暗殺任務に失敗し、絶体絶命の危機を「あの動物」との融合で切り抜けます!
「くっ、まずいな……」
ここはとある城内。
一人のくノ一が、己の怪我を庇うようにしながら移動をしていた。
「どこに行きやがったぁー!」
「ぐへへ……久々の獲物だぁ!」
「一発で真っ二つにしてやんよ……」
あまりにも治安が悪い追っ手の声が響き渡る。
「しかし、常識外れの輩ほどやっかいなものはないな」
くノ一は呼吸を整えながら、こうなった経緯を思い返す。
ターゲットはこの城の主。
見取り図もある、見張りのスケジュールも把握している、戦力も確認済み。
一番の大物の暗殺故、楽勝……というわけでもないが、手練れのくノ一である彼女には造作もない任務であった。
そう、造作もないはずだったのだ。
まず、彼女が直面した問題。
建物の構造は見取り図通りなのだが……使い方がでたらめなのか、廊下の床が抜け落ちているのは当たり前、天井に穴が開いているわ、近道を無理矢理作った形跡があるわで利用するはずだった待避ポイントがほとんど役に立たない状態であった。
流石のくノ一でさえ、「自分の城を火で拡張しようとする」蛮行を想定するのは難しかったであろう。
外壁を登るプランに変更し、なんとか城主の部屋付近までたどり着く。
さて、そう言う場合一番の問題は警備である。
あらかじめ見張り方や行動パターンを確認しておいたのだが……
そもそも、誰もいないのである。
そう、見張りが全くいないのである!
『城主が城主の部屋にいない』という罠も考えられる以上、あり得ない事ではない。
しかし、聞き耳を立てると確かに寝息が聞こえてくる。
中にいるのは影武者か……くノ一がそう思った時であった。
「わ! なんかいるぞ!」
「え! 本当か!?」
「嘘だろ! 暗殺者とか本当にいたのか!?」
「くそ、サボってたのがばれたらやばいぞ!」
そう、城主はどうかは分からないが……城内の兵はこぞって、責任感というものを知らないようだ。
見張りをしているふりをして居眠り、などというレベルではない。
全員で仲良く移動し、暇つぶしをしていたという恐ろしいほどの無能なのであった。
そう言う存在ほど、こういう時にやっかいな物である。
「城の主が権力を誇示している物だから、しっかりしているのは当たり前である」
「城の主は一番重要な存在なのだから、警備もしっかりしていて当然である」
どちらもまるで成り立っていないこの城の中では、さしものエリートくノ一も経験がまるで役に立たない状態に陥ってしまった、と言うわけだ。
更に恐ろしい事に、先ほど響いた声から分かるように……全員が全員、まるで人斬りが趣味だと言わんばかりの人格。
よくこの城が成り立っている物だと感心するレベルである。
「まさか、いるかどうかも分からない壁の向こうに刀を突き立ててくるとはな……」
それは数分前。
音を立てず、脱出の経路を探していたときのことであった。
「うおおおおおおーーーー!!!」
壁の向こうから奇声が聞こえた次の瞬間、目の前に白刃が飛び出してきたのだ!
声を押し殺し、横からの攻撃をかわす。
「なんか、ここに、いたらいいな! いろ! いろ! いろ!」
下がった刀が違う場所から飛び出し、また引っ込み、新しい穴を開けては……
(頭がおかしい、なんて物じゃないぞ!?)
くノ一が恐怖を感じた次の瞬間。
でたらめに繰り出されるせいで予測できなかった一突きが、彼女の利き腕をかすめたのであった。
「くそう! いない気がする!!!」
幸運にも、あちらは手応えを感じなかったらしい。
向かい合っての戦闘なら自信があっただけに……彼女の心は、徐々に得体の知れない恐怖に取り込まれ始めていた。
「あっ! これ、血じゃないか!?」
「いや待て、昨日こぼした味噌汁かも知れんぞ」
「なんでもいい! あの女を明日の味噌汁にしてやらぁ!」
追っ手が迫ってくる声が聞こえる。
いや、追ってきているのならどれだけ気が楽だろう。
恐らくあちらも城の構造を把握しきれてないのだろうが、声は離れたり近付いたり、増えたり減ったり……ひどい時は、十分以上パタリと止んだりするのだ。
「まさか、天井をぶち抜いてこないだろうな」
思わず冗談を口に出してみる物の……全く冗談にならないせいか、心の落ち着きは戻っては来ない。
ふと、視界に下る階段が見えた。
「ん? 地下が……あるのか?」
元々は大きかったのか、明らかに継ぎ足して狭くしたかのような見た目をしている。
「おかしい、見取り図にはなかったが」
眉をひそめ、覗き込む。
奥は暗く……何も分からない。
「こっちの気がするぞ!」
「さっきもそう言ってたろ!」
「俺様があいつを斬ってやるぜぇ! どんな女かは知らねぇがよぉ!」
今までで一番近く、声が聞こえてくる!
「南無三……!」
この先が行き止まりならば、そこで戦うしかない。
だが、本当に行き止まりならば戦略の立てようもある。
大きな賭けであったが、その美貌に覚悟を浮かべ階段へと飛び込んでいった。
「む……獣の臭いか?」
雑に設置されたいくつかの灯籠に灯がともっており、怪しく照らしている。
「兎、か。かわいそうに、こんな所に閉じ込めなくても」
最低限の餌はもらっている、のだろうか。
極端に痩せているわけでもなく、かといって毛艶が良いわけでもない。
「待て、見た事のない兎だな。さてはここの城主、珍しい生き物が好きか?」
大方、しばらく経ったら飽きてしまい……行き場のない動物をここに移動させている、のだろう。
「ふむ、信じられんが、動物を飼うくらいの知性はあるんだな」
灯籠を一つ手に取り、探索をする。
見た事のない鳥、小動物、犬のような何か……
「待てよ。確か、禁術の一つに借り身の術があったな。時間さえ守れば問題ないと聞くし、使ってみるか?」
借り身の術。
相手の肉体を一時的に自分の肉体に重ね、融合した状態になる術である。
禁術とされているだけあり、相手からの影響を受けてしまう・長時間の借り身をすると固定される恐れがある危険な物なのだ。
しかしながら、例えばここで犬の力を借りたとすればその脚力で一気に逃げ切る事も可能になるだろう。
ただし、万が一餌の欲望に心が負けた場合、お座りをして止まってしまうかも知れない。
「むう……」
ふと、荒い呼吸が聞こえた。
「誰か、いるのか?」
返事はない。
聞いた事もないほどの呼吸音に、そっと歩みを進める。
ある程度まで近付いた時……頭上から、蛇が飛び出してきたではないか!
「なっ……!?」
咄嗟に短刀を抜く。
が、よくよく見るとそれは奇妙な物体であった。
頭部はなく、二つの穴が開いている。
その長い何かは自由に曲がり、柵の向こうへと続いており。
よくよく見ようとした時であった。
柵から今度は、上に曲がった二本の白い物が飛び出してきたのだ!
「う、わ!?」
彼女が声を上げたのは、そのせいではない。
灯籠が照らし出したのは……見た事もないほど不気味で、あまりにも大きな生き物だったのだから。
長い何かは……恐らく、鼻だろうか?
では、白い二本の物は……牙か?
イノシシのそれに近くはあるが、大きさは規格外だ。
第一、鼻と牙があるならそれの根元は頭部のはずだが……
二枚のそれは、耳なのか?
布団ほどの大きさのひらひらした物が、左右からぶら下がっている。
「くそ、私もついに幻覚を見ているか……」
鼻、とおぼしき物から空気が出てきて火を揺らす。
呼吸音、と思ったのは間違いではなかったか。
それにしても……なんだ、不気味である。
「と、とりあえず、こいつを借りるのは、嫌だな」
借りても制御できなければ、どうしようもない。
そもそもどんな生き物なのか想像もできないのだから、危険しかない。
「おい! やっぱりここじゃねぇか!?」
「でもここよぉ! 殿様のよぉ!」
「お、俺、やだよ! あの……なんだっけ? あれ、こええからよ!」
「えーい、意気地なし! 動いてる物全部斬りゃあいいんだよ!」
まずい、時間がない。
くノ一は灯籠を置き、迷わず禁術の書を取り出す。
これを開き、借りる相手と目を合わせればたちまち融合するのだ。
(どうする……兎の脚力か? それとも、あの奇妙な鳥に賭けるか? しかし……)
あまりにも分が悪いこの状況、思わずくノ一は考え込んでしまった。
と、その時。後ろにいる、得体の知れない動物の鼻が巻物に触れる。
食べ物か何かと思ったのだろうか、先端を挟んで軽く引っ張り。
その動物には軽かったのかも知れない。
が、それは巻物を開いてしまうには充分であった。
「お、おい!?」
思わず振り返り、動物の方を見てしまう。
灯籠に照らされたその顔には、大きな目が。
思っていたよりもそれは綺麗で、哀しそうで……
「やいやいやい! 覚悟しろぉー!!!」
追っ手の一人が両手に刀を持ち、飛び込んでくる。
「ぱぁ、おぉおおおおおぉおおおん!?!?」
くノ一の服が膨張に耐えきれずはじけ飛び、裸体が露わになる。
「な、な、なぁああ!?」
「なんだ、この動物、強いとか弱いとか、そう言う次元じゃ、ぱぁお、ぱぁお、ぱぉおおおおおおん!!!!!」
全身に力がみなぎり、自然に太い鳴き声が漏れる。
ビリビリと周囲の空気が震え、追っ手は思わず耳を塞ぎ。
「ようし、試させてもらうぞ……!」
大木のように太い腕が動き、短いながらも頑強な手が柵を掴む。
「ふぅん!」
腰をひねると共に、柵が地面や壁から抜けていき……木を組み合わせ、丈夫に作られていたそれがまとめて振り回される。
「げっ、げぇえええ!?」
力任せにそれを叩き付けた所、哀れ追っ手はぺちゃんこに。
「お、おお、すごい、すごいぞ、ぱお、ぱお、ぱおおおおぉぉおお……」
想定外の破壊力に、ゾクゾクとした興奮すら覚える。
「少し動きは重い気もするが……利用させてもらう!」
大きな図体になったくノ一は、大きな頭の髪をなびかせ階段へと向かう。
「なんだ!? さっきから象の声がするぞ!?」
「嘘だろ、あいつにはそんな餌与えてないはずだぞ!?」
「象? この動物、象というのか。それにしても……階段が小さくて出られないぞ、いや、待てよ……?」
入るときの事を思い出す。
大きな穴を不自然に狭めたような、その作り……
「よし、よし、推察があっていれば!」
体を丸め、両手を地面につけ、四つんばいの体勢を取る。
「そ、そうだ、この鼻で、狙いを定めるか」
階段の入り口に鼻を動かし……まさしく蛇のように、自在に曲がる。
それが面白く、心地よく。
「行くぞ、一気に、ぱぉおおおおおおおおおおおんんん!!!!!」
全身をバネのようにして、飛び跳ねるように階段に向かっていく。
太く長い牙が急ごしらえの部分をいとも容易く破壊し、くノ一はギリギリの穴を登っていった。
「う、うわぁ、象が逃げたぞ!?」
「えっ、象って、髪が生えていたか!?」
「し、知らん!」
木っ端みじんになった木材が降る中、いわば象人間と化したくノ一の出現で追っ手達はパニックになる。
「ええい、邪魔だ!」
太い腕がうなり、右にいた一人を吹き飛ばす。
鈍い音と共に壁にぶつかり、そのまま動かなくなり。
「わ、わぁああああ!?」
パニックになった一人が、上段の構えで突撃してくる!
「ならば、こうだぁああああああ!」
首を思い切り捻り、頭部を振り回す。
その凶器とも言えるレベルの牙が刀の間合いよりも早く、追っ手を捕まえる。
そのまま天井に叩き付けられ、牙が体を貫通し。
追っ手は声も出せぬまま、くノ一の牙に刺さったまま事切れた。
「わ、わ、わ……!」
完全におびえた残り一人が、腰が抜けながらも逃走を図る。
「待て! あ、くそっ」
すぐにでも追いかけたい所だが、あまりの巨体のせいで下半身が階段の中のままだ。
下手に逃がすと、後でやっかいになるのは確実である。
ふと、追っ手の落とした刀が目に付いた。
「ようし、上手くいくかは分からんが……!」
まだ使い慣れない鼻を動かし、柄を持って拾い上げる。
「よっ……!」
手裏剣を投げるかのごとく、鼻を素早く振り抜き刀を放つ。
「がっ」
日頃の鍛錬も手伝ってか、恐ろしい速さで飛んだ刀は見事に命中。
一瞬にして、追っ手は壊滅してしまうのであった。
「よっと、よし、体が出たな……」
その身長のせいで、一階の天井を突き破りながら立ち上がる羽目になる。
しかしながら象人間の前にはこの程度の建造物、何の問題もない。
腕を振り回し、丈夫な首に任せて牙を使えば快適に城内を移動できるようになった。
「折角だ、借り身のままで任務も遂行させてもらうぞ……」
鼻の向きを常時動かし、周囲の臭いを確かめる。
すると、どこかで食事を用意している臭いがしてきた。
「なんだ、のんきに食事の支度か?」
そう流そうとした時。思考に、湧き所が分からない怒りが浮かび上がる。
「ん、何だ、なんだろう、旨そうな臭いを嗅ぐと、腹が立つぞ、腹が減るんじゃなくて、くそ、くそ、狭い所に閉じ込めやがって、ろくに飯も食わせず……!」
借り身の術の影響か、粗末に扱われていた象の気持ちが入ってきているのだ。
「い、いかん、私は人間なのだから、くそ、くそ、今、強いんだから、復讐してやる、あ、ダメだ、逆らえん、食わせろ、食わせろ、食わせろ!!!」
単純ながら強い感情がどっと押し寄せ、流石のくノ一も流されてしまう。
目が座り、臭いのする方に一直線に向かっていく。
向かい来る追っ手は容赦なく蹴飛ばし、張り倒し、鼻で捕まえ叩き付け。
「あー、飯、飯、たらふく、食わせろ……!」
すっかり食欲の権化になってしまった象くノ一は、遠慮も容赦もなく台所に入り込む。
当然そこには戦闘員ではない人間もいるのだが……
「ぱぉおおおおおおん、飯、飯、飯、飯!」
手で釜をひっくり返し、鼻が野菜や果物を片っ端から掴んでいき。
次々に口の中に押し込まれる物の、大きなそれはたちまちにして飲み込んでしまう。
若干傷んだ魚、生の肉、火の通ってない芋、芯の残った米……
決して美味ではないはずなのだが、よほど粗末な扱いだったのだろう。
脳内は完全に食一色に染まっており、もはや象の感情はくノ一の感情に重なってしまっているのであった。
「ああっ、食った、食った、満足、ぱぉおおお♡」
丸くなったお腹を手でさすり、鼻でさすり。
備蓄のほとんどを食い散らかし、やっと融合体は満足を覚えたようだ。
「あっ、そうだ、いかん! 任務もせず私は何を、そうか、あいつを暗殺、パオ、パオ、ぱぉおおおおおおおおおおんんんん!!!!!」
任務を思い出した、その瞬間であった。
また新しく、強い感情が脳内で渦を巻く。
「ん、何だ、私はただ、ワシを無理矢理連れてきたくせにすぐ飽きよって、違う、私は、ワシを閉じ込めて飯もくれんとはひどいやつだ、だ、だめだ、ダメだ、私は忍びなのだから、そんな感情、許さんぞ、ワシがひどい目に遭わせてやるぞ、待て、私、はワシなんじゃぞ、ぱぉおおおおおおおおおんん!!!!!」
制御しようと試みたものの、あっという間に怒りの感情が体を支配する。
「わ、私、ワシ、目的が同じじゃから、ええぞ、なんか、おかしい気もするが、ようし、やつめ、どこじゃ!」
完全に思考や感情がごちゃごちゃになり、奇妙な口調で騒ぎ始める。
「ふむ、やつの臭いはよく覚えとるから、こっちじゃな! ええい、邪魔じゃ! わた、ワシの前に立つと蹴飛ばすぞぉ!」
鼻を頼りに、象くノ一は暗殺ターゲットを探し出す。
その頑丈な皮膚の前にはあらゆる障壁は役に立たず、逆にそれを使い武器にもできる。
今までそういった単純な力で押し切った事のなかったくノ一は、どこか今の自分にドキドキしてしまっていた。
「な、なにごとじゃあ!?」
「ぱぉおおおおおおんんん、覚悟ぉおおおおおお!!!」
「ひ、ひぃ、か、かわいがってやるから、許して……」
城主の命乞いが終わるよりも早く、平たく大きな足が彼を踏み潰してしまう。
「私の任務だからな、ワシの怒りはそんなもんじゃ済まんからな、よし、これで……ワシ、自由じゃあぁあああ、ぱぉおおおおおおおおおんんん♡♡♡♡♡」
元に戻るために取り出した巻物。
だが、象くノ一は己の存在に酔いしれながら、力任せにそれを思わず破り捨ててしまうのであった。
象の心がそうさせたのであろうが、それは融合しているくノ一の心でもあり。
あまりにも強い動物の心が無理矢理入り込み、完全に人間の心との融合を果たしてしまったのである。
雄叫びを上げている彼女の股間も、興奮からかいきり立っているのだった。
「で、茜……戻らないのか?」
「え? そんな必要あるかのう?」
次々に食事を平らげ、平然とおかわりをしながら象くノ一の茜が返事をする。
ここは忍びの里。
戻る術を破り捨てたせいで、元に戻る事は金輪際なくなってしまった茜。
いや、その直前に偶然とは言え精神も一つになっていたので手遅れだったのかも知れないが。
里で一番の美人故に、マドンナ扱いだった彼女。
それが突然、強靱で巨大、豪快な象人間になってしまったため全員扱いに困っている状態なのだ。
「ほ、ほらあれだ。任務で困るだろう」
「うーん、別に困らんのう。ワシら、目撃されるとまずい存在……とは言うが、仮に私の姿を見ても信じられんじゃろ? 『象が歩いて城を破壊した』なんて、わけが分からんぞ」
なるほど、確かに忍んでいないのに忍んでいるような物ではある。
質問してきた忍びの鶏団子を鼻で強奪しながらも、ご機嫌で丼に山盛りの白米をかき込む。
「し、しかしだなぁ」
「何言っとるんじゃ、この姿になってからもう二週間だけど、任務は十こなして全部完璧にこなしたわよ?」
山のような巨体が、覆い被さるように覗き込む。
「そ、そうだったな。ええっと、城を体当たりで壊したのと……」
「そうじゃな、吠えながら突進して敵軍の攪乱じゃろ。水車小屋を蹴飛ばして止めて、村に潜む盗賊を問答無用でしばき倒したな。それから……」
とても忍びとは思えない、力任せな解決法を次々と並べていく。
小柄で素早く、その代わりに力が弱かった彼女はもういない。
大柄で遅いが、その代わりに馬鹿力の存在になっているのだ。
本人はくっついた象の影響もあり、飯が食えるなら特に不満はないらしい。
「茜ー、牛の移動手伝ってくれー!」
忍びの一人が、食事の途中の茜に声をかける。
「ん、何頭をいつまでじゃ?」
「ええっと、五頭を日暮れまでにだ」
「五頭か、両腕に抱えて二頭、場所はあそこだから……うむ、ワシ一人でやっておくわよ。飯を済ませたらすぐやるわい」
「あー、助かる! 今度報償出たら、団子おごるからな!」
「むっふふ、甘い菓子はいくら食っても良いからのう、ぱぉおお♡」
ご褒美を提示され、満更でも無さそうな様子。
「はぁ……流石に象に惚れたくはないよな……」
「まあ仕方ないじゃん、あれはあれでかわいくて便利なんだしよ」
茜は象くノ一となった事で、マドンナと言うよりはペットのような存在になっていたのであった。
「あっ、あーっ、やっぱ、ワシ、私、最高……♡」
夜遅く。
茜は一人、一糸まとわぬ姿で己の肉体を堪能していた。
「いやあ、まさか、老い先短いだけと思っとったけど、忍びだからこんな事しないと思っていたのに、せんと、しないと、この体、落ち着かんから、仕方ない、わよねぇ♡」
大きな体が熱を発し、肩を上下させて荒く呼吸をしている。
逞しい腕が巨大な胸を、太い棒を力強く、リズムよく刺激し続けていた。
「あっ、おっ、何度、しても、良いっ、良いっ、パオ、おっ、ぱおんっ♡」
快感に痺れ、鼻が小刻みに震え。
「え、へへ、ワシ、私、仕事に、えっちに、頑張ってて、偉い、偉い、ぱお、ぱお、ぱぉおおん♡♡♡」
鼻で頭髪の上から頭を撫でて、自己肯定感を満たす。
その間にも肉体はどんどん欲深くなり、より激しい自慰を要求していき。
「んっ、もう、ちんちん、たまらんのう、爺さん象なのに、私と一緒だから、もう、ムラムラのビンビンで、とまらんぞう、あっ、ぱおっ、先っぽ、先っぽ、やっ、あんっ♡」
頭を撫でていたはずの鼻が、今度は亀頭を撫で回す。
ぬるぬるとした先走りのせいで、鼻の先端が滑り男根が色んな方向へと傾き、思わず身をよじってしまう。
「ええのう、あーっ、いっぱい仕事もしてるから、いっぱい飯も食うし、いっぱい、あっ、一人で、良いっ、良いっ、わぁ、あっ、あーーーっ……♡♡♡」
自身で動かす鼻によってどんどんオスとして気持ちよくなり、思わず手に力が入る。
胸が変形し、今度は女性としてときめき……
それがまた、もう年老いてよぼよぼだったはずの象の生殖本能を焚きつけるのであった。
「んっ、ふっ、もう、おかしくなっちゃうパオ、えへ、うふ、こんな、いい、いい、気持ちいい、強い、体、パオ、パオ、おっ、おーっ……♡」
茜は専用の寝床のため、仲間達の寝床からは離れている。
それでも、流石に自慰の声が聞こえるのはどこか気恥ずかしい。
そう思えば思うほど、ますます心と体は燃え上がり。
「あっ、出ちゃう、あ、おっ、イク、イク、ぉおぉおおおおおん……♡」
咄嗟に鈴口に鼻を押し当て、精液を吸い取ってしまう。
頭がクラクラするほどの雄の臭いに、酸欠になったかのようなめまいが襲う。
口から息を吐き、ひと思いに鼻でそれを吸い上げ。
どろり、とした液体が口に流れ込みねっとりとした味わいが広がっていく。
「うへ、やっぱり、絞りたて、たまらん、パオ♡」
だらしなく笑う口元からは、精液がよだれと混ざってこぼれ出た。
それが胸に垂れ、揉み込まれ……
「あっ、借り身の術、最高じゃな、もう、一生、借りたままだぞう、パオ、パオ、幸せ、よぉおおん♡♡♡」
性欲の暴走機関車と化した、茜と象の融合体。
今夜の彼女も、まだお楽しみを始めたばかりなのであった。
「あっ、このままって思うと、また、もう、出るっ、ぱおぉ♡」
おしまい
この作品は、pixivや私のサイトでも投稿しています。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20823691
https://ak-s.fsc-x.com/in/blog/?p=2174