※この作品はR-18です。

系   作:七星七夕

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当作品は二次創作であり、原作、実際の物事、人物、事象には一切の関連がありません、ご注意ください
また、死ぬほど捏造設定があり、原作の隙間を縫うような部分がいくつも散見されますが、これは個人の好みでありそういった作風であるとご理解いただければと思います。個人的にはその隙間は想像の余地のままになってたらうれしいな!

また、当作品は恋愛小説です
版権キャラクターとの恋愛描写や性行為描写が苦手な方は回避をお勧めします
主人公が大怪我したり戦闘したり場合によっては修行するかもしれませんが誰がなんと言おうとこの作品は恋愛小説です。ご理解いただければと思います
カップリングは「吉良イヅル×オリジナルキャラ」になります。ハーレム等の予定はありません、悪しからずお願いします









「偶像」

「偶像」

 

 

 視界が、強く揺らいだのを感じた

 目の前の光景が、あまりにも、身勝手な私を抉ってきて

 鼓動が強く締め付けて私を縛る

 助からない、わかってるのに

 

 私はその場を逃げ出した

 

 走って、走って、走った

 隊舎を飛び出して走って、見てしまったものを掻き消したくてずっとずっと走って

 前を見ないで走っていたものだから、人にぶつかった

 

「っあ、ごめんなさ…って申し訳ありません!」

 

 桃色のストールを見て背筋が凍る

 慌てて顔を上げると、やはりそこにいたのは松本副隊長だった

 それを確認して今度は頭を下げる

 

「ちょっと、どうしたのアンタこんな所で走ったりして…それに酷い顔よ?」

「…っあ、その…」

 

 言葉に詰まる

 吉良副隊長とこの方が仲が良いのは知ってるわけで

 

「ご心配、ありがとうございます…お気遣いなく」

 

 でも確かに酷い顔してるんだろうなって思った

 あんなものは辛くて、でもそう感じる私は身勝手で、理不尽で、器量が狭い

 

 それなのに今でも心臓はうるさくて、視界が回って、泣きそうで辛くて

 私がへらりと笑って…笑ってしまってその場を去ろうとすると、腕を掴まれた

 

「こんな酷い顔の子ほっとけるわけないでしょ。どこの隊? 救護詰所行くわよ」

「あぁっ、待って下さい。これはその…精神的なものなので、大丈夫ですから!」

 

 体調不良と思われるほど酷い顔してたのかと思うとむしろ困惑する。まさかストレスでこんなことになるとは

 また慌てて弁明すると、松本副隊長は一度ため息をついて私を見た

 

「アンタ…名前は?」

「えと…三番隊所属、緋月鏡花と言います」

「それって…」

 

 松本副隊長が私の名前を聞いて、少し逡巡としてるような顔をすると何故か伝令神機を取り出す

 そのままどこかに電話をかけてるみたいだ。その間も私の腕は強く掴まれていて、抜け出せる雰囲気でもなく、正直何が起きるかわからないし震える

 

「あっ、隊長ー? 道端で体調不良の子見つけちゃって四番隊届けてくるので遅くなりまーす」

「!?」

 

 体調不良なのは私だろうか

 松本副隊長はそれだけ言うと電話を切った。伝令神機を閉じると私をみる

 

「さ、行くわよ」

「どこにですか…?」

「良いから、ついてきなさい」

 

 私は腕を掴まれたままずるずると引き摺られていく

 やっぱり無礼を働いたから折檻でもされるのかもしれないと思うと身震いが止まらないわけで

 誰か助けてほしいと思った

 

 

********

 

 

「じゃあアタシあんみつで」

 

 そう店員に笑顔を向ける松本副隊長に連れてこられたのは瀞霊廷内の甘味処だった。いや何故

 

「アンタも何か頼みなさいよ。奢ってあげるから」

「悪いですよそんな…」

「ごちゃごちゃ言ってないで早くする」

 

 その表情には断ってはいけない何かを感じた

 仕方ないので松本副隊長にお礼をしてご厚意に甘えることにする

 

「じゃ、じゃあ…みたらし団子3本で…」

 

 控えめに注文を出してお菓子が来るのを待つことにした

 おそらく松本副隊長とは話すのも初めてだったと思うんだけど…どうしてこうなったのか

 助けてください吉良副隊長

 

「で、何がストレスなのよ?」

「えっ」

「えっ、じゃないわよ。今も酷い顔してる」

 

 それは濃いクマの話だろうか、そうだとしたら私の勲章なんだが

 たぶん違うんだろうな…

 まだ、二つの意味で動揺してるこの心臓を見抜いているのかもしれない

 

「それは…」

 

 思わず口籠もる

 心配してくれてるのはありがたいけど、どこまで話して良いものか

 

「アンタ吉良の恋人でしょ?」

「ぶはっ」

 

 気を紛らすために口に含んだお茶を若干吹いた

 何故そんなことを、知って、いるのか

 

「もうあちこちで噂じゃない、もしかして知らないの?」

「…」

 

 噂っていうのは本人ほど知らないものだよなぁ、と言いたい所だけどそんなことだろうなと思った。この間の記者といい、最近の隊士の反応といい、ね…

 私があんまり隠す気ないのもあると思うけど

 

 牽制、兼ねてないって言ったら嘘だ

 

「えーっとぉ…」

 

 かと言ってそうでしょうね、とも言いづらいというか、恥ずかしいというか…言葉が濁る

 

「まぁなんでも良いけど、その顔吉良のことじゃないの?」

「…!」

 

 やばい、誤魔化せなかった

 甘味処の店員さんがお菓子を置いて去っていくまで固まってしまった私に逃げ場はない

 

「何があったか聞かせなさいよ」

「い、いやですよ。器量のない話ですから…」

「あんな顔で帰って、吉良が心配しないと思うの?」

 

 それは、と言い切ることすらできなかった

 心配、してくれると嬉しいけど、だけど

 

「本人には黙っておいてあげるから、お姉さんにどーんと話してごらんなさい」

「は、はぁ…」

 

 自分がみみっちいと思うから話したくないけど、話さないわけにもいかないみたいだ

 私は震える唇を開く

 

「き、吉良副隊長と雛森副隊長が話してるのを見かけて、動揺して…それだけ、なんですけど」

「はぁ!? アンタそんなことで悩んでたの!?」

「そう言われると思ったから言いたくなかったんですよ…」

 

 器量も小さければ度量もない、そんな悩みだ

 貴方は私だけの貴方なのに、それなのに、わかっているのに

 あの光景が、不安で

 

「アンタ吉良と付き合ってんでしょ? 何をそんなに不安になるのよ」

「不安ですよ、彼の方がどれだけ雛森副隊長を見てきたかなんて…私にはわからないから」

 

 貴方はいつから、雛森副隊長に想いを寄せていたんだろう

 いつから、淡い思いを伏せてきたんだろう

 いつから、私は身勝手に貴方に踏み入ったんだろう

 

 怖くて、怖くて

 貴方が、そこに行ってしまうんじゃないかって

 

「緋月…」

 

 沈黙が怖くてお団子を食べる

 食べてる間は話さなくても良いし

 一本めを食べ切った時、前から手が伸びてきた

 

「!?」

 

 乱暴に頭を撫でられる

 せっかく整えた髪が…ボサボサに…!

 

「!?!?!」

「アンタ吉良に似て辛気臭いわね! うだうだ悩んでもしょうがないじゃない!」

 

 そんなことはわかっている

 彼の方は、誰がなんと言ったって私の彼の方だ。誰にも渡してやるもんか

 それなのに、怖くて

 

「アンタが自信持たなかったら誰がアンタの気持ちを肯定すんのよ」

「!」

 

 なんとなくその言葉が、腑に落ちた

 そっか、私は

 

「そーゆーことだから、早くこの子持って帰ってちゃんと話し合いなさい」

 

 え?

 

 それどう考えても私に言ってないよね?

 恐る恐る後ろへ振向く

 

「…!」

 

 そこには、どうしてか吉良副隊長が居て

 私はちょっとフリーズして

 吉良副隊長の表情がどこか申し訳なさそうで

 ますます顔が真っ青になってですね

 

 とりあえず逃げ出した

 

「はいストップ」

「み"っ…」

 

 失敗

 松本副隊長に襟首を掴まれた

 冷や汗止まらないんだけど

 

 え? なんで? なんで彼の方がここに???

 

 ちょっと思考が追いつかない

 

 いつから聞いてた?

 どこから聞いてた?

 

 私、もしかしなくても生き恥を晒したのでは?

 

「ぃ、いつから、そこに…?」

「アタシが呼んだの。アンタ一人じゃ吉良に話したりなんてしなそうだったから」

「ひぇ…」

 

 なんで、バレてる

 ていうか言いたくないから隊舎飛び出してきたのにバレたら意味ない

 

「ほら! 吉良もボサっとしてないでこの子受け取って!」

 

 襟首を掴まれたままポイ投げされた

 着地にやや失敗してふらついた私を吉良副隊長が受け止める

 

「!」

 

 その感触には馴染みがすでにあって、その感覚に胸が鳴った

 

「松本さん、投げないでくださいよ!」

「うるさい、アンタがちゃんとしないからこうなったんだから責任とる!」

「うっ…」

 

 私はずっと胸が鳴ってるわけだけども、二人の会話が聞こえてないわけじゃなくて

 なんか、ちょっとだけ、何考えてたのかなって思えた

 

「じゃ、アタシ帰るから。吉良お会計よろしく」

「えぇ!? そんな理不尽な…」

「迷惑料よ」

 

 そう言って松本副隊長は去って行った

 松本副隊長って、仕事しないって有名だけどこれからどこに行くんだろうと考えてしまった…

 

「あの、私自分の分払います」

「いいよ。ここは僕が出すから」

 

 そう言うと貴方はさらりとお会計を済ませてしまう

 食べ残したお団子は包んでもらった。ちょうど2本あるし、二人で食べれると良いな…なんて

 ひとまず隊舎に帰る方向へ歩き出す

 何を言った所でまだ昼間だ、私も仕事があると言うのに何してるのか…

 

「だめだなぁ」

「何がだい?」

 

 貴方の返答に、声に出してたのかと気づく

 私は慌ててこう、手を振って、わたわたと答えた

 

「あっ、いや、その、仕事放棄してしまってだめだなって…本当、申し訳ありません!」

 

 やっぱり貴方がどこまで私の話を聞いてたか気になるけど、怖くて言えなかった

 そこもダメだと思う

 

「さっきまで昼休憩だったはずだし、気にすることないよ」

「で、ですが…」

 

 わたわたし続ける私に貴方は少し間を置いて言う

 

「…今日は、泊まりの日じゃなかったかな?」

「え? はい、そうだったと記憶してますが…」

「僕もなるべく早く終わらせるから、終業したらすぐ来て欲しい」

 

 私は目を見開く

 そんなことを言われたのは初めてだ

 

「…? はい、わかりました…」

 

 とりあえず隊舎に着いたら解散になった

 急に居なくなったせいで席官の人からやや怒られた

 

 

********

 

 

 その後は何と言うこともなく終業した

 

「なるべく早く…だったよね?」

 

 ぽつりと誰も居ない彼の方の屋敷の前でつぶやく

 とりあえず彼の方はまだ来ていない

 

「とりあえず待つか…」

 

 扉の前で呆けて待っていると、少しして足音が聞こえた。そちらに顔を向けると彼の方が歩いてくる

 

「お疲れ様です、吉良副隊長」

「そんなに畏まらなくて良いよ、仕事じゃないんだから」

 

 頭を下げると、貴方の言葉が返ってきたのですぐに上げる

 貴方が鍵を取り出して屋敷の中へ入るので、私もそれに続く

 中に入ると、いつも通り居間には通された

 

 ただ、少し待つように言われて…囲炉裏に代わって置かれた座卓の前で待っていると、いくつかのおつまみと一緒にお酒が出てきた

 

「…あの」

 

 座卓の上に広がった光景に私は戸惑う。

 お酒、あんまり得意じゃないって言わなかったっけ?

 

「言いにくい事があるみたいだったから」

「…」

 

 私は何も返せない

 貴方はなんの気なく徳利から盃にお酒を注いでいく。そこに口をつける姿は、いっそ優雅を通り越して耽美に見えた

 

「ほら、君も。それとも下戸だったかな」

 

 そう言って貴方は私の方に置いてあった徳利を持ってこちらに向けてくる

 私はそれに「すみません」と返しながらお猪口にもらった

 

「下戸ってわけじゃないんですけど…酔いやすくて」

「酔いやすい?」

「はい…昔一人で飲んだんですけど、徳利一本飲んだあたりで記憶がなくて…それ以来怖くて量は飲まないようにしてるんです」

 

 記憶がないのは割と怖い

 何か他人に迷惑をかけたかもしれないし、とか考えてしまうので余計…

 私の言葉に貴方は僅かに考えるような間を置いて、すぐに結論を出したのか私をみる

 

「今日は僕もいるし、安心して呑むといいよ」

「…じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

 お猪口に注がれたお酒に口をつける

 柔らかでクセのないそれは、甘口で飲みやすい日本酒

 

「…美味しいですね、これ」

「昔もらったんだけど、普段甘口は呑まないから眠ってたんだ。気に入ってくれたならよかった」

 

 どうやら気を遣われてしまったようだ

 それでも飲みやすいとお酒が進んでしまう

 途中途中おつまみにも手をつけてるけど、どれも美味しくて

 

 普段、私がいない時はこうやって晩酌してるのかなぁとか…考えるとその様が美しく脳裏に浮かんでニヤけないようにするのが大変だ

 

「まだあるからゆっくり呑むといいよ」

「ありがとうございます」

 

 そしてまた私はお酒を一口含む

 

 

********

 

 

「いづるさん、聞いてますか?」

「あぁ、うん」

 

 私の言葉に、貴方は戸惑ったように返した

 なんでだろう、今日は意識はあるのに体が言うことを聞かない感じ

 話す言葉も、私なのに私じゃないみたいな

 

「いづるさんはですね、どれをとっても素敵なんですよ。垂れ気味の目元なのに三白眼だからキリッとして見えて、片目が見えないのがミステリアスで、金糸のような髪が美しくて、細くて筋肉質の肢体がどこまでも素敵で…」

 

 穴があったら入りたいとはこの事だろうか

 口が滑りすぎていけないな

 もし朝起きてこの記憶あったらどうしよう、死にたい

 

「見た目だけじゃないですよ。冷静で的確な仕事ぶりを尊敬してますし、戦闘中の頭の回転もはやくて、それについて来れる肉体があって、幾つも鬼道使いこなして、私にはすぐにできないことばっかりするの」

 

 とまれ、頼むから止まってくれ口

 ふわふわしながら引かれるようなことを言うんじゃない

 

「貴方の知能だけでなくて、経験がものを言うわけです。なのに貴方はそれをひけらかしたりしなくて、自分の中の自分に対しての当たり前だと思ってるそんなストイックな所も好きで…」

 

 お願い!やめて!

 せめて意識飛ばさせて!!!

 目の前で貴方が座卓に肘をついて悩んでいる

 ほら言わんこっちゃないって思った。絶対引かれてる、絶対ドン引きされてる

 

「? いづるさんきいてます?」

 

 本日2回目の聞いてますか、とかいいから!

 黙って酒を飲め私!

 いやもう水飲んで寝よう!!

 

「あ、あぁ…いや、君は酔うとそういう感じなんだね」

 

 そう話す貴方の顔も赤いような。お酒回ってきたのかな

 

「何か変ですか?」

「だ、大丈夫。気にしないでほしい」

「?」

 

 とりあえずよく口が滑るようになるのは覚えておこう。そしてやっぱお酒飲まないようにしよう

 

「そういえば、昼はどうしたんだい? 松本さんに呼ばれて迎えには行ったけど…」

「!」

 

 その言葉にやや酔いが覚める

 意識が帰ってきて、口をつぐんだ

 

「あー…その…」

 

 言えない。言えないよ、恥ずかしい

 嫌な奴だもの、私

 でも、多分これが聞きたくて呑ませたんだろうなぁ…

 いやだなぁ…

 

「…っ!」

 

 私はお猪口に残ってるお酒を一口で飲み切って、そのまま徳利に入ってる分も直飲みした

 頭がくらくらする、意識がふわつく

 多分これならいける

 

「あ、貴方が…」

 

 あ、まってこれ諸刃の剣だった

 涙出てきた…

 

「貴方が、雛森副隊長と話してるの…見てしまって」

 

 私は下を向いた

 こんな事でぐらつく自分が恥ずかしいし、一回見ただけでヒステリックになるとか嫌な奴だし、辛い

 

「もう、貴方は私の貴方なのに、怖くなって…私嫌な奴って思ったら隊舎飛び出してて。松本副隊長にぶつかってしまって…なのに松本副隊長は話を聞いてくれて…」

 

 一日で他人に迷惑かけすぎだと思う

 そのまま話せなくなって、子供みたいに泣いてしまったし、やっぱり恥ずかしいからお酒は絶対呑まないと心に誓った

 

 だけど、貴方は私を抱き上げてどこかへ運んでいく

 廊下は暗がりだし意識はふわついてるしでどこに行ってるのかわからない

 ただ貴方の腕の中が心地よくて、少し寝そうになって、それでも起きていられたのは心臓がうるさかったからだと思う

 

「…?」

 

 畳の上に下ろされる

 だけどすぐまた抱え上げられて、今度はやわらかいものに触れた

 多分これは、布団だと思うんだけど…これは…?

 

「どうしたんですか、いづるさん」

 

 そして貴方は私を抱きしめた

 

「!?」

「…君も大概嫉妬深いじゃないか」

 

 何故か拗ねたように貴方は言う

 私はそれに困惑しながらも、素直に答えた

 

「あ、当たり前じゃないですか。私は、あなたを閉じ込めてしまいたいくらい好きなんです。私しか見えない場所で、私のことだけ考えていて欲しいくらい、誰も私たちの邪魔ができない場所で、貴方に愛されて貴方を愛していたいのに」

 

 でもそれはできないから

 愛しているから、自由にしてあげたいから

 

 わかっているのにな

 

「…君、変わってるって言われないか?」

 

 それ前も訊かれたような…

 素直に答えすぎてドン引きされたかなこれは

 

「か、変わってて結構です! 私はそれだけ貴方が好き…だから、貴方が、雛森副隊長のところに行きそうって、怖くて…!」

 

 よく滑る口を加速させるようにまた涙が溢れる

 貴方のことになると、私泣いてばっかりだ

 

「…君が僕に入り込んできたのにかい?」

「…っ」

 

 それは、その通りで

 でも、貴方は私だけの貴方って言ってくれて

 信じたくて

 

「〜〜〜っ…」

 

 涙が止まらない

 悔しい、悔しい

 私はまだ雛森副隊長に勝てないの?

 貴方は私だけの貴方って、嘘じゃない…はず…なのに…

 

「いや…」

 

 私は貴方の腕をすり抜けてうずくまる

 もう心が、もたない

 

「いや!!!!!」

 

 耳を塞いで叫んだ

 いやだ、やめて、嘘だって思わせないで

 

「いやだ、いやだ! 貴方がその口であの人を呼ぶのは! 貴方が私だけにならないのは! 貴方は言ったもの、私だけの貴方って言って…いって…っ」

 

 うそにしないで

 うそにしないで

 

 貴方の中に入り込んだのは私でも

 私を好きになってくれたのは貴方だって、わからせてよ

 

 貴方だけが良い

 貴方だけが良いよ

 貴方に私を見て欲しいのに

 

「ひとりにしないで…」

 

 縋り付くように泣くのが止まらない

 普段の私ならこんなことしないのに

 普段の私なら、もっと話し合えるはずなのに

 

 こんなのお酒のせいだ、お酒のせいだよ

 だってこんな、汚いもの

 

「ぅ、うぅ…うっ…」

 

 涙、止めなきゃ

 もう酔いは、絶対冷めてるのに

 

 何度か背中を叩かれて、反射的に顔を上げた

 部屋が暗いからぐずぐずの私は見られないで済みそうだな、とか考えていたら貴方が私にキスをして

 

「!」

 

 そのまま舌を捩じ込まれる

 貴方が私の両手を掴むと、そのまま布団に押し倒された

 

「…」

 

 貴方の、貴方の匂いがする

 真っ暗で、部屋の中は本当に何も見えないくらいで、遠くで月明かりが細く差してて

 

 掴まれた手首が熱い

 少しだけかかってる貴方の重さが、嬉しい

 

「い、イヅルさ…」

「君は君が誰のものか、わからないのかい?」

 

 いつもより、少し低い声

 僅かに怒っているようにも、感じた

 

「…許されるなら、貴方が許してくださるなら、私は貴方のものです」

「じゃあ僕は?」

「それは、」

 

 それは、良いんだろうか

 私が、貴方の所有を決めることなんて

 

「答えて」

「…貴方が、赦してくださるなら、貴方は私の貴方です」

 

 そうであって

 そうであってよ

 

「なら何が不安なの?」

「…貴方が、私の、私だけの貴方でなくなる事が、怖い」

 

 怖いよ

 泣きじゃくるほど

 赦して、いや、赦さないで

 

「やっと、やっと貴方が私を見てくれたのに。貴方が、私だけの貴方が、ここにいるはずで、この間だってそれを確かめ合ったのに。それを信じれない私は、汚い。汚いから、貴方がいなくなりそうで」

 

 僅かに腕を掴まれる力が強くなる

 貴方はどう思っただろう、こんな汚い女を

 こんなに弱い私を

 

「…君は自分の立場がわかっていないね」

「え…?」

 

 次に息を吸うときには、貴方の匂いが近くて

 

「もう少し刻まないといけないのかな」

 

 貴方が耳元でそう囁いた

 

「!」

 

 私の腕から離れた貴方の右手が、私の死覇装の腹帯を解いていく

 ゆるまった袂を開いて、胸元を露出させた

 貴方の手は滑るように私の肌に触れて、乳房を見つけると揉みしだいた

 

「ん…」

 

 さわり、と毛先が這うような感触があって、その次には胸先に舌が触れた

 私が驚いて体をすこし跳ねさせると、貴方は胸先を口に含んで弄ぶ

 

「んっんん…ん…」

 

 お酒のせいだろうか、いつもより少し敏感な気がする。それとも見えないせい?

 口をつける胸先が反対側になる。それだけでももどかしくて気持ちいいのに、貴方が胸先を噛むから

 

「、あぁっ!」

 

 強い快楽が急にやってきて少し弾けた

 貴方はそれをまるで明るいところでみていたように、舌を腹へとずらしていく

 そのまま器用に袴と下着を脱がせると、そのまま秘部に舌が触れた

 

「あっ、うぁ…っ、まってそこはきたな…」

 

 今日はお風呂にだって入れてなくて、午後は組み手も打ち合いもあって汗かいてるし、そもそも舐めるようなところじゃない

 

「いいから黙って」

「…っ」

 

 貴方が黙れと言えば黙らざるを得ない

 新しい刺激に私は身を捩らせる

 

「あっ…んぁ、んっんっ、〜〜っ、っあ!」

 

 舐められ、啜られ、弄ばれ、最後には陰核を吸われた

 視界が瞬いてる、快楽の波が大きすぎる

 快楽に流されそうな体に、さらに強い刺激が走った

 

「いった…っ」

 

 右腿の付け根…刺青があるところを強めに噛まれた

 鼠蹊部を噛まれて痛くないはずもなく、私は苦痛に顔を歪ませる

 

 貴方は私の足をさらに開いて間に割り込むと、蜜穴に指をいきなり2本挿入れてきた

 

「あぁ…っ」

 

 いきなりで驚いたけど痛みはない

 貴方の指はそのまま私の弱いところを刺激して、私の意識を溶かしていく

 

「あ、あっ…あっあっ、あーっ、だめ、いっちゃ、ぁ」

 

 貴方の指が止まる気配はない

 私が果てるのを待ってるみたいに

 

「ぁっ、ぁあ、こすられたらいく、いっちゃ、だめだめ、いっちゃ、いっ…!」

 

 そのまま果てた

 それでも貴方の指が弱いところを刺激し続ける

 

「あっあぁ、なんで、まって」

「…君にこの刺青を入れたのは?」

 

 急な質問に戸惑う

 刺青なんて右腿の付け根しか入れてないからそれだと思うけど

 

「まっ、なんでっ」

「早く答えるんだ」

 

 貴方は指の動きに少しだけ力をいれて少しだけ早くする。それは堪らない快楽を孕んでいた

 

「あぅあっ!? あっ、あーっ! まっ…て、言う、言いますっ」

 

 涙声で言うと、やや動きが遅くなった

 それでも指は止まらないけど

 

「んぁ、あっ…技術開発局に、たのんでぇ…入れてもらっ、ひぁっ」

「何のために?」

「そ、れはぁ、いえな…っ」

 

 また果てそうだ、いくら緩くなったって耐えられないものは耐えられない

 

「…じゃあこの刺青を僕と技術開発局以外で知ってるのは?」

「ひぅ、んぅ…! い、いないっです、あなたいがい、になんってぇ…はなさな…っ、あっあっらめいくっ」

 

 そこでまた果てた

 こんなに前戯をされるのは初めてかもしれない

 そもそも見せなければ見えない位置に入れたのは貴方以外に知られたくないからなのに

 

 どうしてそんなこと聞くの?

 

「…そう」

 

 貴方は蜜穴から指を引き抜くとそのままの手で私の唇をなぞった。まるで舐めろと言うように唇をくすぐるので口を開いて迎え入れる

 

 汚れた指をしゃぶると自分の愛液の味を知ってしまった

 びっくりするほどまずい。こんなものをさっきまで舐めさせていたのかと思うと土下座したいくらいまずかった

 

 それでもなんとか愛液を舐めとると、指は引き抜かれ今度は布ずれの音がして

 あぁ、挿入れるのかな、なんて考えていたら私は腰を持ち上げられて驚くままに四つん這いにされる

 

「!? イヅルさん!?」

 

 動揺しているとそれを無視するように貴方が自身を蜜穴にあてがう。そのままの勢いでそれは膣内に入ってきた

 

「ぁあぁ…っ」

 

 いつもより挿入ってきた感覚が鮮明で震える

 硬い、貴方の自身が私の中を押し広げて深く貫いてくる

 いつもより気持ち良くて、少し焦った

 

「…いつもより締まる。君はやっぱり被虐趣味だと思うよ、僕は」

「ちが…っ」

 

 恥ずかしさのあまり否定するけど、貴方はそんなのお構いなしに抽送を始める

 

「あっ! あぁっ、ぁっ、ああぁっ! あっ、だめっ」

 

 今まででは届かないところを刺激される

 強く爆ぜるような刺激が連続して舞い込んで、あたまがおかしくなる

 

「おかひくなるっ、おかひくなるからぁっ」

「…っ、おかしく、なればいいっ」

 

 ここまでの刺激のせいなのか、それともこの体勢がいけないのか、いつもよりすぐに、これは

 

「あっあっまたいくまたいくっ、むりむりいっ、ちゃ…っ」

 

 逝き続ける私に容赦なく襲いかかる快楽

 でも急にどうして?

 

「なんれっ、きゅ…ぅに、こんなぁ…っ」

「…じゃあもう一度訊こうか、君は誰のもの?」

「あっあっ、あぅ…っ、あなた、あなたのものっ、です…っ」

 

 質問に答えてる間でさえ快楽を与えられる

 意識が飛びそうなのを何とか堪えて、滴りそうな唾液を飲んだ

 

「それが身体まで伝わってないみたいだから、刻み込んであげようと思ってね。君は僕の強い感情を向けられるのが良いんだろ?」

「!?」

 

 今なんて?

 貴方は、なんて言った?

 私に刻み込もうなんて、そんな

 

「んぁあ! あっあっあっ、まって、またいっちゃう…」

 

 もう何度果てたかわからない

 それでも快楽はつづいて、本当の本当に頭がおかしくなってしまいそう

 

「いくいくまって、まっ.…あぁあぁぁあぁ!!」

 

 もう腕で体を支えていられない

 上半身を突っ伏して快楽に身を任せるだけ

 また果てると今度はゆっくりを膣内を擦ってくる

 貴方の自身が膣内を擦って奥にあたるたび声が出た

 

「ほら、こんなに君の事を僕は知ってる」

 

 確かにそうかもしれない

 貴方には教えたもの、私のできる限りのことを、私の貴方だけに見せる顔を

 

「君が言ったんじゃないか、君だけの僕でいて欲しいって」

「言いました…けどぉ…っ」

「それでも僕が雛森君のところに行くと思ってるのかい? 心外だな」

 

 そう言って貴方は先端近くまで自身を引き抜くと、一気に奥まで捩じ込んでくる。弱いところに押し付けられるような感覚があって、堪えたまま果てた

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 もう膣内に力なんて入らない

 足だって震えてて、今にも倒れそう

 呼吸はずっと浅い

 なのに、止まらない快感を幸せに感じてる自分がいる。それが貴方の手によるものなら尚更

 

 確かに、貴方に体を仕込まれてる感じがして幸せ

 

「少しは理解できたかい? 自分が誰のものか」

「いづ…いづるさんの、わたしです…」

 

 震える声で返すと、一度貴方は自身を引き抜く

 それから私を仰向けにすると息の上がった私にキスをして指を絡めた

 

「…鏡花」

「はい…」

 

 貴方が私の名前を呼んでくれることがいつだって奇跡に感じる

 その声はいつ聴いても甘くて、耳が蕩けそう

 

「ちゃんと君を好きだから、安心してほしい」

 

 そう言って貴方はまた私の膣内に挿入する

 まだ敏感な膣内が反応して快感を生み、自然と背中がのけぞった

 

「ぁあぁぁぁあぁぁ…っ」

 

 迎え入れるように膣内が喜んでるのがわかる

 そのまま抽送が始まってまた喘いだ

「ぁあっ、あっ、んぁ、あっあっ、あぁ…」

「っ、出すよ」

「んぃ…はい、きて、くださ…」

 

 抽送が早くなってまた快感を得る

 少しの間それは続いて、膣内に深く押し込まれた時に私は果て、貴方も果てた

 

 膣内にどろりとした何かと貴方の脈動を感じる。毎度こんなことしててよく子供ができないものだ

 肩で息をする私の膣内から貴方の自身が引き抜かれる。相変わらずそれすら快楽になるほど犯されたのだと思うと幸せになれてしまう

 

「ごめん、今日は準備ができてなくて湯浴みが…」

「できなくても良いです。それよりそばにいて下さい」

 

 倒れたまま貴方に手を伸ばす

 貴方がその手をとって起こしてくれる時、お腹に力が入ってしまって膣内の液体が出てきた。慌ててちり紙で拭う

 それが終わって初めてちゃんと布団の上に腰を落ち着けた

 

「はぁ…毎度の事ですけど、たくさん逝かせるの好きなんですか?」

 

 まだうまく力が入らないので貴方に頭を預けながら問う

 

「好きって言うか、君がいつも煽るから…」

「…そうですか?」

 

 意図的に煽ったのなんて一回しか思い当たらないけどな

 

「だんだん蕩けていく君の声が好きなんだ。それでつい…」

「はわ…」

 

 これは思わぬ不意打ち。そんな事を言われたらときめいてしまう。

 

「今日は、ちょっと違うけど」

「あー…」

 

 流石に頬を指先で掻く。

 私があんなこと言ったから怒らせたかな

 

「君が不安なのが伝わってきたから、安心させたくて」

「!」

「普通、好きでもない相手とまぐあったりはしないだろう?」

「そ、そうですけど…」

 

 その気持ちが嬉しいと思ってしまう

 私が貴方を意識するように、貴方も私を意識してくれたら嬉しいに決まってる

 

「…ごめんなさい」

「君が謝ることじゃないよ」

「貴方を信じきれなかった、自分が思ってたより我慢なんてできなかった、だからごめんなさい」

 

 わかってる

 貴方も仕事がある以上絶対に関わることは

 

 それなのに我慢できなかった、貴方を信じきれなかった、怖かった

 全部が辛くて、それでも貴方はこうして私に痕を刻んでくれる

 これを奇跡と言わずになんて言うんだろう

 

「じゃあ僕はお礼を言わなくちゃ」

「…お礼、ですか?」

「うん。君のおかげで、引きずってた思いに区切りをつけられたから。ありがとう」

「…」

 

 また涙が流れた

 こんなに嬉しいことってあるだろうか

 

「また泣いてる」

「う、嬉し涙です!」

 

 貴方が私を抱きしめる。ぐっと力を入れて。

 そこから伝わる体温が、また私の涙を誘う。

 

「…どうしたら君は泣かないで済むんだろう」

「私だって、こんなに泣くのは貴方の前だけですよ」

 

 自分でだって知らなかった、貴方のことになるとこんなに心が揺さぶられるなんて

 こんなに貴方を、割り切ってあげられないなんて

 

「本当は、もっと自由にさせてあげるつもりだったの」

「…」

「でもできない、誰にも渡したくない。ごめんなさい」

 

 誰でもいい、やっぱり渡したくない

 私だけの貴方でいて

 

「…おいで」

 

 その声に反応してゆっくりと動く。胡座をかく貴方の上に乗ると、貴方がまた私を抱きしめた

 

「僕だって、君を誰かに渡そうなんて思ってない。だから、おあいこだ」

「イヅルさん…」

 

 私も貴方の背中に腕を回して、強く抱きしめる

 あぁ、やっぱり貴方が好きだ

 

「わかりました。お風呂の準備、しましょうか」

「…そうだね。お腹も空いたし」

 

 互いに離れる。

 とりあえず私は死覇装の上だけ羽織って、袴だけ履き直した貴方と一緒に部屋を出た

 

「イヅルさん」

「?」

「好きです。イヅルさんが好き」

「…!」

 

 何度だって言おう

 貴方が好き

 貴方だけが好き

 でもそう言うと貴方はいつも驚くばかりで返してくれない

 

「イヅルさんは、私のこと好きですか?」

「…うん、好きだよ」

 

 初めて返してくれた、嬉しい

 嬉しさのあまり抱きつくと、貴方はまた驚くの

 

 いつか、お互い恥ずかしげもなく言える日が来るのかな

 

 

終

 

 

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