開拓宇宙人のトロイ星人 地球を余すこと無く楽しむそうです 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「……誤差3センチ成功」
再び地球にテレポートで赴く
「やっぱりいきなり現れてるよ! マジで!」
地球人の前にマーキングした女が居た
「やぁこんにちは。君と会うのは2回目だよね?」
俺はこの地球人の女が前回テレポートした空き地を通る時間帯を狙いテレポートした
理由は1回目で見られているのが、親と思われる人物以外に話した様子が無いので説明がしやすいと考えたからだ
「……君のお母さんの名前は……昌子さん。真田昌子さんで、君は真田冬美さんで会ってるかな?」
「ひ、ひぃ! な、何で私の名前を知っているの!?」
「ん? 軽く調べたら出てきたよ?」
そう言う悲鳴をあげながら彼女は自宅の方向に逃げていった
「うーん、地球人とのコミュニケーションは難しいな。でも見られている以上彼女の記憶を消すにせよ接触しないといけないからな。……先回りして仕込みをするか」
小型偵察機を飛ばし、彼女の家の部屋にマーカーを設置し、テレポートで先回りする
そのまま部屋に結界装置を展開する
【欠陥型結界装置】……外部との連絡(電波等)及び声を遮断し、外からは入れるが、中からは結界装置を解除しない限り外に出ることができないという使いどころが限られる欠陥品
ちなみに結界装置は地球ではルービックキューブと呼ばれる物と同じで、6面揃えるか強い衝撃(結界の外壁に時速150キロ近くの豪速球でぶつけるくらいの威力)を与えて壊さないと解除されないほぼ使い捨ての安物である
トロイ星人にとってこの程度のパズルは5秒で解けるが、地球人は慣れてないと出る前に餓死する者も出るだろう
ガチャリと扉が開き、部屋に彼女に入ってきた
「よお」
「キャァァァァァ」
「落ち着け」
俺は首に書けていたペンダントを押す
【多機能精神ペンダント】
ペンダントから出る光を相手に当てると精神状態を操ることができる
安定、興奮、発情、恐怖の4種類の精神状態にすることができる医療品
他の星人と対話をしやすくするためのアイテムである
まぁ逃げてきた人物が自分の部屋に居たら驚くのも無理はない
「なに? い、異様に私は落ち着いてるのに、恐怖心が無理やり抑えられているような感覚は」
「ふむ、対話は可能かな?」
「あ、はい……いやいやいや、おかしいのに何で私は平常心でいれるの?」
「まぁそれも後々話そう。まずは挨拶だ。私はヒューズ・バライブ……宇宙人だ」
「真田冬美です。う、宇宙人って宇宙から来た人ってことですよね?」
「理解が早くて助かる。私はトロイ星と言う星の住民であり太陽系の惑星群の開発の権利を手に入れてこの地に進出してきた」
「な、なるほど?」
「私は数週間に渡りこの地球と言う星を観察してきたが、様々な国があり、様々な文化があることがわかった。私は別にこの星に侵略しに来たわけではない。宇宙の資源を回収し、それを売ると言うことをしているだけだ。まぁ定義的には君達人間と呼ばれる種族も原住民をどうするかは開拓者の自由に委ねられているが……私は平和的に交易して稼ぎたいと考えていてね。そこで地球人が何を欲しているかと地球人の体の作りとかを調べたいと思ってね。協力してほしい」
「……チグハグですね。平和的と言う割りには傲慢ですし、原住民とか差別的なワードもある。協力と言っているけれど一方的な命令だ。もし私が断ったらどうなりますか?」
「記憶を消させてもらう。人間のサンプルが無いのでどれくらいの記憶が消えるかわからないがな」
「……協力しか選択肢はありませんね。わかりました。協力します」
「おお! 助かる!」
宇宙人と名乗る男の機嫌を損ねてはいけない
精神を操れるような怪物だ
怖いのに怖さが一定値で留まるから凄い不思議な感覚だ
とりあえずわかることは私の今日の運勢は生まれてきてから最も悪いと言うことだろうか?
「まずは何を協力すれば良いですか?」
「まずは君達人間のデータを取らせて欲しい。基地に来てくれないか?」
「わかりました」
そう言うとピカっと彼の指輪が光り、私の部屋だったのが白を基調とした部屋に移動していた
部屋には空中に浮く椅子やベッド
三角形の頂点から映像が出ていて良くわからない文字が流れていたり、天井そのものが明るかったり……確かに地球の技術力では無理な物が沢山ある
「とりあえずそこのベッドに全裸になって横になってくれ」
「はい」
ただ彼はその場から動こうとしない
「あの、見ていられると恥ずかしいのですが」
「ん? ああ、僕と君の違いを観察しているんだ。気にしないでくれ」
気になるわ!
ただ逆らうと何をされるかわからないので学生服を脱ぎ、下着姿になる
「ふむ? 胸の発育が悪いな。それでは子供に乳をあげる時に困るだろ?」
「いや、人工乳や粉ミルクがありますが……」
「そうなのか? うちの星だと乳は人工よりも母体由来の方が様々な耐性を得れるから乳を改造することがあるくらいなのに」
喋っている間に全裸になる
「陰部に毛が生えるんだな」
「生えないんですか?」
「純トロイ星人は首から下は毛が生えん。常にピチピチのスーツを何百世代と着用して退化したらしいからな」
「なるほど?」
「そこのベッドに横になってくれ。検査を始める」
私がベッドに横になると壁から黄緑色の光線が体を包み込む
彼はモニターと思われる物体と私を交互に眺めながら操作をしているようだ
「ほう? 僕らトロイ星人と地球人の親和性は195%、トロイ星人同士よりも良い個体が生まれやすいのか……星人としての平均値的な親和性の高さは150%のベレー星人だったが、地球人全体がこれ程親和性が高いのかな? それとも日本人が親和性が高いのかな? この個体だけなのかな? ……うーん、やっぱり何人か確認しないといけないっぽいな」
「なんだこの子の細胞だと20代前半には白血病が発病するじゃないか? かわいそうに」
「知能指数はやはり俺らよりは低いか。でも原生生物としては高いな。ただ全体的に脆いな」
「臓器も1つしかないか。まぁアミバ星人みたいに臓器を自己生成できたり、フレーズ星人みたいに細胞が半永久的に再生するみたいなことも無さそうだね」
なんかヤバい言葉が聞こえた
「白血病? え? 私白血病になるの?」
「このままだと5年以内に発病するが、脊椎移植で直ぐに治せるが……」
「脊椎移植って体に合う合わないで合う人を見つけるのに凄い時間がかかるんじゃ……」
「え? 5分で作れるけど?」
「え?」
「君の脊椎のエラーコードの解析なんてもうスキャンしている時点で終わったし、作って移植するなら今できるけど?」
「お願いします。早死にしたくないのでお願いします」
「はいよー」
すると地面から円柱状のカプセルが上がってきて、コポコポと緑色の液体が注がれた
見ているとみるみる背骨が生成されて、5分もしないうちに人の骨が出来上がった
「じゃあ冬美ちゃん、こっちのカプセルに入って」
「カプセルに?」
骨が浮かんでいるカプセルに目が言っていたが、ベッドの横にカプセルが生えてきていた
裸のままカプセルに入ると緑色の液体が流れ込む
『ごぼぼ……あれ? 苦しくない』
「生態液っていう医療用の液体でそっちだ麻酔に近いのかな? 手術を開始するよー」
そう言うとレーザーが射出され、私の首が切断された
『え?』
プカプカと首が浮く
ただ意識はちゃんとあるし、移動しようと思えばその場所に移動することができる
「今背中切るからね」
ヒューズが言うとレーザーで背中を照射されて魚を捌くかの様に開かれた
そのまま背骨が外され、新しい背骨が入れられた
その後開かれた肉や皮が巻き戻しの様に元に戻り、私の首も胴体と繋がった
手足を動かしても違和感は無い
横を見ると抜いた背骨がプカプカと浮いている
「背骨の強度も上げておいたから腰痛とかヘルニアにも150年は大丈夫にしておいたから~」
なんか凄いことを言っている
『いやいや、首ちょんぱされて……え?』
プシューっと液体が床から抜けていき、完全に無くなるとカプセルが開いて外に出された
背中を触ったり首を触っても違和感は無い
ただ私の横にあるカプセルには私から抜き取った背骨が浮かんでいる
「とりあえず君のデータは取れた。今後も協力をしてもらおう」
「お願いだけど実質命令ですよね……なんかスッゴいぶっ飛んでいるのはわかりました」
「そうか? やはり価値観に相違があるな……ただ協力してくれたお礼を支払わないといけないな」
「何かくれるんですか?」
「これをやる」
ヒューズと言う男はスマホくらいの液晶端末を渡してきた
「地球人はスマホと言う端末で連絡を取ったりするのだろ? 地球用にプログラムしてある。あとこれは協力してくれたお礼だ」
チャリンと音がなり、画面にコインマークが映っていた
「君達の使う電子通貨を入れさせてもらった。10万円ほど入っているハズだ。アプリ切り替えればどの電子通貨でも対応可能だろう」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあまた呼ぶから君の家に送ろう」
再び指輪が光ると私の自室に戻っていた
「おっと結界がそのままだったな」
ルービックキューブみたいな装置をつかむとカチカチと弄り、全部の面が綺麗に揃うと結界が消えた
「おっと私の事を喋っても無駄だからな。誰も信じないし、聡明な君は突拍子の無い事を喋っても周りから怪訝に思われる方が嫌なのだろう? 同調圧力と言うのかな? 協力してくれれば報酬と良い思いをさせてやる……じゃあまた明日な」
そう言うとヒューズは消えていった
全裸のままその場に立ち尽くすしかなかった
ちなみに服はベッドの上に置かれていた
ヒューズから貰った不思議な端末を操作すると初期設定と説明文が流れる
この端末は【スタースフォン】と言うらしい
使用者の名前や使用言語、電波の同期化を行うとアプリが幾つか入っているのがわかった
見慣れた検索エンジンと動画サイト、通話チャットアプリ、カメラ機能だけでなく見慣れないアプリが幾つか入っていた
そのアプリにはアイコンの下に星マークが付いていた
プルルと電話の音が鳴ったので通話アプリを開き電話に出る
『早速使っているようだね。君達が使っているアプリの他に見慣れないアプリが複数個有ったと思うから説明するために連絡させて貰った』
ヒューズが言うには星マークが付いたアプリ達はこの星には無いアプリらしい
例えば体のマークのアプリをタッチすると私の身体情報が事細かくかかれていた
体重、身長、血圧、病気の有無等々
『健康アプリ、このスタースフォンを持っていると自動で計測してくれるよ』
ピラミッドに目が付いたアプリは宇宙人版のYo○Tub○で宇宙人達が配信しているのを視ることができるらしい
黒板みたいなアプリはこっちの5ちゃんみたいな宇宙人用の掲示板アプリ
宇宙人の常識とか基礎学力を教えてくれるアプリも入っていた
『こっちもそっちの常識を学ぶけど、そっちもこっちの事を知って欲しいな』
とのことだった
「あ、フツーにゲームのアプリとか入れられる……あれ? このスタースフォンの充電は?」
『ん? 半永久的に動くよ? 容量もうちの宇宙船と接続しているから……その端末だけでヨタバイト? って言えば良いのかな? YB……まぁ普通に生きていたら一生かけても容量で困ることは無いだろうね。宇宙船はクエタバイトの更に上の単位……というか文字通り次元が違う容量と処理能力が有るから気にしなくて良いよ』
いや、ヒューズが勝手に喋っているだけだが?
そんな私の心の中での突っ込みは置いておいて、アプリの説明が終わり、宇宙人の常識についてのアプリを開いてみる
色々な事が書かれているがヒューズの星は外宇宙にあり、地球からは認知不可能の場所にあるらしい
そもそも宇宙が何個も風船の様に膨らんだり萎んだりしながら連結されていて宇宙空間が何個もあることを初めて知った
というかこっちだとヤマトのイスカンダル星よりも更に遠い距離をヒューズは1週間で移動可能なのだとか
他にヒューズはトロイ星人だけど近隣に4大国家、4大星人がそれぞれ貿易とか協力して宇宙開拓競争をしているらしい
地球に当てはめるとイギリス、フランス、ドイツ、ロシアの関係が近いかもしれないが、もう1000年以上も互いに戦争をしないで縄張りを決めて開拓を続けているんだとか
現在宇宙進出できている惑星国家の数は64ヵ国で、最低でも64星人がいることがわかり、原住民と呼ばれる種族はもっと多いらしい
もうこれだけで頭が痛い
地球人が一番進んだ文明を持っていると思ったら実は周回遅れところかこっちはスタートラインにすら立ってない
ちなみにヒューズは穏便に接触してくれたが、中には原生生物を絶滅させて惑星まるごとプランテーションにしてしまうこともあるらしい
それを知って更にゾッとした
それを行える力が彼にはあるし、国が全力を出してもどうしようもないこともわかった
どこまでも無力……
逆らうと言う選択をしなくて本当に良かった……