邪神は勇者一行に討ち滅ぼされ、平和を取り戻した世界で皆がそれぞれの道を歩み始めた。――そして、五年の月日が流れた。
「カミュちゃんにマヤちゃん、次の目的地はグロッタよ。」
シルビアが船の甲板にいた青髪の兄妹に話しかけた。四十路ともなれば、やはり皆と旅をしていた頃の肌艶はさすがになかったが、身のこなしは衰えることなく優雅で洗練されていた。
「オーケー。久しぶりだな、グロッタ。」
カミュが旅の最中『マヤに世界を見せてやりたい。』と言っていたのを覚えていて、旅を終えた後にシルビアは『一緒に旅をしない?』と言った。それから。彼の厚意に甘えてもう五年が経つ。シルビアは芸をしながら、カミュとマヤは荷運びや商売をしながら世界を廻っていた。一つの処に定住するよりも、気の置けない友や家族と旅暮らしをする今の生活はカミュに合っていた。
「アタシが公演する間、カミュちゃんとマヤちゃんの予定は?」
「グロッタは知り合いも多いし、もっと手広く商売できるように動いてみるつもりさ。」
マヤが答える。本来なら20代のはずのマヤは肉体年齢ではまだ10代だったが、今は成人して溌剌とした美少女になっていた。彼女には商才があったようで、販路を広げては他所から持ち込んだ商品を売り捌いている。
「カミュちゃんは?」
「んー、俺は幾つかの荷物を届けたらすることねえな。」
「・・・それなら、一度ユグノアに行ってみてはどう?カミュちゃん、あれから一度もイレブンちゃんとロウちゃんに会ってないでしょ?」
「まあ、な。」
カミュは後ろ頭を掻いた。ロウはともかく、イレブンと会うのを避けていたのには理由があった。世界を救う旅を終えた後、彼に二度目の告白をされたからだった。いい奴で親友だとも思っているが、そういう対象としてイレブンを見たことはなかった。だからクレイモランの時と同じく、彼をフッた。
その後イレブンとロウは主にデルカダール王国の協力を得て、瞬く間にユグノアを復興した。今ではイレブンはユグノア王、ロウは元王として国を治めていた。――そして。イレブンが数か月前に男児を儲けたことを風の便りで知った。未婚のまま、身分違いの女性に産ませたらしい。
「・・・もう、いいんじゃないかしら?」
その言葉で、カミュは勘のいいシルビアが彼とイレブンの間に何かがあったことに気づいていたのを知った。
――そうだな。五年も経つんだ。一度くらい顔を見に行ってもいいかもな。あいつのガキも見てみたいし。
「わかった、行くよ。」
青い炎のように海風に靡く髪を片手で押さえつつ、カミュは頷いた。
*
カミュがユグノアに足を踏み入れると、まず城下町の賑わいに目を瞠った。数多の建物が立ち並び、多くの人が行き交い、街は活気に満ち溢れていた。そして蒼穹と山々の峰を背景に佇む、壮麗なユグノア城。
「たった五年で、スゲエな・・・。」
カミュは感心して思わず立ち止まり、見上げた。
カミュがユグノア城を訪れると、すぐに応接間に通された。落ち着かずに立ったまま待っていたが、イレブンはすぐにやってきた。
「カミュ、訪ねてきてくれてありがとう。」
応接間に入ってくるなり、両腕を広げたイレブンが近づき、カミュをしっかりと抱き締めた。抱擁を返した後、カミュは少し離れ、まじまじとイレブンを見た。最後に会ったときより更に背が伸びた気がする。ユグノアの王族の衣装もよく似合っていた。肩まで伸びた栗色の髪は前髪と横髪が緩く編まれ、後ろで纏められていて、少年らしい丸みが僅かに残っていた頬も精悍な輪郭を描き、碧い瞳は深みを増していた。絵に描いたような美丈夫、お伽噺から抜け出た王子のようだった。
「五年ぶりだな。すっかり王様らしくなりやがって。」
カミュがにやりと微笑う。
「僕なんてまだまだロウじいちゃんに助けてもらってばかりだよ。君はあまり変わらないね。その海賊王のコート、まだ着てくれているの?」
「ああ、これはお気に入りだからな。大事に着させてもらっているぜ?」
眼帯は随分前に紛失してしまったのだが。
「旅をしていた頃に戻ったみたいで懐かしいな。」
「そうだこれ、シルビアに持たされたんだ。なかなかいい品らしい。」
「ありがとう。カミュ、ゆっくりできるんでしょ?夕食のときに飲もう。」
カミュからワインの入った袋を受け取り、イレブンは傍に居た侍女に手渡した。
「ああ。・・・そういやさ、お前、子ども産まれたんだろ?ぜひ会わせてくれ。」
「ああ、乳母の処にいるんだ。案内するよ。」
それから。二人は城内を並んで歩きながらそれぞれの五年間を語り合った。
「子どもの母親はどんな人なんだ?」
「僕の身の回りの世話をしてくれていた侍女だよ。」
カミュがふと興味を引かれて尋ねると、イレブンは事も無げに答えた。
「ああ・・・。」
――身分違いの相手だと周囲の人間が何やかやとうるさいのかもな。だがイレブンのことだ、悪いようにはしないはずだ。
「彼女にも会えるか?」
「いや。今は故郷に帰っているんだ。」
「故郷に?親の具合でも悪いのか?」
「おやまあ、カミュさん!」
乳母の部屋に着いてイレブンがドアを開けた瞬間、中から陽気な女性の声が響いた。
「ペルラさん!?」
そこにいたのはカミュも以前会ったことのあるイレブンの養母・ペルラだった。
「ふふ、驚いた?頼んで母さんに来てもらったんだ。」
ベビーベッドにはまだ産まれて半年も経っていないと思われる赤子がいて、にこにこしながら訪問者たちを見た。
「可愛いな。名前、何てんだ?」
「エリオールだよ。」
「いい名だな。」
「抱いてみるかい?」
「え・・・」
一瞬戸惑ったカミュにぺルラがベビーベッドから赤子を抱き上げて慎重に渡す。柔らかく温かで脆弱なのに確かな重みがあって、カミュは小さな命に何とも言えない感銘を受けた。イレブンの息子はとても愛らしく、カミュがご機嫌なエリオールをあやしながら微笑む。
「ふふ、そうしていると君の子みたいだ。」
「はは、何言ってんだよ。」
そして二人は暫くペルラと話した後、部屋を出た。
「そういやロウは?せっかくだから会っておきてえんだが・・・」
「ロウじいちゃんは辺境にある街や村の様子を見に行ってる。明日には戻る予定だからカミュ、今日は泊まっていったら?」
「そうだな。シルビアもマヤも忙しくしてるし、お言葉に甘えるとするか。」
「それならゲストルームに案内するよ。来て。」
ゲストルームはカミュが気後れしてしまいそうなほど立派な部屋だった。
「こんな豪華な部屋、落ち着かねえな。」
「すぐに慣れるよ。じゃ、夕食の時間になったら知らせるから。」
「わかった。」
カミュはイレブンが部屋を出て行き一人になると、知らず緊張していた肩の力を抜いた。
「・・・何だ、全然普通じゃねえか。あいつを意識して五年も会いに来なかった俺がばかみてえ。」
今のようなイレブンとの関係こそカミュが望んでいたものだった。時折訪ねて互いの元気な顔を見、よもやま話に花を咲かせ、酒を酌み交わす、親友。
「さあて、夕飯まで少し休むとするか。」
カミュは伸びをするとドカリとソファーに腰かけた。
*
異変が起きたのは、夕食後カミュがイレブンの私室で彼と二人で飲んでいたときだった。
「うっ・・・」
「イレブン?」
「苦しい・・・」
「イレブン、おい、どうした!?」
ソファの上で胸を押さえ急に苦しみ出したイレブンに、彼の向かいに座っていたカミュは立ち上がり、慌てて駆け寄った。
「待ってろ、今誰か呼んでくるから・・・」
ドアへと向かおうとしたカミュの腕をイレブンが掴む。
「だ・・・いじょ・・・うぶ、いつも、の、発作、だ・・・から・・・」
「発作?」
「少し・・・横に、な・・・れば、・・・」
カミュはよろよろと立ち上がりベッドへ向かおうとするイレブンを支え、彼がキングサイズのベッドに横たわるのを手助けした。
「本当に人を呼ばなくて大丈夫か?」
「うん、だい・・・じょ、ぶ・・・」
「そうか?・・・じゃあ、ゆっくり休めよ。俺は自分の部屋に戻るぜ?」
だがドアに向かおうとしたカミュをイレブンが呼び止める。
「待っ・・・て。カミュ、お願い、だ、から、傍に、いて。」
「わかった。お前の症状が落ち着くまでここにいるよ、イレブン。」
カミュはベッドの傍に椅子を持ってこようとしたが、イレブンが弱々しく言った。
「隣りに、寝て、くれる?君が、近くにいると、安心、する。」
「ああ、いいぜ。」
カミュは海賊王のコートとブーツを脱ぐと、イレブンの隣りに彼の方を向いて横たわった。するとイレブンがカミュを見て何か言いたそうに口を動かしたので、カミュは耳を彼の口に近づけた――刹那、イレブンが信じられない素早さと力強さでカミュの肩を掴み、彼をベッドに押さえつけた。
カミュは一瞬何が起こったのかわからなかった。口はイレブンのそれでぴったりと塞がれていた。我に返り、カミュはイレブンを押し戻そうとした。が、その手は難なく捉えられてベッドに縫い留められる。
「・・・俺を騙したのか?」
漸く顔を離したイレブンをカミュは怒りを孕んだ双眸で見つめたが、イレブンは少しも怯まなかった。
「僕の気持ちは以前伝えただろ。そして君は自ら僕のベッドに上がった。これは合意の上のことじゃないか。」
「な・・・何が合意の上だ!ん・・・」
イレブンが再びカミュの口を塞ぐ。カミュが身を捩り、何とか逃れようと押さえつけられている腕に力を込めたが、びくともしなかった。
「お、お前、子まで生した女がいるんだろうが!」
口づけが解かれたとき、カミュは必死で叫んだ。
「・・・・君は全ての子供が愛情による行為故に産まれてくるとでも思っているの?」
「そうじゃないガキもいることは知っている。だがお前が・・・」
「僕が?愛してもいない女性と寝るのはそんなに以外?」
「・・・・・・。」
「・・・彼女は不倫をして故郷に居られなくなってユグノアに来たと言っていた。僕は彼女を侍女として雇った。誰にだって事情の一つや二つあるからね。君もそうだっただろ?」
イレブンが再びキスしようとしたのでカミュは顔を背けた。イレブンの唇がカミュの耳のすぐ下に触れ、そのまま素肌に息がかかる距離で、話し続ける。
「彼女とはだんだん打ち解けて、僕がかつての旅の仲間に長い片思いをしていることも話したんだ。」
「ん・・・」
イレブンの唇が耳に触れ、カミュが身動いだ。
「それから彼女とは時々肌を重ねるようになって・・・。まあ、お互い寂しかったんだろうね。」
唇が耳殻を辿っていくのに、カミュが息を詰める。
「彼女とは体だけの割り切った関係だったよ。まさか子供ができるとは思わなかったけど。」
「ん・・・どう、した、んだ?彼女は・・・」
「昼間も言ったけど、彼女、今は故郷に帰っているよ。三か月ほど前に件の不倫相手が迎えに来たんだ。正式に妻と別れたから結婚してほしい、ってね。」
「な・・・」
「だから子供は僕が引き取った。」
イレブンは起き上がり、カミュの腰に跨ると、彼のベストを寛げ始めた。
「お、おい・・・ぅ・・・」
カミュが止めようとイレブンの手を掴んだが、逆に捉えられて抑え込まれ、再び押し付けるように唇を塞がれて何度も食まれる。
カミュの抵抗が弱まったのを感じてイレブンは一度身を起こし、着ていた上質な絹のブラウスを脱いだ。ベッドサイドテーブルに置かれたランプの灯りに浮かび上がる半裸のイレブンを見てカミュが驚きに思わず目を瞠る。
「酷い傷痕だ・・・イレブンお前、その胸の傷、どうしたんだ?」
明らかに最近のものではなかった。数年は経っているだろう。皆で旅をしていた頃のものだろうか?だが。
――こいつがこんなに酷い傷を負っていたのに誰も気づかなかったっていうのか?
「・・・・いつか話すよ。」
そう言った彼の貌が酷く哀し気でカミュは胸を衝かれた。
「イレブン。」
カミュは今の状況も忘れて必死に身を起こし、イレブンの頬に片手を当てがった。
「辛いことがあったんだろ?気づいてやれなくてごめんな。今更だろうが、俺にできることなら・・・」
幾らでも話を聞いてその辛さを分かち合うつもりだった。イレブンが苦い笑みを浮かべる。
「・・・・僕を慰めてでもくれるって言うの?」
「ああ、いいぜ。」
カミュの言葉にイレブンが驚いて目を瞠り、頬を染めた。カミュは微笑んでイレブンを抱き締めようと彼の頬にあった手を首に廻しかけた――
「うわっ!?・・・ぅ・・・」
が、勢いよくベッドに押し倒された。激しく口づけられ、シャツの上から身体を性急に愛撫される。
「ちょ、イレブ・・・!あ・・・っ」
口づけが解かれると、シャツを引き裂くように肌蹴られ、素肌をイレブンの唇と手が触れていく。
「イレ、!・・・ひゃ・・・」
露わになった乳首を口に含まれて舌先で弄られ、腰から脇腹にかけて撫で上げられたとき、カミュは驚き身を捩ってイレブンの下から這い出ようとしたが、背中から圧し掛かられた。後ろから廻された手が器用に下衣に滑り込んで急所を掴まれ、カミュは身体を強張らせた。
「は・・・放せよ!あっ・・・」
幹を上下に擦られ、先端を親指の腹で愛撫されてカミュが喘ぐ。止めさせようとイレブンの手を掴んだが、力がほとんど入らなかった。カミュの抵抗が弱まった頃、イレブンは彼のベストとシャツを一気に脱がせた。その反動でカミュはベッドに顎から落ちたが、拘束から解放されたことで匍匐して再びイレブンから逃れようとした。
「ひゃっ!?」
が、後ろから乳首を指先で擽られて思わず身体を捩った途端。
「んっ・・・」
イレブンに仰向けに押さえ込まれて唇を塞がれた。キスの最中も腹や腰を撫でられて、カミュはくぐもった声を上げながら押し返そうとしたが、その手もシーツへと縫い留められる。そしてイレブンの唇が首、肩、胸と辿っていき、腹へと下りたとき、一旦カミュの手首を放し、素早く下衣の紐を解くと一気に膝まで下ろした。
「やっ・・・ちょ・・・っ・・・」
カミュが狼狽して手を伸ばすがイレブンは構わずそのまま下衣を彼の脚から抜き去った。
「イレ・・・!」
イレブンが脚の間に入り込み、中心の兆したものを含んだとき、カミュはぎょっとして身を強張らせた。下腹からゾクゾクと堪らない刺激が這い上がって来て、カミュが掠れた悲鳴を上げ、白い喉を晒して仰け反る。
――イレブンに、俺のモノを咥えられてる。親友だと思っていた男の口に、俺のが・・・
カミュは愕然として何とか逃れようと腿でイレブンの頭を挟んで腰を揺らし、手を伸ばして彼の髪を掻き回したが、そこが解放されることはなかった。
――やべえ、出ちまう。
「く・・・口で受け止めたら、もうキスしないからな!」
イレブンの巧みな手と舌の動きで高められ、耐えられなくなって、カミュは咄嗟に口走った。カミュの叫びにイレブンが弾けるように顔を上げ、上へと這い上がり、彼の顔を覗き込む。
「自分の味がするのはそんなに嫌?」
「あ・・・当たり前だ!」
――親友の口に出すなんて、冗談じゃねえ。
カミュはそっぽを向いた。
「カミュぅ~」
イレブンが耳を垂れた子犬のような顔をして、カミュの首筋にちゅ、ちゅ、と戯れのようなキスを繰り返す。
「おい、やめ・・・んぅ・・・」
押し退けようとするカミュをくすくす笑いながら押さえ込んで、唇を塞ぐ。優しく舌を絡ませた後、再びカミュの身体を唇と舌、掌と指先で探り出した。先ほどのような性急さはない、丁寧な愛撫。カミュが反応する処は殊更。
「やっ・・・もう、おま、しつこ・・・っ・・・!」
生まれて初めて素肌にこんな触れられ方をしてカミュは、止むことのない快楽に何も考えられずに身悶え続けた。
そして。漸くイレブンが身体を起こしたとき、カミュはもう息も絶え絶えだった。イレブンが手を伸ばし、ベッドサイドテーブルの引き出しから何かを取り出す。
「な、何だそれ?」
カミュが乱れた息の中、問う。
「香油だよ。・・・ああ、そっか。カミュ、初めてだよね?」
「え?おい・・・」
イレブンが利き手の指に小瓶の中身を纏わせて、もう一方の手でカミュの片脚を折り曲げると、露わになった彼の奥まった秘所に塗りつけた。
「ひ!?」
「少し我慢して?」
イレブンは縁を広げるように塗り込んだ後、中指をゆっくりと埋めて行った。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
カミュは信じられないという面持ちで中空に視線を彷徨わせた。イレブンの指がナカをそっと掻き回す。逃げなければと思うのに下腹の熱も解放されないままで、尚且つ巧みな愛撫に溶かされて動けなかった。
カミュが一本の指に馴染んだ頃、一本、また一本と指が増やされていき、三本の指が楽に入るようになって漸く指が抜かれた。カミュがほっとして息を吐いたとき、イレブンが服の残りを脱ぎ捨てたのがぼんやりとした視界に映った。
「あぁ!?」
カミュは身体をぐるりと俯せに反転させられ、イレブンの力強い手に腰を引き寄せられる。そして次の瞬間、奥の窄まりに固い物が押し当てられた。カミュがぎょっとして上体を起こし、振り返ろうとした、その時。
「ああーーっ!」
柔らかくなったそこにそれが押し入ってきた。イレブンの押し殺したような声が警告する。
「カミュ、力を抜いて。」
「あ・・・・あ・・・痛・・・い・・・」
「ごめん、カミュ、ごめん」
カミュは上体を支える腕をぶるぶる震わせながら固く目を瞑り、唇を噛み締め、懸命に痛みに耐えた。イレブンが背中からぎゅっとカミュを抱き締める。
「君の貌を見ながらシたいけど、初めては後ろからの方が楽だから。」
イレブンは労わるようにカミュの項や肩、背にキスをした。後ろから抱き締めたまま、頬をカミュの髪に埋める。しばらくそのまま時が経った。痛みが幾分か麻痺し、イレブンの体温と鼓動に少しばかり安堵したとき。
「あ・・・っ」
カミュの身体が弛緩したのを感じてイレブンが更にそこを押し拓いた。痛みでカミュが再び身体を強張らせる。イレブンは動きを止めてカミュの乳首や脇、下腹を優しく愛撫した。
「あ・・・ん、あ・・・あ、あ・・・」
一方的に愛撫されてカミュが艶めいた喘ぎ声を出す。そしてカミュが愛撫に溶けた頃。
「ああ・・・っ!」
イレブンは更に彼の中に押し入った。その後も愛撫して先へ進んで、を繰り返す。
やっとイレブンが彼自身をすべて収めたときカミュは伸ばした腕で上体を支えていられず、辛うじてシーツに肘をついている状態で、もう彼と繋がっている処の感覚もなくなっていた。
「全部入ったよ、カミュ。」
耳元でイレブンが囁き、カミュは霞のかかった頭でそれを聞いた。カミュの腰を掴み、ゆっくりとイレブンが自身を引き抜き、緩やかに奥を衝く。何度か繰り返しているうちにイレブンの先端が前側の隆起した部分に当たり、カミュは掠れた悲鳴を上げて背を撓らせた。
「イレ、ブン、そこ、ダメだ!」
「カミュ、気持ちよくなれるところだよ?僕にすべて委ねて?」
イレブンはナカの前側にあるしこりを狙って衝き始めた。彼のモノがそこを擦る度に、カミュは仰け反って喘ぎ、やがて肘を立てていることさえできなくなり、ベッドへと伏せた。イレブンは片手でカミュ自身を扱き、もう片方の腕をカミュの腰に廻し、抽挿を速めていった。最中、カミュのモノが達しようとするのを感じ、そこから迸ったものを掌で受け止める。
「はあっ、イレ・・・ブン。」
「カミュ・・・。中に出すと後が大変だから外に出すね?」
そう言ってイレブンが彼自身をずるりと中から抜き、腰に廻していた腕を解くと、カミュはベッドに沈んだ。
「くっ・・・」
そして。イレブンははち切れそうだった自身のモノを扱いて欲をカミュの汗ばんだ背に吐き出した。
乱れた二人の息遣いだけが広い部屋に密やかに響く。やがてイレブンはベッドサイドテーブルからタオルを取り出し、カミュの背中と自身の掌をきれいに拭った。
「・・・・大丈夫?」
イレブンがカミュの隣りに横たわって彼の肩や背を労わるようにそっと撫でる。
「・・・・・・。」
たった今自分の身に起こったことが信じられなかった。カミュは力の入らない腕で何とか横向きになり、イレブンの方を向く。逞しい肩に腕、紅潮した頬に乱れた銅色の髪、熱を孕んだ碧い双眸、艶めいた唇。裸の彼は美しかった。
「とても素敵だった。」
イレブンが幸せそうに微笑んだが、幾ら待ってもカミュから何も言葉が返ってこないことで笑みは消え、端正な貌が不安げに曇る。カミュは心の中で動揺した。
――俺も何か言うべきなのか?だがこんなとき、何て返せばいいのかわからない。
迷った結果、カミュはイレブンを安心させようと――微笑み返した。イレブンは一瞬泣きそうな顔をして、それから花が綻ぶように笑い、カミュを抱き締めた。
次もR-18。