また、死ぬほど捏造設定があり、原作の隙間を縫うような部分がいくつも散見されますが、これは個人の好みでありそういった作風であるとご理解いただければと思います。個人的にはその隙間は想像の余地のままになってたらうれしいな!
また、当作品は恋愛小説です
版権キャラクターとの恋愛描写や性行為描写が苦手な方は回避をお勧めします
主人公が大怪我したり戦闘したり場合によっては修行するかもしれませんが誰がなんと言おうとこの作品は恋愛小説です。ご理解いただければと思います
カップリングは「吉良イヅル×オリジナルキャラ」になります。ハーレム等の予定はありません、悪しからずお願いします
「追跡」
「待ちなさい翠霞!」
「待たへんで〜! 返して欲しかったら捕まえてみて〜」
刀獣退治を一つ終えたある日のこと、翠霞が突然私のリボンを持ち去って逃げ出した。私は現在進行形であの子を追いかけてるわけだけど悔しいが差は開くばかり
「ほらほら遅いわぁ! 置いてってまうで〜!」
「待ちなさいって言ってるでしょ!」
「待つわけあらへんやん♪」
余裕そうな向こうは文字通り手加減してるってわかってるのに…!
翠霞は屋根の上なり地面なりを身軽に飛び跳ねながら移動している。時折止まって私が追いついたかと思うと揶揄うように腕を上げてリボンを掲げるのだ。ちくしょう、ちょっとばかし背が高いからって
「女の子ぉそないなどすどす歩いとったらはしたないやん? もっとお淑やかにせな」
「うーるっさいわね! こちとらまだ仕事が残ってるのよ!」
「鏡花ちゃんに今必要なんはお仕事とちがう思うなぁ」
なんてそっぽを向きながら言う翠霞はまだリボンを掲げて余裕そうに私から遠ざけている
「きゃあ!」
そこから何を思ったか私の足を払って翠霞はまた去っていった。私は強制的に転かされややバランスを崩す
「吉良はんには言うといたるさかい今日は遊んでな〜!」
「翠霞ぁ!」
叫んでも向こうが振り返ることはない。とりあえず私は追いかけるように走り出した
********
「吉良さんこんにちはぁ♪」
うちは吉良さんの執務室に顔を出して挨拶をする。相手は少し驚いたような顔をしてうちをみた
「翠霞さん…だったか。どうしたんだい?」
「ちょっとお願いがあってきたの」
「お願い? というかその言葉遣い…」
吉良さんはうちの話し方に少し驚いてるみたいだった。それも無理はないか〜、なんて考える
「いつもの話し方は鏡花ちゃんへの嫌がらせだもん。普通に喋れるよ」
「い、嫌がらせ…」
「あの喋り方は鏡花ちゃんの苦手な人を思い出させるでしょ?」
「それって…」
と、そこまで言って吉良さんは黙った。思い当たる節があるんだろうなぁ…あの子が吉良さんに言ったら墓穴掘っただろうに。おばかな主人だこと
「で、君は何をしに来たんだ」
「鏡花ちゃんを貸して欲しいの。とりあえず様子見で今日一日」
「緋月君を?」
「うん」
今のうちじゃないとできないことがある。うちが人の姿を保てるうちに…このままじゃ時間がない
「だって鏡花ちゃん、弱いんだもん」
うちの言葉に吉良さんはわかりやすく動揺した。気づいてたのかな? 今のあの子にはそこそこの斬術とコントロールもできない馬鹿みたいな霊圧しかないって
「女の子とは思えないくらいドスドス歩くし、白打はともかく歩法と鬼道は目も当てられない。鬼道とか戦法は教えられなくても、せめて狼を名乗るなら歩法くらい備えてもらわないとね」
「…」
吉良さんはなにか悩むように考えている。ここまで言って何が引っかかるの? 下手に甘やかすのは良くないと思うけどな
うちだってあの子には死んでほしくないし
「わかってるでしょ。自分があの子を甘やかしてるの」
「…多少はね」
「ま、とりあえず言ったから。今日一日は鏡花ちゃん借りるね」
「…良いだろう。ただし二人とも無理はしないように」
「はーい」
話半分くらいで聴いていると、不意に執務室のドアが開く
「…入るぞ」
私はその姿を見た瞬間心からときめいた
「侘助さん!」
中に入ってきたのは侘助さん! 今日も目つきの悪さが素敵〜!
あの細身で大きな鉄球持てちゃうところも素敵!
物静かで冷静! 素敵!
「どうしたんですか? まさか私にご用事とか…」
「…お前の主人が探している」
「あら、もうきちゃったの? せっかちだなぁ」
折角侘助さんに会ったのに残念だなぁ、なんて思いながらずっと持っていたリボンを腕に巻いて、ドア枠に手をかけ振り向く。そして吉良さんに向かってにこりと微笑んだ
「またね、吉良はん」
なんて、カッコつけて部屋を出てから「あっ」て思った。慌てて出入り口からまた顔を出して侘助さんにできる限りの笑顔で思いっきり手を振る
「侘助さん! またお会いしましょうね〜!!」
そう言って改めて部屋を出た。さて、不甲斐ない群れの長に森の歩き方を教えてあげないとね
********
「翠霞! 出てきなさい翠霞!」
呼びながら隊舎内を歩く。あんなこと言ってたくらいだから絶対ここにいるはずなのにどこへ行ったのか
そして何も考えず廊下の角を曲がってしまい人にぶつかる。慌てて謝ると見知った顔がそこにいた
「…翠霞」
翠霞はにっこりと笑って私の手を取る
「鏡花ちゃんっ、あそ〜んでっ♪」
「はぁ? 私はまだ仕事があるって…リボン返してよ」
「やだやだ! 遊んでくれるまで返さへんもん!」
思いっきり首を横に振る翠霞。よく見るとリボンも腕に巻いちゃってるし…困ったな
「第一仕事サボったら吉良副隊長になんて言われるか…」
「吉良はんはええって言うたさかい。そやさかい遊ぼ!」
「はぁ!?」
そんなことあるはずない。通常業務を堂々と抜け出して良いなんて、何が起きてるの?
「ちょっと吉良副隊長に確認してくるから待ってなさい」
「あかんめ、行かんといて!」
必死な表情の翠霞に腕を掴まれる。この間と同じでその力は強く解けそうにない。でもこんなに必死ってことは、本当に何か理由があるんだろう
「…わかった。でも何して遊ぶって言うのよ」
だめだ、我ながら甘すぎる。でもあんな顔されたら嘘ついてないって信じるしかないじゃない
「隠れ鬼しよ! うちを捕まえたら勝ちね! いつもの山でまってるなぁ」
「また鬼ごっこ!?」
それだけ残して翠霞は飛び出して行った。隠れ鬼ってことは少し待たないといけないのか…
とりあえず十秒待って山に向かう。って言ってもあの山広いんだけどな、私の実力で彼の方以外の霊圧を追えるか自信がない
「さて、とりあえずついたけど…」
ため息をつきつつ翠霞を探しに歩き出す。でもそんな簡単に見つかるはずもないので中腹辺りで足を止めた
一つ深呼吸をして意識を集中させる。自然の音に混ざったあの子の霊圧を探すために目も閉じて
「…」
森の音が聞こえる。木の葉の揺れる音、鳥の鳴き声、風の囁き。きっとこの中に潜むように、あの子の霊圧は存在してるはず
「…?」
しかしどれだけたぐっても見つからなくて少し戸惑う。呼吸を潜めた獣のようにあの子の霊圧が存在しないからだ。そう、ここには本当はいないのではないかと思うほどそれは痕跡を感じさせない
「!」
その時、森に声が響いた。それはくすくすと笑う綺麗な女性の声
「くすくす…」
その声は繰り返す
「くすくす…くすくす…」
まるで囁くように、取り囲むように、高みからものを見ているように。気味の悪いその声に少し身構える
「くすくす…うちの居場所がわからへんねん?」
「翠霞!」
「そやな…だって鏡花ちゃんは『人間』やさかい」
「…"人間"?」
意味深な言葉だ。あの子は何が言いたいんだろう
私の言葉に、もう一度笑い声が聞こえてまたその声は響く
「人間狼に勝てるわけあらへんやん…特に鏡花ちゃんみたいな『人間』やとね」
「!」
…そういうこと。人間じゃ動物に勝てないって?
「舐めないでよね…!」
一歩踏み出す。その時草履が土を踏んでざり、と音がした
「あぁほら、そう言うとこ。女の子足音立てるなんてはしたないで。戦闘とちがうんやさかい」
「…っ」
「森の歩き方も知らへん小娘長なんて、こない恥ずかしい群れはあらへん。ねぶられとってええなら別やけど」
翠霞の言葉は文字通り怒りを孕んでいる。怒りと軽視、哀れみと悲しみ
「あんた何企んでるのよ…!」
「なんやろうな? 少なくともうち達は何の群れなのかよう考えてみてや」
回りくどくて苛立つ。まっすぐどうして欲しいか言えば良いのに
でもあの子の言いたいことはわかった。私達は狼の群れ、夜毎森をかける使者。なのにこんな、歩法も苦手では翠霞があきれるのも頷ける
「…っ」
「少しは考えたんや。いっつも考えへん阿呆やのに…わかったならうちを見つけてみて。女の子なんやさかいはんなりとね?」
「あほってなによ!」
「阿呆で考えなして突っ込むことしか知らへん主人にはうんざりやなぁ〜。女の子とは思えへんくらいガサツやし、足音やかましいし、言葉遣い汚いし」
その声は明らかにこっちを馬鹿にしててイラッとした。何よその言い様は!
「自分はお上品だとでも言いたいわけ!?」
「そんなん知らへんで、うちはほんまのこと言うただけやさかい。現にこれだけ話しとってうちの居場所がわからへんのや、話にならへんで」
「むきーっ!」
と怒ったは良いものの、怒ってる場合じゃないんだよな。かと言って声は響いてしまって方角が曖昧だし、匂いを辿れるほど鼻は良くない。以前卍解した時みたいな気配察知が使えれば便利だけど、霊圧も探れない私にそれができるはずもない。なにか、何かないかな…
私に今使えるのは直感だけだ。あの子が私だったらどうするか、みたいな直感。でもそれでもし見つけられても、隠れ鬼だから捕まえないといけない。そうなると瞬歩の距離が狭くて遅い上足音の立つ私では分が悪くなる。結構理不尽な遊びだなこれ
さっきから足音が足音がって言うから多分歩法に関することなんだろう。音が立って下品と言うことは、多分足音を立てずに瞬歩の距離を稼げってことかな?
もしそうだとしたら相当頑張らないといけないぞ…歩法と鬼道は苦手なんだから
「でも隠れ、隠れか…」
隠れ鬼ってことは直感に頼ったら見つからないかも。つまりあの希薄な霊圧を探知しないといけないのか…課題が多いな、遊びなんてレベルじゃない
とりあえずもう一度霊圧を探ってみる。しばらく意識を集中してたけど見つかる様な手応えはない
「もっさいなぁ、ほんまに吉良はんの事しかわからへんの? 特定の誰かしかわからへんなんておかしい思たらええのに」
また呆れ気味な声が聞こえる。でもこれはわかりやすいヒントだと思った
そう、言われてみれば特定の誰かしかわからないなんてそもそもおかしい。特定の誰かが"見つけやすい"のならあり得るかもしれないけど、それしかわからないなんて道理はないんだから
そうなると、私彼の方を追いかける時って具体的にどうしていたんだろう。記憶を掘り返して考える
「えーっと…」
まず意識を集中して、静かなところで、彼の方の霊圧の形を辿る。そう、霊子の固まり方が人によって違うから…その糸を辿って、辿って、より近づけば糸は太くなって…やがて人の形になる。それがいつものやり方
「それなら…」
ここは静かなところ。他の霊圧のない場所
なら後は探すだけ
もう一度集中して、ほんの僅か違和感というか霊子の中の不自然な糸を探す。それは多分私の系に似ていると思うんだ
声が聞こえると言うことは、そんなに遠くに行ってないはず。絶対に霊圧を殺し切るなんて隠密機動でもそんな簡単にできないんだから
ざぁ、と吹いた風に森が靡く。その中で揺れきらない一本の糸を見つけた
「!」
確かにこれは私の糸に似ている。きっとあの子だ。でも足音で気づかれてしまったら意味がない…ここで歩法を使いこなさないといけないのか
「やっとわかった? でも鏡花ちゃんの足音じゃ逃げ切るなんてややこしない。今日だけでできる思てへんさかい、今回はうちの前に来たら合格ね」
舐められてると思うと苛立つけど、今すぐ習得できないのも事実だ。そろそろ日も暮れるしと歩き出す
「ていうかそれかくれんぼじゃん…」
なんてぼやきながら付近の木を見上げるとそこに翠霞は座っていた。軽く手を振ると地面に降りてくる
「今日だけで霊圧探知のコツを掴んだのは良かった思うけど、感覚忘れんといてな?」
「わかってるわよ…」
遠回しでもこれだけ言われればわかる。翠霞も私が弱いと言いたいんだ。自分の斬魄刀にまで弱いと言われるのはなんたる屈辱だろう。己の弱さをわかっていたとしても向き合えていないのだと言われてるのだ、こんなに悔しいことはない
「明日からはこの応用で本格的に隠れ鬼をしようなぁ」
「明日からって…仕事あるんだけど」
「せやったら吉良はんに言うてしばらく鏡花ちゃんを貸してもらうで。あの人やったら言うたらわかる思うさかい」
翠霞はにっこりと笑った。笑わない私とは反対によく表情の出る子だな、翠霞は
「…そう」
対してそれしか言えなかった。確かに私は彼の方には遠く及ばないほど弱いとは思っている。だからこそ彼の方の盾に私はなりたい。でもこれだけ弱ければ牙にはなれない、斬拳走鬼の全てが至高とまでは行かなくても何かしらを苦手だと言っていては程遠いのだから
「ほな帰りは鬼ごっこにしよか。鏡花ちゃんが鬼で、足音立てへん様にしいひんとだめやわぁ」
「あ、ちょっと翠霞!」
またそれだけ残して翠霞は飛び出していく。慌てて追いかけるけど今度も置いてかれてしまった。ちくしょう、今に見てなさいよ
絶対明日は追いついてやるんだから!
********
「声、かけないの?」
窓際で下を眺める吉良さんがいたのでうちから声をかける。彼の目線の先では鏡花ちゃんが瞬歩の練習に励んでいて、反復横跳びの要領で一定の距離を往復する訓練をしていた
「とても声をかけられそうな空気ではないな」
必死なあの子を見てそう思うのかな。でもそう話す彼の声音はとても心配そうに感じた。こういうところが阿呆だって、あの子は気づいてないんだろうな。まったく愚直で、阿呆で、努力家な私のご主人はこれだから子供っぽい
「馬鹿だよねぇ、教えもなしにただやってるだけみたいなものだよあれ」
「なら教えれば良い」
「それは明日からかな。あれも効果はあるし、体力作り程度には」
そう、あの子に足りてないのは圧倒的に霊力のコントロールと体力。膨大な霊力をコントロールできないから卍解も不安定だし瞬歩は五月蝿いし鬼道もうまく形を成さない。その上霊力に相応した体力がないから卍解状態を長く維持できないし瞬歩の距離が稼げないんだけど、それを本人はまるでわかってないんだよね
斬術ができて霊圧が高ければある程度実力がある様には見えるだろうけど、他が疎か過ぎればそんなものはハリボテにすぎないわけで
「結構手厳しいんだね、君の教え方は」
「褒めて伸ばすやり方じゃないだけだよ。すぐ調子に乗るから」
「意外だな。僕の前ではわりと謙虚な印象だけど」
「謙虚なフリの間違いでしょ。格好つけてるつもりなだけ」
格好つけて澄ましてれば大人だと勘違いしてるだけの子供なんだから。そんな無駄なことしてるならうちみたいに素直になれば良いのに
「甘え下手なんだよ、あの子は。吉良さんと同じで」
「痛いところを突いてくるね」
「そう思うなら甘えてみれば?」
「僕としては甘えて欲しいところだ」
似てる二人だなぁと、改めて思う。マイナス思考でどっちも相手に対して格好つけたいと思ってるところなんてそっくり
しょうもないなぁとため息が出る
「…まぁいいや、うちは先に寝ようかな。吉良さん適当なところで声かけてあげて。明日も鏡花ちゃん借りるね」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみ〜」
振り向かず手を振ってその場を去った。しばらくあの二人寝ないだろうし侘助さんに会ってから寝ようかな。今はどこにいるかなぁ?
********
ざり、とまだ音がする。翠霞の瞬歩はあんなに静かで綺麗なのに
今日だって森からあの子が抜けていく時の瞬歩は音を感じさせなかった。身のこなしだって綺麗で、距離も長くて…本当にあの子が私の斬魄刀なのかわからなくなってくるほど
「はぁ、はっ…はぁ…」
どれだけ同じ動きをしていたかわからないけど、一旦止まってしまうと疲れが出る。そう言えば長距離走苦手だったな
頭の中では判っている。コツもわからないのにひたすら繰り返したって無意味だと。でも何もしないではいられないしと思うと体を動かしてしまう
いつも私は弱い。それを他人に指摘されるたび心が折れそうになって、それでも諦めきれなくてずるずると無駄なことをしているんだ。これでうまくなれるなら苦労はないのに
明日からは本格的に隠れ鬼が始まると翠霞は言っていた。今日立てた推測が正しかったら…今の私ではあの子を捕まえるなんて無理だと思う
「くそっ…」
額から滴る汗を拭ってもう一度構える。こんな日は気絶するまで体を動かさないと気が済まない
そう言えば、翠霞に言葉遣いが汚いと言われたな。全くその通りだ、こんな私ではいつか彼の方に嫌われてしまうかも…直さないと
「もう一回…」
と、足を踏み出した瞬間に声が聞こえた
「やめた方がいい」
「!」
思わず足を止めて、構えを崩し振り向く。声の通りそこには貴方がいた
「これ以上は無意味に体力を消費するだけだ。無駄なことをしても結果にはつながらない」
「…申し訳ありません」
息は上がってるし汗だくだし土埃で汚いからあんまり今会いたくなかったんだけどな。なんでこういう時に貴方は現れるのか
「わかったなら今日は寝ることだ。消灯時間はとっくに過ぎている」
「…わかりました」
貴方が言うなら仕方ない。こんなものは自己満足だとわかっているし、今日は諦めよう。明日は見つからない場所を探さないといけないな
「では失礼します。お手数をおかけしました、おやすみなさいませ」
部屋で筋トレならできるか…と考えていたら引き止められた。疑問に感じて振り向くと、貴方が訝しげに私を見ている
「…君、今日はうちに来て」
「はい?」
「今部屋に帰ったら筋トレする気だろ」
「そ、そんなことは…ごめんなさい考えました」
まずいバレた。思わず訊かれた反射で視線逸らしちゃったし自分で退路を塞いでいる。こんな時でも貴方に嘘がつけない私は確かにあほかもしれない。つきたくはないんだけど、やっぱり時折不便というか…
「まったく…今さっき無意味に体力を消費するなと言ったばかりじゃないか」
「動いてないと落ち着かなくて…」
「それが無意味だって言ってるんだ」
貴方は私に有無を言わせず、私の手を引いて歩き出す。戸惑いながらもついて行くとそのままお屋敷に入れられてお風呂に放り込まれた
「ひゃあ!?」
「とりあえず湯浴みして。上がったら報告するように」
「は、はい…」
それにしてもなんで湯船にお湯が張ってあるんだろう…と思いつつ体を流す。湯船に浸かる頃には少しばかりではあるけど冷静になってきた
「はぁ…」
本当にあの反復横跳びは今考えても無意味だと思う。限界まで体を使ったって明日に支障が出るだけなのに
落ち込んで深めに湯船に体を沈めるとちゃぷ、と音がした。その時の水面の動きに翠霞の身のこなしを感じて思い出す
私が水面に手を叩きつけたような歩法なら、あの子は水面に手をそっとつけたような動き。でも私より何倍も素早くて踏み込みが深い
あんな綺麗な動きにどうやったらなれるんだろう。こう、素振りの踏み込みの感じだと違うんだよな。もっと跳ねるような動きで、かつ霊力で一歩を何倍も伸ばすみたいなそういうイメージって言うか…教えてくれた先生もそんなことを言ってた気がする
では狼の動きとはなんだろう?
息を潜めて獲物を狙い、群れを率いて狩りをする…それはわかる。そのための音の立たない足捌きや気配を断つ呼吸、相手の気配を辿る耳と鼻
でも私にはそのどれもがない。それは人間として生きてきだからだ、あの子のように生まれつきの狼ではない
でも私がやるべきなのはそこに少しでも近づくこと。そのための音の立たない歩き方と遠く細かい霊圧も察知する力
「頑張るぞ…」
そこでお風呂から出る決意ができた。体を拭いてから最近持ち込むようになった自分の着替えを用意してもらっていたのでそれに着替える
「上がりました…」
居間の襖をそっと開けて顔を覗かせると、中へ入るように言われた。怒られた後なので申し訳なさでそろりと部屋に入ると、珍しく貴方が腕を広げて待っていて少し驚く
「おいで」
「は、はい…」
導かれるままに膝に座る。すると貴方は私をぐっと抱きしめた
「い、イヅルさん。これは…?」
「…今僕にできるのはこれだけだ」
「?」
「僕は翠霞さんほど君の戦い方をわかってるわけじゃない。だから今できるのは、こうやって君を甘やかすことだけだ」
貴方は少し拗ねたような声音で言う。自分を不甲斐ないと思っているのだろうか…そんなことはないのに。貴方はいつだって私より強くて、綺麗で、格好いいから。でもそこにも確かな弱さはあって、隠しきれてなくて…そんな人間臭い矛盾が好きなのにな
「…甘やかしてくれるんですか?」
「君の斬魄刀を見ていたら、君にもあんなに表情豊かな時があったのかもしれないと思ったんだ」
「それは…ないですねぇ」
目のせいで友達もいなかったし、元々諦め気味に生きてると言うか…喋ってたのも育ててくれたおじさんくらいだし
「本当にそう思うかい?」
「どうなんでしょう…確かに翠霞を見てるとわからなくなりますね」
私にもあんな側面があるのだろうか?
あったなら、貴方は喜んでくれるだろうか
「見たいんですか?」
「見れるものならね」
貴方がそう言うなら、いつかそうなるといいな。翠霞はいつだって感情豊かで、これも私なのかなって少し希望をくれるから
「とりあえず今日は好きなだけ君の願いに応えるよ。できる範囲でにはなるけど」
「願い、ですか…」
今正に叶っているけどな? これ以上の願いってなんだろう
とりあえず考えてみる…
「んー…そうですね。私も抱きしめたいです」
「…そんなのでいいのかい?」
「だって貴方は私の貴方でしょう?」
そう言って貴方の首に腕を回して抱きしめると、当たり前だけど貴方の香りがした。そこから、自分の気持ちの変化みたいなものを感じて…それを逡巡していく
最初は貴方の幸せを護りたかったのに、貴方が私を見てくれたから貴方自身ごと護りたくなった。そのためには何もかもがきっと足りなくて、それでもまだこの気持ちは捨てきれないから。だから強くならなきゃ。絶対に貴方を護って、絶対に貴方の牙で在れるように
「…貴方が好きです」
「…?」
急な言葉に、貴方は少し戸惑ってる
「誰よりも、誰よりも貴方が好きです」
他の誰が貴方を見捨てても、私だけは見捨てたくない。そばにいたい、一緒に死にたい
す…と抱きしめた腕を解放して貴方と目を合わせた。この言葉が一番甘えかもしれないと思っていても、貴方が甘えていいと言ってくれるならば
「…名前、呼んでください」
貴方が私の名前をその瞬間は、私にしかないから
「…鏡花」
「はい、イヅルさん」
できる限り精一杯で笑い返す
でも幸せだから、この時間を止めたくない
「よし、明日は頑張れそうです!」
「そうかい?」
「正直普段から甘やかしてもらっているので、これ以上なんてわからないですしね」
さっきまでの空気を思い出すとなんか照れるなぁと顔に出る。本当に…犬みたいに撫でてもらうくらいしか思いつかないし、流石にそこまで犬じゃない…はず
「わ、私そろそろ寝ますね。明日もあるので…」
だめだ恥ずかしいこれ。ちょっとずるいけどにげよう、照れで死んでしまう
でもなぜか貴方の膝から立ちあがろうとした時、腰を強めに抱かれて阻止された。不思議に思うと貴方が私をじっと見ている
「…?」
「今日翠霞さんに会ってね。そこで言われたんだ、甘えるのも大事だって」
「はぁ…」
翠霞め、私のしれないところで吉良副隊長に会うなんて狡すぎる。私だってもっと会いたいのに! ちょっと自由だからって!
「だから僕も少しだけ君に甘やかしてもらおうと思ってね」
その言葉に戸惑っていたらキスをされた
「!」
更にそれに驚いているともう一回キスされて今度は舌を入れられる
「んん…んふ…」
解放された頃にはやや意識が呆けていて、そのまま姫抱きにされた
「寝室にいこうか」
「ふぇ!?」
待って待って、今までそんな空気じゃなかったのに!
甘やかすってそういうこと!?
困惑はしつつも寝室はすぐそこなのであれよあれよと運ばれてしまう。珍しく布団はもう敷かれていて、そこに下ろされた
「す、するんですか…?」
「嫌かい?」
「嫌じゃないですけど…いつもと雰囲気が違うから緊張します」
「僕はしない」
そういう問題ではないような…?
なんて考えていると、首筋にキスをされる。そのまま軽く噛みつかれた
「んっ…」
少しだけ声が出てしまう。貴方は噛み付くのが好きなのかな
「んんっ」
今日は胸じゃなくて腹帯を解いてお腹を触られた。少しびっくりしてそれでも声が出る。撫でるようにお腹を弄る貴方の手は少しばかり冷たい
「…お腹、好きなんですか?」
「腹というか…肌が好きかな。触り心地がいい」
「!」
そんなこと初めて言われた! 嬉しいけど恥ずかしい…
貴方の手は私の肌を確かめるみたいにあちこちへ滑る。胸にも腿の付け根にも手は触れるけど、いやらしい感じはなくて。でも見えづらいからか肌が過敏に反応した
「ん…んぁ…」
「気持ちいいのかい」
「貴方が触るところが、熱くなるので」
貴方の手は冷たいはずなのに、触れられたところは熱を持つ。滑った跡がわかるようで胸が鳴った
滑ってきた手が頬に触れて、また撫でたかと思ったらキスが落とされる。それは段々と深くなっていってしまいには舌が絡まって互いの唾液が混ざっていった
「ふ…ん、ふぅ…んぅ」
深いキスは自然と体が期待してしまう。もっと深く愛し合えるきっかけだから
唇が離れると、貴方が改めて私を組み敷いた。薄暗くてもわかる貴方の瞳に心が動かないわけがなくてまた胸が一つ鳴る
吐息が溢れて体が少しだけ震えた。貴方が胸の間にキスを落とすとやっと胸元が弄られて、どこかで期待していた体が過敏に反応する
「ぁ…ん、あぁ」
今日はなんだか胸に触れて欲しいと思って、両腕を胸の下で組んで持ち上げたりしてみた。でもやっぱり恥ずかしいから顔は逸らしてしまう
「して欲しいなら言えばいい」
「は、恥ずかしくて…」
「素直になれないならしてあげられないな」
「あっ、やだ。言う、言いますから」
貴方は焦らすように胸に指を這わせる。私としては恥ずかしいけど触れてもらえないのはもっと嫌
「お、おっぱい…たくさん、いじめてください」
「いじめて欲しいのかい?」
「はい…強く摘まれるの、好きです」
そこから、胸先を勃たせるように貴方が触れて、小さな声をあげた少し後で強く摘まれた
「あぁあっ!」
「素直に言えたからご褒美だ」
「んっ…ありがとうございます」
まだじんじんと痛みを持つ胸先を貴方が口に含んで転がす。神経が過敏になっていて特有の快楽が生まれた
「んっ、あっ…あぁ、んん…きもち、ぃ…」
唇が胸から離れると、また空気に触れて熱くなる。少し惚けるけど、すぐに私に覆い被さる貴方の首に腕を回してキスをする
「んふ…はぁっ」
軽いキスの後で、攻守交代を交渉した。貴方が許可してくれたので上下が逆になる
首から腿の付け根までキスを落として、胸先を舌で転がして…それから下着越しにそそり勃つ貴方の自身に触れた。高い熱と硬くなった芯を持って私に訴えかけるそれは、期待に膨らんでるようにも感じる
貴方の股座に移動して下着を下ろして、昂るそれを両手で包んでから先を口に含んだ
「ん…っ」
ここまでに何度もやってるはずなのに相変わらず口に含むと大きい…咥えきれない太さじゃないと思うけど、飲み込みきれないから快楽を与えられてる自信もない
「ふ…っ」
少し前の玩具での練習はどこへ行ったのか。相変わらず上手くできてるとも思えない…お手本も知らないけど
「…っ」
貴方の少し余裕のない吐息とか、反応を見せる貴方の自身とか、そういうところを感じると進歩してるのかなとは思う
今までの感じだと長いストロークをつけつつ唾液で包むような感じがやりやすかったな。でも舌で裏筋を這わせるのは忘れないで…
「んん…っ」
今日は趣向を変えてみようかと思った。一度咥えてるのを離して、裏筋を下から上に舐め上げる。そこから先端の辺りだけ咥え直して先走りを吸い上げて…
先走りは少し粘度があって、唾液とは違う確かにあの精液を思わせる臭いがした。それを飲み込んで咥えた亀頭を舌で舐る。同時に睾丸を指で転がすように刺激してみた。衝撃があれば痛いくらいだし優しくすれば気持ちいいのかなと思っただけだけど
溢れる唾液を飲み込みながら亀頭だけを咥えて舐ってみたりまた奥まで咥え込んで抽送をしてみたり。貴方はどうするのが好きなんだろう
「んぶ、んく…」
視線だけ上に向けると肘をついて上体を起こした貴方と目が合う。恥ずかしいのと目が乾くのですぐ視線を戻したけど、貴方は今の私を見て何を思ってるのか気になった
「そろそろ限界かな…っ」
いつもより少しだけ早い気がした。今日試したものの中に気持ちいいのがあったのかも
もうすぐなら、と奥まで咥え込んで抽送を速める。律動をつけて舌で舐め上げるのは好きだよね、わかってる
「…っ、出すよ」
確かに膨らんできた。そのまま抽送を続けていると口の中にそれが溢れたので絞るようにゆっくりと吸い上げる
口の奥の方で受け止めて、貴方の自身を口から出してから飲み込む。あ、やばい。今日はもうキスできないや
それは置いておいて貴方の自身にもう一度キスをする。それから貴方の上に跨って秘部にそれを当てた
「今日は積極的だね」
「…? 甘やかすとはこういうことでは?」
質問の意味がわからない。こちらからご奉仕してアピールするのは違うの?
「…そうかもしれないな」
「?」
貴方が悪戯に笑う。なにか思うところがあるのかもしれないけど私にはわからない
一先ず自分の膣内に貴方の自身を深く受け入れる。相変わらず圧迫感のあるそれを私の膣内は記憶していて、挿入れただけで快楽があった
「あ…っ」
完全に入ったところで抽送を始める。今日は勇気をだして前のめりになって、貴方の胸板に手を置いてそれから深めに腰を動かす。これならちゃんと快楽を与えられて負けずに最後までできるはずだ
「ん、ぁ…あっ…」
それでも膣内でそれが擦れないなんてことはなくて、大きくはないけど確実に快楽は溜まっていく。長めのストロークを意識してるから余計なのかな
「…いつも思うけど」
「?」
「積極的にこういうことする割には脚開くの嫌がるよね、君は」
「!?」
脚開くってなに!?
恥ずかしいなって思ってるのがあけすけにはなってるだろうとは思ってたけど…
「あ、あしをひらっくて…」
すると貴方は私の手首を持って上体を起こす。戸惑っていると閉じた膝を開かされた
「ほら、こうやって」
「!!」
「このまま動いてみればわかるよ」
「そ、それははしたないのでは…?」
「気にしない」
そうは言われてもな…でも貴方がやって欲しいみたいだし、ちょっとだけ…
足を開いたまま、肘をついて背を布団に預け直す貴方の腹部に手を置いて動き出すけど…やっぱり接合部が見えるような状態ではしたなく腰を動かすというのは羞恥に焼かれる
「ぁ、はぁ…っ、あっ」
だけどこれが貴方は気持ちいいのかも。気持ち良くしてあげたいからもう少し頑張ろう
「っ、そのまま」
「はい…っ」
腰が大きく持ち上がるから本当に恥ずかしいなこれ
でもやっぱり大きく動く度に貴方が少し反応するからなんだか優位に立ったような気分だ。普段はないその感覚に少し気分が上がって、つい腹に置いていた手が胸元まで持ち上がる。こっちの方がより動けるから
貴方がそんな私を満足そうに見ている。何か企んでる顔だなとは思うんだけど、その企みの中身まではわからない
「いづるさんっ、きもちぃですかっ…?」
私の言葉に貴方は言葉で答えず、自分の胸元にある私の手を引いた。それから私の上半身を手前に寄せると
「!」
下から突き上げてきた
そのまま何度も突き上げて自分が上になっていたのでは届かないところまで届かせてくる
「あ…っ、ひゅっ、あ! まっ…あぁっ!」
なんで急に、なんて思考さえも溶かしにかかってくる。これじゃ前と同じなのに
「ま、いづるさっ、まって」
「このままじゃ君が悦くないだろ」
そんなの方便だ。さっきまであんなに私の痴態を見て満足そうにしてたくせに…っ
でも動きは止まらない。私の腕を掴んでいるのとは反対の腕で腰を抑えられてしまうともう逃げられないから快楽だけが雪崩れ込んで足に力が入らなくなっていく
「あぁぁっ、あ、だめいっちゃ…っ」
「今日は早くないか」
「自分でやってたって…きもちいのは、たまるっ、からぁ…しかたなっ」
「慣れてないことをするからだ」
そう言った貴方はまた上体を起こして私を抱き抱える。さらにそこから押し倒すといつもみたいに激しく求める
「んぃぃ…っ、ま、たおくっ、だめだめいっちゃ、う…〜〜〜〜っ!」
「! 今締めたら…っ」
意識が白くなったのと同時に膣内に熱いものを感じた。弛緩した体のふわついた意識で違和感を覚える
甘やかすってこういうことだけだったかな…?
いや、違うな…?
何を今更、という話ではあるんだけど、息を荒げる私を見つめる貴方の頬に手を添えて少し撫でてから体を起こして貴方をぐっと抱きしめる
「へへ…甘やかすってきっとこういうことですよね?」
なんて言って少し腕を緩めてから、いつもと違って私が貴方の頭を撫でた
「いづるさんはいつもお仕事頑張ってますよね。流石です。尊敬します。大好きです」
「…!」
流石に体力がないのでへにゃりと笑う。甘やかすって本来こう言うことだよね、なんて考えていると膣内で硬いものを感じた。同時に貴方がぎゅっと私を抱きしめる
「!」
それはずるりと出たようで、また奥にぐっと挿入ってきた。それに驚いていると布団に背中を戻されてそのまま組み敷かれる
「い、いづるさ…ん…?」
「…すまない、これは抑えられそうにないな」
予想外のことに驚く。そんなに誘惑するような事を言った記憶はないけどな、何がそんなに良かったんだろう
未だ膣内に居るそれは、ゆっくりと抽送を始めた。私が小さい嬌声を上げるとそれに反応するように速度を高める
「あ、ゃ…? まっ、きゅうに」
「抑えられそうにないって言っただろ。もう一回付き合って」
「ふぁ、ぇっ、あっ、はい…っ」
少しついていけないまま返事をすると、抽送は更に速まった。また弱いところを突かれて強制的に声が引き出される
そのまま二度目の情事は始まった。いつかのようだと思いつつ、何度も求められる悦びを噛み締め貴方の首に腕を回して縋る
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「…」
早朝もいいところな時間。いつもならまだ寝ている
それでも今日は起きてお風呂を借り、書き置きを残して自室に帰った
自室の襖を開けると予想通り翠霞もすでに起きている
「おはよう」
「おはよう、早いなぁ」
「今日も特訓でしょ。着替えるから待ってて」
私服の着物から死覇装へ着替えて翠霞と二人いつもの山に向かった。今日こそ本番の隠れ鬼、昨日の感覚を確かめつつ解散した翠霞を探す
正直言ってまだ歩法には自信がない。それでもやるしかないんだ、確実に狼の歩法を手に入れたいから
しんと意識を集中する
全てを隠す森の中で、狼の気配を探して
終
えっちシーンは入れたかったのでねじ込みました
ごめんなさい(懺悔)