※この作品はR-18です。

藤丸立香の夜事情   作:大田シンヤ

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裏で小悪魔が微笑む

 それは、セイレムの特異点を解決した後のことだった。

 

「藤丸君が過労死するかもしれない?」

 

 珈琲を片手に資料を見ていたレオナルド・ダ・ヴィンチは部屋を訪れた人物の口から出た言葉に視線を上げる。

 

「はい、最近はレイシフトの数も減ったのですが……朝顔を合わせると毎回疲れが残っているように見えて」

 

「あ~うん…………ソウダネ。ソレハタシカニモンダイダネー」

 

「心配して聞いたのですが、先輩は大丈夫だと言うばかりで」

 

「……ヘーソウナンダー」

 

「ですが、どう見ても大丈夫に見えないのです。ダ・ヴィンチさんは先輩が何をしているか知っていますか?」

 

 ダ・ヴィンチの部屋に訪れた人物――マシュ・キリエライトが心配そうな表情で質問を口にする。

 それに対し、部屋の主であるダ・ヴィンチは珈琲を一口飲み、天井に視線を向けた。

 

「(さて、何て言おうか)」

 

 藤丸立香が何故、疲れているのか。

 それについてはダ・ヴィンチには予想がついている。

 毎晩ヤっているのだろう。もしくはヤられているかだ。

 人理焼却を阻止し、人理が安定した今、訓練や魔術の勉強は今も続けられているものの実践に赴く回数は減ってきている。

 つまり、マスターとサーヴァントが接する時間も増えてきているのだ。

 

 加えてもう少しでサーヴァントがカルデアを去る日も近づいている。

 男性陣はまだ良い。

 一部のサーヴァント――ジェームズ・モリアーティなどが退去を免れようと動いているが、殆どの者たちは至って普通だ。

 問題は女性陣の方である。

 特にマスターである藤丸立香と肉体関係を持ったサーヴァントたち。

 ライダーのサーヴァントであるアン・ボニーとメアリー・リードなんかは最近ダ・ヴィンチの工房に妊娠できる薬があるかどうかを聞きに来たり、毎晩部屋に突撃したりしている。

 生前と似たようなことをやろうとしているのだろうとダ・ヴィンチは予想していた。

 その2人と同じ思考回路の者は多くはいないものの少なからずいる。そして、彼女たちに触発されてか退去を受け入れている者たちも藤丸の部屋に行っている。ここの所、毎晩。

 疲れが出るのも当たり前だ。

 あの女傑たちを1人で相手してケロっとした表情ができるのは神話の神かフェルグス・マックロイぐらいである。

 よく疲れが出ているだけで済んでいるなと称賛したいぐらいだ。

 しかし――。

 

「…………」

「?」

 

 チラリとマシュに視線を向ける。

 純粋培養で育ったとも言っていい彼女にこのことは告げられない。

 揶揄いたい気持ちがない訳でもないが、口にした途端そこから先は地獄である。

 

 誰の目から見ても藤丸立香にほの字である彼女がこのことを知れば、絶対に突撃をかますに決まっている。

 人並みに悩み、怖がる彼女でもエンジンがかかればブレーキ踏まずに目標に一直線に向かってしまうことはすでに知っている。

 そして、突撃した彼女を藤丸は拒まないだろう。

 これまで肉体関係もなしに藤丸からの信頼も信用も好感度もトップクラスな彼女が肉体関係まで結んでしまったらどうなるか。

 考えるまでもない、不動のセンターの獲得である。

 

 そのことに反対はない。

 じれったい関係を見てさっさとくっつけと思うカルデア職員は多い。

 しかし――しかし、だ。

 今は時期が悪い。

 誰が呼んだのかも分からないが正妻戦争が激化している時期、全員のビーストがビーストしている最中である。

 そのことで藤丸が胃に穴を開けるほど悩んでいたりするが、それに関しては自業自得なので思う存分胃に穴を開けてくれ。もしくは全員娶って右往左往する姿を見せて欲しい。

 

 話が逸れた。

 兎も角、今マシュと藤丸がくっつくと絶対にサーヴァントたちが暴走する。特に蛇と狐と自称母と暗殺者と自称歌手と薔薇の皇帝……多すぎるので以下省略。

 自分が一番と信じて疑わない彼女たちは絶対に認めないだろう。

 最悪カルデアを更地にして藤丸と心中する者たちもいるかもしれない。いや、それも最悪ではない。虎視眈々と死後の魂すら狙っている者もいるのだからそちらの方を最悪と呼ぶべきか。

 どちらにしろ人理修復という偉業を成し遂げたのに碌な最後を迎えない。

 それは現在カルデアを預かる者としては避けたいことだった。

 

「……でも、無視はできないか」

 

「ダ・ヴィンチさん? どうかしましたか?」

 

「いやいや、何でもないよ。可愛い後輩にずっと見つめられて彼は幸せ者だねって思っていた所さ」

 

「そ、そんな……ずっとは見つめていませんっ」

 

 見つめてはいるんだね。と口にしかけるが、それを珈琲を飲むことで一緒に腹の中へと押し流す。

 解決策をはじき出した後、口を開く。

 

「これまで色々あったのに、今では特異点に行くことも少なくなったからね。日常に戻るのに苦労しているのかもしれない。少しリフレッシュの機会を作ろうか」

 

「リフレッシュ! それは名案です。何がやれるかすぐに私も考えてきます!!」

 

「あ、一応私が考えて…………聞かずに行っちゃったか」

 

 部屋に来た時の憂鬱な表情から悩みの晴れた表情へと変わったマシュがダッシュで部屋を出て行く様子を見て一瞬ぽかんとした表情を作るが、すぐに笑みを作る。

あの()を泣かせたら、藤丸に小言の嵐を降らせよう。そんなことを考えて再び仕事に戻った。

 

 

 

 

「へ~え……リフレッシュですかぁ、良いこと聞いちゃいました☆」

 

後ろでほくそ笑む悪魔には気付かずに……。

 




久しぶりの投稿っ!
本当は1.5部部分も書こうかなって思ったけど無理でした。全部飛ばして1部総集編みたいなのやります。
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