※この作品はR-18です。

緋月鏡花について   作:七星七夕

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当作品は二次創作であり、原作、実際の物事、人物、事象には一切の関連がありません、ご注意ください
また、死ぬほど捏造設定があり、原作の隙間を縫うような部分がいくつも散見されますが、これは個人の好みでありそういった作風であるとご理解いただければと思います。個人的にはその隙間は想像の余地のままになってたらうれしいな!

また、当作品は恋愛小説です
版権キャラクターとの恋愛描写や性行為描写が苦手な方は回避をお勧めします
主人公が大怪我したり戦闘したり場合によっては修行するかもしれませんが誰がなんと言おうとこの作品は恋愛小説です。ご理解いただければと思います
カップリングは「吉良イヅル×オリジナルキャラ」になります。ハーレム等の予定はありません、悪しからずお願いします









空虚

空虚

 

 

 

 

「各員戦闘配置! 各班長の指示に従って陣を組むように」

 

 吉良副隊長の声にその場にいた全員が答える

 現状としては尸魂界内に虚が二体出現し、最寄りの三番隊に対応の指示が出されていた。総動員と言うほどではないがいくつかの班が戦闘に向かう

 

 私個人としては初戦闘になる。霊術院で嫌と言うほど叩き込まれていても実際の戦闘は訳が違う。そうわかると緊張で手が震えた

 

 入ってきた情報として大型の虚二体は流魂街外れの山間部にて発見。周囲の魂魄は避難しているとのことだけど、放置はもちろん厳禁だ。撃破が昇華にも繋がる故に尚更

 

 班単位の行動で現場に向かう。個人的には副隊長が作戦に参加するなんて珍しいこともあるものだなと思った。しかし私たちとは別の虚を倒しに行くみたいだからその勇姿を拝めそうにはない

 

 流石に大人数で出れるこの状況で隊長そのものが出向くことはない。でも状況が悪くなれば出てくるのだろう。相手の能力がわからない以上どうとは言えないけど

 

 森を抜けて山の中へ入っていくと、あの特徴的な叫び声が聞こえる。悲鳴のようなそれは重なり合うように山の中で響き合っていて、耳を痛めそうになり顔を顰めた。まだ姿は見えないのにこれだけ大きな声が聞こえると言うことはどれだけ大きな虚なのか

 

「見えたぞ!」

 

 その声が聞こえた方に意識を向けるとそこにあるのは不自然な白。ここからでは一部しか見えないから確かに相当大きさがありそうだ

 近づくほどに声が大きく聞こえる。目の前まで来た時のそれは、木のてっぺんまで高さのありそうな巨体。思わずそれだけで驚いて刀に手をかけてしまう

 

「!」

 

 こちらに気づいたのか大きな体がゆっくりと動き出した。私たちを認識するように見下ろし足先を対面に向ける

 

「…」

 息を呑んだ。警戒してしまって全員動けないでいる。向こうもこちらを見定めるように動かずこちらを観ていた

 しかし木の葉が風で揺れたその瞬間、その体についた大きな手が振り上がる

 

「散開!」

 

 班長の声で密集した陣形から散ると、そこに巨大な拳が落ちてきた。地響きがするほど力強いその拳は、手応えがないと判断したのかすぐにまた振り上がる。愚鈍な印象の体躯とは裏腹に拳は素早く振り下ろされて避けるだけでも少し焦った

 

「っ!」

 

 樹木に、地面に、岩に、辺りにある全てにぶつかりながら凄まじい勢いで拳は飛んでくる。乱雑に周りを壊しながら振られる拳はやはり早くて、ついでに砕いた木や岩の破片に土埃まで飛んでくる始末。その代わりと言わんばかりに周囲は鬱蒼とした森から不自然な空き地に様変わりしていた

 

 虚は一度動きを止めると、空き地から樹木の後ろへと身を隠した私たちを探すような動きをし始めた。そこへ誰かの叫び声が聞こえる

 

「うおおおおおおおおおおおっ!」

 

 叫びの方に目を向けると、同期の死神が一人突っ込んでいった。私が慌てて前に出ようとすると、同じ場所に隠れていた先輩死神に止められる

 

「っ、このままでは彼が死にます!」

「大丈夫だから」

 

 そう話す先輩の言葉を信じてぐっと堪え、空き地の方を見る。すると虚が同期に気づいてまた拳を振り上げた

 

「!」

 

 そこへ、一筋の光が虚の腕を貫く。これは白雷の光。その光がすぐ収まると、後ろにいた先輩に背中を押された。その勢いで前に出る。虚は片腕が項垂れ少し混乱してるようだった

 

「全員かかれ!」

 

 班長の叫びが聞こえる

 総員が抜刀して切り掛かり、まず一人が厄介な拳の片方を落とした。私もその勢いに乗ってもう片腕の拳を落とす。すると痛みがあるのか虚はまた大きな声で叫んだ。耳を劈く声は周囲に広がって、思わず耳を塞ぐ

 

 すると今度虚は大きな頭を地面に打ちつけ始めた。私たちを狙ってるのは明白で、激しいうちつけにまた苦戦を強いられる

 

「くそ!」

 

 私は周囲を置いて前に出た。少し離れた私たちを眺める虚に向かって手をかざす

 

「君臨者よ! 血肉の仮面、万象、羽ばたき、人の名を冠すものよ。心理と節制、罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ!」

 

 翳した掌に光が集まる。これを放てば、こっちに気がつくはず

 

「破道の三十三、蒼火墜!」

 

 収縮したのち放たれた光は一直線に虚へ向かった。相手に当たった光は爆発音を立て、虚を少し揺らがせるとそのまま霧散して当てられた虚がこちらを向く

 

「…」

 

 そうだ、それでいい

 私のところに来い

 虚は地響きをさせながらこちらに歩いてくる。頭を降らせた瞬間画面を切り裂いてやろうと刀に手をかけた瞬間だった

 

「!!」

 

 横から現れた班長が機を狙ったように虚の首を落とす。私はそれについていけなくて、ただその姿を追うけど時間の感覚が遅くなる。そこから虚の頭が完全に地面に落ちて、ようやく感覚が戻ってきた

 

 どさっ、とわかりやすい音がしてそこから虚は霧散するように消えていく。立ち尽くす私に叫ぶ声が聞こえて、反射的にそちらを向いた

 

「緋月! 貴様何をやっている!」

「え、あの」

「貴様はどこで無謀と勇敢を履き違えろと教わったのだ!」

「も、申し訳ありません…」

 

 叫ぶ班長に気押されて言葉尻が小さくなる。班長は同期も叫んで呼ぶと私の隣に並ばせた

 

「助けがあったから良かったものの、なかったら今頃貴様らなどそこいらに転がる砕けた岩のようになっていた! 帰り次第反省文を提出し、一週間厠掃除だ馬鹿者め!」

「申し訳ありませんでした…」

 

 二人して謝ったけど個人としては不服だ。あの時私には確実に斬れる確信があったから。そんなことを言ったらまた怒られそうだから言わないけど。万が一傷が浅かったりしたら確かに班長の言う通りになってたと思うし…納得はできる。出動前は震えるくらいだった訳だし特に

 

 後に吉良副隊長のいる班と合流になった。怪我人が出なかったのは幸いで、各班の点呼を取り直して隊舎にもどるよう指示が出る

 やや不機嫌に班の人の後ろについて歩いていると、前を歩いていたはずの吉良副隊長が私に並んだ。素直に不思議に思っていると彼が私を見る

 

「君のことは聞いた。確かに無謀だが君が敵を引きつけなかったらもっと苦戦していただろう」

「あ、ありがとうございます…」

 

 なんで急に、とは思った。新人を褒めるのも上司の仕事ってことかな。それで厠掃除と反省文がなくなる訳じゃないから複雑だけど…褒められるのは悪くない

 

 隊舎に戻ってからやっぱり反省文が待っていて同期と共にため息が出た。これも己の行いの代償だと思うと割と落ち込むけど、こればかりは仕方ない

 

 反省文を書きながら、今日吉良副隊長に褒められたのを考えていた。あの人他人を褒める時でも無表情なんだな、と。笑ったりするのかな、人間味がない

 無機質に、ただ言われたことをこなすような印象で、瀞霊廷通信に載ってる俳句の言葉の豊かさからは程遠い感じがする。ただ周りは陰気だと言うけど、やたら姿勢は正しいんだよな、陰気な人って背筋が悪い感じがするのに。だから陰気というより無機質に見えるんだろうな。確かに異様な物静かさではあるけど

 

 個人的にはすごく変な人だと思う。かと言って市丸隊長が好きかと言われると…どちらかといえば苦手。あの人もあの人で、方向性の違う人間味のなさを感じる。どっちも顔を見る程度で話すことなんてないからどうでもいいけど

 

 反省文を提出して部屋を出ればまた別の仕事が待っている。とりあえずそれに向かうことにして、廊下から見える青空に目をやった。今日は雲一つない晴天で少し嫌気がする。雲も無いような明るい空はむしろ空虚に見えて苦手だ

 変な一日だったな。それにしても吉良副隊長の言葉が頭に残っている。ここにきてから褒められたのが初めてだからかな

 なんでもいいや。この仕事にやりがいを感じているわけでも無いし

 

 とりあえず次へ向かおう。お昼までに掃除を終わらせないとお昼ごはんを食べ損ねる

 

 

 

 

終

 

 

 

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