「師匠、ここ何処ですか?」
「見覚えがないのか? お主が生きていた時代の近くを選んだのだが」
「いや、聞きたいのはそこではなくてですね」
スカサハに連れられ、藤丸が訪れたのは日本の都市だ。
人類史は消極され、西暦2015年以降は特異点以外にレイシフトをすることができない。そのことは藤丸もレオナルド・ダ・ヴィンチやロマニ・アーキマンから説明を受けている。
発生している特異点は7つ。
日本には発生していない。それなのに、何故日本にレイシフトできたのか。藤丸には疑問だった。
「レイシフトできる時点で答えは出ているようなものだが……まぁ教えて欲しいというのならば教えてやろう。ここは私が作った特異点だよ」
「師匠が!? そんなことできるんですか!?」
「何、私がその気になればこの程度造作もない」
その言葉は虚勢ではない。
本気で暴れれば、人理修復どころではない特大の特異点を生み出すことも可能な巨大な力をスカサハは保有しているのだ。
人理を乱さない程度の範囲の特異点、1つや2つ作るの訳が無かった。
「でも、大丈夫なんですか。特異点なら聖杯を回収して早く修復しなきゃ」
「問題ない。精々2日程度しか持たん微小特異点だ。人理を危機に貶めるものではない」
「それでも、カルデアからすれば放っておけませんよ」
「お主は真面目だな。しかし、それならばどうする? 特異点を作ったのは私だぞ。この私と戦うか?」
蠱惑的な笑みを浮かべ、ほんの少し殺気を混ぜてスカサハは問いかける。
相対していた藤丸は落ち着いた様子で当たり前のことを逆に問いかけた。
「まずは何で特異点を作ったのかを教えて欲しいです」
「――――まぁ、お主ならまずそう問いかけるか」
「?」
「ふふっ気にするな。さて、特異点を作った理由だったな」
軽く笑った後、スカサハは特異点を作った理由を語る。
「何、少しばかりサーヴァントとしてマスターを癒してやろうと考えたのだ」
「え?」
「マスターとして多忙なのは分かるが、少しばかりお主に余裕がないと思ったのでな。だから、こうしてゆっくりとできる場所を用意したのだ。理解できたか?」
「え、えっと……ありがとう?」
スカサハが特異点を作った理由がマスターである自分を癒すため、と聞いて思わず呆気に取られる。
「本当に危険はないんですか?」
「無論だ。なんなら、調べてみるか?」
戸惑ったもののスカサハがそこまで言うのならばと藤丸はスカサハを信じる。
スカサハが自分のために用意してくれたもの、ならば楽しまなければ失礼に当たると持ち前の切り替えの早さを生かし、先程まで考えていた重苦しい思考を吹き飛ばした。
「分かりました。なら、楽しむことにします」
「その切り替えの早さ良し。では、行くとしよう。ますはその堅苦しい礼装を変えるとしよう」
そうして、スカサハに連れられて藤丸の休息が始まった。
とある洋服店では――
「師匠、その服装めっちゃカッコいいです!!」
「ふむ、そうか………………こちらはどうだ?」
「わぁ――」
「お主はこちらの服装が好みか。では、こちらにしよう」
「ちょっ師匠!?」
「照れるでない。お主の視線が釘付けになったのぐらい簡単に分かるぞ」
黒いコートを纏い、タイツに包まれた太ももが眩しい姿からへそ出しコーデへと変身したスカサハに目を奪われたことを指摘され、藤丸は頬を赤くする。
とあるデパートの通路では――
「あの、師匠――」
「どうしたマスター、いや、ここでは藤丸……これも違うな。立香と呼ぶか。どうした立香? うん?」
「揶揄わないで下さい」
「ククッ初々しいな。実にそそられる」
「師匠っ」
スカサハに腕を組まれた藤丸は腕に当たる柔らかな感触と突き刺さる周囲からの視線を感じてどぎまぎし、それを見てスカサハは楽しんだ。
とあるゲームセンターでは――
「これがぷりこねか。どこで撮るのだ。ここか?」
「師匠、微妙に違います。それはプリクラです。それとそっちは落書きする場所です」
「――知っている。わざと間違えた」
「(ちょっとむってなった顔、可愛い)」
そして、とあるファーストフード店では――
「そら、これを飲んでおけ」
「これ何ですか?」
「食事前に飲むと消化が良くなるものだ。小腹が空いたとはいえ、もうすぐ夕食の時間だからな。飲んでおいて損はない」
「へ~。準備が良いですね。いただきます。ゴクッ――」
「…………」
「どうしたんですか?」
「何でもない。それよりも、これが現代の食事か。手間もかからんし、腹も膨れる。随分と楽で良いな」
「ケルトの伝説の戦士がハンバーガー食べてる。言葉にしたら凄いことだなぁ。あっ――師匠、ちょっと動かないで下さい」
「ん? な、ん――だ」
「よし。ほら、ケチャップ付いてました」
有名なファーストフード店の一角でスカサハの口の端に付いたケチャップを藤丸が拭い、それを口にしてスカサハの目を見開かせたり。と――。
特異点の中にいるとは思えない程、2人は楽しく休暇を満喫していた。
そして、夕暮れに差し掛かった頃、ようやく2人は宿へと向かう。
そこで、藤丸は目を丸くした。
「……師匠。ここって――」
「お主も流石に知っておったか。そうだ。この特異点での宿泊はここを使うぞ。何、金のことは気にするな。私が払う」
「いや、でもここってラブホテルですよね!?」
周射場入り口と歩行者用入り口に一目がつかないように設置されたカバー。ハートマークの付いた案内看板。
何処をどう見てもカップル専用のホテルが目の前にあった。
藤丸は戸惑うが、スカサハは知ったことかとばかりにホテルの中へと入って行く。
「そら、チェックインは済んだ。部屋に行くぞ」
「いやいやいや、何勝手に話を進めてるんですか!! もっと普通のホテルに行きましょうよ。何もこんな所に泊まらなくても良いじゃないですか!?」
「ダメだ。普通の所では迷惑になるからな」
「……泊まるだけなら迷惑何てならないですよ」
「理解している癖に惚けおって」
頭を抱える藤丸を揶揄うように笑みをスカサハは浮かべる。
そして、藤丸の腰に手を添え、ぐっと引き寄せた。
「サーヴァントとしてマスターを癒すと言っただろう? 素直に癒されるがいい」
「ふぅっ……はぁ、あっ——ふふっ、拙いな」
部屋にあるシャワー室の中で2人が絡み合う。
スカサハが壁に手を付き、藤丸が後ろから胸を揉みしだく。
「素人ではないが……あっ――私から言わせればまだまだだなっ。マタ・ハリ、んっからは……教えて、貰わなかったか?」
「マタ・ハリには翻弄されることが多いから……」
「マタ・ハリも、生前では経験のなかった相手に張り切っている、か。んっ――」
「……っ」
「は、ん――ふふっそう落ち込むな。キスは良いぞ。特に舌の扱いがな。それに私が色々と教えてやる」
後ろを振り向いたスカサハと唇を合わせ、舌を絡める。
「うっふぅ……あっ♡ そうだ。もっと力強く揉め」
唇を合わせ、舌を絡めながらスカサハは藤丸に女体の扱い方を教えていく。
力の強弱から触る順序、指一本に至るまでの使い方まで。
「ふぅ、ふぅ……もう我慢できないか?」
「正直に言ってしまえば……もう本当に限界です」
スカサハの視線が体に押し付けられている肉棒へと移る。
もう我慢できないとばかり仰け反った肉棒。いつも以上に大きくなったそれをマジマジと見られて藤丸も気恥ずかし気に視線を逸らした。
「熱い、それに硬いな。これでジャンヌを泣かせたか」
「な、泣かせたって――」
「照れるな照れるな。お主がサーヴァントに手を出していることはカルデアの者達も知っている」
「……マジですか」
突如齎された情報に藤丸は頭を抱える。
「恥ずかしくて死にそうです」
「よせよせ死ぬな死ぬな。お主がいなければ人理修復ができなくなるだろう」
「――っ」
その言葉に藤丸が唇を固く結ぶ。
先程まであった体の熱が一気に冷めていく。
藤丸にとってその言葉は呪いそのもの。自分が今何を背負っているかを思い知らしめる言葉だった。
行為の最中に口にする言葉ではなかったなと反省しながら、スカサハは藤丸の頭に手を回し、豊満な胸に引き寄せる。
「手を出した理由は理由は分かっている。限界だったのだろう? 今回と同様に、な」
スカサハがこの微小特異点を作るに至った原因――それは、カルデアで過ごしていく中で藤丸の限界を見抜いたからである。
特異点での戦い。
魔術回路が焼かれていく感覚。
むせ返るような血の匂い。
肉が目の前で切り裂かれる光景、或いは潰される光景。
自分の指示で人が死ぬかもしれないという緊張感。
藤丸が壊れないようにと課せられている心を透明にする訓練。
そして――蓄積する行き場を失った魂。
メンタルケアを受けて軽減はされてはいるものの、確実に藤丸は限界へと近づいている。
それに気付けたのは一部のサーヴァントのみ。尤も、気付いていながら指摘しない者もいるのだが。
「――情けないなぁ。俺」
限界だったとは言え、簡単に誘いに乗ってしまったことに後悔し、言葉が漏れる。
それに対し、スカサハ軽く笑った。
「誘いを受けたことを後悔する必要はないぞ。後悔するのならば、限界を迎えようとしても訓練をしようとしたことだ」
「はい。これから気を付けます。でも師匠、甘くないですか?」
普段のスカサハでは考えられないような言葉が出て来たことで藤丸は思わず尋ねる。
伝説の女戦士、スカサハという人物は大英雄クー・フーリンでも何度も生きるか死ぬか、というほどの訓練を施すスパルタ、というのはもうカルデアでは周知の事実。
らしくない。と思わないのが無理だ。
「む――確かにそうなのだが。まぁ、あれだ。お主はマスターだからな」
「死んだら駄目だから、ですか?」
「いや、違う。そうではない……これまで、師弟関係以外の関係を殆ど築いたことがなかったから……お主とはそれ以外の関係を築きたいと思っている……だけだ」
その言葉に藤丸は目を丸くする。
そんなことを考えているとは知りもしなかった。だからこそ、余計に今のスカサハの表情は刺さった。
頬を赤らめ、恥ずかし気に視線を逸らす。
あの、スカサハが——。
そこでふと気づく。
もしかしたら、昼間の行動も師弟以外の関係を築くためのものだったのではと。
「師匠、じゃなくて――スカサハは可愛いね」
「な――」
その突然の言葉に今度はスカサハが身を見開く番だった。
体が硬直する間に藤丸が動く。
スカサハの腰と足に手を回し、お姫様抱っこでバスルームを出る。そして、体を拭かずにそのままベッドへと倒れ込んだ。
「先程まで落ち込んでいた癖に、積極的になったではないか」
「スカサハみたいな綺麗な人にあんな表情されたら、嬉しくなるよ。それに、慰めるとかそういう意味合いよりも、好意を持ってくれる方が俺も嬉しいから……」
その素直な言葉にスカサハはドキリと心臓を高鳴らせる。
だが、それも一瞬のこと。直ぐに表情を取り繕い、藤丸の首に手を回す。
「調子に乗りおって。まぁ辛気臭い顔をされるよりも良いか」
唇を合わせ、体に手を伸ばす。
2人の夜が始まった。
な、長くなってしまった。本当は2話ぐらいでまとめるつもりだったのに
次からエロに突入します!