※この作品はR-18です。

緋月鏡花について   作:七星七夕

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第一話「 」の吉良副隊長視点
本編の読了後を推奨します
また、既存キャラ視点のキャラ崩壊が怖かったりそういうの苦手!って方はお戻りください











「空白」

「空白」

 

 

 その視線に最初に気付いた時、僕は恨まれているんだと思った

 

 市丸隊長が尸魂界を去ってほんの少し、職場に復帰した僕を毎度見ている視線に気づく。それがいつからかは流石に意識してない、だけどその視線は僕が反応しなくても僕を見ているし僕だけに向いている

 

 時折目が合うと相手は焦って目を逸らす。僕が気付いていないと思っているみたいで少し苛立った。そんなあからさまな視線に気づかないほど鈍感ではない

 

 彼女はいつも目の下にクマを抱えて睨むような目つきで僕を見ている。だから思った、彼女は市丸隊長を止められなかった僕を責めてるのではないかと

 そう思うと納得できた。きっと彼女は熱心な市丸隊長のファンなんだろうと思えばあの視線も少しわかる。かと言って僕にはどうにもできない、どころかお門違いだ。僕を見たってあの人は帰ってこないのたがら

 

 それでも毎日、彼女は僕を見てくる。たまたま目に入ったのではなく"僕"を見ているんだ

 

 ある日言った。「この隊に居るならもう全て捨てなくてはいけない」と、そして彼女は答える。「貴方以外なら全て捨てます」と。

 

 正直意味がわからなかった。そんなに僕が恨めしいと言うのだろうかと考えて「僕も捨ててくれ」と反射的に言ったのをよく覚えている。それでも彼女は迷いなく答えた。「貴方以外なら全て捨てます」と

 

 その時の問答すら彼女は確かに僕を見ていて、次は恐ろしくなった。彼女のあの目が、僕を通してみた市丸隊長ではなくて"僕"を見ていると気付いてしまったから

 その場を逃げるように去ってからは彼女の視線から逃げ続けた。ある日見つけた隊士名簿に彼女がいてゾッとしたけど、なんとなくそのページを読んでしまって彼女の名前を知る。緋月鏡花という名前を

 

 どれだけ逃げても彼女は僕を見ている。副隊長と言う役職ではなくて、僕と言う個人を、その昏い目で

 その視線を感じては逃げて…そうやって時間が経つたびに、今度は少し苛立つようになった。彼女からは視線以外の主張がない。もし本当に彼女が僕を見ているというのなら、なぜ彼女は僕だけを追いかけているのか…見当もつかないからだ

 

 僕に特筆したカリスマ性みたいなものはない。市丸隊長はそういった側面の強い人だったと思うけど。おかげで隊の殆どは市丸隊長を追いかけてると言ってもいい

 だからこそ彼女から僕への視線も市丸隊長に関連するものだと思っていたのに、彼女は一体何を伝えたいのだろう

 聞いても要領を得た返事が返ってくるとは思えない。なぜなら彼女が他の死神と業務的な話をしてる所以外を見たことがないからだ

 

 何を伝えたいのかと観察してみても彼女は話さないし笑わない。話しかけられれば返すようだが自発的に話をしてるところを見ることはなかった。そのせいでやや腫れ物を扱うような目で周りが見ている

 近頃はめっきり一人で過ごすようになった僕より余程前から浮いている。これに気づかなかったのは興味がなかったのか彼女の陰が薄かったのか、今ではわからない

 

 彼女の視線から逃げ回ることで彼女を傷つけていることはわかっている。しかしこれで諦めてくれればと思わずにはいられなかった。彼女の尊厳を傷つけるように逃げて、避けて、遠ざけようとするのにどうしてか彼女は諦めない

 それどころかその視線は段々と熱を帯びていく。まるで僕が避けるのを喜ぶような視線に変わって、その目で僕を見つめてくる

 

 わからない。君は何を伝えたいんだ。君は何を考えてる。何を思っている

 

 

********

 

 

 ある日、とうとう耐えかねて彼女を家に呼んだ

 彼女はまるで僕のいうことならなんでもいいと言わんばかりについてくる

 

 僕は浅はかだとわかっていても、彼女を追い込んででもあの視線の正体を知りたいとどこかで願うようになっていた

 彼女は僕のすることに文句ひとつ言わない。喋るなと言えば喋らないし、どう触れても、尊厳を傷つけても、僕を見捨てるような視線も軽蔑するような視線も送らず、ましてや睨みつけられているはずなのにそこにそういった感情を感じられないことに余計苛立った。どうしてそんなに"僕"を見る?

 

 苛立ちとある種の恐怖が競り上がってくるのがわかった。物理的に痛めつけても彼女が根を上げるとは思えなくなって解放する。そのまま彼女を引き寄せると初めて動揺したような表情を見せた

 

 良い加減弱音の一つでも吐けばいい。僕なんかの言うことを律儀に守るのはいっそ嫌がらせが何かだろうか

 

「いい加減声を上げればいい、僕の言うことなんて聞く必要ないじゃないか」

 

 それでも彼女は首を横に振って唇を開こうとはしない。高い位置で結ばれた髪が波打って揺れた

 先ほど彼女を追い詰める気持ちで滑稽だなどと言っておいて、その実滑稽で哀れなのは僕の方に思える。それが余計に僕を追い詰めた。また苛立ちの波が高くなる

 

 その感情のままとうとう彼女を壁に押し付けた。そのまま唇を奪った時、息ができなかったのかやっと声をあげてどこかで安心する

 対して彼女は"しまった"と言わんばかりに動揺していて、それを見た僕がつい安堵が口にした時

 

 彼女は一粒泣いた

 

 少し目に翳るほどの前髪の下にある緑色の瞳を見開いて、僕を見たままぼろぼろと崩れたように泣き出した。それでも声を上げないようにすぐ下を向いて堪えるように、止まれと願うように泣き続ける

 急にどうしたのかと問うても彼女から答えが返ってくることはない。そんな姿になってまで僕の言うことを守ろうと言うのが全く待って理解できなくて心底ため息が出た

 結局僕が根負けして話すことを許可すると、ようやくその喉から声が形になって発せられる

 

「貴方が、私を見てくれたから」

 

 彼女は確かにそう言って、僕は一瞬言葉を失う

 そして反射的に「ずっと見ていたじゃないか」と言うと、彼女の目には僕が遠い誰かを見ているように写っていたらしい。それは、遠い誰かを見ていたのは君の方じゃないかと一瞬頭をよぎってそして消えた。彼女はが僕を見ていると一番感じていたのは僕だと思い出してしまったから

 

「…君が僕を見るから、僕は君を見れないのに」

 

 彼女の視線は僕の罪を曝け出す。雛森君に刃を向けたことも、偽りの約束を信じて松本さんに刃を向けたことも、何より市丸隊長の謀反を気づけなかったことを、全てを僕にまた突きつけるんだ

 僕は許されないことをしたし、そしてそれを許されたいとも思わない

 

 だからこそ苛立つ、焦る、恐怖する

 その昏い瞳が僕だけを見ていることから逃げてしまう

 

 僕を見ないでくれ、この傷をまだ掘り返さないでくれ

 僕を見限って、罪と向き合わせて欲しい。許してくれる人なんていないんだ。そんなものは詭弁で、それこそ嘘だから

 

 それなのに君は、今度はあの昏い瞳ではなくて月明かりに光を取り戻したようなまっすぐな視線で僕を見て、そして

 

「それでも、貴方を愛しているから」

 

 確かにそう言った

 恐ろしいと思ったのが顔に出たのを感じて、次には苛立ちを覚える。僕を、愛してるだって?

 彼女に僕の何がわかるのだろう。そもそもこんな無意味な事をしてる自分が僕にもわからないのに

 なんて傲慢なんだ

 

 この光の灯ったその瞳に、そんな軽薄な傲慢さが宿っていたなんて

 ならわからせてあげようじゃないか、君が愛してると宣う男の醜さというものを

 

 彼女を試すように今度は羞恥にその身を晒していく。なのにまた彼女は従順どころか全てを受け入れるなどと言った。僕の気が済むのなら体などいくらでも捧げると

 本当に人の神経を逆撫でするのが上手い。図らずも煽るような事を言ってしまった

 

 曝け出した胸元は張りをもって外気にさらされている。その首筋に強く噛み付くと、彼女は声を上げる事なく堪えるような吐息が聞こえてきた。声を上げろと囁くと、彼女からは肯定の言葉が返ってくる。それなのに胸元に触れたら声を抑えているからその手を退かして仕置きをした。跳ねたような嬌声が聞こえる

 

 過敏な場所を痛めつけられて嬌声を上げるなど、彼女には被虐趣味でもあるのだろうか。しかし「淫乱」と囁けば気娘のように顔を赤くする。その基準がどこにあるのかはわからないけど、これだけ反応する彼女を初めて見た。これなら少しは楽しめそうだな

 

 痛めつけた胸先を優しく摘むと色めいた嬌声が聞こえる。緩急をつけるのが好みなようだ

 しばらく胸先を弄んでから彼女の着ている死覇装の腹帯を解く。自重に任せて落ちた袴の先にある下着に手を入れると、そこはもう既に期待で溢れていた

 

 短く状況を口にすると、その度に必ず顔を赤くする。ふと指先の引っ掛かった陰核に反応したのか淡い声を彼女が上げた。その声に自分の中の何かが途切れた音がして壁に押し付けていた彼女を床に押し倒す

 彼女の下着を取り払って自分の腹帯も解く。下着から陰茎を取り出して恐怖を与えようとしても、彼女が怯える様子はなかった

 

 怖がらないのか、と問うてみる。すると彼女からは「怖がる必要がない」と帰ってきた。ましてや悲鳴が聞きたかったのかとも。そういうことではない、僕を醜いと、拒絶しろと言ってるのに

 

 ろくに慣らしもせずそこに陰茎を当てがった。敢えて挿れると告げても彼女の様子に変化はない

 ぐ、と押し込むと何か裂けるような感触が確かに伝わってきた。まさかと思って接合部を見ると半分ほど僕の陰茎が挿入ったそこからは少しだけ血のようなものが流れている

 

「君、まさか」

 

 思わず声に出た。すると彼女はとても満足そうな顔で肯定する。キスも、純潔も、全ては僕のものだと言った。僕に捧げたいと

 

 どうして、どうしてそこまで

 君は僕に何を求めているんだ

 

 それなのに君は、それを問うても「貴方を愛しているから」ともう一度言う。本当に理解が追いつかない

 感情をまとめきれないまま押し付けるように腰を動かし始める。あの純粋で軽薄で傲慢な目が濁ればいいと願いながら

 

 それなのに段々と慣れてきたのか、彼女から淡い嬌声が聞こえるようになってきた。試しに抽送を早めてみると、求めるように彼女の腰が動く

 言葉で羞恥を煽りながら動かすと、膣内が反応してよく締まった。彼女が快楽を曖昧に否定するので腰を掴んで奥まで押し込むとあっさり果てる。簡単に否定などさせない、羞恥を煽って果てた先から責めあげる

 

 すると彼女が僕を呼んだ。こんな時まで律儀に役職名をつけるからそれにも苛立って、つい名前で呼んでいいなどと口走る。すると今度は素直に僕の名前を呼んだ

 

 流石にそう長くはなく限界が来る。膣内で果てると彼女はそれすらも嬉しそうに受け止めていた

 

 息も絶え絶えな彼女を見て強い後悔に苛まれる。流れに任せて若い子に手を出すなんて

 相手が悪いと言ってしまいたいが手を出したのは自分だ。せめてもの罪滅ぼしに彼女を抱き上げて浴室に向かう

 本当はもっと早く話を終わらせて疲れた体を湯船に任せようと用意していたのに、どうしてこうなったんだろう

 

 動けない彼女を一通り洗ってから湯船に放って、シャワーで頭を冷やす

 すると彼女から、後悔しているのかと問いかけられた。この状況を後悔しない人間はそう簡単に見つからないと思う

 長い前髪を上げて彼女をみる。どうして色めき立ってるのかはわからないけど、この状況でのんきなと思った

 

 彼女の感情を、よくある初恋のようなものではないかと考えて嫌われようと行動していた。するとそれを告げたら彼女は「わかっていた」と言う。ましてやそうやって僕が彼女を避けるということは、自分を意識してる行いだから耐えてるつもりもなかったなんて、そんな事を言うから心の中でため息が出た。それで純潔を失っても僕ならいいんだそうで、僕は彼女を理解できる気がしない

 

 しかし「あぁでも」と彼女は言う。子供ができたら責任をとって欲しいと続けられた。僕は顔が真っ青になって、彼女はその様子にご満悦そうにしている。確かにそうだ、勢いに任せてあんな事をするなんて

 やはり僕は人としてどうかしている

 

 これから先を考えていたら、彼女から共に湯船に浸かって欲しいと言われた。意味がわからなくて問い返すと、今日のことが後ろめたくないなら無視していい、などと脅されたので諦めて湯に浸かる

 

 僕に触れる彼女はご機嫌に鼻歌を奏でていて、先ほどまでの異常さが嘘のように振る舞っていた。僕が呆れてその後ろ姿を見ていると、不意に彼女が鼻歌を止める。そして言うのだ「今日は夢のようだったと」。

 

 一瞬、彼女には強姦されたい願望でもあったのかと考えてしまった。しかしそれは違うようで、先ほどまでとは比べ物にならないくらい寂しげでそれに堪えるような背中はまた僕を好きだと言った。僕が誰を好きでも、僕だけを愛していると

 それだけ告げて湯船から立ち上がったから、ついその腕を握って引き止めてしまった。動揺する彼女に少し言葉を探してから言う

 

「僕の何が良いのか、僕にはわからないけど…その、話をするくらいなら出来ると思うから」

 

 そう言うと、また彼女は滝のように滂沱した。急なことに気に触る事を言ったのかと慌てると「嬉しくて」と彼女はいう。本当に端から端まで理解できない

 

「嬉しい…」

 

 思わず口に出すと、彼女はとびきりの笑顔で「こんなに嬉しいことはないです」と言って、僕はその時初めて彼女の笑った顔を見た

 その喜びのまま今度は飛び出していく彼女を止められず、僕は心底ため息を吐いて少し考える

 

 彼女はどうしてあそこまで僕に執着するのだろう。立場を狙うだけであそこまで易々とやれる人間だとは思えない。かと言って言葉通りに僕を愛しているとも、僕には思えなかった

 ならさっきの笑顔はなんだったんだろう。たかだか話ができるだけで大泣きして、ここまでが嘘みたいに心から笑って…何が彼女の感情をあらわにするのだろうか

 

「はぁ…」

 

 気持ちの整理がつかなくて頭を掻く。これ以上は考えても答えは出ないだろうと決めて浴室を出た

 着替えてから一悶着あった部屋に戻ると、律儀に自分の死覇装を着直した彼女が浮かれて揺れている。何がそんなに嬉しいのか

 

 声をかけると体を大きく跳ねさせてこちらを見た。人の顔を見て驚くとは失礼だな

 とりあえず座ってもらって自分も座る。服は貸したのにと言うと謝られた

 そこから冗談混じりに僕に固執する理由を問うと、彼女は「いっそ立場ならよかった」と言って長い話を始める

 

 牢にいた僕を見ていたこと、僕が雛森君を好きであること、僕が彼女を愛せたら深く愛してもらえるのではないかと彼女が考えたことも

 そこからこの間までいた二度目の牢の話になって、彼女の目には僕が全てを背負い込んで楽になろうとしてるように見えたと話をされた。僕はただ市丸隊長の居ない執務室に戻る勇気がなかっただけなのに

 

 ずっと僕のことを考えていたと言っていた。良いところも悪いところも好きになってしまったから、自分だけを見て欲しいと、彼女言う

 そうやって感情的に泣き出したのに、今度は僕が望むなら消えると言い始めた。傲慢なのか謙虚なのか、感情的すぎて計りかねる

 

 彼女は自分の手で僕を幸せにしたくて、守りたくて、そして自分を見て欲しいと言う。そのためならなんでもするとも

 それでも、僕の視線がどこに向いていて、自分が消えることになろうとも、僕を愛したいと言った。それだけは許して欲しいと

 言葉が放たれる度、彼女はどんどん縮こまっていく。願うように、祈るように、手を組んで丸まって

 

 もういいと、思って抱きしめた。そんなに追い込む必要はない。僕は彼女が思うほど綺麗な人間でも、守られるに値する人間でもない

 それでも、そんなに真っ直ぐ僕を好きだと言ってくれる人がいるのなら…好きになれたらいいと思った。彼女と言う人間を見てみたいと、そう考えた言葉を放つと、また彼女は止まった涙を流し始める

 

 かと言って彼女の期待に応えられる人間でもない。でもそれを告げると彼女は遠回しに「そんなものは関係ない」と言った。

 

 そのくせ僕がそれでいいのか、なんて聞いてくる。それはつまり、僕が肯定することを期待した言葉だ

 でも本人に自覚はないんだろう。だから敢えて試すようなことを言った。あくまで僕の意思だけではないと。そしたらまた彼女は嬉しそうに笑った

 

 しかし女性とお付き合いしたことはない

 戸惑っていたら彼女は言った「たくさん話をしよう」と、そんなことを言っても何を話したらいいかわからない

 でもまぁ、話をすることは大事だ

 

 

 とりあえず、お茶でも出してあげよう。あんなに泣いたら喉が渇いてるはずだから

 話はそれからすればいい

 

 

 

 

終

 

 

 







以前書いたものを全編書き直して掲載しました
吉良副隊長の真意は吉良副隊長のものなのであくまでこれは私の妄想です。私が正しく描けるのは鏡花さんの気持ちと見た景色だけです
それでも系というシリーズの一つの視点になればと思います

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