龍、ファンタジー世界の最強格の存在が今、目の前にいる女の正体だ。
ドラゴンは神話の時代に龍から枝分かれして、生まれた種族であるそうだ。
強く、長すぎる寿命を持つ龍は、繁殖による個体の増加が止まってしまっていた。
強さと知恵まで捨てて、ようやくドラゴンという種は個体数が増加する程度の繁栄を得られた。
そう語るのは、凄く邪魔そうな角と羽に尻尾で、後ろに重心が偏ってないか心配になる姿の女だった。
国家よりも寿命が長いので、いつから生きているのかわからないらしいが、ざっと千年くらいと仮定しておこう。
語り口が尊大で回りくどく感じるのは、言語のアップデートをさぼっていたのだろうか?
「光栄に思え、貴様には妾を孕ませる事が出来る資格があるかの試しを受けさせてやろう」
滅びかけているから、どうにか次世代にバトンを繋ぎたい、説明はそんな話じゃなかった?
なんで面倒ごとに巻き込む側が、胸を張っているのか。
胸を見せておけば淫魔が靡くとでも思っているのだろうか?
服の代わりに鱗で覆われているのは、水着みたいで悪くはないけど。
と言うか支配人、きちんと利用規約の説明をして、やくめでしょ。
魔女さんはまだ、自分に勝てる相手の子なら産んでもいい、そんな考えだったけど、この龍は始めから番い探しで来てるじゃないか。
娼館は婚活の為の場所じゃないでしょ。
淫魔にとっても死活問題なんだけど。
どれだけ美味しくても肉だけ食べていたら体を悪くするように、淫魔が特定の個人からだけ精気を吸っていたら双方に悪影響が出てしまうのに。
「今のところ、貴様ほど位階を積み上げ、死んでおらん淫魔は見つからん」
でもそれって、あなた個人の都合ですよね。
ようやくこの一帯が発展に向かって、明るい雰囲気になってきた所なのに。
どうして今更、避けられない理不尽が襲い掛かってくるのか……
◇ ◇ ◇
「龍の体は特別頑丈だ。今から貴様は妾の事を発情させて体に繁殖期が来たと誤認させられるか試させてもらう」
まず淫紋をと思ったが、初めて勇者ちゃんに淫紋を刻んだ時のような鈍い手応えだ。
正攻法で攻略に掛からなければ、いけないだろう。
長丁場を覚悟しておこう。
まずは淫魔の媚薬化した体液による補助で淫紋を刻める所までもって行きたい。
ふふん、と挑発的に腕を組み胸を持ち上げている所悪いが、そちらはまた後だ。
龍の体に普通に触れての行為が効果的に通るようには思えない。
口付けをすると、相手の方から積極的にこちらを捕食するように、長い舌がうねり口内にあった淫魔の唾液を飲み込んで口を離した。
あれ?……これもしかして、耐性貫通したんじゃないか?
顔が赤くなってきているし、目も鋭さがなくなってきている。
あの説明、全部いらない情報だったんじゃないか?
どうして全ての種族の上に立つ存在、なんて言ってたのが古過ぎる情報で、現在において自称でしかないと気が付けなかったのか。
でも馬鹿でかい龍が圧縮されてるのに、女の子の柔らかさと重さの不思議生物だし。
もう、なんだか気が抜けて面倒になってきた。
丁度いい、ハンドル代わりになる角があるからこれを使おう。
経口摂取が効果あったのだから、追加しておこう。
面倒な無理難題を吹っかけた分の清算と思えば安かろう。
口を開けさせて始めは先だけ、酔ったような挙動だけどするべき事はできているから、次のステップ。
中ほどまで進めたら、長い舌を活用して様々な動きを試している。
これなら十分だろう。
喉の奥まで進み追加分を飲み込ませる。
◇ ◇ ◇
耳年増な千年モノ干物処女による、即落ちドスケベ種付け懇願など聞きとうなかった。
なんで無様エロジャンルを学習してるんだよ。
もっと必要な事が他にもあったはずだろう?
後何千年くらいか分からないけど、まだ滅ばないなら自分たちで解決してくれないものか。
あるいはここまでやっても、同族は無理だったって話なのか。
娼館所属のまま子供作って、よくない噂がたったりしたら、世話になっているから申し訳ないし最悪、除籍なりの見せしめも必要だろう。
自分の命綱を切るような真似はしたくないんだが?
エロゲならこれ、はいを選んだら問答無用でスタッフロールが流れてエピローグ始まるやつだよ。
「娼館所属でなければよいのじゃな?」
「実力行使で何かする気ならこちらにも考えがあるが?」
「龍にとって百年、二百年など誤差のようなもの、外で生活できる環境が整った時にでも、呼んでくれればそれでよい」
小さな黒っぽいものを手渡される。
「ホイッスル?」
「一応、笛じゃが呼び名なんてどうでもよい、ちゃんと主が持っておればの」
特大の迷惑客を帰した後、ロビーには完全武装の常連さん達がいた。
「ご心配をおかけしました」
体の方はほとんど疲労していないけど、精神的に凄く疲れた。
空回りしていた覚悟も、恥ずかしさで攻め立ててくる。
でも、どうにか日常は守る事が出来たんだから、ぐだぐだ考えてないで休んで切り替えよう。
◇ ◇ ◇
あの即落ちドスケベ龍やりやがった。
あれから一年も経っていないのに外堀を、航空戦力にそれがなんの役に立つの?とばかりに好き放題していた。
長命種なんだから十年以上は動きが無いと思っていたのに。
東方戦線を停滞させていたアンデッドの発生する領域を龍の炎で浄化し、防衛の為の待機部隊を衛星都市建設や後方の生産の為の領域を穀倉地帯にするために回せ、はよと圧をかけた。
アンデッドだけでなくその奥の領域にいた魔族のいくつかの部族もウェルダンになっている。
それだけでは飽き足らず、常連さんたちまで焚き付けてよく生き残れたと思う。
そこまで生き急げるなら、なんで滅びかけているのか、同族を誘えず交配可能な他種にコナをかけに来ただけなのではと疑惑を感じている。
そんな力業の結果、淫魔は南方都市との交流と商通経路を維持する為に作られた衛星都市予定地に出向させられている。
衛星都市完成まで防衛をするという建前で護衛として勇者ちゃんが。
都市の結界は基礎の時点で仕込んで街全体を魔法陣とするらしくそれの監修に聖女ちゃんが。
聖女ちゃんの護衛の聖騎士さんや、周辺調査のため斥候ちゃんも来ている。
こちらへ常にはいないが、活発になった商隊にたまに錬金術師さんがついて来ていたり、魔女さんが商隊の護衛役として来たりもする。
◇ ◇ ◇
あれから何年たったのか、淫魔は結局誰とも籍を入れず、ハーレムと言うより四股みたいな形で過ごすことになった。
魔女さんは一年置きくらいにしばらく滞在して子供を作っては、世話役の揃っている自分の拠点の南方都市で過ごしている。
ドスケベ龍は、自分の子供が可愛すぎて離れなくなった。
それだと結局、種族の滅びは回避されないと思うがいいのか?
子供を見せびらかしていれば、他の龍の気が変わったりするのかな。
当たり前の事で、悲しく思うのも悪いと感じているが、娘には好かれず距離を置かれたままだ。
それでも、今日この日には皆が揃ってくれた。
かつて勇者と呼ばれていた少女の命が、尽きようとしていた。
大きな怪我や病気もなくここまで来たので、これは老衰だと思う。
小さくなってしまった手を取って、痛みや苦しさに煩わされないよう、こちらに引き取る。
耐性やHP,MPそしてスタミナ辺りは無駄に多いから攻撃以外どうにでもなる。
「私はこんなお婆ちゃんになってしまったのに」
淫魔の姿は加齢で変化したりはしなかった。
「君は綺麗で可愛い人のまま、年を重ねてくれた」
「渡せるものが、もうないの」
「貰い過ぎたくらいだ、これ以上は何も持ちきれないだろう」
「そう、よかった」
ああ、これが僕の終わりか。
淫魔の寿命について理解することになった。
これでは不明としか記せない。
愛した相手、複数いるならば最愛の相手の命の終わり。
それが淫魔の寿命になるようだ。
愛に生きて、愛に死ぬ。
本人からしても頭が悪い生態だと思っていたのに、随分ロマンチストじゃないか。
愛した相手の喪失に耐えられない、クソ雑魚メンタルの可能性もあるけど、最期くらい淫魔というものにも夢を見てもいいだろう。
声を出すのも億劫で目蓋も重くなってきた。
それでも彼女の手を取った腕だけは、どうかこのままで。
物語なら、ハッピーエンドが好きだった。
現実ではどう足掻いても手に入らないから。
ここでは、今回こそはそのための努力は出来た。
結果がついて来たかは分からないけど。
いつ死んでもおかしく無い、この世界で色々な人に恵まれここまで来れた。
もう満足しただろう、だからどうか転生なんて形でなく彼女達と同じ場所にいけますように。
悪くない。
いいや、随分といい夢をみさせてもらったな。
これにて完結です。
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プロットもなしに、見切り発車で頭の中から出力していたので、ちゃんと意図を伝えられていなかったり、そもそも情報が足りていなかったり、拙い文章でしたが少しでも、楽しんで貰えたなら幸いです。
書きたい所だけを書く無精者と、人物書き分けの為でも特徴的過ぎる口調嫌いの合体によって基本一対一の話だけになってしまいました。
ネタが思いつく様なら、番外編で衛星都市の生活を書くかもしれません。