※この作品はR-18です。

系   作:七星七夕

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当作品は二次創作であり、原作、実際の物事、人物、事象には一切の関連がありません、ご注意ください
また、死ぬほど捏造設定があり、原作の隙間を縫うような部分がいくつも散見されますが、これは個人の好みでありそういった作風であるとご理解いただければと思います。個人的にはその隙間は想像の余地のままになってたらうれしいな!

また、当作品は恋愛小説です
版権キャラクターとの恋愛描写や性行為描写が苦手な方は回避をお勧めします
主人公が大怪我したり戦闘したり場合によっては修行するかもしれませんが誰がなんと言おうとこの作品は恋愛小説です。ご理解いただければと思います
カップリングは「吉良イヅル×オリジナルキャラ」になります。ハーレム等の予定はありません、悪しからずお願いします









第二章「決戦の冬まで篇」
「怯える影」


「怯える影」

 

 

 それは何気ない会話だったと思う

 相手が誰だったかも覚えていない

 それでも貴方は私に言った「誰と笑っていたの?」と

 

「笑っていた? 私がですか?」

 

 驚きのあまり貴方を見る

 貴方以外の前で笑った記憶などないのだけれど

 

「そうだよ」

 

 書類を確認しながら貴方は言う。私はと言えば、手紙が届いたのでそれを渡しにきたにすぎない

 

「相手誰だったんですか?」

「相手の顔までは見てないな」

 

 それじゃあ記憶すらひっぱり出せない

 それでも私的にはショックが大きい話

 

「うーん、気を引き締めますね」

「いや、良い傾向なんじゃないかな。君は交友関係も狭いみたいだし」

 

 狭いどころか貴方以外の関係を持つ気が無いです

 というか、そう言う割には声音が不機嫌なのが一番気になる

 

「僕以外の前の君は…というか、仕事中の君は相変わらずだから心配していたんだ」

「うーん…」

 

 それは変わる気がないという意思表示のつもりだけど。私は貴方がいればそれで良い

 とりあえず勇気を持って素直な言葉を言ってみることにした

 

「…そう言う割には、声音が不機嫌に聞こえます」

「…そんな事はないよ」

 

 うっそだぁ

 貴方の機嫌の機微くらい見抜けない私じゃない

 

 どうしてそんなちぐはぐなことをするの?

 

「吉良副隊長が他にも交友を持てと言うならそうしますが、それは貴方の望むものですか?」

「…」

 

 貴方の筆が止まる。考えるように黙ってしまった貴方の言葉を私は待つけど、答える気配はない

 

「少し考えておいてください。後でまたきます」

 

 そう言って私は執務室を出た

 貴方のしたいことが私にはわからない

 

 

********

 

 

「答え、出ましたか?」

 

 平隊士が副隊長より終業が早いのはよくあること

 私は終業後に吉良副隊長の執務室を訪れていた

 本日の経過報告をまとめる貴方に私は問う

 

「…そう簡単には出そうにないよ」

 

 ならなぜあんなことを言ったのか…

 心を通じ合った気で居たのに、私は貴方が見えない

 

 貴方も私を見ない

 こんな苦痛はない

 

「私の答えとしては、貴方以外の交友を保とうとは思っていません。私は貴方がいればそれで良い」

「ならどうして…!」

 

 そう言って貴方が私を見る

 でも視線が合うと貴方は気まずそうに目を逸らした

 これが嫉妬だったら良いのに

 

「どうして、何ですか?」

 

 私は貴方を真っ直ぐ見る。でも貴方は下を向いているから表情はわからない

 貴方の言葉を待っていると、貴方は大きくため息をついた。そのまま少し考えるようにしてから口を開く

 

「…続きは僕の家で話そう。これ以上の公私混同は示しがつかない」

「わかりました」

 

 そのまま貴方は書類をまとめて私と部屋を出た

 私は帰りの支度をしてから向かうと話したのでそこで一旦別れる

 

「…」

 

 不敬だとわかっていてもつい自分の都合のいい方に考えてしまう

 あれは嫉妬なのではないかと

 

 偶然とはいえ、もしそうなら時折そんな意地悪をしたくなるなぁなどと

 ついそんなことを考えてしまう私は根性がひん曲がっている

 

「良くないよなぁ…」

 

 帰り支度をしながらため息をつく

 彼の方の強い感情が私に向くほど嬉しくなってしまうのは、私の良くないところだ

 私は考えるのをやめて彼の方の家に向かった

 

 

********

 

 

 彼の方の家に着くと呼び鈴を鳴らす

 屋敷の奥から足音が聞こえてきて、貴方の人影が扉を開ける

 

「いらっしゃい」

「お邪魔します」

 

 貴方の家に来るのもなれてきた

 もうおっかなびっくり入る事はないけど、それでも少し緊張する

 草履を揃えて中に入ると、今日は二階の部屋に案内された

 

 部屋に入って違和感を覚えたのは、貴方がその部屋の鍵を閉めたこと

 

「話の続きをしようか」

「…はい」

 

 少しだけど、何かいやな予感がした

 私の前で正座する貴方は死覇装のままで。着替える時間がなかったのかわざとなのか、初めての時を思い出す

 

「僕はこれでも君の強い思いに感心している。だからこそ他の死神と笑うとは思っていなかった」

「それに関しては自覚も有りません。申し訳ありませんが私が他の方と笑うなど恥に等しい」

 

 相手が誰だったかも思い出せない

 笑いたくて笑ったわけではないかもしれない

 記憶を探るけど、そんな記憶はない

 

「君は僕が好きなんだろう?」

「当たり前のことを言わないでください」

 

 不安定な貴方も美しいけど、今はそんな話をしてる場合ではない

 貴方の今回の動機はやはり嫉妬と見て間違い無いと思う。それは嬉しいけど、感情を整理できないなら最初から素直に言えば良いものを

 

「要は嫉妬…と言うことで良いですか?」

 

 私の言葉に貴方は急に顔を赤くした

 嬉しいけどそう言うところ不器用すぎる

 

「先ほども言いましたが、私には貴方以外を求める心はありません」

「…本当に?」

 

 貴方は訝しげに私を見る

 たった一回のことでここまで拗らせるとは、私の依存が強すぎただろうか

 それともここまでの経験がそうさせるのか

 そんな貴方を見れるのも嬉しいけど

 

 私は大きくため息をつくと貴方に近づく。貴方の手を握ってそのまま抱き寄せた

 

「心配しなくても、私は貴方からいなくなりませんよ」

 

 それが私の忠誠

 それが私の本懐

 貴方のためなら、死んでも良いし死ななくても良い

 

「…まだ足りませんか?」

 

 返事のない貴方に私は不安を覚える

 

「それなら、貴方が“私の貴方”になったら、信じてくれますか?」

 

 耳元で囁く。離れると貴方は驚いた顔で私を見た

 

「それってどういう…」

 

 そう言葉を放つ貴方が動揺してる不意をついて押し倒す。貴方は私を見たまま目を白黒させて状況が飲み込めないみたいだった

 

「こうするんですよ」

 

 私は言葉を放って貴方にキスをする。いつもとは違って私が貴方の下唇をなぞって開いたところに舌をねじ込む

 

「ん…ふ…」

 

 自分が誘導すると息がしやすかった。短く舌を絡めて互いの唇を離す。珍しく貴方が息を上げてるのに強く胸が高鳴った

 

「私が、私が貴方を"私だけの貴方"にするんです」

 

 他の誰にも渡しはしない

 私が離れてやるものか

 私が“貴方だけの私”なら、貴方も“私だけの貴方”になって

 

「ほら、私だけ見て」

 

 そう言って首筋にキスをする

 そのまま舌で鎖骨をなぞって、貴方の死覇装の腹帯を外してから胸に、腹にと唇を落とす

 手は撫でるように貴方の肌を滑って、やがて下腹に届く。体は細いのにしっかり筋肉はあって、どこを触っても胸が高鳴るけど細い腰回りは特に私を興奮させる

 

「きょうか、やめ…」

「どうしてですか?」

 

 慣れない貴方を見てるだけでさらに胸が高鳴る

 愛おしくてたまらない

 下腹に届いた手がさらに下に進んでいくと、下着越しに貴方の自身が主張してるのが安易にわかった

 

「たってる」

 

 私が悪戯に笑うと、貴方は利き手で口元を隠した。私はその手を退けて貴方の目を見る

 

「隠さないで」

 

 まだ照れる貴方の額にキスを落としてから、私の体は貴方の下半身へと向かっていく

 袴と下着を同時に下ろして、そそりたつそれに口づけをした

 

「鏡花、それは…!」

 

 起き上がって私を止める貴方の言葉を知らないふりして、それを口に含んでいく。まだ勃ちの甘かったそれが私の口の中で大きく硬くなっていくのは嬉しい

 

「んん…んふ…」

 

 汗で蒸れた、独特の臭いがする。そこに貴方の匂いが混ざっていて、脳が興奮してるのを感じた

 前回と少し違って、それを口に含みながらでも唾液を少し飲み込めるようになった。でも意識しない水音が鳴ってしまう。ちょっとはしたないな

 

 貴方の顔は見えないけど、貴方の自身が反応してるあたり気持ちいいのかな

 試しに舌を絡めたまま奥まで咥え込んで、ゆっくりとストロークを付けてみる。そのままそれを続けていると、口に咥えたそれはまた大きくなった気がした

 

「んぅ…」

 

 大きくなったのに少し驚いて声が出る

 舌が少し痺れてきた。私の待っているものはまだかな?

 

「きょ、うか…!それ以上は…っ」

 

 耐え忍ぶ貴方の声が聞こえる

 わかっててやってるので無視するとして、私はストロークを少し早めた。早く欲しい

 

「ま…っ、出るから…!」

 

 そのためにこうしてるのに

 我慢しないで

 

「!」

「〜〜〜っ!」

 

 口の中で貴方の自身が跳ねている。同時にどろりとした液体が広がった

 すぅ、と鼻で息を吸うと確かな強い匂い。驚いて吐き出しそうになったけど耐える

 液体と貴方の自身を分離させるような気持ちで口の中に液体だけを残す。そのまま息を吸わないようにして喉奥で飲み込んだ

 

 「…あは」

 

 それでもその臭いは喉から鼻に抜ける

 どれだけ唾液で流しても、微かにそれは残って

 まるで貴方に体の中まで痕を刻まれたよう

 

「今日はもうキスできないですね…でも」

 

 私の顔はさぞ恍惚としてることだろう

 だけど私の狙いはそこじゃない

 

「でも、まだ逃さないですよ」

 

 私の放った言葉に驚きを隠せない貴方が愛しい

 私も自分の死覇装の腹帯を解いて下着ごと袴を下ろして貴方に跨った

 

「鏡花、それはっ」

「まだできますよね?」

 

 私はニヤリと笑ってから貴方をもう一度押し倒して貴方の自身に向かって腰を下ろす

 文句を言いつつも止めない辺り、貴方はこう言うのも好きだったりして…なんてね

 

「んっ…」

 

 いつもと違う挿入感に不思議な感覚を覚える

 ゆっくりと膣内に貴方を迎え入れると、普段より形や圧迫感がわかる気がして新しい発見を得た

 

「んんん…っ」

 

 膣内を侵食される度声が出てしまう。いつもと違うところを擦られてるようで、また違う快楽が脳に届く

 座り込んで貴方と触れる場所が増える。どうやら全部入ったみたいだ

 

「あは…全部挿入りましたね」

 

 圧迫感は確かにあるけど、それ以上の幸福感が私の中を満たしている

 貴方の顔を見ると、真っ赤にして私を見ていた

 

 あぁ、その視線が私を高めるのに

 

「今日は私が貴方を侵食する番です」

 

 貴方の頬を両手で包んで笑う

 そのまま手を腹部まで滑らせてそれを支えに腰を動かし始めた

 

「…ん、んん…」

 

 腰を落とすたびに貴方の自身の先端がもどかしい所に当たる

 私にも恥はあるのではしたない足の開き方はできない、でもそれ故に焦らされてるような気がしてしまう

 

 とん、とん、とリズムをつけてストロークしていく

 動くたびに胸が揺れる感覚があって、上の着物は着たままで良かったと思った

 

「あっ、んっ、んんっ…」

 

 恥ずかしくて目が開けない

 後ろの一本結びの毛先がうなじに当たる感覚がくすぐったい

 そうして少しの間貴方の上で動いていると、不意に貴方が私の両手を掴んだ

 

「!!」

 

 そのまま突き上げるように貴方が腰を持ち上げる。それに押し付けるように手を引っ張られて、弾ける快楽が脳に押しあがる

 

「あーっ!あっあっ…!」

 

 今まで焦らされていた最奥に貴方の自身が届く

 ノックするように何度も突き上げられれば、呆気なく達してしまうのが当たり前だと思いたい

 

「あぁっ、これだめ、なんでっ」

「少し意地悪をしたくなってね」

 

 これはだめだ、このままでは腰が抜けて動けなくなってしまう

 

「あっ、あーっ、だめっすぐまたいっちゃうからっ」

「君に逝くことを縛ったつもりはないよ」

 

 貴方が今度は私の腰を掴んで最奥にまで押し当てる

 強い圧迫感と突き上げられる快楽が脳まで届いてまた弾けた

 

「あーっ、あーー…っ!」

 

 のけぞって快楽から逃げようとする

 それなのに、それなのに

 貴方が起き上がって私を抱きしめるから、貴方の匂いで幸せになってしまう

 

「いやぁ、きょうはわたしが、するって」

 

 浮遊感の強い意識で必死に言葉を作る

 貴方の身体に抱きついて必死に快楽に耐えようとするけど、貴方は易々と私の腰を持ち上げて揺らす。それだけでずっと気持ちいい

 

「あんなの見せられて我慢できるわけないじゃないか」

「だってあなたが、あっあっ、しんじて、くれないからっ」

 

 嬌声混じりに言葉を放つ

 貴方は私の腰から手を離して強く抱きしめると、髪のリボンを解いて腰の抜けた私を横たわらせた

 

「床でごめん、痛くないかい?」

「んん…だいじょぶ、です」

 

 力の抜けた笑顔を貴方に向ける私の頭を撫でた貴方は「そう、よかった」と言ってまた腰を動かし始めた

 

「あっあっ、あぁっ! まって、まってまたいっちゃ」

「逃さない」

 

 反射的に快楽から逃げようとする私はまた貴方に捕まる

 左手に指を絡められて逃げられないのに、貴方は最奥を容赦なく突いてきて

 

「まらいく…っ、いった、いったのぉ!」

 

 果てた先からまた奥を突かれてすぐに果てる感覚が重なる

 頭がおかしくなりそうなほど気持ちいい

 

「やっだめ、こわれちゃう…!」

「壊れればいい、壊れて、僕だけになればいいんだ」

 

 もう嬌声しかあげられない

 いつもより長く快楽の波が押し寄せてくる

 こんなに長くするのは初めて

 

「あっぁあ…っ、いづるさん…っ」

 

 私が貴方を呼ぶと、貴方は私の左手を解放して胸に触れた。下腹部では快楽が続いているのに、貴方が胸の先を強くつまむから

 

「あぁぁっ!あぁ!あー!」

 

 のけぞって果てる

 こんな快楽知らない、貴方はどこでこんなの知ったの?

 

「…かわいいね」

「やぁっ、そんなことない、ですっ…」

 

 こんな姿可愛いわけないのに

 

「大丈夫、可愛いから」

 

 そう言った瞬間、膣内への抽送が早くなる

 激しく奥まで穿たれて、私は一突きごとに弾ける快感が重なっていた

 

「らめっ、これらめずっといってるっ」

「僕もっ、逝くから…!」

 

 また果てたのと同時に膣内で貴方が逝ったのを感じる

 あぁだめだ、これは幸せ過ぎる

 

「はぁ、はぁ…はっ…はぁ…っ」

 

 相変わらず肩で息をするほど体力を使う

 まだ膣内が痙攣してるのがわかる。そこには僅かな快楽があって逃げられない

 貴方が私の膣内から自身を引き抜くのでさえ、今日は快楽になる

 

「んん…っ」

 

 思わず声が出た、恥ずかしい

 貴方は前髪をかきあげると、腰の抜けた私の頬にキスをした

 

「湯浴み、しようか」

 

 貴方の言葉に、そう言えばたぶん沸かしてあったなぁと思い出す。お風呂の電気ついてたっぽいし

 微笑む貴方にときめかないわけもなく、私は少し顔が赤くなった

 

「はい…」

 

 でもお風呂を沸かしてあったということは、こうなることがわかってたんじゃないかと考えてしまう

 もしそうだとしたら、相変わらず意地の悪い人だ

 

「抱き上げるよ」

 

 そう言ってまたお姫様抱っこ

 寝そべってたし抱きやすいんだろうけど、これはだめだ、喜びで胸が高鳴ってしまう

 

「座れるかい?」

「大丈夫です」

 

 と言いつつ、まだ腰が抜けてるので案の定洗ってもらうことになる

 体は自分でやると言ったのに、洗われてしまった

 

「そこは…!自分でやりますから!」

「今日はいいよ」

 

 そう言って貴方は下腹部に手を伸ばす

 膣内から精液をかき出すために貴方の指が挿入ってきて、まだ過敏な膣内は反応する

 

「んっ、〜〜っ!んん…」

 

 口を手で押さえても声が漏れる

 後ろから手を伸ばしていた貴方が耳元に顔を近づけるから、それだけで胸が高鳴って

 

「…もう一度、したいの?」

「!〜〜〜〜っ!!」

 

 意地悪だ

 腰が抜けてなかったら何度だってしたいに決まってる

 

「それは…っ」

「冗談」

 

 そう言われて顔を真っ赤にした

 貴方はいつも言葉で私をいじめる

 

 膣内から貴方は指を引き抜くと、石鹸で普通に洗い始めるものだから。私は羞恥でどうにかなりそうだった

 体を流すとまた湯船に浸けられる

 浮力で力の抜ける感覚にリラックスできた

 

「気持ちよさそうだね」

「なんでお風呂沸かしてあったのか不思議ですけどね…」

 

 私の言葉に、貴方は少し言葉をためらうように考えたけど、すぐに口を開いた

 

「…返答次第では、僕が君に痕を残すつもりだったから」

「ふぇ…」

 

 照れながら話す貴方に、私の顔まで熱くなる

 そんなこと…嬉しくないわけがない

 

 ただ少しだけ、意地悪な返答をしておけばよかったと考えてしまった

 貴方の強い感情を体にぶつけられるなんて、嬉しすぎる

 

「あ、ありがとう、ございます…」

「どうして君がお礼を言うのさ」

「だって、貴方が私を…お、犯すなんて、幸せ過ぎて…」

「…君、変わってるって言われない?」

 

 呆れた顔で貴方が私を見る

 変わってるかどうかなら、貴方にしか心を開いてない段階でそうだと思う

 でもそれは、初めての時の様だ。幸せ

 

「貴方の強い感情が私に向くのは、幸せなので…」

「…」

 

 貴方はため息をついて泡だらけの体を流し始めた

 先に洗ってあった髪がオールバックなの、相変わらずかっこいい…いつもの貴方が一番だけど、ギャップのあるこの姿も素敵

 

「君はそろそろ上がるかい?」

「ん…一緒に入るの、だめですか?」

「仕方ないな」

「えへ…」

 

 貴方が湯船に入ってくる

 相変わらずその上に乗る形で私も浸かると、お湯が溢れた

 

「〜♪」

「ご機嫌だね」

 

 鼻歌で機嫌を表す私に貴方が言う

 

「貴方に触れていられるので」

「そうかい?」

「もちろんです、イヅルさん」

 

 互いの顔は見えないけど、貴方も嬉しく思ってくれたら良い

 

「ねぇ、イヅルさん」

 

 そう、貴方を呼んだ私の声音が震えているのが、自分でもわかる

「…どうしたんだい?」

「私…私は“貴方だけの私”になれていますか?」

 

 自信がない訳じゃない。私の心も体も生き方も貴方のもの

 でも、疑われるようなことをしたのが私なら、それは

 

「…鏡花」

「!」

 

 貴方が後ろから私を抱きしめる

 それに驚くと、貴方は私の耳元で囁いた

 

「君の気持ちは伝わっているよ」

「…そういう、ことじゃないの、わかってるでしょうに」

 

 気持ちはいつだって伝えてる

 私が聞きたいのはそんな答えじゃない

 

「大丈夫、ちゃんと君が“僕だけの君”だって思えたから」

「!」

 

 嬉しい。ちゃんとそう思ってもらえたなら

 でも

 

「本当、ですか?」

「信じられないの?」

「…最初に私を疑ったのは貴方です」

「それを言われると弱いな…どうしたら信じてもらえるかな…」

 

 貴方の言葉で私はお風呂の中で半回転して貴方と向き合う。そのまま軽くキスをして、寂しい気持ちのまま貴方を見た

 

「…ずっと、ずっと“私だけの貴方”でいてください。それ以外なんて、求めないから」

 

 貴方が私の頭を撫でる

 とても幸せだけど、私は貴方の言葉を待っている

 

「…いいよ。だから君も“僕だけの君”でいて欲しい」

「当たり前のこと、言わないでください」

 

 そんなことは当たり前で、でも嬉しくて

 少しだけ、少しだけ泣いた

 

 

 お風呂から上がって縁側で休むのは最早通例になってる気がするなぁと考えつつ

 これだけ通ってるともう急なことがあっても貴方の服を借りるのでは無くて自分の服持ち歩いた方がいい気がする

 

「月が綺麗だね」

 

 空に輝く三日月を眺めながら貴方は言う

 私は、貴方がその言葉の俗世的な言い回しの意味を知らないんだろうなぁと思いながらも、勝手にその言葉を言われた気がして嬉しくなった

 その様子を見て貴方が私を不思議そうに見る

 

「おかしなこと言ったかい?」

「いいえ、嬉しくなったんです」

「何故?」

 

 貴方を見て微笑む

 

「現世では、有名な作家が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したんです。本当の意味は「あなたを愛しています」なんですけどね」

 

 こう言うの説明するの、なんか恥ずかしいな

 

「だから現世だと、愛しているの隠語として使われる場合があるんですよ」

「…僕はそんなつもりで言ったわけじゃないよ」

「わかってますよ。でもその話を思い出して、そうだったらいいのになぁなんて思っただけです」

 

 あぁ、貴方との何気ない会話が愛おしい

 やっぱり貴方以外には笑いたくなんてないな、嘘をつきたくないの

 その場の喜びを押し殺してでも、貴方だけを見ていたい

 

「君は案外ロマンチストなんだね」

「そうですか? 俳句も十分ロマンだと思いますが」

 

 現実主義の貴方にしては、とてもロマンチックだと思うけどな

 世界を見て言葉を紡ぐのだから

 

「仕事と趣味は違うから」

「では貴方の本質も、案外ロマンチストと言う事ですね」

「うーん、どうだろ」

 

 貴方は何か納得できない様だった

 そういうこだわりがあるんだなぁと新しい発見

 

「まぁ、それはともかく少しは信用を取り戻せた様で何よりです」

「信用、か…」

 

 私の言葉に、貴方は少し考えるように空を見上げた

 貴方の言葉を待っていると、自嘲気味に話し始める

 

「こんなに取り乱すなんて思わなかったな」

 

 なんでベタな、と私は思った

 嫉妬に身を駆られる人はよく言いますよね

 

「…そう思うものですか?」

「君が他の死神に笑いかけるくらい、なんでもないと思っていたからね。むしろいい傾向だと思っていたんだ」

 

 それはそれで寂しい

 そんなの、貴方から離れていくみたいじゃないか

 

「私は貴方のそばから離れてあげませんよ」

 

 もう貴方は私の思いを受け止めたのだから

 もう私は貴方の私なのだから

 

「知っているさ」

「ならいいんです」

 

 誰にも渡してやるもんか

 私だけの貴方、私だけの関係、愛しい、愛しい、私だけの

 

「今日、泊まっていってもいいですか?」

「構わないよ、今日は遅いし僕から言おうとしてたくらいだから」

「ありがとうございます」

 

 時間が何時だろうと夜更けなのは確かだ

 寮にわざわざ帰るくらいなら泊まって行った方が早い

 

「…私にも」

「?」

 

 呟くように、言う

 唇が震えた

 これを言ってしまったら、貴方に嫌われそうで。ずっと言えなかった

 

「私にも、貴方にまだ言えないことがあります」

「言えないこと?」

 

 後ろめたくて、貴方から視線を逸らして目を伏せる

 でもせめて少しくらい話さなくちゃ

 嘘だけはつきたくないから

 今日みたいなことがあるなら、尚更

 

「…たぶん気づいてますよね、これ」

 

 そう言って私は右膝を立てて借りた着流しを捲る

 下着の一部から足先までが露出して、付け根には小さな隊花の刺青

 

「…」

「すぐ訊かれるかなって思ってたんですけど、何も訊かないで居てくれたので私から少しだけお話しします」

 

 私は脚をしまって貴方に向き直す

 そして覚悟を決めて、貴方をまっすぐ見た

 

「私は、貴方に言えないことがあります。言わないで済んだら、それが一番だと思うことが」

 

 貴方も私を見ている

 まるで本当に初めての時の様だ

 

「この刺青は、私が絶対に貴方のそばにいるための覚悟です。私が貴方を守るための、覚悟」

 

 そして私は頭を下げた

 これで嫌われたら仕方ないかもなんて後ろ向きなことを考えながら

 

「話せないことを許さないでください。貴方に隠し事をすることを許さないでください。私の業は、私が墓場まで連れて行きます」

 

 だから、それだけは許して

 

「嘘だけは、貴方に嘘だけはつきたくないんです。貴方を騙す様なことだけはしたくない。だけど話せないから、それならせめて話せないと言うしか無くて」

 

 こんなの言い訳だ

 わかってるのに

 

「いいよ」

 

 貴方から、予想外の言葉が飛んできた

 

「え…?」

「いいよ。話せないなら、それでも」

 

 貴方はまた空を見る

 私は驚いて言葉が出ない

 

「君が話せないと思うなら、僕に聞くことはできないから」

「イヅルさん…」

 

 私はまた泣きそうになった

 どうして貴方はそんな、そんなに

 

「その刺青、言えなかったんだ。どうして入ってるのか…お洒落にしては変わった位置や模様だとは思っていたけど」

 

 実際お洒落じゃないしな、なんて考えた

 こんな痛いところにお洒落で入れる人も早々いないと思うけど

 

「だけど、君がこうして話してくれたから。話せないことまでは聞かない」

「…ありがとうございます」

 

 私はまた頭を下げた

 

「話せない理由は、聞いていいかい」

 

 私はここで一つ深呼吸をした

 それでも体がこわばる

 

「…貴方のそばに、いれなくなるかもしれないから」

 

 そう、きっと貴方のそばに居れなくなる

 それだけは、絶対に避けたい

 

 貴方のそばに居続けたいの

 

「…そう」

 

 貴方はそれ以上何も言わなかった

 私も、それ以上は話せなかった

 沈黙が痛くて、私は口を開く

 

「イヅルさん」

「なんだい?」

「…好きです」

 

 私は貴方を見て小さく笑った

 貴方は私の言葉に少しだけ呆れたように笑うと、私の頭を撫でて抱き寄せてくれた

 

「へへ…」

 

 それだけのことが嬉しい

 月はそれを見ているのだろうか?

 

 

終

 

 

 

 

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