がなかった。
疲れと緊張と、これからどうなるのかという不安。
「ねえ愛佳」
先に口を開いたのは純恋ちゃんだった。
彼女は私の隣に座り直すと、真剣な眼差しで私を見つめた。
「話しておきたいことがあるんだ」
その前置きに、私の心臓が高鳴る。
一体何だろう?
「実は……ね」
彼女はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「私も……愛佳と同じなんだ」
「同じ……?」
意味がわからず聞き返す。
「私も……変態なの」
予想外の告白に、私は固まった。
「どういうこと……?」
「愛佳のこと、ずっと見てたんだよ」
彼女は顔を赤らめながら続ける。
「電車の中とか、教室とか……愛佳が田崎に触られてるの見て……嫉妬した」
嫉妬?
「それだけじゃない」
純恋ちゃんはさらに続ける。
「田崎に犯されてるとき……愛佳、すごく感じてたでしょ?」
「見てた……の?」
私は声を震わせる。
「うん……見てた」
彼女は視線を逸らす。
「それでね……私、嫉妬だけじゃなくて……興奮もしちゃったの」
言葉が出ない。頭が真っ白になる。
「愛佳が犯されてるの見て、すごく嫌なのに……同時に、すごく羨ましかった」
「私みたいなのが……愛佳を汚してみたいって……」
「そんなこと考えてる自分に気づいて、吐き気がした。最低だって思った」
「でも止められなかった。愛佳のこと考えると、体が熱くなって……」
「私も……変態なんだよ。愛佳のこと汚したくて仕方ない変態」
彼女の告白は、私の脳天を殴りつけるような衝撃だった。
同時に、彼女の苦悩に触れたことで、ある種の共感が芽生えるのを感じた。
「純恋……」
私は彼女の手に触れた。
「私こそ……ごめん」
「あなたが傷ついてるのを見て……興奮してた。田崎に犯されてるの見て……私も……」
「愛佳……」
私たちの指先が絡み合う。
互いの体温が伝わり、心拍数が跳ね上がる。
「だからね、愛佳」
彼女は私を見据えた。
「一緒に堕ちていこう? 二人でなら、怖くないよね?」
それは悪魔の囁きのようでもあり、救いの手の差し伸べようでもあった。
私は無言で頷いた。
もう後戻りはできない。
純恋ちゃんの顔が近づいてくる。
吐息が唇にかかる。
そして、ついに。
二人の唇が重なった。
そのキスは、今まで経験したことのない甘美な毒だった。
唾液が混ざり合い、舌が絡み合う。
背徳感と快楽が脳を灼き、理性は霧散していく。
彼女の手が私の胸に伸びてくる。
制服の上から乳房を揉みしだかれる。
「んっ……」
思わず声が漏れた。
彼女は嬉しそうに目を細める。
「可愛いよ、愛佳」
彼女は私の制服のボタンを外していく。
ブラジャーを押し上げると、白い双丘が露わになった。
「綺麗……」
彼女はため息をつくように言うと、乳首に吸い付いた。
「あっ……!」
敏感な突起を舌で転がされ、電流のような快感が全身を駆け巡る。
彼女の口内で、硬く尖っていくのが自分でもわかる。
「純恋……んっ……やぁ……」
私は身を捩らせながら喘ぐ。
彼女は愛撫を続けながら、片手で私のスカートを捲り上げた。
ショーツ越しに秘部を撫でられ、腰が浮き上がる。
「もう濡れてるね」
彼女はショーツを脱がせると、直接割れ目に指を這わせた。
愛液が絡みつき、ヌルヌルとした感触が伝わる。
「恥ずかしい……」
私は顔を覆う。
「見せて」
彼女は私の手を退かせると、足を開かせた。
そして、自らもショーツを脱ぎ捨てる。
生まれたままの姿となった二人は、鏡張りの壁の前に立った。
映し出されるのは、淫らに絡み合う私たちの姿。
興奮で頬を紅潮させた純恋ちゃんが、潤んだ瞳で私を見つめている。
「愛佳……きて」
彼女の導きに従い、私は彼女に覆い被さった。
互いの乳房を擦り合わせ、硬くなった乳首がコリコリと当たり合う。
「あぁ……」
彼女の甘い吐息が耳朶をくすぐる。
私は彼女の股間に指を滑り込ませた。
湿った花弁がヒクヒクと蠢き、熱い蜜が滴り落ちる。
「ここ……すごいね」
「愛佳のせいだよ……」
彼女は恥じらいながらも、私の手に自分の手を重ねてきた。
そして、二人で互いの秘裂を探り合う。
指を挿入すると、柔らかな粘膜が絡みついてくる。
「あんっ……!愛佳……もっと……」
「純恋……私も……」
互いに求め合い、求められ、快感の螺旋へと沈んでいく。
キスを交わしながら、手を繋ぎ合い、指を交差させて膣内を責め立てる。
「あっ……あっ……あぁーっ!」
「んっ……んんーっ!」
同時にくぐもった声を上げ、私たちは絶頂に達した。
全身を痙攣させながら、互いの身体を抱きしめ合う。
結合した指から、熱いものが迸るのを感じた。
荒い息を吐きながら、私たちは見つめ合った。
汗と涙と涎でグチャグチャになった顔。
それでも、その目には深い愛情が宿っていた。
「愛佳……好きだよ」
純恋ちゃんは囁くように言った。
「私も……好き」
私は彼女の額に口づけた。
これは始まりにすぎない。
二人で堕ちていく旅路の、最初の一歩。
夜明け前、私たちはまだ裸のままでベッドに横たわっていた。
純恋ちゃんは私の腕の中で微睡み、規則正しい寝息を立てている。
その穏やかな顔を見ていると、昨夜の情事が夢だったのではないかと思えてくるほどだった。 しかし、全身に残る怠惰な快感と、ベッドの上の無数のティッシュペーパーの塊が、それが現実であったことを雄弁に語っていた。
(これから……どうなるんだろう)
漠然とした不安が胸を締め付ける。
家を出たことも、学校をやめたことも、そして純恋ちゃんとこういう関係になったことも、すべてが衝動的で計画性がなかった。この先、食糧や住居はどうするのか。警察はすでに私たちを探しているかもしれない。田崎の事件の関係者として追われる可能性もある。 純恋ちゃんは「一緒なら大丈夫」と言ってくれたけれど、本当にそうなのだろうか。
「ん……」
純恋ちゃんが身じろぎする。
長い睫毛が震え、ゆっくりと瞼が開いた。
琥珀色の瞳が、まず私を捉え、次に周囲を認識する。
一瞬の混乱の後、状況を思い出したのか、頬が桜色に染まる。
「おはよう……愛佳」
掠れた声で彼女は言った。
「おはよう、純恋」
私もぎこちなく返す。
昨夜までの熱狂が嘘のように、気恥ずかしさが私たちの間に横たわっていた。
「……夢じゃなかったね」
純恋ちゃんがポツリと呟く。
「うん……」
私も頷く。
夢だったらどんなによかっただろうか。けれど、これは紛れもない現実だ。
私たち二人は、もう後戻りのできない道に踏み出してしまったのだ。
エピローグ
私たちは逃げた。あの街から、あの学校から、そして何より私たち自身の「闇」から。
降り立った海辺の街は、私たちに優しかった。観光地としては少し寂れてしまったその港町は、流れ着いた者たちを静かに受け入れる懐の深さを持っていた。
最初は大変だった。高校を中退した未成年の二人がまともな職に就けるはずもなく、純恋ちゃんのわずかな貯金と、私がアルバイトで稼いだ少ない日銭でしのぐ日々。泊まっていたのは、あのラブホテルから移ったアパートの屋根裏部屋のような狭い部屋だった。
純恋ちゃんはウェイトレスとして、私は厨房の皿洗いとして働き始めた。給料は安く仕事はきつかったけれど、不思議と辛いとは思わなかった。隣に純恋ちゃんがいて、夜には二人で冷えたコンビニ弁当を食べながら他愛のない話ができる。それだけで過去のどんな幸福よりも充実した時間に思えたからだ。
私たちの関係はあの夜以降ゆっくりと変化していった。欲望のまま交わる夜もあればただ寄り添って眠る夜もあった。純恋ちゃんは言った。「私たちは互いの『化け物』を抱えながら生きていくんだよ」と。その言葉通り私の中にパラフィリアは依然として潜んでいる。時折疼くのだ。純恋ちゃんが男客の視線に晒されているのを見た時や彼女がふと寂しげな表情を見せた瞬間心の底から湧き上がる「汚したい」「支配したい」という黒い感情。
でもその度に私は自分を戒めた。純恋ちゃんを傷つけることは自分自身を破壊することだと分かっていたから。そして何より彼女もまた同じ闇を抱えていると知っていた。
彼女は時折私の首筋に指を這わせ「愛佳は私だけのものだね」と呟くことがあった。その甘く縛り付けるような言葉は不安と同時に奇妙な安心感も与えてくれた。
季節がめぐり二十歳を迎えた頃には屋根裏部屋から少しマシなアパートへ引っ越せていた。貯金も少しずつ増え始めていた。
ある日純恋ちゃんが言った。
「ねえ愛佳私たちのお店を作らない?」
彼女の目は輝いていた。「小さくていいんだ海が見える場所で温かいコーヒーと手作りのケーキを出すお店そこに来る人たちが少しだけホッとできるような場所」
「純恋が焼くケーキ美味しいもんね」
私は彼女の手を握った。
「やってみたい」
それからは夢中だったお店を探し内装を直しメニューを考えた資金不足を補うため朝から晩まで働き詰めた支え合い時にぶつかり合いでも常に同じ方向を見て
そして一番の壁はやはり両親だった
家を出て一年が過ぎたある日私は意を決して母さんに電話をかけた声を聞いただけで涙が出そうになったけれど必死に言葉を紡いだ今どこで何をしているか純恋ちゃんと一緒にいることそして何より二度とあの場所には戻らないこと
母さんは長い沈黙の後「元気でいるならそれでいい」とだけ言ったその声の震えは胸を抉ったけれど同時に彼女の愛も感じ取れた
純恋ちゃんの方も似たような反応だったらしい彼女のお母さんは最初激怒したそうだが「純恋が選んだ道なら仕方ない」と最後には折れた
そしてオープン当日
「Café Soleil(カフェ・ソレイユ)」
純恋ちゃんが名付けたその店は古い木造家屋を改装したこじんまりとした場所だった窓からは穏やかな海が見える壁は二人で塗ったクリーム色棚には手作りの小物
開店時間になると最初のお客さんが入ってきた地元のお婆さんだった
「あらあら新しいお店ができたと思って来てみたよ」
純恋ちゃんが笑顔で迎える
「いらっしゃいませウチ自慢のレモンケーキはいかがですか?」
私はカウンターの中でコーヒーを淹れながらその光景を見ていた心から笑っている純恋ちゃんそれに応えるお婆さんの穏やかな表情
ああこれでよかったんだ
ふとドアの方を見ると見覚えのある二人連れが立っていた
母さんと純恋ちゃんのお母さんだった
二人とも少し照れくさそうに立っている手には花束を持って
「母さん……」
「お母さん……」
私たちはカウンターから飛び出した言葉はいらなかったただ抱き合って泣いた
「ごめんね……」
「馬鹿ね……元気ならそれでいいのよ」
母さんは私の頭を撫でながら言った
「お父さんもね最初は怒ってたけど……二人で頑張ってるって聞いて許すって応援したいって」
純恋ちゃんのお母さんも頷いた
「あんたたちが選んだ道なら……私たちがとやかく言うことじゃないよね」
その言葉は何よりの贈り物だった私たちはようやく過去の鎖を断ち切れることができたのだ
お店は少しずつ客足を伸ばし始めた「海辺の隠れ家」と口コミで広まり休日には満席になることもあった純恋ちゃんのケーキは評判になり「あそこのシフォンケーキはふわふわで最高」と常連さんが増えた
夜店を閉めた後は二人だけの時間だ
二階にある小さな部屋
窓を開けると潮風が入ってくる
「愛佳」
純恋ちゃんが私に背中を預けながら言う
「私たちさ結構やれるじゃない」
「うん……」
私は彼女の髪を梳きながら答える
「ねえ覚えてる? あの教室でのこと」
ふいに彼女が言った
「もちろん」忘れられるはずがないあそこから全てが始まったのだから
「あの時は……もうおしまいだって思った」
純恋ちゃんの声が少し震える
「でもね愛佳がいたから……乗り越えられたんだよ」
「私も……純恋がいたから」
私は彼女を抱きしめる力を強めた
「私たちは変態かもしれないし化け物かもしれない」純恋ちゃんが振り返り私の目を見つめるその瞳には迷いはなかった
「でもね……二人でなら人間として生きていけるよね」
「うん」
私は微笑んだ
「私たちいろんなもの背負ってるけど……これからは一緒に背負っていこう」
窓の外では星が瞬いている
遠くで波の音が聞こえる
明日も早朝から仕込みがあるけれど今はこの安らぎに身を委ねたい
「愛佳」
「ん?」
「好きだよ」
彼女はそう言って私に口づけた
それは情熱的なものではなく確認し合うような優しいキスだった
私たちは傷つけ合い汚れ合いそれでも最終的に互いを救い合った
パラフィリアという呪いは完全に消えたわけではなかった
それでも恐れることはない
この手を離さなければ大丈夫
明日もまた太陽は昇る
私たちだけの小さなカフェに光が差し込むように
――了――