※この作品はR-18です。

緋月鏡花について   作:七星七夕

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一片の花びらを君に

「一片の花びらを君に」

 

 

 みなさんこんにちは

 ボクの名前は鈴木三郎と言う。なんとも冴えない名前だが許してほしい

 今日僕がみなさんの前に顔を出したのはある事実を公表するためだ。ゆっくり聞いてほしい

 

 

*********

 

 

 ファンクラブ、と言うものがある

 

 それは対象に気づかれないように対象を応援する非営利組織であり、同好会

 護廷十三隊の各隊長、副隊長及び一部席官にそれは存在する。顔がいい、性格がいい、恋してる…理由は様々だがとにかくファンクラブでの活動を楽しんでいるのは事実であり、絶対原則として対象の迷惑なるようなことはしない、対象に必要以上に接触しない、推しはみんなのもの、と言う規則がそれぞれ存在する。ファンクラブによってはその他にもルールが存在しているのだろう

 

 ボク、鈴木三郎が会長を務めるのは正しくその中の一つ「緋月鏡花七席」のファンクラブだ

 

 発足こそこの数年程度だが、彼女の人気は新人の頃からすでに密かにある。最初は俯きがちな美人という程度だったがある時期以来濃いクマを抱えるようになり密かな人気が低迷する。しかし僕は見落とさなかった、そう彼女の視線の先を

 

 彼女はいつ頃からか吉良副隊長を目で追うようになっていた。当時のボクとしてはいささかショックではあったが、緋月七席のそのまっすぐな目にむしろ惚れ込み、しかし彼女の好意ははっきり言って吉良副隊長だけが気づいていない程度のものとしてあけすけであり、そのいじらしさに徐々に会員を増やしていった

 同じ頃から彼女の鍛錬の集中度はぐんと上がり、極めてクールな印象と元来あった斬術の技はボクたちを魅了してくれる

 

 そんな彼女に転機が訪れた

 

 吉良副隊長の前でだけ笑うようになったのだ。決して満面の笑みというわけではないがこれは一大事件であり、彼女の態度からして念願の恋が実ったのは確実

 僕は泣いた。嬉しくて。彼女の真剣な思いが実ったことが自分のように嬉しくさらに幸せになって欲しくなった。現世ではこういう存在を「推し」と言うらしい。それなら僕は緋月七席を一生推す

 

 緋月七席の魅力はなんと言ってもギャップにある

 普段は笑顔のえの字も無いような冷たい印象と鋭い目つき、強い斬術、他人に興味のない態度。それが吉良副隊長がいるとどうだろう、雰囲気は一気に柔らかくなり、笑顔をみせるようになって少女のように愛らしくなる。元は年相応な印象に惹かれた僕でもこのギャップは捨てがたい。彼女の笑顔は可憐な花のようだ。かと言ってもその笑顔が吉良副隊長以外に向くことはないわけだがそれはそれ

 

 ファンクラブとして対象の周りの重要なパーソンは吉良副隊長である。彼女の恋人である彼もまた、緋月七席の前では少し柔らかい態度を示す。一時期は彼女を無視したりするなど目に余る行動があったが、それもある日を境になくなった。二人の間に何があったのかはわからないが、とにかく関係が良くなることは悪くない。おかげで彼女の笑顔が見れると思えばだが

 

 ボク達のすべきことは緋月七席をサポートすること。仕事面においてももちろん恋愛面でもサポートは欠かさない。例えば会員Aと緋月七席の会話を見てみよう

 

「緋月七席! 今月の瀞霊廷通信読みました!?」

「…いえ」

「現世で流行ってる「キャンプ」って言う催しの特殊なんですよ!」

「はぁ…」

 

 緋月七席は興味が薄いようではあるが見せられた雑誌を覗き込んでいる

 

「これとか良くないですか? 満点の星空が見えるんですって」

 

 そう言って隊員Aはページの右上を指差す

 

「…ほう」

 

 お、興味を惹かれたようだ。ナイス隊員A

 

「でもこれお金高いんじゃ…」

「七席のお給料なら行けそうじゃ無いですか? ほら、道具がなくても施設もあるみたいですし」

「そうなんですね…」

 

 緋月七席はページをよくよく見ている。なにか思うところがあるようだ

 

「…と、失礼しました。まだ仕事がありますので」

 

 そう言って緋月七席は去っていった。しかし何かつぶやくように歩いているあたり手応えは見える

 

 …とまぁ、こんなふうに吉良副隊長と緋月七席の仲を応援するのも務め。この後どうなるかは二人次第だが、好転することを祈る

 他にはこんな例があったことも

 

「わ! 緋月七席どうしたんですか!?」

「…いえ、なんでも」

「いつもよりずっと顔色が悪いじゃ無いですか」

「問題ありません」

 

 この隊士、偶然を装っているがファンクラブ会員である。この日は緋月七席が吉良副隊長とうまく出会えず一週間が経った時のこと。疲労と充電切れで死にかけている緋月七席をなんとかしたいとこの会員Bは立ち上がった

 

「ひ、緋月七席! この資料を吉良副隊長にお願いできますか。俺他にも用事があって」

「! それは急ぎの資料ですか?」

「そうなんです。上官に頼るのも忍びないのですが用事も急いでまして」

 

 お願いできませんか、と懇願する隊員B。その言葉に彼女は少し考える

 

「…わかりました。私から渡しておきます。お気をつけて」

 

 いつもの無表情のまま緋月七席は資料を受け取ると去っていく。ボクと会員Bはその様子を見届けた後でハイタッチを交わし仕事に戻った

 あの一瞬のわずかな喜びがボクらファンクラブの喜びに繋がる

 

 おわかりいただけただろうか。我がファンクラブの密かな活躍を

 こうしてさりげなく、かつ自然に対象を支え見守るのが存在意義である。後は彼女と吉良副隊長の仲を裂こうとする死神をこれ以上許容しないこと。先の爆発騒ぎの真相を知った時は顔面蒼白という感じで己を恥じる結果になった。これ以上そんなことがあってはならないので、現状警備を強めている

 

 緋月七席は観察していると排他的な印象とは裏腹に吉良副隊長のことになると繊細になる傾向がある。このギャップもまた彼女の魅力だが、吉良副隊長が彼女を泣かせるようなことがあれば容赦するわけにはいかないと言うのが現状ファンクラブの総意だ

 

 対象の幸せがボクたちの幸せである。これからも緋月七席を追いかけ、緋月七席の幸せのために動いていこう

 

 しかし彼女にもプライベートはある。特に排他的な緋月七席は他の隊士と関わりを持つことが少ない。いつだったか十一番隊の素行の悪い死神に絡まれた時に彼女を守った死神もまたファンクラブ会員だか、そういった小さい関わりを大事にボク達は生きている。それだけ彼女は他人と関わろうとしない。かと言って話しかければ返してくれるので見た目ほど冷たいわけでも無いのだが

 

 彼女のプライベートは大方吉良副隊長といるであろうことは明白なのでその実謎に包まれているが、時折図書館で見かけられ図鑑を借りることが多いようだ。ファンクラブの間では彼女が借りた図鑑をみんなで見るのが一つの行事になっている。図鑑は現世の生物や鉱石が多い

 

 そして改めておわかりいただけただろうか、緋月七席の魅力を

 容姿もさることながら斬術や性格面でのギャップが強く光る逸材、それが緋月七席だ。あれだけクールな印象でありながら髪飾りは赤いリボンなところも乙女チックで愛らしいとボクは考えている

 緋月七席を陰ながら支え、応援するのがボク達のつとめ。全ては対象の幸せのために、今日もボク達は動く

 

 僕たちは彼女が幸せになるのならどんな花だって贈ろう。どんなお祝いだってしよう。できる限り守ろう

 幸せを願う一片の花びらを彼女に贈りたい

 

 全ては彼女の幸せのために

 

 

 

 

終

 

 

 

 

 

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