衛星都市への出向だが、これは建前である。
何せ箱物が無いし、他の人員も来ていないのだから淫魔でも分かる。
娼館は居心地がよかったし、仕事といった形で人に関わるから淫魔が死ぬ危険性を大きく下げてくれていた。
だからそのまま過ごし続けたかったのだけど、支配人に「いい加減腹を括って、責任を取ってきな‼」そう言われて送り出された。
淫魔の首元にかつてのチョーカーは無い。
その代わりのチョーカーには、勇者ちゃん達の紋章が入っていた。
世話になった人の言う事だし、常連さん達の人柄は信じれると思うのだが、仕事ではなく人と関わる事にはまだ不安がある。
それが、淫魔という種族に由来するものなのか、個人の性質かは分からないのだけど。
衛星都市にも、ようやく淫魔が腰を据える家が出来た。
宿舎暮らしもそこまで不便はなかったが、護衛の兵士さん達が厳戒態勢で必死すぎた。
確かに淫魔は気がついたら、いつの間にか死んでいる種族だが。
なんの配慮か、女性兵との二人組で動いている事が多かったが、双方がいらん事をしないように監視しあっていたのだろうか?
男の兵士からは美人を何人も独占しやがって、そういった思いからの暴走を。
女の兵士は単純に、淫魔の持つ空気に当てられない様にしていたのだろうか?
もしくは、単純に元東方戦線が龍の営巣で必要な戦力が減った為に、入籍して開発中の穀倉地帯に入植する人員が欲しいのか。
◇ ◇ ◇
新しい家は一軒家。
二世帯くらいは住める広さで、庭と家庭菜園付き。
これが勇者ちゃん希望で建てられた家になる。
聖女ちゃん達は、まとまって住むのに邸宅と呼べるようなお屋敷を隣に建てた。
なお敷地の大きさは、どちらも一緒である。
しかも家を囲む塀に扉があるので、敷地から出ずに行き来可能になっている。
これらの家、あるいは各人の部屋を渡り歩く生活をしている。
力持つ者が多くを囲うのはよくある事だが、囲われている側に力ある者が複数寄り添ってくれているのは、どうなんだろう?
淫魔ばかりが貰い過ぎて、関係が釣り合っていない様に感じるのだが。
それなのに順番は女性陣で調節したものを家に予定表として、置いてくれているので助かっている。
だが、内容はチャレンジャーがいるので、偶にとんでもないモノがあったりする。
今回もそれだけは止めようと言ったのだが、一度だけ試したいと頼み込まれてしまった。
淫魔の鬼門、複数プレイである。
巻き込まれたのは、聖騎士さん。
この人は会った時と比べて、かなり落ち着いたと思う。
街の外で生活するなんて、相当な実力者が短期間の野営をする以外は、魔族のひも付き以外ありえない。
開拓地の農村など、兵役経験者の自警団がいても危険と隣り合わせだというのに。
賊は後方撹乱の為、魔族に使われていたと思われていたが、実際にはただの嫌がらせであった。
護衛の乏しい個人の行商人ぐらいしか襲えないのでは、賊を維持するコストの方が高い。
僅かでも被害を出し、討伐される事。
人同士でぶつかり、相手の士気を下げる様な事を口走りながら討たれる。
それが吸血鬼達にとって賊の使い道だった。
それは確かに他の人よりも強く、聖騎士さんを蝕んでいた。
だが賊が増える事が無くなり、停滞から発展へこの地方を取り巻く情勢が変化したのが、良い方向に作用した。
だからって、同僚の奇行に付き合う事はしなくてもいいと思うのに……
◇ ◇ ◇
聖騎士さんをメインに斥候ちゃんがサブ、場所は聖騎士さんの部屋で今日はそんな形でするらしい。
今回は着衣リベンジもしようと思う。
二人ともエルフ系なので、スラリとしていて様々な格好が似合う。
聖騎士さんはひらひらした踊り子の衣装に犬耳と尻尾。
警察犬や軍用犬の様な凛々しさの耳のピンと立ったイメージである。
鍛え絞られているのに、しっとりとした柔らかさが魅惑的だ。
斥候ちゃんは、チアのコスに猫耳と尻尾。
楽しそうな笑顔に活発そうな雰囲気は、このコスだろう。
好奇心が強すぎるのは、すごく猫っぽいと思う。
分身して二人を一度に相手できるならそれがいいのだろうけど、意識を向ける相手が複数になると上手く分身を扱えなくなるので、単独で相手する必要がある。
今はまだ大丈夫、斥候ちゃんの事も見えている。
目が合うと、笑顔で手を振ってくれた。
聖騎士さんは体幹がいいから、不安定な体勢でベッドの上であっても問題なくスムーズに動けている。
下からの特等席で聖騎士さんの踊る姿を、眺めさせて貰っている。
腰を前後にあるいは回して刺激を加えてくる。
普通なら許されない、踊り子さんへ触れる事もここでは許される。
スラリと美しい脚に、触れると分かる腹筋の形。
胸を包む煌びやかな衣装、それに薄いベールが妖しい魅力を加える。
肝心な部分は隠れていて水着程度の布面積の衣装を纏い、普段は積極的に動くタイプでない聖騎士さんが顔を赤くしながらも奉仕してくれる。
恥ずかしそうにしているけれど、尻尾は嬉しそうに揺れている。
衣装の良さを活かす為に彼女が上にいるが、動きを全て相手に委ねるだけでは勿体なく、誘い込まれる様に求めてしまった。
我が事ながら視野が狭いというか、理性が弱いというか。
これは種族的な特性に精神が引っ張られているのだろうか?
本日の趣旨がすぐに頭から抜けてしまっていた。
◇ ◇ ◇
ポロポロと涙を流している斥候ちゃんを見て、これが思い付きからの奇行ではなかったのだろうと気が付く。
大切に思ってくれているからこそ、声すら届かない事に涙を流してくれたのだろう。
愛憎が反転して、淫魔に危害を加えたりしない事を実演して見せてくれた。
いつだって彼女は視野が広く、得た情報から上手く答えを導いていた。
淫魔が何を不安に思っているのかも、仕事では無い新しい関係に戸惑っている事も分かっていたから、身を持って信じられると示してくれたのだろう。
斥候ちゃんを抱きしめ、キスをする。
ペタンと倒れてしまっていた耳が少し回復してくれた。
尻尾はまだ、だらりと下がっているから気分は落ち込み気味だろうか?
聖騎士さんを見ると、ベッドの上に伏せているけど、ぎこちなく慣れていないウィンクしてくれた。
頷き返して斥候ちゃんを抱き上げて、彼女の部屋へと向かう。
「腹を括れ」そう言ってこちらに淫魔を送った支配人にも、対人関係への及び腰を見透かされていたと思うと、かなり恥ずかしい。
甘やかしているつもりが気が付けば逆に、皆に甘やかされて見守られていたって事なのだから。
でも、ここまで想われて嬉しく思わないはずがない。
予定を立ててくれている皆には、後で謝ろう。
淫魔は今が、覚悟を決めて向き合うべき時だと思うのだ。
◇ ◇ ◇
「斥候ちゃんとの間に子供が欲しいと思ったんだ」
これまでと違い、少し緊張した様子で声をかけられた。
お客さんと男娼では無い、新しい関係に踏み出してくれたのが、とても嬉しい。
勝手に尻尾がピーンと立って、感情が外に出てしまってる。
相変わらず、こんな時にしか使えない魔法の性能は飛び抜けている。
「待たせてくれた分、ボク達の事しっかり見て、大切にしてよね」
返答は優しい口付けだった。
大切にしたい、そんな想いが伝わってくる様な、ゆっくり時間をかけたものだった。
正面から抱きしめる様に体を密着させて、彼の上に腰を下ろされた。
唇が首筋にキスを落とし、抱きしめる形で回された腕が胸や脇腹を撫でていく。
灼ける様に熱く胎を刺激するそれは、まだ激しい動きなどなくともじんわりと快感を広げていく。
淫魔の体液が媚薬として作用しているだけでなく、ボクの体が彼に触れられると快楽を感じる様に変わってきているのだろう。
「ありがとう。それと、待たせてしまってごめん」
かしこまった言葉使いでなく、砕けた言葉を使ってくれているのは進歩と言っていいものだろう。
無理難題を吹っかけた時には少し考える程度だったのに、今は悩んでるのがボクからでも分かる。
お客さんの望むモノを形にするのではなく、自分の想いと相手の反応から何をするべきか、したいのかが混ざっている。
ボクを想って悩む姿も新鮮で悪くないけど、これからの事は一緒に考えて答えを出していければいいと思う。
「考えたり、悩んだりを一人で抱え込んでもいい事はないよ?」
これからの関係が皆にとって、良いものになります様にそんな想いを込めて、こちらから口付けを彼に返した。
……確かに彼の言った通り進んでしたいと思わないくらいきつかったから、やめておこうと言われたモノはしないでおこうと思う。
だから、今日くらいは素直に甘えておこう。
ギュっと抱きついて体温と、興奮だけではなく速くなっている彼の鼓動を感じる。
二人でイチャイチャとお互いを愛撫し合い上り詰めて、胎に広がる快楽と熱は、これからの生活を大きく変えるものになるだろうけど、喜びと幸福も運んで来てくれるはずだ。
今回の更新はゆっくりで