ヒキガエルの沼 作:スロット767
「……んっ……うぅ…………」
「…………」
ただ歩いているだけなのに、妙に色気を纏った吐息を漏らす姉を、白雪姫は心配と困惑が混ざった瞳で見つめる。
ここ何週間か、親指姫の様子は常にどこかおかしかった。目の下にはクマと泣き腫らした跡があり、仕事中でも度々席を外し、ぼうっとしている事が増えた。一つ一つは一日の多くを共に過ごしているからこそ気づいたような、わずかな変化であり、考え過ぎという事にして放念しても良かったのだろうが……
「あの、姉様……だいじょ……」
「なんともないわ、白雪」
「は、はぃ……」
氷のように冷たい声で、白雪姫の声は遮られる。少しでも彼女を心配するような言葉をかければ、判で押したように『心配ない』『なんともない』といった答えが返ってくる。本当になんともないのかと、重ねて聞いた眠り姫が激しい叱責を受けたのが一昨日の事である為に、白雪姫もそれ以上に突っ込んで聞くことは出来なかった。
(親指姉様……)
熱っぽい息を吐きながら歩く姉の姿は、普段より更に小さく見えた。
「んっ……やるなら……あんっ……早く済ませなさいよ……!」
「そんなにセックスしてえのか、随分エロくなったな」
「はぁ!?そういう意味じゃ……!んんっ……」
臀裂を男の張り詰めた陰茎が上からなぞる度に、親指姫は喘ぎを漏らす。それは不規則に、尚且つ先走り液を臀部に塗りながら前後に動く事で、彼女の精神力を少しずつ削り取ってゆく。
(こんな所で……おっきな声……出しちゃダメなのに……!)
初めは夜中だけだった男達による陵辱も、次第に早朝や真昼間にも行われるようになった。今日は昼食後に呼び出され、教団の廊下の隅に置かれたソファの裏での行為。
「
「んっ、うるさいっ……んいっ……」
男の言う通り、廊下側からは親指姫達の姿はきっと見えない。しかし万が一の可能性を想像して強張る身体と、ソファと壁、そして男に伸し掛かられている圧迫感に安心感を覚える自身の血式リビドーが衝突事故を起こし、この状況に興奮している事に親指姫自身が気付いていない。
「お、精液垂れてきたな。アイツの言いつけ通り、午前中は膣にザーメン溜め込んだまま仕事に励んでた訳か」
「っ…………」
今朝、別の男に中出しされた感触がありありと蘇る。朝から昼まで精液を膣内で保持し続けるといったようなふざけた遊戯も、連日のように行われる。
「ひゃうっ!?」
「おーおー、押したらどんどん出てくる。どんだけ出したんだよ、アイツ……」
床と親指姫の身体の間に手をするりと入れ、下腹部を心臓マッサージの要領で強く、断続的に押し込まれる。すると粘膜と水音を立てて白濁の液体が秘所からどくどくと溢れ出し、それだけで彼女の身体は快感に小さく跳ねてしまう。
「ちょっ……やめ……」
「これだけ入れてりゃ、誰かにはバレてんじゃねえのか?昼メシの時も顔真っ赤だったし」
「……んんっ……そんな……筈……」
朝、白雪姫に声を掛けられた事が頭をよぎる。と言っても、その時の彼女の顔はまともに見ていない。眠り姫も含め、
「はは、心当たりがあるって感じだな?」
「ちがっ……んぐっ!?」
「だからうるせえって言ってんだろ。そうだ、久しぶりにケツの方使ってやるよ。お仕置きだな」
「んー、んーんーっ!」
手で口を塞がれ、もう片方の手で尻穴を解される。親指姫がどれだけ騒ごうが、その声は誰にも届く事は無く、届いて良い物でも無いのが現実。
「よし、もう良いだろ」
「あがっ!?か……は……ぉ……」
普段より粗く、短い準備の上で挿入を許した尻穴は、陰茎を根元まで咥え込む事こそ出来た。しかしその過程において、劈くような鋭い痛みが親指姫の身体に響き、今までかろうじて受け入れられていた事が不思議なほどの拒絶感を脳が訴える。
「んいっ……ぬいで……抜いてよぉ……!」
「うるせえな、大人しく……俺に犯されてりゃいいんだ……よっ!」
「ひぎっ!?」
下半身が裂ける音が聞こえ、それが声帯にまで届いたかのように、一瞬の悲鳴の後には静寂。仰け反る身体も上から押さえ込まれ、ただ痛みだけを、どこへも流すことができないままに受け止める。
「くぁ……やべっ、もう出るっ!」
「……っあ……かはっ……」
どくどくと注ぎ込まれる精液の熱が、断続的に襲い来る痛みとカクテルされ、親指姫に死すらも意識させる絶望的な感覚を生み出す。
それはもはや陵辱や強姦といった言葉で表現できるものでは無く、ただ力のある者が力無き者を蹂躙する、もっと生々しい"何か"であった。
「ぃ……んぉっ…………」
「ふぃー、出した出した。おい、掃除しとけ……よっ」
気を失った親指姫の頭をちょんとつつき、男はその場から立ち去る。ソファの裏で仰向けに倒れている彼女は、遺体のように見えた。既に心は死んだに等しいかもしれないが。
「今晩は」
「……」
とっくに消灯時間を過ぎ、日付を少し回った頃。ドアがコンコンと叩かれ、招かれざる客が三人。
「なんでこんな遅い時間に……!」
「へっ、そりゃあ……なあ?」
「……クズが……」
既に鬼気迫る表情を浮かべる親指姫に対して、男達は顔を見合わせてニヤニヤするのみ。そう気の長い方では無い彼女の感情を、彼らは的確に逆撫でし続ける。
「まあいいや、服脱げ」
「ぐっ……!」
幾度となく男達の陵辱を受けるにつれ、その始まりを告げる命令は、初めの頃の性欲を多分に含んだものから、日常生活の中に溶け込んでいてもおかしく無いような、軽く力の抜けたものへと変化していた。それは如何にこの行為が彼らにとって当たり前になったかの証明でもあり……親指姫にとっては、ある意味では最も屈辱的な変化と言ってもいい。
「ふっ、俺達が毎日のように揉んでやってんのに、一向にデカくなんねえな」
「本当に大きくなったら困るくせに」
「……死ね」
最早見せ物ですら無い、嘲笑の対象と化した己の裸体。しかし苛立つ事が奴らの更なる愉悦を誘う事が分かっている以上は、その怒りを聞こえないように押し殺すことしか今は出来ない。
「……脱いだわよ」
「おいおい、ちゃんと姿勢を正して、『脱ぎ終わりました』って言えよ。いつも言ってるだろ?」
「……脱ぎ終わり……ました……」
男達から要求された服従の証を口にし、全裸で直立不動の姿勢を取る。平らな胸の上でピンと主張する乳首が、男達の興奮を煽り立てる。
「よし、じゃあこれ付けろ」
「え……?」
ゴミを扱うかのように床へと投げ出されたのは、赤いベルトに銀の金具が付いた、動物用の首輪だった。男はそこから伸びるリードを手に笑みを浮かべ、親指姫に何をしようとしているのか否が応でも分かってしまう。
「……本っ当に、最低ね……アンタら」
少しすえたような匂いの首輪を、カチャカチャと少し手こずりながらも装着する。人間として既に扱われていないような感覚に、親指姫は心臓がキュッと締め付けられるような痛みを感じた。
「ぶつぶつ言ってた割に、結局付けるんだな」
「もう完全に調教済みって事だろ?」
「最初はあんなにイヤイヤ言ってたのにね」
「…………」
以前なら言い返していたであろう口が、全く動かない。どれだけ威勢のいいことを言おうとも、汚れた欲望をぶつけられると簡単に快楽を享受してしまう己の惨めさが枷となる。
「よし、じゃあ行くか」
「は……?行くって……どこに?」
「どこって……散歩に決まってんだろ?」
解放地区、というより地下監獄は、昼夜問わず薄暗い。しかし深夜ともなれば人影は消え去り、冷たく白い月の光が街を不気味に照らす。
その静寂と膠着を、不穏な人影がゆっくりと裂きながら歩く。
「ぅ……ぁ…………っ……」
「遅えな、もっと早く歩けよ」
「ひいんっ!?」
おもむろに膣内へと指を入れられ、高く大きな嬌声を上げてしまう。
「声がデカいんだよ、見つかったらどうすんだ?」
「あっ……ひゃう……」
「さっきも言ったが、見つかったらお前だけ置いて逃げるからな。分かってるんだよな?」
「ふぁ……い……」
まるで犬の散歩。そう言えば可愛らしいが、その実情は動物以下。親指姫はその若い女体を首輪以外には何も身につけることなくさらけ出し、蜜壺からは愛液を垂れ流しながら四つん這いで歩く。この性欲任せの陵辱散歩は、見つかる事を恐れつつも"もしも"を想像した彼女の負けだった。
(こんなの見つかっちゃったら……もう陽司として人前に出ることなんて……)
「んっ……んんっ……!」
「またイった、コイツ本当に変態だな」
今の自分が壊れる妄想。ただそれだけで、自分でもわけがわからないくらいに興奮して、達してしまう。無遠慮に向けられた変態という言葉にも、反論のしようがないほどに悦びを感じるほどに、堕ちている。
「これはもう、完全にハマっちゃったんじゃない?」
「だな、立派な露出狂の完成だ」
「うぅ……んっ……はぁ……はぁ……♡」
「おい、この辺一回りするまで終わらねえんだから、さっさと歩けよ、この雌犬」
「ひゃうんっ!?」
男の平手が親指姫の尻に炸裂し、パチンという乾いた音がこだまする。快感で緩んだ身体をキュッと引き締めるような痛みに、思わず身を捩らせ悶える。
「おら、聞こえねえのか?」
「ひうっ、あ、歩くっ、歩きます……んいいっ!?」
一発目の痛みが引き切らないうちに、二発目、三発目が繰り出される。それに呼応してドタドタと歩みを進める様は、もはや奴隷に等しい無様さ。
「おー速い速い、初めからそうしときゃ、叩かれずに済んだのにな?」
「ちょっと頭が弱い子なんだろうね、ちゃんと躾けないと」
「はは、もう人間扱いがもったいねえな、こいつ」
「はっ……はあっ、ふうんっ……んぐぃっ!?」
「おっと、早く歩けとは言ったが、飼い主を置いて行けとは言ってないぞ?」
男はリードを親指姫の進行方向とは正反対に手繰り寄せ、それと同時に彼女の首がキュッと締まり、後ろ向きによろける。
「ごほっ、がっ!げほっ!ぁ……」
咄嗟に両手を後ろへ伸ばし、頭や背中が土埃にまみれる事は無かったが……それまで無意識に庇うように隠していた二つの乳頭を、高々と天へ曝け出してしまう。
「なんだ?見せつけてんのかこの駄犬はよ」
「んいいっ!?」
初めの頃は痛みと苦痛だけを感じていたはずの乳首への責めは、度重なる調教の末に快感が全身を支配するほどにまで親指姫の身体は変質を遂げていた。
「全くよぉ……ん?」
「どしたの?」
「人が来た、一回隠れるぞ」
「んぎぅっ!?」
訓練でもしていたかのように統率の取れた動きで、男達はそそくさと近くの物陰に退避。それに対して親指姫はリードを強く引っ張られ、地面を擦りながらそこへ連れ込まれる。男は地面を這いずる親指姫を無理矢理立たせると、顔をぐいと捻り先程まで彼女らがいた場所を見せる。散歩だろうか、そこには一人の若い男の姿。
「あいつ、もうちょい早けりゃお前の乳首イキ見れたのに。惜しいことしたな」
「もしメルヒェンが出たらこの時間は誰も助けてくれないのに、中々命知らずだね。僕らが言えたことじゃないけど」
「はぁっ……んんっ……うっ……」
常に死と隣り合わせのジェイルでは、時間や場所を問わず単独行動は命取り。まして皆が寝静まった頃など、活動しているのは精々盗人くらいのものであるために、人とすれ違うのは大変に珍しい事であった。
「いっ……!ぁ……うぁ……」
「お?なんだまだイき足りねえのか。だったら……」
「待って、もっと面白い方法思いついた」
「面白い方法?」
「うん、陽司様を………………」
三人は小さな声で会話を始め、へなへなと地面に手を付いた親指姫にはまるで聞こえない。もっとも彼女はその身に走る悦楽を味わうのに必死で、聞き耳を立てられていないのだが。
「なるほど、そいつはいいな。おい、立てよ」
「痛っ……髪引っ張らないで……!」
「いいか?今からあの男にセックスを懇願しに行くんだ、うんと媚びた顔と声でな」
「は?あんた何言って……」
「いいだろ?お前もチンポ欲しがってんだから」
「ひぐっ!?」
無造作に秘部を弄られ、簡単に嬌声を上げた親指姫を男達がせせら笑う。
「このまま俺の手でイくか、あいつのチンポでイくか選べよ。そういや、また写真が現像できたんだっけ?」
「うん、もう教団全員に渡せるくらいはあるかな」
「な、何言って……」
「そうかそうか、まあ好きな方選べよ」
「…………ぅ」
この下劣な連中の言いなりになってしまう、己の不幸と力不足を呪った。
「……行くわよ、行きゃいいんでしょ!?」
嘲笑を背に受け、親指姫は男の後をついて行った。
「あの……」
「え?」
振り返った彼は、私を見るや否や頬を赤らめ、小さく後退りした。
当然だ、人気のない場所で声を掛けられたら、そこには全裸で首にリードを付けただけの女が立っているのだから。
「私……の」
私が言葉に詰まっている間、彼は金縛りにあったかのように口をぽかんと開けたまま動かなかった。私は絞り出すようにして、命令された通りの媚態で彼を堕としにかかった。
「私と……えっち……して下さい……」
今まで散々嬲られ、犯され、惨めな思いをした。その数々の悪夢を超えるほどの羞恥が、私の全身を駆け巡った。
「……え?ど、どういう……?」
困惑する彼をよそに、私はその男体へとにじり寄る。
「お願い……」
「いや、お願いって……」
顔と肩の動きで、彼が困惑しているのはよく分かった。しかしそれ以上に、彼の最も男らしい部分は期待と本能を抑えられていないのがはっきりと分かる。分かってしまった。
「うっ……!」
「ほら……身体の方は大丈夫って、言ってるから……」
ズボン越しに彼の股間を撫でると、思わずと言った具合に艶めかしい声が漏れ出る。それを聞いた時の妙な興奮は、自分があの忌々しい連中と同じ事を言っているのにも気づかないほどに。
「あっ、ちょっと……」
「ん、大丈夫、大丈夫だから……ちゅぱ……」
ファスナーを下ろし、外気に触れるよりも早く、私の咥内の粘膜が彼の剛直を包み込む。直前に言った『大丈夫』が、誰に向けたものだったかは分からない。
「んむっ、ふぅんっ、ちゅぱ……」
「ああっ、ちょっと……はげしっ……」
鼻に抜けて行く雄の臭いが、私の思考を狂わせる。そんな言い訳を連中に調教されたせいだと言い訳で上塗りして、一心不乱にそれをしゃぶり続ける。
「ちゅ……ずぞぞっ、んく……」
「誰か……来たら……まずいって……」
「んふぅ……らいじょう……ぶ……んん……」
彼の初心な万能に、私の中の雌の部分が刺激される音がした。ゆったりとへたり込んだ彼にのしかかる程に激しい口淫が、射精までのゴールとの距離を急激に縮めて行く。
「ダメだ……出るっ!」
「ん……」
私は口をキュッと窄め、ストローの様に陰茎を啜った。無意識にあの連中の教えを実践していた自分に腹が立つ。
「あっ……くぁ……」
「んんぅ……こくっ、こくっ……ん……」
火傷しそうな程に熱い精液が、次から次へと口内に注ぎ込まれる。むせる様な精臭に怯むことすらできない身体は、流れる様にその液体とゼリーを嚥下して行く。
「はあっ……はあっ……」
ようやく長い射精を終えた彼は、既に肩で息をしていた。私が竿に付いたものを舐りながら口を離すと、彼はあっと小さく喘いだ。
「ん……ごくん……うぁ……」
「す、凄いね君……」
それが単純な称賛だけの意味でない事は、私の身体を上から下まで一瞥したことからも明らかだった。
「ねぇ……」
それだけ言って私は、彼の陰茎をひしと握る。彼も少しきょとんとした後、意を決したように私を地面へ組み伏せる。
「……いいんだね?」
こくりと首を縦に振ったのは、もう私ではなかったのかもしれない。