調教済み対魔忍をまとめて受け持つ特務中隊 作:ヘビとマングース
立川佐吉:出陣前
特務中隊としての初任務がやってきた。
俺にとっての初任務、初実戦。緊張しているが、高揚してもいる。ついに来たかって感じだ。
同級生ではゆきかぜとか、俺よりも先に任務へ出ている対魔忍が居る。そういう人に比べて戦闘に忍法が使えない俺が劣っているのはわかってる。
だけど、特務中隊の隊長として選ばれた以上、ここが最大のチャンスでもあるとわかっていた。
寄宿舎の一室、作戦室に呼ばれた俺はそこに居た。
アサギ先生を目の前にして、俺以外に集められた対魔忍はたったの二人。俺の隣に立っているのはゆきかぜと凜子さんだ。
手始めに簡単な任務を任せたいと言われていた。少数なのはそのためなんだろうと察する。
「今回は今後の特務中隊の運用に関する試験という側面も兼ねているの。立川君、本来は任務へ派遣する対魔忍をあなたが選別して作戦指揮を執るのだけど、あなたの要望は前線に立つことよね」
「はい」
「今のあなたには経験も人脈も足りていない。そこで今回は私がメンバーを選んだわ」
服を着ているアサギ先生は至って真面目だ。それに頼りになる。
実戦経験、他の対魔忍との信頼関係、単純な実力なんかでも、アサギ先生に比べれば俺なんか存在しないに等しい。いきなり部隊を動かせないのは当たり前。
これが頭脳労働に優れてる小太郎だったら違ったのかもしれない。だが、俺は少なくとも小太郎よりは強いし、現場に出られることが俺の強み。
「ゆくゆくは特務中隊をあなたに任せることになる。今回の任務でそのための経験と実力と、実績を手に入れなさい。私にできるのはその手助けだけ」
「わかりました。力を尽くします」
「あなたには向上心と勇気がある。心配はしていないわ。でも、今回の任務には腕の立つ対魔忍を同行させる。彼女たちから学ぶことは多いはずよ」
「この二人……ですね」
俺の左右を挟んだ、ゆきかぜと凜子さん。
すでにセックスした関係だ。
ベッドの上の姿をどうしても思い出してしまうせいか、強いってことは頭じゃわかってるつもりなんだけど、今は少し頼りなさを覚えてしまう。
「何よ、その顔は。言っとくけど私は対魔忍として任務に出た経験があるんだからね。歳は同じだけど実力でも経験でもあんたよりすごいってことを忘れんじゃないわよ」
「そいっ」
「んにゃああああっ⁉ ちっ、乳首つまむなっ! バカ佐吉!」
セックスした影響で前より仲良くなった。というより、俺はゆきかぜの扱い方を覚えた。
ツンツンしていて実は優しい、リアルツンデレな彼女だが、本性はずいぶんなマゾヒストなのでこっちも負けじと強気で接すれば、どこかのタイミングで折れて一転、従順になる。
小さな胸を揉んだり、急に乳首をつまむスキンシップ。実はそこまで嫌がっていないのである。
「わかってる。現場じゃゆきかぜの方が先輩だ。頼りにしてるよ」
「だったらもっと敬いなさい! 気軽にセクハラするな!」
「気軽じゃなきゃいいのか?」
「うっ⁉ そ、れはぁ……」
ちょっと言い返しただけですぐ顔を赤くして目を逸らす。かなり効果があるらしい。これもありとあらゆる痴態を俺に知られてしまった影響かもしれない。
ふとした拍子に達郎のことが頭によぎるけど、本人から「ゆきかぜをよろしく。めちゃくちゃにしてやってくれ」なんて言われたもんだから、俺もついつい手が出てしまう。
だんだん対魔忍に毒されてきてるな……。
元々ノーマルだったはずなのに、ちょっと自分のことが信じられなくなりそうだ。
まあ、こういう状況だからこそ任務は有難い。集中しないと。
「お姉ちゃんも居るぞ。頼りにしてほしいな」
「わかってる。頼りにしてるよ」
「お姉ちゃんと呼びなさい」
「お姉ちゃん……」
「ふふ♡ よし」
凜子さんは順調にどうかしている。すでにこれがニュートラルになってるみたいだ。
だが凜子さんの対魔忍としての実力は本物。3年生の先輩である上に、学生の中じゃ間違いなくトップクラス。チート紛いの忍法と凄腕の剣術がある。
ゆきかぜが強いことを知っているが、頼りになるのはぶっちゃけ凜子さんだ。
最近の奇行も俺の味方であるのは間違いないし、凜子さんが一緒なら怖くない。
「二人のことはよく知っているわよね? 協力して任務にあたってちょうだい」
「了解です」
「それからもう一人、現場の責任者として教師を同行させます」
アサギ先生がそう言うと、五車学園の臨時講師である女性が歩いてきて俺たちの前に立った。
“
一度だけ、実習の中で忍法を使った姿を見たことがある。
空気が振動していたのか、それとも俺がそんな気がしていただけなのかはわからない。バチバチと強烈な“雷”を体に纏って、高速で突き出した拳から雷を線のように飛ばして、大の大人が十人居ても持ち上げられないだろう大岩を貫いて風穴を開けた。
忍者と呼ぶにはかなり派手だけど、単純な戦闘でこれほど怖い人は居ない。
身長が高く、むちむちの体にぴったり対魔忍スーツを着て、鋭い眼光で俺を見る。実習なんかでは接したことのある間柄だが、あくまで教師と生徒でしかない。
こうして一緒に任務に出ると聞いて、自分が多少緊張しているのを自覚する。
「上原燐だ。臨時だが特務中隊に加わり、任務へ同行する」
「よろしくお願いします」
「立川、お前は日頃からよく修練を積んでいる。隊長としてのお前の働き次第では、私もお前の部隊に加わるつもりだ。励めよ」
「は、はい。ありがとうございます」
そう言って上原先生が凜子さんの隣に並んだ。
俺たち四人が任務に出る。これだけの面子なら戦闘では何ら心配はない。
「任務の詳細を伝えます。あなたたちが向かうのは新宿」
「新宿……」
「最近、決して小さくない問題が起きている様子なの。政府が情報統制をしようとしているけれど噂は広まりつつある。曰く“本物のゾンビが出た”と」
アサギ先生の口から、今回の任務に関する説明が始まった。
その内容は俺を驚かせるのに十分な威力がある。
ちらっと他の三人の顔色を窺ってみるのだが、そこまで驚いた様子はない。多分こういう話に慣れていて、すでに実物を見ているのだ。魔族を相手にしている彼女たちは平然としていて驚きも怯えも緊張もしていない。
ゾンビが出た。
そう言われて俺の脳裏に浮かぶのは前世の知識。バイオハザードとかウォーキングデッドだ。
だけどこの世界におけるゾンビは多分魔族関連のものだろう。ゾンビが関わるということは魔族と出会うことになると考えていい。
「これまでならここまで事態が表面化して世間に知られることはなかった。おそらく裏社会の組織側に何らかの変化が起きたことが考えられる。日本政府は我々対魔忍にこの事件の調査と解決を依頼してきているわ」
「じゃあ解決が俺たちの任務ですね」
「その通りよ。先行して五車の対魔忍を派遣し、情報を集めさせている。まず彼女と合流して状況を整理し、事態を解決。魔族及び魔界との繋がりを持つ組織との干渉・戦闘があり得るから十分に注意しておいて」
簡単な、と聞かされていたんだけど、今聞いた感じではとてもそうは思えない。
「魔族の仕業っぽいわね……でも表の人間にまで知られるようなことするなら、“ノマド”なんかは関係ないのかしら?」
「心配するな佐吉。お姉ちゃんが守ってやるぞ」
「とにかく油断しないことだ。魔族はどんな下級であろうと厄介なのは間違いない。皆、言うまでもないが単独行動は避けろよ」
上原先生が警戒を促して空気が引き締まる。
怪訝な顔をするゆきかぜも、俺の尻を撫で始めた凜子さんも、緊張感を醸し出した。
魔族が絡むというのはそれだけのことだと肌で感じる。
「夜を待って現地で行動開始。先行して潜入調査を行っている対魔忍と合流し、原因を突き止めてこれを解決してきなさい」
「わかりました」
「立川君。期待しているわよ」
最後の一言だけ、アサギ先生の表情はベッドの上の、セックス後の穏やかな笑顔に見えた。
ようやくだ。ついに俺の対魔忍デビュー。
言われなくてもやる気はあったが、そう言われたことで俺はさらに燃えていた。
立川メモ
『井河アサギ』
・服を着てる時はまとも
『水城ゆきかぜ』
・1回セックスしてから優しくなった気がする
・セクハラしたら普通に怒る
『秋山凜子』
・1回セックスしてからおかしくなった気がする
・セクハラしないと怒る