また、死ぬほど捏造設定があり、原作の隙間を縫うような部分がいくつも散見されますが、これは個人の好みでありそういった作風であるとご理解いただければと思います。個人的にはその隙間は想像の余地のままになってたらうれしいな!
また、当作品は恋愛小説です
版権キャラクターとの恋愛描写や性行為描写が苦手な方は回避をお勧めします
主人公が大怪我したり戦闘したり場合によっては修行するかもしれませんが誰がなんと言おうとこの作品は恋愛小説です。ご理解いただければと思います
カップリングは「吉良イヅル×オリジナルキャラ」になります。ハーレム等の予定はありません、悪しからずお願いします
「 」
「 」
「罪人というよりも、今の君は犬のようだね」
無表情なのに恍惚としたような瞳で、貴方は言った
貴方の手に持った斬魄刀が、月明かりを浴びて煌めいている
無言で私を貴方の家まで連れてきて、挙句私の両手に私の斬魄刀を縛りつけて、自分の斬魄刀で重さをつけてまで私を試してる貴方は、まるで私を見ていない
でも確かに、大股を広げて刀の重さに耐えかねながら伏せるその姿は、犬のようだろう
「…」
ここまでの貴方は必ず、私の睨みつける視線を感じても、私ではない遠い誰かを見ている
「憐れだね、滑稽だ」
自分でそこに導いておいてよく言う
「…」
私は話さない。貴方がそれを望んだから
全てを捨てろ、と貴方は言って
私は「貴方以外なら全て捨てます」と、確かにそう言った
そして貴方は私を見て「僕も捨てて」と言うから、私は首を横に振った
そしたらまるで試すように、少しずつ少しずつ私を傷つけて、今に至る
「よく音を上げないね、少し生ぬるかったかな」
そろそろ腕も痺れてきただろうに、と貴方は続けた
今日は何をするのか知らないけど、私は、貴方が私を見ないことが、私は何より苦しい
貴方が私だけの貴方にならないことが
私なら、貴方を幸せにできるのに
私はこんなに愛しているのに
「…」
腕の痺れなんてなんでもない
貴方は遠く誰を見ているの?
市丸隊長なの?
雛森副隊長なの?
誰でもいいから、"私"を見て欲しい
「…ちゃんと僕の言うことを聞くのは偉いけど」
そう言って、私の顎に手を添えて、無理やり視線を合わせる
「君は何をしたら、僕を見捨ててくれるのかな」
それは出来ない。私は貴方の愚かしさを愛しているから
愛情を向けられたのを素直に受け取れないところも
自分で好きな人を傷つけておきながら被害者ぶって自分を傷つけるところも
己を貶めて心を守ろうとするところも
"吉良イヅル"という、その体を、形を、声を、心を、在り方を
全部、全部を、愛しているから
その在り方を肯定は出来ない、それでも愛してる
自分を好きになって欲しいわけでもないし、前を向いて欲しい訳でもない
貴方が闇に堕ちるなら、私は喜んで共に征く。いや共に征かせて欲しい。
真面目なところも、細い肢体も、陰気な表情も、残酷で卑怯な貴方の斬魄刀も、どれをとっても愛おしい
だから、だから、
「…」
できるだけまっすぐに、私は目の前に視線を向ける
それを見た貴方は、気に食わないような顔をして、なぜか自分の斬魄刀を仕舞うと私の両手を解放した
「…?」
正直手が痛いけど、しばらくすれば治るだろう
しかし私の斬魄刀は床に刺さったままだ
私はそれを仕舞おうとして手を伸ばす。すると、その手を掴まれる
「?」
そのまま引き寄せられて、私たちは抱き合うような距離まで近くなった
「!」
驚いて貴方の顔を見ると、貴方も私を見ていて
いつも通り眉間に皺を寄せてるけど、そこには苛立ちと恐怖が入り混じっているように感じた
「いい加減声を上げればいい、僕の言うことなんて聞く必要ないじゃないか」
私は黙って首を横に振る
高い位置で一本に結んだ黒髪が、ゆらゆらと揺れた
…私は、貴方が言ったことしか、聞く気はないんですよ
「…っ、君はどうして」
さっきよりも明らかに苛立ちを目立たせた視線
私はそれでも貴方を見つめる
さぁ、私を見て
そうやって苛立って、少しでも私を意識して
貴方の心の中に、私を住まわせて
「…もういい、わかった」
小声だったけど、確かにそう聞こえた
その後すぐに、私は掴まれた腕から力をかけられて、すぐ後ろの壁に押しつけられる
次の瞬間、私は唇を奪われた
「—!」
少し離れたと思ったら下唇を舐められ、反射的に口が開く。そこに舌を捩じ込まれて、長い舌が私の舌を絡め取って、上顎を撫でられ、歯列に舌が這う
「…ん、ふ」
わずかな隙間で呼吸をするけど、酸素は全然足りなくて息が苦しくなる
「んんんっ、んぅ」
いけない、声が出てしまった
貴方の命令なのに
声が出た時、唇が離れた
貴方は私を、見て
「やっと声を上げた」
そう、その瞬間、私を、見た
「…あ」
目を見開いたら、涙が出た
そして、貴方が動揺したのが見えた
「なんだい、急に」
「…」
話していいとは、言われてない
押し黙る私に、貴方はばつの悪そうな顔をしてからまた、私を、私を見た
視線が送られてるだけじゃない、その瞳に、私が、映っている
「…話していい、仕方ないから聞いてあげるよ」
その言葉に、ゆっくりと口を開く
「貴方が、貴方が私を見てくれたから」
ずっと待っていた、この時だけを
貴方の頭が、どんな形であれ私だけになる瞬間を
「ずっと見ていたじゃないか」
「いいえ、貴方は遠い誰かを見てた」
愚かしい人。時間は戻らないのに遠い誰かを見続けている
愛しい人。時間を超えても貴方は残酷なまでに己を責める
またばつの悪そうな顔をする貴方が見えた
対して私の涙は、まだ止まりそうにない
溢れて溢れて、こぼれ落ちていく
「…君が僕を見るから、僕は君を見れないのに」
どういうことだろう、と…私はそのまま次の言葉を待った
「僕は許されないことをしたんだ。利用されていたことも気づかずに、たくさん人を傷つけて」
大切な人まで、傷つけて
私から目を逸らして、貴方はそう言う
「僕なんか見限ればいい、君が思ってるような人間じゃないんだ、僕は」
苦しそうな顔をする貴方を、私は見つめている
そうやって貴方は、自分を傷つけて自分を愛しているのに気付かない
自分の所に愛をくれる人は居ないんだと恐れているから、要らないと言えばその気持ちを護れると思っている
私はそれを許さない
「それでも」
私は声に出す
「それでも、貴方を愛しているから」
声に出して、貴方を見る
どうしてか、貴方はひどく恐れるような顔をしてから、また苛立ちの視線を私に送ってきた
それでも、そんな目をしてても私を見ている。それはたまらなく嬉しいこと
「じゃあ、こうしたらどうだい?」
そう言って、襦袢ごとその手が私の死覇装の胸元を強引に脱がせて、私の胸が無理やり晒される
露出した胸元は、外気に触れて少しだけ張りを持った
多分、嫌がると思ってやってるんだろうな
「何も。貴方がなさるのでしたら、貴方の気が済むのならば、私の体はいくらでも捧げます」
私の心はもう、貴方だけの心だから
その言葉に、貴方はますます苛立ちを加速させて私をいっそ睨みつけるように見る
多分私が平然としてるのが気に食わないんだろう
「それなら、どこまでやれるか見てあげるよ」
胸に触れられながら、首元を思い切り噛まれる
胸元の心地よい刺激と歯列が首元に食い込む強い痛みが、同時に私を襲った
「…っ、ふ…」
血が滲みそうなほど深く噛みつかれたそこは、当然強い痛みを感じている
それに対して胸は過敏に貴方の手を求めてしまう
出来るだけ声は抑えたけど、吐息までは殺せない
歯が離れると、今度は貴方の囁くような声が耳に直接届く
「声出してみなよ、聴いてあげるから」
「…っ、はい」
耳元で囁くのは卑怯だ
その声が近くで響くほど、私は胸が高鳴るのを抑えきれないのに
今度は胸の先に長く細い指が触れる、張りを持ったそこを指先で弄んで、首元の噛み跡を這うように舐める
くすぐったいような、甘い刺激のような、曖昧な快楽が私を蝕んだ
「〜っ、んっ、ん…」
声を出して良いとは言われたけど、恥ずかしさのあまり右手の甲で口元を押さえてしまう
不意に胸元と首元の刺激が無くなったかと思うと、貴方は私の口元を塞ぐ手を退けた
「抑えたら聞こえないだろう?」
「申し訳、ありません…」
息が上がった体が、ずっと肩で呼吸をしている
すると今度は両胸の先を強く摘まれた
「っ、あっあっあっ」
ひどく痛いはずなのに、その奥には快楽が確かにある
体の疼きが加速するようで、何故か下腹部が反応するのを感じた
お腹に熱が、溜まって行くような…不思議な感覚がある
「お仕置きなんだけど、感じてるのかい?」
そう言って貴方が胸先の指を離して空気に触れたそこは、震えるような痛みと確かな快楽で満たされていた
今度はそこを軽く引っ掻くようにして、胸先が弄ばれてる
「申し訳、ございません…んんっ」
私がそう答えると、彼は表情も変えずまた耳元で囁く
「淫乱」
その言葉の恥ずかしさに、一気に顔が赤くなる
我ながらまるで生娘だ。耳元に残る声と恥ずかしさが私をそうさせている
それなのに胸先を弄んでいた指が、今度は優しく何度もその先端をつまむから、
「あっ、あっ、〜っ!」
遊ばれるように逝かされたのに、弄ばれている感覚が気持ちいい
残った痛みが快感を加速させて、恥ずかしいのに声が抑えられない
「これが好きなんだね」
いたずらに貴方は言う。その声音はまるで悪いことを思いついた子供のようにも聞こえた
昂ったまま弄ばれる胸先の甘い快楽が私を襲い続けていく
「あっ、ん、あっあっ…はぁっ…」
頭の中に快楽の波が押し寄せてくる。まるで徐々に潮が満ちる浜辺のように
それなのに不意に胸先をいじるのをやめられたかと思ったら、今度は腹の帯を外された。袴が自然と下に落ちて、下着が顕になる
するりと、胸元から腹を経由して下腹部まで、貴方の手が私をなぞっていく
そのまま下着に手を入れると、貴方の指先は容赦なく秘部に触れた
濡れそぼったそこは、触れる指を求めるように愛液を絡ませる
「濡れてる」
貴方はは淡々と、そう溢す
そして蜜穴の入り口を焦らすように撫でて、陰核に触れる
「んぁ…」
少し過敏な刺激を受けて、反射的に声が出た
それを見てなのか、下着に入っていた手が引き抜かれて、そのまま私を床に押し倒した貴方が私の下着を取り払う
「…」
これから何が起こるかなんて、想像がついてる
でも、私なんかにそこまでしてくれるなんて、いつの間にか私は自分が思ってるよりも多く貴方の中にいたのかも知れない
…なんて、妄想の行き過ぎだろうか
貴方は床に寝そべる私をみて、自分も腹の帯を解いた
袴が床に落ちて、下着から勃ちあがった貴方の自身が顕になる
「…怖がらないのかい」
貴方の何か期待してるような顔
私の悲鳴でも聞きたいのだろうか
「私は貴方のものです、怖がる理由がない。それとも悲鳴をあげたほうがいいですか?」
私の言葉に、貴方は思い詰めたような顔した
どうして、そんなに悲しそうなんだろう
「…挿れるよ」
静かにそう言った貴方は、私の返事を待つまでもなく自身を私の蜜穴に押し当ててそのまま奥へと進んでいった
私の脳には確かに体の一部が裂けるような感覚があって、確かに痛い
血は…出てる感じがする
「君、まさか」
そう言って、貴方が私の下腹部を見て驚くのを眺めたのを見た時、私はたまらなく嬉しくなった
「そうですよ…キスだってそう。私の初めては出来るだけ、貴方に捧げたいから」
何を目安に貴方が“それ”を判断したのが知らないけど、私は下腹部の痛みに確かな悦びを感じている
貴方を体に刻み込めた、こんなに嬉しいことってない
「どうして、そこまで」
震える貴方の声
私が怖いの?
「貴方を愛しているから」
それだけ
異常と言われようと、確かに私は貴方を愛しているから
それ以外なんて、最初から求めてもない
「…っ!」
今にも泣きそうな感情で顔をくしゃくしゃにする貴方は、私を貶めたいと言わんばかりに腰を動かし始めた
それでもそのペースは決して早くはなくて、貴方の中途半端な優しさの上に成り立つ自己満足を感じる
私はそれが貴方と言う人だと感じられて、たまらなく嬉しい
「ん…」
痛みが強かった蜜穴が、確かに快感にシフトしている
出し入れされて内壁が擦れる感覚が、柔らかな刺激になっていく
私の声を聞いて大丈夫と判断したのか、抽送が少しずつ早くなっていくのを感じた
快楽がさっきまでは届かなかったところまで来て、思わず私は、
「あ、んぅ…あっあっ…んぁ…」
「もう気持ちいいの?流石だね」
流石淫乱、とでも言いたいのだろうか
思わぬ昂りで溢れた声に冷たい貴方の声が返ってくる
「ちが…っんっ、ん…」
「嘘だね、こんなに腰を動かして」
腰を動かしてる感覚なんてない
気持ちいいでわからないのに、そんなこと言わないで
「気持ちいいならそう言いなよ」
「わ、わかんな、い、んぁ、ですよ…」
確かに快楽を感じてるのに、恥ずかしくてそれを言うのが憚られる。それはなんでだろう
「へぇ」
貴方がそういって、私は強く腰を掴まれる
そのまま奥まで差し込むように押し当てられて、頭の中が弾けた
「んぁ!?あっ、あっ、あーっ…!」
ずん、と入ってきたそれに頭がちかちかして
これまでにないくらい、逝ってるのがわかった
「ほらやっぱり、逝くほど気持ちいいんじゃないか」
満足そうな声が聞こえたのに、そのまま抽送が再開される
そのまま腰を打ちつけ合うように、私たちは重なった
「あっ、まって、まだ」
「知らない」
中が、まだ過敏なのに
その熱い塊は、私の弱い所をずっと突いてくる
「あっあ…っ、きら、ふくたいちょ、きらふくたいちょう…!」
私は情けを求めて手を伸ばす
すると少し上半身を前に持ってきて、貴方は首に手を絡めさせてくれた。やっぱり優しい
優しい貴方に、私の瞳にはまた一筋だけ涙が溢れた
快楽に押されてなのか、気持ちが溢れそうだからか、もう私にもわからない
貴方が好きだ
愛してる
途方もなく、貴方を幸せにしたい
自分を愛せない貴方を愛したい
愛させて
「…今だけ、今だけ名前で呼ぶのを許してあげるよ」
そう言って抽送が早められる
私は快楽に押されてもうわけがわからない
名前? 貴方の名前で呼んでいいの?
「イヅルさんっ、いづ、るさん…っ!」
「…っ!」
「あっ、ああ、あ、これらめ、いくっ」
奥まで突き上げるように入ってくる貴方
私の急所はもうぐずぐずに濡れて限界で、本当の天国に逝ってしまいそう
でも貴方の顔も余裕がなくて、私で感じてくれているのかと考えると幸せで興奮した
「っ、出る!」
「あぁ…っ!」
私が弾けたのと同時に、膣内に吐精されてるのを感じる。
どろりとした明らかに自分のものでない何かが、お腹の中で確かに広がって行くから
「はぁ、は…はぁ…」
私は息も絶え絶えで、少し疲れた程度の貴方のことを視界に入れた。貴方はずるりと私の中から自身を引き抜いて、また私を苦しそうな顔で見おろしてくる
苛立ちでも悲しみでもないひたすらに苦しそうな表情、どうして貴方はそんな顔をするの?
「…」
私が無言で見つめていると、貴方は残った服を脱ぎ始めた。美しい肢体が月明かりに浮き彫りになる
そのままこちらにくると、腰が抜けて動けない私の服も脱がし始めた
「湯浴みをしよう。君がくる前に沸かしてある」
「お風呂…」
そう言って貴方は私を抱え上げて、そのまま浴室に向かった
浴室の扉を開けると温かい湯気が体に触れて、少し気が抜ける
「座れるかい?」
「…座るくらいなら」
椅子に座って体を流される
流れで下腹部に手がいきそうだったので、そこは流石に断って自分でやった
髪と体を流すともう一度抱きかかえられて、そっと湯船に浸けられる
温かいお湯が体に染み渡り、浮力が体を楽にしてくれた
それでも、貴方を見ると苦しそうな顔をしている
何がそんなに苦しいの?
「…後悔、してるんですか?」
そそくさと体を洗って、頭を冷やすようにシャワーを浴び続ける貴方を見てると、そう思ってしまう
「後悔しないわけ、ないじゃないか」
そう言って、貴方はシャワーの栓を締めて、私の方を見た
オールバックの濡れた髪も素敵だなぁ、なんて考えてる私は呑気だと思う
それでも、貴方の美しい青い瞳が両方見えるのが嬉しい
「さっきも言ったけど、僕は君が思うような奴じゃない。だから…」
考えるように、貴方は少し言葉を貯める
「だから君に、嫌われたかった」
「知ってますよ、そんなの」
そんなこと、火を見るより明らかだ
正直、素直すぎて愚かな程にわかりやすかったもの
「それなのに、ずっと耐えてきたのかい?」
彼は少し困惑したような顔で言う
あたふたとした様が愛おしい
「耐えてるつもりもありませんでしたよ」
私のことを僅かでも考えてる時間が増えるなら、それ以上の事はない
その結果何をされようとも、それが貴方ならなんでもよかった
「貴方が私を見てくれるなら、貴方が私のことを少しでも考えてくれるなら、何をされても同じ事。私にとってはご褒美です」
「…それがたとえ、あんな形で純潔を失うことになっても?」
「相手が貴方ですから」
どんな形でも私はいい、貴方に抱かれたのは事実だから
その事実が重要なのであって、それ以外は瑣末と言っていい
「あぁでも、子供ができたら責任とってくださいね」
なんて冗談を言うと、あれだけしっかり膣内に出しておいて思い出したように真っ青な顔をする貴方。そしてそれをを見た私は内心満面の笑みになった
幸運にも今日は安全日というやつなので、子供は早々できないだろうけど
貴方との愛の結晶ができて、その上で貴方も私の貴方になってくれるなら、どんなに辛くても子育ても悪くない
そんなことは起こらないとわかっていてもね
「吉良副隊長、湯船一緒に入りませんか?」
「…何を言ってるんだ君は」
この期に及んで、と貴方の顔には書いてある
そりゃあ、自分を無理やり犯した人と湯船になんておかしいかも知れないけど…私からしたら好きな人とお風呂に入るだけなんだから、嬉しいこそすれ嫌がる理由もない
「今日のことが後ろめたくないなら、無視していいですけど」
私がそう言うと、大きなため息が聞こえてきた。諦めたような表情で湯船に足をつける貴方の上に乗るような形で、一緒に浸かる
その時大きな音を立てて、湯船からお湯が溢れた。ざば…と音を立てて溢れたお湯が渦を巻いて排水口に流れていく
「…」
「ふふふ」
嬉しいな、こんな奇跡が起きるなんて
私、好きな人とお風呂に入ってる。思わず笑ってしまう
「吉良副隊長」
「今度はなんだい」
後ろから呆れた貴方の声が聞こえる
元はと言えば貴方の愚かさが原因だと、言うべきか考えたけどその呆れ声も素敵なのでやめた
「今日は夢のようでした。ありがとうございます」
だから私は一言、それだけしか言えない
貴方は今、私の顔が見えないから、言うなら今しかないと思った
これほど貴方が私を見てくれる日は、きっともう来ないだろう
私の思いを告げた今、貴方は私から離れていくはず
だって貴方には、思い人がいるんだもの
「貴方が、貴方が好きです。貴方が誰を思ってても」
たとえ貴方が私を好きじゃなくても、その瞳に映るのが私じゃなくなっても
私はずっと貴方を愛してる
私は湯船から立ち上がった。このまま出てしまおう
そして帰ろう、この幸せで私は生きていける
これでいいんだ
「待って」
不意に腕を掴まれて、体がガクンと揺れながら止まった
思わず振り向くと、貴方が私を見て
「僕の何が良いのか、僕にはわからないけど…その、話をするくらいなら出来ると思うから」
そんなことを言った貴方が、私を見てる
どうしてだろう、貴方が私のことを知ろうとしている
「そんな」
そんなことが、あるなんて
感情を言葉にする前に涙が溢れて止まらない
棒立ちでぼろぼろとなく私に、貴方は慌てふためいている
「嫌なこと言ったかい!?」
そのまま私がその場でしゃがみ込むもんだから、貴方は余計驚いて
あたふたした声が上から聞こえる。ごめんなさい、困らせたいわけじゃないのに
「ちが、違います…」
声を殺して泣いた。こんな幸せがあって良いものなのかわからなくて
あまりにも幸せに思ってしまったから
「ただ…嬉しくて」
話をしよう、なんて
話をしてくれるなんて
そんなことを言ってもらえるなんて思ってなかったんだ
何を話そう、私の身の上なんてつまらないしな
「嬉しい…」
その声は、まるで理解不能というようだった
そうだろうな、私も立場が逆ならわからなかったと思うし
でも嬉しい、泣くほど嬉しいよ私は
貴方にこんなにも見てもらえて
「はい、こんなに嬉しい事はないです」
私はとびきりに笑った
そうと決まればお風呂を出なければ
「なら先上がって待ってますね!タオルお借りします!」
「あっ、ちょ…」
そそくさとお風呂から上がって体を拭いて、死覇装を着直して
その間も嬉しさでどうにかなってしまいそう
とりあえずさっきの部屋に刺さったままの斬魄刀を取りに行く。ごめんね、と謝ってそっと鞘にしまってから傍に置いた
「付き合ってるわけでもないのにな」
まだどきどきしてる。こんなに胸が弾むなんて
あぁ、あぁ、きっとこれ以上なんてない
「…まさかそんなに喜んでもらえるとは思わなかったよ」
「みゃっ!」
突然後ろから声がして飛び跳ねてしまった
当然ではあるんだけど、振り向くとそこには貴方がいる
「人の顔見て驚くとは失礼だな君は」
「申し訳ありません…」
慌てて頭を下げた。確かに失礼だと思ったから
私服なのか、視界の端に映った着流しを纏う貴方も美しいなどと考えつつ…
「まあいい、適当に座って」
「ありがとうございます」
「そんなに畏まらなくて良いよ。仕事じゃないんだから」
多分癖なんだろうけど、口ではそう言いつつ自分は姿勢のいい正座をしてる姿に矛盾を感じた
私もおず…と正座する
「…服、わざわざ着直さなくても何かしら貸したのに」
「えっ、ごめんなさい。つい嬉しくて」
相手の厚意を無碍にしてしまったと反省する
突っ走ってしまった…嬉しかったとはいえ恥ずかしい
困ったように眉間に皺を寄せてため息をつく貴方を眺めつつ、この人風呂上がりでも片目が隠れるんだなぁなどと思ったりした。綺麗だ…
「まあいい…どうして僕に執着するんだ。立場かい?」
「立場でどうこう言えるならよかったんですけどね…いっそ…」
早速入った話の本題に、私は俯く
そう、私が貴方を好きなのは、そんな理由じゃないから
だから辛い
「覚えてないと、思うんですけど」
ぽつり、ぽつりと声を出した
聞いてほしい、聞こえなければいいのに、どっちの気持ちもあるせいでうまく口が動かない
「私、貴方が牢にいた時。それこそ最初も次も、見ていたんです。食事を持って行ったこともあります」
貴方が何も言わないから、私は話を続けていく
相槌も何も言わない貴方の顔は見れない。どんな顔をしてるのか、想像するだけで恐ろしいから
「最初は、雛森副隊長に手を上げたと聞きました。隊長を守るためだったって。それなのに、貴方は後悔して、懺悔して、自分を傷つけてまで、雛森副隊長を愛していて」
思い出される。あの壁の傷も、血の跡も、貴方の声も
あぁ、なんて、
「私はその時、雛森副隊長が羨ましいと思ったんです。こんなに愛してくれる人がいて、羨ましいって」
「…」
長い話なのに、貴方は何も話さない
寄り添うような空気で、私の話を聞いている
「貴方が、私を好きになったら…私もこんなに愛してもらえるのかなって、最初はおもった」
私も、愚かさでは人のことなんて言えない
そんな理由で、人を好きになってはいけないから
「でも貴方が、牢の中で仕事をしてる時思ったんです。『時間は戻らないのに、なんで愚かなんだろう』って、正直、貴方の行動は自己満足にしか見えなくて、貴方もそれをわかってるようで」
それならどうして変わらないんだろうって思った
いつまでもうずくまるように仕事をして、周りから自分を遠ざけて
「どうして全て自分のせいにするのかわからなくて、なんでなんでって、気がついたらずっと貴方のことを考えてた」
貴方は己だけを責め続ける。全部自分のせいだって
自分はなんてことをしたんだって最初は被害者ぶってたくせに
「それで私、気づいたんです。貴方のことしか考えてないなって」
気づいた時はもう、恥ずかしくて死ぬかと思った
それでも、それでも、
「貴方に、幸せになって欲しいと思った。それは貴方の幸せを遠くて見守るのではなくて、私の手で」
願うように、両手の指を絡める
届かなくていいのに、どうして祈るようにそこにいるんだろう私は
届いたらいけないのに。貴方に愛してもらえるはずがないのに、どうして
「貴方の良いところも、悪いところも、全部が愛しいと気づいた時…貴方を愛してるとわかったから」
苦しい、胸が、思い出すだけで、果てしなく苦しい。この思いをもっと正確な言葉にできたら良いのに
私の言葉に貴方が語りかける事はないけどそれでも、貴方は私を見ていた
「"私"の手で貴方を幸せにしたい、"私"を誰よりも見てほしい、"私"が貴方を守りたい」
だから、私を見てと願ってしまう
遠くの誰かじゃなくて、遠くの出来事じゃなくて
今いる私を見て欲しくなってしまうんだ
「私はなんだってする。貴方が私を見てくれるなら、貴方が私だけの貴方になってくれるなら」
また涙が溢れた。溢れたら、止まらずにいつまでも流れ続ける
最初は、気づいてもらうつもりなんてなかった
貴方の忠実な部下であり続ける事で、貴方のそばにいられればそれでよかった
それなのに貴方が、私の視線を怖がって私を辱めるから、私は、期待してしまったんだ
このまま、貴方を私でいっぱいにできないかなって
「忠実な部下で居ろと言われれば勿論そうします。消えろと言うなら消えます。それを貴方が望むなら」
拭っても拭っても、涙が止まらない
こんなに貴方を愛しているのにと、溢れる欲望が止まらない
あぁ、私もやっぱり、大概愚かだ
「それでも貴方が好きです、愛している。それだけは、それだけは…」
そこまで言って、急に引き寄せられる感覚
貴方が私を抱きしめたのだと気づいたのは、そのほんの少し後
「もういいよ」
最初に貴方は、そう言った
「もういい…もういいんだ」
そう言う貴方から、強く抱きしめる腕の力が伝わる
私は戸惑って、困惑して、ただ貴方から香る石鹸の香りが自分と同じで、心臓が高鳴るのを感じていた
「僕は…僕はそんなに思われる人間じゃない。君がそんなに思う様な人間じゃないんだ」
そんなの、貴方がそう言うのなんて、知った事
貴方がそうやって私から逃げるのなんて、わかってた事だもの
それなら思いが伝わらなかっただけ
それだけ
「それでも…君がそれでもと言う様に、僕は君を好きになってみたいと思ったよ」
「!?」
耳に入ってきた言葉が嘘みたいで、驚いて言葉が出ない
そんな、聞き間違い?
貴方が、私を好きになってみよう、なんて
「僕は、君の期待に応えられないだろう。それでも良いかい」
「…そんな、の」
貴方は私の言葉を待つ
「期待とか、そんなのじゃない。私は貴方の全てを愛してる、それだけですから」
だから、神様
このままうまくいって
「そう」
そう言って、貴方はそっと私を離した
「なら、君を見る努力をしてみようと思う。…まずは、今更友達って訳にもいかないし、お付き合いからでいいかな」
そう私に貴方が問うことそのものが、夢である様に感じた
これが夢なら、醒めないで
「…吉良副隊長は、本当にそれで良いんですか?」
震える声で口に出す
もし貴方が望まないことだったら、私はこの場で死んだ方がましだ
「それで良いも何も、それを望んだのは君だろう? 僕はそれに付き合ってみようと思っただけだ」
その言葉が衝撃的すぎて、落ち着いてた涙がまた溢れるかと思った
そんなことって、そんなことってある?
貴方が私の願いを叶えてくれるなんて
「…ありがとうございます、よろしくお願いします」
私はぐしゃぐしゃの顔で笑って、必死に貴方に抱きついた
貴方は少しだけ驚いたような声を出して、それからどうしたものかと言いたげな顔をする
「…女性とお付き合いなんてしたことないから、どうしたら良いかわからないな」
案の定戸惑った貴方の声が聞こえくるものだから、私はそれにくすりと笑って、こう答えた
「今日はとりあえず、ずっとそばに居てください。互いの話をたくさん、たくさんしましょう」
そうだ、それが良い
私の思いは伝わったけど
それ以外のことは、お互いまだ知らないのだから
今日の夜は、まだ続くのだから
終
緋月鏡花について
緋月鏡花(ひづききょうか)
女性
肩甲骨より下まで伸びる長い黒髪
身長158㎝
体重52kg
瞳の色 緑→赤(卍解時)
三番隊一般隊士→三番隊七席
斬魄刀「月大神(つきのおおかみ)」
解号「帳を下ろせ〜」
○好きな物
あんみつ
練り切り菓子
くじら
○苦手なもの
お酒
辛いもの(特にわさびやからし)
蛾、蝶、蝉
○趣味
吉良を追いかけること、吉良の霊圧を探ること、吉良に関わる写真や書籍を集めること
吉良が関わらない範囲だと料理(得意なものはだし巻き卵)
○概要
荒んだような吊り目に濃いクマと赤いリボンでまとめたポニーテールが特徴
基本的に笑うことはなく、交友関係を広げることに興味がないため隊内では浮いた存在
基本的に淡々と返事を返し黙々と仕事をする
死覇装の着崩しもなく不気味と言われることも少なくない
おとなしくみえてプライドが高く頑固
決めたところにばかり目が行き視野が狭くなることもしばしば
表情筋が死んでいる自覚がある
吉良イヅルの犬、護衛、部下、彼女
————
(2026/09/28 加筆修正後書き)
皆さん初めまして作者です
この話、上記の日付で加筆修正をしているわけですが、まぁ拙いですね。恥ずかしいことこの上ない
私自身普段から夢小説の類を書くことはなく、どちらかというと一次創作をメインに話を書いている人間なので、感情のままに文章を作るというのはなかなか慣れません
この話の投稿が一応2023年になっているので、そこから進化しているとは思いたいです
私の人生でまともに夢小説としてシリーズを書くのは後にも先にもこのキャラだけだと思うので、完走まで突っ走りたいと思います
頑張って最新話も書いてますんで、修正もしばらくしますんで、それぞれ上がったらよろしくお願いします
七星七夕