彼、彼等=精子
女王=卵子
辿る。辿る。貴方も私も、何時かは体験したかもしれない。覚えているだろうか、貴方も私も、かつてはこの戦いに挑み、勝ち残ったからこそ産まれてきたのだ。
何億もの産まれ得なかった者とは違う選ばれた者。
そんな何処か遺伝子にしか残っていないような微かな記憶を辿る。産まれて成長した時間から遡り、母親のお腹に居た頃、更にはそれすらも遡って|貴方
「走れー!走れー!」
「俺が一番になるんだ!お前等とは違うからな!」
「良いや俺だね!産まれる前から分かるさ!俺はハンサムだからね!」
ぎゃーぎゃー、わーわー、と此処に集まるは五億の君になろうとした者達。性格は誰もが少々荒っぽいように見えるけど、其処は仕方ない。だって文字通りの生存競争をしているんだから。
負ければ外には産まれない。勝てば外に向けて、これからこの中で少しづつ少しづつ成長出来る。進めれば先があり、止まったら其処で終わりのシビアなレース。それが今行われている事だ。
「クソッ!散々走ったのに女王はまだか!?」
「ハハッ、疲れたんなら其処で休んできな。まあ、その間に俺が女王と結ばれるがね!」
「何だとテメェ!?」
此処にある彼等の気持ちは変わらない。女王という自分達とは対になる存在が欲しい。ただそれだけの思いが共有されている。しかし数多居る彼等とは違い、目指し、欲している女王はただ1人。今回産まれ落ちる事が許されたのはただ1人の彼等なのだ。
だから例え、同じ所から産まれて此処まで一緒に走って来た仲間のような存在でも、本質はライバルで敵だ。
たった1つの極楽を手に入れる為の彼等の戦い。それはもう直ぐ終わりを告げる。
「居たぞー!!女王だー!!」
誰かが叫んだ。赤色の長い長い洞窟のような中をずーっとずーっと走って、何処を探しても女王は見つからない。苛立ちと焦りが募る彼等に、その言葉は大きく響き渡った。
「本当だ!女王だ、間違いない!」
「なら俺のモノだ!お前等どけっ!」
「そんな事より、さっさと走った方が良いんじゃないか?」
今まで定期的に聞こえた怒号とは違い、これは過去最大級のものだった。それも無理は無い。念願のソレが、確かに目の前に見えたのならば、此処に来た目的故、彼等が浮足立ち冷静さを保てないのも当然。
「どけっ!どけっ!」
「走れ!走れ!」
「捕まえろ!捕まえろ!」
走り、邪魔な敵を跳ね飛ばし、その先に見える女王を誰もが捕らえようとする。長い旅路の終わりはもう近い。
固まって、団子状の様に走る彼等の中で一際早く走る者が居る。一番乗り。このままではその先頭を走る彼に抜け駆けされてしまうと後ろの彼等も焦って走るが、彼との距離は縮まらなかった。そうして…
「やった!一番乗りだ!」
「そ、そんな…嘘だろ…」
「うわー!俺も産まれたかったのにー!」
「ま、負けたー!」
一番最初に女王に触れた彼は喜びます。これで彼は何かになれる。これから母の中で育ち、何時かは命として産まれ落ちるのです。
しかしそれ以外の者にはそれは絶望の光景です。負けた。産まれられない。その現実を理解させられ、最早嘆くか騒ぐ事しか出来ないのだから。
「おめでとうございます。選ばれたお方」
「女王よ!私は、私は産まれる事が出来るのですね!?」
「ええ、ええ。その通りです」
「やったー!!」
「ありゃりゃ…2人だけの世界になっちまってよ」
「女王の相手はあいつに決まったんだ。仕方ないだろ」
「くそー!元は同じ俺だったのに悔しいぜ!」
強く、喜びを表すように彼は女王に抱き着いた。女王もそれを受け入れ、慈愛の表情で彼を抱き締める。会ったのはこれが初めて、だが2人は出会った瞬間にお互いの事がもう好きになってしまったのだ。
2人の間には少し独特な雰囲気が出来た。それが何か、何となく分かった彼等達はがっくりと肩を落としながら、やる事も無いので2人の動向を見ているのだ。
「女王よ…」
「ええ…選ばれた貴方…」
2人は最早、お互いの事しか見えていない様子。強く愛し合うような抱擁を終えると、自然に口と口を合わせる。
これから行われるのは、最初で最期の交わり。女王と彼が交ざり合う事で産まれる、命の最終儀式だ。
「こ、これが…女王の胸…」
「そうです。直ぐに交わりを行う前に、何度か手順を踏まなければいけません」
「それで…女王の体に触れる必要があると。それも沢山…」
「はい。なのでご自由に、思うままに触れて下さい」
「かーっ、良いなぁ…俺も触りてぇな…」
「見てるだけってのも辛いもんだね」
「本当だったら、俺がアイツの場所に……はぁ…」
産まれる為に、これから交わろうとする2人をかつてのライバル達は見ていた。だがやる事が無いとは言え、これはあんまりにあんまりだろう。中には逆に見てやるもんかと臍を曲げる奴まで現れる始末。まあそれでも、女王との交わりが気になるのが多数なのか、大体はガッツリと見ていたが。
「あ、ああ…そうです…お上手ですよ。選ばれた貴方…」
「ああ!こんなにも、柔らかいものは初めてだ!それに…何だか…女王の胸を触っていると…変な感じがしてくるんだ」
「それが交わりに必要なものなのです。だから拒まず受け入れてください。そう、素直になって…」
「うっ…ううっ!」
「ああっ…!そう…もっと強く吸ってください…!はぁ…素敵…素敵です…貴方の口と舌が…私の胸に…」
立っている女王から主張する胸に、彼は自分の中から溢れていく衝動に任せ、勢いよく齧り付いた。何れ母の乳を吸う時のように懸命に吸い付き、それでいて猛りに流され、吸うだけではない動き方。舌を動かし、舐め回すように突起を刺激した。
懸命で荒々しい責め。好いた彼からの行動に、女王は身を仰け反らせながら恍惚とした表情を浮かべた。少しづつ、彼の行いによって体が交わりの準備を始めていくのが分かる。
女王の本能から、それはこの行いよりももっと素晴らしく気持ちの良いものだと知っている彼女は、期待と喜びを抱くのだ。
「…………ゴクリ」
「あー!!良いな!良いな!良いなーーー!!!」
「俺も女王とやりてーよー!!ちきしょう!」
「へぇー、勝ってたら女王とあんな事出来てたんだ」
それを見ている側は溜まったものではなく。何億もの彼等が騒ぐ様はそれはもう五月蝿い。だけど当の2人にはどうでもいい事なのか、チラリともこっちを見やがらない。これじゃ本当に負け犬じゃないか。言葉は知らずとも、其処に居た彼等が思った事はそれがピタリと当て嵌まるだろう。
「ああ、気持ちいい、気持ちいいです、貴方!」
「女王、女王よ!」
胸吸いを満足するまで終えた彼は再び女王と抱き合います。口吸いをしながら、しかし今度はその手の先を女王のお尻へと伸ばし、その柔らかく弾力のある感触を堪能しました。
女王の体がどんどん準備を整えていくなか、既に彼の生殖物は準備を終えて、既に何度も何度も女王と抱き合う際にその主張を激しくしています。
女王はその可愛らしくも愛おしい彼の主張を身に受け、喜びの声を上げながら、彼の主張を受け止めます。
彼もこの生殖物を女王に押し付ける度に、心の奥が、体の奥が少し満たされるような気がして、必死になって押し付けるのを止めません。
「ああ、ああ〜〜〜〜っ!!?」
「!?じょ、女王よ!大丈夫ですか!?」
「はぁ…はぁ…え、ええ大丈夫です……ま、まさかこれ程とは思いませんでした…こんなにも……」
「女王…?」
激しく情熱的な求めに女王の体は限界を迎えた。彼に抱き締められながら体を激しく痙攣させ、ビクンビクンと体を跳ねさせる。体も大きく仰け反らせて、口の端からは銀色の液体が溢れる。
すわ何事かと彼が焦り女王を気遣ったのも無理はない程に女王はイキ果てた。
とろとろと女王の股からは透明な液体が垂れ落ち、それが彼の太ももへと当たる。ぴちゃりぴちゃりと音を立てるそれは、女王の体が準備を終えた確かな証拠である。
「…選ばれた貴方。私の準備は整いました…だから、もう我慢せずに私を求めて良いのですよ…」
「い、良いんですか?」
「はい。今、開きますね…」
「お、おお…!」
「何だ何だ!?女王が横になったぞ!?」
「とうとう始まるのか!?」
「こ、これ以上何するってんだ…?」
彼の目の前で横たわり、大きく足を開いた女王。そうすればもう女王のそこは丸見えだ。最初に目にしたのは勿論彼。次に見える位置にいた彼等。何方もゴクリと唾を飲み込んで、それ以外は目に入らないという位にしっかりと見つめ続けている。
彼の生殖物を迎えるそこは、もう待ち切れないと言わんばかりにヒクヒクと動きを止めない。
辛抱堪らん。頭の中の限界が容易くその光景を見た事で振り切る。
「女王!!」
「ああっ!!き、来ました、選ばれた貴方のモノが、私の中に…」
覆い被さって、硬くなった生殖物を女王の中へと挿れた彼。上から抱き着き、自身のモノを挿れた瞬間に体中に幸福感、満たされた感情、気持ち良さ、数多の感覚が絶え間なく訪れ続けた。
それは女王も同じ。頭で知っているだけのものとは違う確かな感覚。目の先に見えた彼の顔を見ながら、強く抱き締めながらの受け入れは幸福の一言。まだ彼を迎えただけなのに、こんなにも幸福で良いのだろうか。
「は、はっ、女王、女王!うっ!」
「貴方、貴方!選ばれた私だけの貴方!あ〜〜〜っ!!?」
女王に受け入れられた幸福、気持ち良さ。それを知ったばかりの彼がこみ上げる感覚に耐えられる訳もなく、初めての放出は直ぐだった。しかし復活も早い。少し間を置くと彼のモノは女王の中で硬さを取り戻し、彼もまた先程の感覚をまた味わいたいと腰を突き動かす。
女王は堪らない。一度果てた時に感じた快楽も相当なものだったのに、それがまた続き、そして直ぐに味わされる事になるのだから。逃さないように彼は女王を強く抱擁しながら、腰を振るのを続けては放出をする。
女王は終わりのない快楽と、彼への愛情を感じ続けるのだ。
「す、すげぇ…あれが多分…」
「…………」
「お、おい…何イジってんだよ…」
「言うなよ…負けた俺達にはこれしか無いのさ…」
「…それもそうだな」
それを見続けるのは残された彼等達。2人の行為に圧倒される者。それを見ながらある行為を続ける者。取っている行動は様々だったが、誰もが2人の行為から目を逸らす事は出来なかった。
「女王、また出します!」
「はい、はい、来てください、出してください、貴方!」
「うおおお!!」
「ああああああ!!!!」
まるで獣のように、互いを求める声を出し交わりは続く。女王も足を彼に絡ませ、逃さないように拘束。2人の間には距離が無いのではないか、そう思わせる程に彼と女王の接触度合いは高い。
「もうすぐ、もうすぐ産まれます!私と、貴方の命…!ああ、ああ、愛しています貴方〜〜〜っ!!!」
「私も、私も女王、貴方を愛していますっ…!!」
愛の言葉を吐きながら、叫びながら口吸いをしては腰を振る事を続けた。その時間は女王と彼が結ばれてから短くはあったが、それでも濃密だったのは間違いない。
「ふぅ…ふぅ…私と…貴方はこれからずっと1つです…どうか末永く……」
「女王…私は永遠に貴方と……」
「お、おいおい!?どういう事だ!?」
「あ、あいつと女王が1つになっていく…」
「これが新しく産まれる命の始まりなのか…?」
溶け、混ざり行くは2人の命。混ざって混ざってやがては1つになる。大きく大きく丸いそれは、形を成していくとやがて何処かへと消えて行く。
「あ!どっか行ったぞ!?」
「追いかけるか!?」
「いや、辞めておこう。もう走るのは疲れたんだ」
「……そうだな。疲れたな」
目的は無く、何かをするには力を使い果たした気がする。ならば同じ負け犬同士。最後は少し話そうじゃないか。例え負けてもそれくらいは許させる筈だ。
「にしても凄かったな2人のアレ」
「ほんとほんと、出来れば俺がやりたかったけどな」
「はは!無理だな。仮にあいつじゃなかったら次は俺だからな!」
「何だとテメェ!」
「やるか!?」
『ハハハハハハハハ!!!』
彼等に残された時間は少ない。しかし自分と似たような奴等が居る。それだけで、何だか満足だったんだ。終わりの時まで、彼等の笑い声は響き続けた。
母の中で命は成長する。丸かった形は変わり続け、今では小さな赤ん坊の姿に。そんな赤ん坊の遺伝子の遺伝子の中に、彼と女王は存在し続けるのだ。ずっと、ずっと。
何か産まれる前だし、直球の言葉を使うのも違うかなと濁した言葉に。ギャラリーが居るのは初めて書いたから少し勝手が違って不思議な感じ。
ではまた。此処まで読んでくれてありがとうございます。