同盟都市から使節が来るらしい。
同盟といっても、魔族と戦ってんだから後ろから殴るなよ?
くらいの関係で民間の方が交流が活発だったようだ。
食料生産のため少しでも安全な後方が必要で、それぞれの都市が魔族を押さえている戦線の反対側で食料を作っていたが、状況が変わったので交流が行われる事になった。
勇者ちゃんが東方戦線を瓦解させた余波の一つだろう。
娼館の中の歓談スペースを兼ねたバーで、南方戦線の大英雄の詩を吟遊詩人が謳っていた。
ちなみに勇者ちゃんの詩もある。
事実が意味のわからない戦果だったので、襲撃してきた主戦力を返り討ちにした部分が端折られ、共も連れぬ神速の行軍による連戦で各個撃破した内容になっている。
今謳われているのはこの都市から南、大体南西にあって蛮族を押さえている南方戦線の話だった。
この蛮族たち魔族の一種となっているけど、普通に他の魔族も襲う。
そもそも種族や血統などに縛られず、名誉ある戦いのために生きて強いやつが偉い。
そんな価値観の持ち主が集まっているのに滅んでない連中なのだ。
決闘や一騎打ちなんかは、強者と戦えるからとやり方も含め浸透しているらしい。
南の大英雄、大柄な魔女であるらしいとはわかったが、戦闘スタイルが理解できない。
範囲攻撃が得意な基本的な後衛魔法使いではなく、最前線に出て戦っているそうだ。
ダンシングソード。
これは剣や盾を魔法で操って流れ矢や、不意を突いた攻撃にさらされた後衛が前衛が来るまで身を守る時間稼ぎに使っていたものになる。
それをどうしてか、前衛として戦うために使っているらしい。
決闘だと相手より手数が多いし、普通の魔法を混ぜれば相手が対応できるようになる前に初見殺しが効く。
踏み込みに合わせて地面を鋭く隆起させられ足を貫かれたりしたら、動けなくなるよね。
風の刃なども混ぜられたら、生き残れる者はいなさそうだ。
乱戦でも強いのは本人の資質だろう。
狙いはわからなくないけど、普通に鍛えたらダメだったのかな。
前衛の戦闘センスに恵まれたが、剣などの才能がない。
そんな魔法特化型だった人が自身の強みを鍛え上げたら、あるいはこんなことになるのかな。
そんなことをやって生存し続けてるのは、信じがたい難易度だと思う。
彼女がいるなら、南方戦線が破られることはない。
個人でそこまで評価されるからこそ、大英雄らしい。
なお個人で戦線を瓦解させる戦果を叩き出しているのは、勇者と呼ばれる者でも規格外扱いになる。
◇ ◇ ◇
新しい同盟が締結されたらしい。
ここと南方そして後いくつかの都市を結ぶ線の内側を、一大穀倉地帯として開発するための協定らしい。
淫魔には特に関係してこないけど、将来に展望が持てる状態だと治安がマシになりそうでいいんじゃないかな。
今日も普通に仕事だしね。
同性の同僚は中三日とかもう少し開けて仕事して、他の日は娼館内のバーとか裏方仕事に回ってるけど、淫魔は裏に回してもどうにもならないしな。
分かりやすく、これぞ魔女そんな格好のお客さんが淫魔のところに来た。
大柄で精悍な顔つきで、アマゾネスとか似合いそう。
南の大英雄がなんで戦線外れて、ここまで来ているんだろう?
使節の護衛ついでに、都市間の領域の敵を掃討しながら来たらしい。
◇ ◇ ◇
「最近は簡単に勝つ戦いばかり、強大な相手に立ち向かい戦いたいのだ」
この魔女さん、蛮族の思考に染まっているじゃん。
なんで淫魔を相手に、エロい事で戦おうとしてしまうかな。
無謀を通り越して不可能だと、断言できるんだけど。
「それもまたよし、そろそろ敗北も知りたい」
不可能は煽りじゃないんだけどなぁ。
魔女らしいとんがり帽子をラックにかけ、そこから出てくるのは、ウェーブのがかった、くすんだ感じ色の金髪。
なんだか、収穫前の麦を思わせる色合いで綺麗だ。
躊躇いなく、がばっとローブを脱ぎ捨てる。
デカい。
その一言に尽きる。
長身で比率から小さく見えるはずなのに、だらしなく見えないギリギリのサイズがあり、引き締まった素晴らしい乳と尻だ。
そして魔法使いなのに腹筋割れてるんだけど、この魔女さん。
「戦いの大半は移動が占める。魔法使いこそ体を鍛えるべきだ」
曰く、疲れた状態で不意の遭遇戦になった時に、集中力が足りず誤射をやらかすようなら、いない方がマシ。
集中力を補うために、詠唱するにしても息が上がっていては、どこまで効果があるか疑わしい。
馬車などで移動出来る場所の方が少ないのに、文字通り味方に背負われる荷物になるつもりでいるのかなど。
言ってることは正しいけど、魔法を戦闘で使う前提でしか話さないんだな。
これだけ綺麗で強ければ、地元で結婚話とかでなかったのかな?
都市として絶対手放せない人材なのに。
「求婚してきた奴はいた」
過去形なんだ。
「戦場でふざけた事をぬかすから首を落としてやった」
蛮族側から求婚されたの⁉
しかもそれを、お前なんか死力を尽くして戦うまでもない。
生け捕りにしてやろうって解釈して、一騎打ちで相手を討ち取ってるのか。
蛮族より戦いに名誉を求めてるのかな。
「時間稼ぎはもういいか?」
会話が搦め手のための時間稼ぎとしか認識されないのは、初めての経験かもしれない。
◇ ◇ ◇
相手の方が大柄って状態は、ショタと化している時以外ではあまりなかった気がする。
大体相手の好みに合わせているし、そうすると相手が腕の中に納まるくらいになる。
上から覆いかぶさってくるように、自分の使える空間を多く取ろうとしているのは本当に魔女さん戦いのつもりでやるんだな。
両手を掴まれてベッドへと押さえられる。
素材がいいから軋まなかったけど、そこそこ力が入ってた。
指がかみ合った形だけど、恋人繋ぎなんてものじゃなく力比べ感がすごい。
「これでもまだ、自分が勝利することができると言えるのか?」
言えてしまうのが閨での淫魔なんだけど、わかってないのかな。
「まいったと言うまで、搾ってやろう」
なんでこんなに脳筋なんだろう。
魔法使いにもいくつか種類があるらしいけど、どうしてこうなったのか。
自信満々だった魔女さんは、息も絶え絶えになって手を押さえる事も出来ず、淫魔の上で快感の余波で跳ねている。
だから言ったのに。
淫紋の保護無しで、淫魔の体液を吸収したらこうなる。
戦いってことで、媚薬化した体液なんかの濃度を調節したりしなかったから、当然の結果かな。
スピリタスを瓶から呷って、酔わないから大丈夫って言って動き回っていたような暴挙だから、下手したら死ぬからね。
途中から魔女さんが意識が飛ばさないよう調節を頑張った淫魔は褒められていいと思う。
淫魔の種族特性として備わっている魔眼の催眠や言霊の暗示なんかを使わないでいて、この結果。
ベッドの上ならば、ほぼ無敵。
愛した相手からその想い故の攻撃でなければ、耐久力もそこそこあってタフなのだ。
耐久力だけだから追撃入れて討伐するのは難しくないけど。
種族によっては、繁殖期に何日かヤリっぱなしのもいるが、淫魔がエロい事で最強の種族なのは、それらを上回る事ができる故でもある。
◇ ◇ ◇
意識のはっきりしてきた魔女さんは、淫魔の足に口付けを落とそうとしていた。
隷属の証だそうだけど、極端すぎるこの蛮族思考系前衛魔女。
なんで、負けたら相手に全てを委ねるなんて判断をノータイムで決断するかな。
「なら、貴方との子供が欲しい」
ならでぶち込んでくる話題じゃないよ、それは。
ここは娼館で、仕事でやっている以上無理な話だ。
妊娠しないかとか病気を移されないかなどを心配せず、楽しく遊べる場所なんだから。
そもそも南方戦線からいきなり魔女さん抜けたら、今回の同盟で決まった協定はどうなるのさ。
「戦線を維持する為の見通しが立ち、個人としての頼みならば問題ないのだな」
死なないの随分手前の意識を飛ばさないくらいの加減だったけど、もう少し配慮するべきだったのかな。
できるならやっていい、それが許されるだけの力がある、そんな考えなのか。
するべき事、出来る事とやっていい事、やりたい事は違うんだけど、蛮族思考の弊害がこんなところに。
淫魔に出来る事は限られている。
さっきは防御しながらスリップダメージで削り切ったが、今からは全面攻勢に出て快楽で塗り潰して有耶無耶にしよう。
複数の国家に影響の出る決断なんて淫魔に任せるものじゃないぞ。
全力を出して死なせてしまわないように、淫紋による肉体の保護を刻む。
「さあ、こちらを向いて」
良からぬ事を考えつかせないうちに、どうにかしよう。
◇ ◇ ◇
貪るようにではなく、相手を意識させ引き込む。
口付けをしているだけなのに、相手の伝えようとする意図が分かる。
一緒に楽しんでみよう?
誘われるまま舌を絡め、お互いを抱きしめる。
鍛えられ固くなったこの体など、触って楽しいものでないだろうに、努力を続けていなければ維持できない綺麗な体だと、口付けを様々な場所に落とされる。
視線の動きや体の重心の変化、戦いの中相手の動きを読み解き、相手の意図を挫いてきたそれが、今はこの人の動きに合わせる為に使われている。
自分で好き勝手に動いていた時には無かった、予想外の場所や不意の刺激。
お互いを抱きしめ座っている体勢だけど痛くはないだろうか。
わたしの方が大きいし重いだろう。
抱きしめる腕に力が入ってしまった時、胸に顔が埋もれて息は苦しくないだろうか。
「これは動きにくいから、お互いが相手を想って無いと難しいよね」
あれだけ一人で一方的にしてしまったのに、なんでこちらを気遣ってくれるのか。
勝者として好きに出来る力があるはずなのに。
瞳を覗き込まれ、余計なことを考えるんじゃなく、僕を見るべきだと思うけどね。
そう言われ押し倒される。
力で負けているわけでも回避ができない速さでもないのに、抵抗できなかった。
あるいは、したくなかったのか。
◇ ◇ ◇
愛される。
それがこんなにもわたしを満たしてくれるなんて思っていなかった。
これまでは戦いこそがその中で得られる充足感、高揚感が生きる意味であったのに。
下腹部を撫でる。
残念ながら子を得ることはできなかったが、また機会を作ればいいだけの事。
使節と共につく帰路で、騎士や兵士たちを一端の戦力へと鍛え上げるための算段をつけ始めた。