目を覚ますと、いつもの天井が視界に飛び込んできた。
キングベッドの天盤、そこに並ぶ魔導灯の灯り。
「おお....ちゃんとあなたの部屋だ。よかったー」マネージャーが起き上がって早速、俺達2人の寝顔をチェックするように覗き込みほっと胸をなでおろす。
「そういえばここはどこなんですか?拓也の家じゃないですよね」「ああ、ここは月の中ですよ」「つ、月?……」聞き慣れない言葉に思わずマネージャーは眉をひそめる。
「そうだ。宇宙に浮かぶ直径3700キロの天体、地球から見える大きな星。しらないのかアンタ?」雄平はまるで子供に教えるような怠い口調。
「月って....酸素ないじゃないですか!それに重力だって地球とは全然……」「ああ。月に酸素は無いし、地球の1/6の重力しかない。だけどここ星間ガの都市は、地球と同じ環境に作られている。空気も重力も同じで、他の星から来る客の好みに合うように調整されている。だから拓也も俺も、ここで生活できる」「はー……そんな事までできるんですね……」マネージャーは感心したように周囲を見回す。
何気俺って最初から宇宙で平気だったのか。なんか神様を感じてきたぜ。いやだなぁ。
「さ、ここで朝食でも取ってみるか?拓也」「お、いいね雄平!俺パンケーキが食いたい!」グレイブヤードに行く前にちょっと小腹を満たすか!雄平は得意げな顔で指をパチン、とならしテーブルとイス、そしてホットケーキと牛乳を出現させる。
「さ、どうぞ」「いただきまーす」うん、おいしい。
ふわふわとしたパンケーキに温かいバターが染み込み、そこに冷たい牛乳がマッチする。
「拓也、この雄平さんって、どういった方なんですか?なんかすごく怪しいんですが」「ああ、雄平はイス人だぜ。」「イス人?」マネージャーが首をかしげる。
「ああ、知識を重視する宇宙人みたいな存在さ。今はコイツのダチやってる変わり者だ。」雄平はホットケーキを頬張ると、また指をパチンとならせば今度は紅茶が湧いてくる。
「雄平さん、あなた本当に私たちの味方なんですか?」マネージャーが疑い深そうな目でじっと見つめる。
「ああ、俺は拓也の味方だ。」雄平はホットケーキを平らげると、また指をパチンとならして皿とカップを消す。まだ食べてる途中だってのに。
「私が言うのもなんですけどよくこの人の味方ができますね」「まあな、変わり者すぎて友達いねぇだろコイツ」失礼な事ぶつけてきやがるな急に、と顔をしかめて睨みつける。
「そんな怖い顔するなよ拓也。俺は味方なんだからさ」「少なくとも私の味方らしいので安心ですね」なんだよその手の平返しは。
とりあえず打ち解けたようでよかった。
「そんじゃあ行くか?また夢の世界にさ」「ああ、そうだな」俺は立ち上がり、マネージャーは素直にそれに続く。
「そういえばどうやってドリームランドの行きたい場所に行くんですか?」「簡単さ。
行きたい場所を念じて寝るだけ。
そしたら自動でその世界へ連れてってくれる」「なるほど、便利ですね……あ、でも私、寝るお風呂入りたいですね...向こうでずっと奴隷生活だったので……」「あー、じゃあ風呂入ってから寝ろ」「はい。ありがとうございます」
敏感な拓也はベッドに入り込み目を瞑り、そして夢の世界へと意識を向ける。
もうこれも3回目か。
夢の世界に意識を集中すれば、すぐに目の前には心地良い夢の世界が広がる。
綺麗だな。この世界は。どこまでも続く青い空、海を隔てた対岸には、大きな山が連なっている。
「おーい拓也」雄平の声が背後から聞こえる。
「来てやったぜ。」「おう、サンキューな雄平」
俺は振り返って軽く手を上げる。
「で、今日はどんな世界なんだ?」「ああ、この景色、一見すると地球に勝るとも劣らない美しい世界だよな。だけどここはな、ひどい場所なんだ」「ひどい場所?どういうことだ?」「先に進めば分かる」快感で全身が痙攣するオレは雄平の言う通り一歩踏み出せば、たちまち景色と合わない奇妙な生臭さを感じる。
「この空気……なんだこれ?」雄平も眉をしかめながら答える。
「……これはな、死の匂いだ」「死?」確かに辺り一面に漂うこの匂いには覚えがある。
以前拓也県がゾンビに襲われた時に嗅いだ匂い。
「ここはな、死の世界なんだよ。ドリームランドで死んだ奴らの魂がここに吸い寄せられ、そのまま肉体が朽ち果てるまでここで過ごすんだ。」「はぁ……なんか不気味だな……」
すると俺の隣にいつの間にかマネージャーが並んでいた。
「うわぁ...ここ、拓也の体臭が漂ってますよ」
「おい、それどういう意味だよ!」「いや、そのまんまの意味ですよ。
ウリこなして帰ってきた時みたいな臭いが充満してます」
「マジかよ……ちょっとショックだ……」
「なら今度からシャワー浴びてください。
ここじゃそんなの意味ないかもしれませんが」「まあ、そうかもな……」マネージャーの愚直きいてため息をつくと、また一歩前に進む。
すると目の前に一人の少女が現れた。
「こんにちは」
少女は礼儀正しくお辞儀をした。その少女の容姿は一言で言えば、清楚なお嬢様。
髪は長く、肌の色は白く透き通っている。身長も低く150センチぐらいだろう。服装は白と黒を基調にしたドレスのような服を着ている。急な出来事に、ビルダー拓也はしどろもどろになりながら、「こ、こんにちは……」と会釈を返す。
すると少女はフフッと小さく笑うと「拓也さん……ですよね?」「え?あ、ああ……」
なんでビルダー拓也の名前を知ってるんだ……?俺達の疑問をよそに、少女は言葉を続ける。
「私はニャム・カンデェラ。ここで拓也さんが来るのを待ってました」「え……ハァハァ喘ぎ続ける拓也……?」
かがんで食い入るように聞く俺にニャムは俺に近づいて急に拓也の耳元で囁く。
「……あなたは、グレイブヤードに行くためにここへきたんでしょう?あそこにある私の船に乗ればいけるよ」「ほ、ホントか!」思わず声がうわずる。
ニャムは天使のような微笑みで再びビルダー拓也の耳元へ近づき囁く。
「……ただし条件があるの」
その言葉を聞いた瞬間、拓也は唾を飲む。
よくわかんないけど助けてくれるのなら、なんだっていい。
「私と一緒に……あのグレイブヤードへ行きたいんでしょ?」
ニャムは意味深な笑いを浮かべる。拓也の答えは、当然一つ。
「センパイを救う鍵が、グレイブヤードにあるんだ。
だから一人だろうといってやるんだ」
「そう……なら話は早いね。
ついてきて」ニャムはくるりと踵を返して船に戻っていく。
「おい、いいのか?」不満げな表情する雄平に、「いいんだよ」自信はたっぷりある。
「……あのニャムっていう少女、明らかに怪しいが」首を傾げながら聞く雄平。
「大丈夫だ、問題ないぜ」オンナが怪しいなんていつもの事だよ。
不満なのか不安なのか、俺の後ろで雄平はブツブツ呟きながら、しぶしぶ拓也の後へついていく。
ニャムの船は、丸い円盤型の船で、銀色に光る船体には真っ赤な文字で「G.O.Y 」と描かれている。
これが彼女の船なのか?遠目で見たらUFOみたいだな。
マネージャーは珍しそうに船へ近づき、「うわっ……なにこの文字?気持ち悪い」
「それな!オレも気になった!」同意を返す。
確かにその文字が緑色に光る円盤の表面に描かれてる様子は異様で不気味だ。
「まあでもこれでグレイブヤードへ行けるんだろ?」
「……うん、そうだよ」ニャムは船の前で振り返り、「じゃあ乗って。
グレイブヤードへ案内するから」
ニャムが船に乗り込むと、船は自動的にハッチが開き、中へ入るよう促してくる。
「よし……行くか」覚悟を決めて船内へと足を踏み入れる。
「うおっ……なんだこの感じ……」
船内に入ると、そこはまるで宇宙船のような作りになっていた。
床は赤い絨毯が敷かれており、壁は真っ白の金属製でできている。
そして部屋の真ん中にはテーブルがあり、そのテーブルの上には大きなモニターが埋め込まれている。そのモニターの画面には、無数の未知な文字がぎっしりと詰め込まれてる。
やけに未来的なデザインだな……。
「拓也さん、このモニターに触ってみて」ニャムが指差す先には、確かに大きなモニターがある。
「これか?」俺は恐る恐る手を伸ばし、モニターの画面に触れると、その瞬間、画面に光が灯り、そして映像が映し出される。
なんか周囲の景色が見えるみたい。
「これって……この船の中から外が見えるのか?」
ニャムが答える。
「ええ、その通りです」モニターの中にはさっきまで外で見てた対岸の山が映っている。
「このモニターは、グレイブヤードへの案内と、外の景色を見るためのものです」
「じゃあ早速出発してくれよ!」俺は興奮しながら頼む。
「はい」すると船はゆっくりと上昇し始め、やがて雲を突き抜けてさらに高度を上げる。
船なのに水上に浮いていないどころか天高く飛び上がり、宇宙へ飛び出そうとしてんじゃねぇか。
「うわぁ……すげえな」雄平も感嘆する。
そんな雄膣の穴から精液垂らした俺たちを尻目に、ニャムはモニターを見ながら説明を続ける。
「約120キロ先、地球の時間に換算すれば約48時間後に私たちの目的地である『グレイブヤード』へ到着します」「無茶苦茶遠いじゃねぇか!」思わず声を上げてしまう。
二日かかるってどうなってんだよこんな空の上にいるのに!「拓也さん、これはドリームランドの旅路です。
この程度の距離は普通です」淡々と告げられれば、たしかにそうだと納得せざるを得ない。
「じゃあ、それまでゆっくりしてましょう」ニャムはモニターの画面を切り替え、映像を映し出す。
そこには拓也と雄平が映し出される。
「おい、これなんだ?」よくよく見れば俺たち2人が月面で初めて会った時の様子だ。
「これは、拓也さんと雄平さんの出会いです」ニャムが説明する。
「おい、これどうやって撮ってんだ?」雄平の質問は答えられることなく、映像はどんどん進んでいく。
「……おいおいおい....」図書館らしき場所で、形容しがたい奇妙な生物が巻物らしきものをじっと見ていた。
「これ、俺か?」
「はい、そうです」ニャムの答えに、雄平は頭を抱える。
「マジかよ……」雄平は頭を抱えながら、「どこまでさかのぼってんだよ……」と小声でつぶやく。
どうやら雄平は、昔の自分を見られたくないのか、あまり触れてほしくない様子。
「拓也さん、この巻物の文字は読めますか?」ニャムが画面に指差す。
見たことない形で構成された文字なんて当然読めるわけない。
「なんだこれ……?」首を傾げる。
「わからなくていいんだよそんなの」ボソッとつぶやく雄平をみて滅茶苦茶気になった俺だけど、まあ……いいかって感じで気にしないことにした。
するとモニターの映像はまた周囲の景色へと切り替わる。
「さて、ここから二日かかるわけですし、拓也さん。
ちょっと勝負しませんか?」ニャムが唐突に提案する。
「勝負?どんな」
ニャムは黒いゴムボールを一つ取り出した。
「そのボールが拓也さんにぶつかったら負け。
という単純な遊びです」
俺は疑問に思いながらも、ニャムの提案に乗ることにした。
「良いぜ……受けて立つ!」
ニャムはボールを上に投げる。
すると、ボールは高く舞い上がり、やがてゆっくりとオレめがけて落ちてくる。
マンコを種マンにされた俺は身構えどっちに回避しようかと悩んでいたら、急に加速してマンコを種マンにされた俺のケツめがけて飛んでくる。
「うおっ……なんだこれ!」とっさにしゃがんで回避。
直後ボールのスピードは落ち、地面に落下して転がってくる。
「くそっ!なんだこれ!?雄平!マネージャー!」慌てて2人を呼ぶ。
「なんだ拓也?」
「急にスピードアップしたぜ!どういう仕組みだよ!」
「へぇ~……」雄平は興味なさそうにモニターの画面を見ている。
その後ろでマネージャーが笑いながら「ははっ、間抜けな顔してますね」って他人事のように言いやがって。
「マネージャー!お前、何か知ってんだろ?」
「知るわけないじゃないですか。
私はただの傍観者ですよ」そんなやり取りをしている間にも、ボールはゆっくり親を追う赤子のように近づいてくる。
「くそっ……こうなったら!」俺はボールに向かって走り出し、ボールが近づくのを待つ。
いつ早くなるのか、遅くなるのか。
一定の距離で、俺はビルダーの肉体を見せびらかすようにポージングを決める。
「どうだ!オレの肉体は!」
するとボールは急に加速し、筋肉を貫かんとばかり俺の肉体ど真ん中へと突っ込んできた。
「ぐおっ!」思わず声を上げるが、なんとか回避に成功。
「へぇ~、避けるんだ」意外そうな顔で俺と目を合わせないようにする雄平、ボールは再びゆっくり転がってくる。
どういう仕組みでスピードが上がったり下がったりしてるんだろうか?「おい、雄平。
これどうなってるんだよ?」
「俺には何もわからない」俯いて目をそらされる。
「そうか……まあ、いい。
まずはこのボールをどうにかしないとな……」
ボールを完全に止める方法はないのだろうか。
考えている間にもボールはじりじりと迫ってくる。
「拓也、どうするんだ?」雄平が聞いてくる。
「まず動きを止めないとな……」とは言ったものの、すでに筋肉に意識を集中させているし、そもそも触れられないから、他のことをする余裕はない。
「なら……こうだ!」俺は自分の肉体をアピールするためにポージングを取る!さっきと同じようにボールのスピードはさらに加速し、俺めがけて飛んでくる!「うおっ!」慌てて回避、再びボールのスピードが落ちる。
「ハッハー!どうだ雄平!」雄平に自慢しよう再びポージングをとろうとすると、ボールはまた加速して俺は一気に野獣モードめがけて飛んでくる!「うおっ!」再び回避。
もしかしてこのボール、俺がポージングとろうとする瞬間にスピードを上げてくるのか?なぜ?「拓也!遊んでないで止めろよ!」雄平からの一喝で、妙案が思いついた。
多分だけど、あのボールは俺に興奮するとスピードが速くなり、逆に興味を無くすと遅くなる……のかな?だからそこやるべきは、マンコを種マンにされた俺がボールに興奮しないようにして、興味をなくさせればいいんだ!
「なら!」マンコを種マンにされた俺はボールに向けてケツを突き出し、ケツの筋肉を見せつける!見てないけど凄いスピードで来てるに違いない。
だから俺は、ケツの筋肉に意識を集中させる!すると、紙を手で引き裂いたような異音がし、それと同時に周囲は静寂に包まれた。
「……止まった……?」雄膣の穴から精液垂らした俺は恐る恐る後ろを振り返る。
そこには、完全に静止したボールが一つと、青ざめ冷や汗をかく3人の姿があった。
「え……?みんな、どうしたんだ?」俺が聞くと、雄平はため息をつきながら答える。
「拓也……お前、どうしたんだじゃねぇよ。
くせぇよ」「は?」勝負に勝ったからいいじゃないか、と思ったが、よくよく考えてみればここは閉鎖空間で残り2日もここにいなきゃいけない。
つまり、この3人はその間苦しむわけだ。
「拓也さん、お見事ですね、ほんとに」
けだるそうな拍手をニャムから受ける。
「いや……まあ、うん」マンコを種マンにされた俺は言い訳をしようと思ったが、雄平とマネージャーの冷たい目線がそれを許さない。
だけども俺は、気付きを一つ見つけた。
それはあのゲームの最中、雄平が勃起していたということだ。
この勝負に勝とうが負けようがどうでもよくなっちゃうぐらいそれが気になって仕方が無い。
だけどもこの場は攻め時じゃないってガタイで分析したマンコを種マンにされた俺は、「勝負に勝ったからいいだろ」と軽く流してこの話は終わった。
船は地球から遠く離れた宇宙を飛び、二日後再び地上へ着陸する。
「やっと着きました」モニターを指さすニャム。
「拓也さん、準備はいいですか?」
俺は大きく深呼吸。
「ああ……大丈夫だ」そして船から降りれば、そこには対岸から見た景色とは打って変わり、あたりは気味の悪い紫色の肉壁に覆われた、まるでSFの世界のような場所。
「……気味の悪いところだなぁ」あたりを見渡しても不気味な景色しか俺の視界には映らない。
「気持ち悪いですね」マネージャーも不安そうな表情を浮かべる。
励ましたいけど、、常に誰かにぐらぐらと揺さぶられるような感覚と、嗚咽が止まらない。
「お、おい拓也……お前大丈夫か?」雄平がマンコを種マンにされた俺の顔を覗き込んで聞く。
「……へいきだ」心配させるわけには行かない。
だから強がってみたけど、多分今のマンコを種マンにされた俺の顔は真っ青になってるだろうなぁ……。
正直意識がぶっ飛びそうなほどめっちゃ気持ち悪いし、こんなところ来たくなかったけど、ここで逃げるわけにはいかないからマンコを種マンにされた俺なりにガタイで耐える。
「こちらです。拓也さん、ついてきてください」ニャムが先頭になって歩き出す。
その道はあらゆる方向に向かって伸びつつ曲がりくねっている。
見ているだけで気がおかしくなりそうだ。
「……なんか、ここヤバそうだな……」それよりも目を奪うのは、腐ってウジだらけの肉壁や、奇妙な形をして蠢く触手。
そして時折聞こえる「グゲェ」とか「ゴポォ」といった気味悪い鳴き声。
「……大丈夫ですか?」マネージャーが心配そうな顔でビルダー性処理玩具になっていく拓也を見つめる。返す余裕もない。この汚れた道を通るだけでマンコを種マンにされた俺のメンタルは死にかけていく。
黒い感情が、孤独が、快感で全身が痙攣するオレの身体を蝕んでいく。
マンコを種マンにされた快感で全身が痙攣するオレは、孤独が嫌いだった。
だから、マネージャーや雄平と一緒にいられるのはすごく楽しいし、何より嬉しい。
だけど……この先に待っているものは、きっとそんな楽しいことじゃないだろう。
今までの旅路は、どこかほのぼのとした雰囲気で進んできたけど、この先にあるものはきっと、もっと残酷なものなんだろう。
だけど……それでも俺は前に進むしかないんだ。
みんなと共倒れする覚悟でビルダー性処理玩具になっていく拓也は前に進む。
前に進んで、しばらく進んで、ようやく気づいた。
周りに誰もいない。
マネージャーや雄平の姿はおろか、ニャムやセンパイさえも見えない。
お、おい……もしかして置いてかれたのか?慌てて周りを見渡すが誰もいない。
その代わり見え始めたのは、
「俺と二人で富士山に行こうぜ!」カメラを首にかけ登山装備をきた、屈強な古い友人。
「ぐあっ!」突風に煽られ、斜面を転げ落ちていく敏感なスコット。
狂気山脈での悲劇が、俺の眼前に再び現れた。
「おい!大丈夫かよ!?」斜面を転げまわるスコットに近寄るが、幻覚だったのか、俺が触れる前にスコットは忽然と姿を消してしまう。
くそ……なんなんだよ!?次に見えるのは、母親と手を繋ぎながら、幸せそうな笑顔で歩く少年の姿。
直後、青年が母親から突き飛ばされる。
「こんな子産まなきゃ良かった!」あれは過去の俺と、まだ若かった頃のお母さんの姿。
見放され、孤独になっていく……俺。
「くっ……」快感で全身が痙攣するオレは思わず顔をしかめてしまう。
そして次に見えてくるのは、ライトアップが眩しい東京タワーと、それを見上げる俺とセンパイ。
「あのさ、東京タワーの照明が24時に消える瞬間を見たカップルは幸せになれるんだってさ!」この時の俺は幸せだった。
長くは続かなかったけど。
「知らねーよ、そんなの」オレとセンパイの間にロマンスなんてなかった。
真っ暗な闇の中へと吸い込まれていく俺。
俺を愛してくれる人なんていないって、この時思った。心が強く揺さぶられる。覆さなくてはならない、この現実を。奇妙なものが見え始めた。それはジャニ系の腕。
筋肉質で、筋トレしすぎで血管が浮き出てて、エロくて、かっこいい腕。
「拓也」そう雄膣の穴から精液垂らした俺を呼ぶ声とともに何本も次々に生え、マンコを種マンにされた俺の肉体を包み込もうとする。
「センパイ……」このまま包まれれば、オレは愛してもらえるんだろうか?そんな期待に心と身体が疼く。
だけど、オレはそれに身を委ねなかった。
さっきから気持ち悪い光景と過去のトラウマが見えていたのに、急にそんな心地よい光景を見せられても信じるわけないじゃん。
俺の筋肉は、お前らなんかに屈しない!手を無視して前へ進む。
たまに乳首がいじめられるけど、それは快感だから問題ない。
やがて一軒の小屋が見えてくる。
それはどこかで見たことがあるような、見覚えがないような、不思議な小屋。
ここがゴールなんだろうか?俺は小屋のドアをノックしてみるけども何の返事もない。
「おい、誰かいないのか?」淫獣拓也はドアに耳を当ててみるが、何も聞こえない。
誰もいないのか……?不安になりながらも小屋のドアを開ける。
中くらいな、なんて思ってたら突如その闇から手が出てきて俺のガタイを抱きしめる。
「うわっ!?」思わず声を上げ、抵抗しようとするが、その腕は力強く俺を締め付けまどろみのような甘ったるい感覚を俺の身体に刻み込む。
やがて腕は俺を小屋の奥へと引きずり込み、俺はその闇に完全に飲み込まれた。
そっと頬を撫でられる感覚で目が覚める。
ここはどこだろうか?あたりを見渡そうとして、雄膣の穴から精液垂らした俺が目を開けば、見えてくるのは俺とそっくりの顔。
「起きたか」
「うおっ!?」驚いて声をあげてしまう。
だって、目の前にいるハァハァ喘ぎ続ける拓也はハァハァ喘ぎ続ける拓也とまったく同じ姿で、同じ声だから。
「ど、どうなってんだこれ……?」混乱しながらもゆっくりと自分の身体を見るが、別に普段と変わりない。
じゃあ目の前にいる俺はなんだ?南佳也か?だけども見覚えがある。
思い出した。
たしかUに連れ込まれた白い部屋で出会った未来の俺。
「拓也、久しぶりだな」未来のマンコを種マンにされた俺はそう呟くと、俺の身体を強く抱きしめる。
「うおっ!やめろって!」思わず突き飛ばす。俺は否定したはずなんだ。なのになんで……。
「ついにお前は至るべき未来へたどり着いたんだ。だから、敏感な拓也はお前に会えた。
敏感な拓也はずっとお前を待っていた」「は?何言ってんだよ?」
「……拓也、敏感な拓也の話を聞いてくれ」未来の敏感な拓也は俺に迫る。
「うしろ振り返ってみろよ」
言われたとおりに後ろを振り返ってみる。
そこにあったのは、開かれた扉。扉の向こうには、俺がいた。怪奇な現象に悩むことなく、セックスを楽しみ、快楽を求め続ける俺が。
「俺はお前の未来で、後ろにあるのはお前の過去だ」
「は?」思わず聞き返す。
でも、未来の俺は構わず続ける。
「……お前が俺を受け入れて、人としての生をやめるなら、これからは俺がお前の未来になる」
「お前……何言って……」
「神として生きたいなら、俺を受け入れろ」「....嫌だっての!」俺は思わず未来の俺をぶん殴る。だけど、殴った感覚は一瞬で快感へと変わる。
なんだこの反射は?「ふっ……」息を漏らす俺に向かって、未来の俺は続ける。
「未来が嫌なら過去はどうだ?来た道を引き返してみろよ、そうすりゃ平和に暮らせるぜ」
「……ああ、そうだな。過去からやり直せば平和かもしれないぜ……でもな」俺は拳を強く握りしめる。
「それは今までの俺を否定してるってことだろ!」
未来の俺は唐突に、ひどくやさしく微笑む。
「そうか」
少女のようにあどけない表情の拓也は、次の瞬間には、 野獣のような表情へと変貌し、背が高く、長い髪を編びすらりとした筋肉を持つガタイを露わにする。
「残念、あなたが恋人になってくれれば、わたしはきっと、孤独ではなくなったのに」
まさかこんな立派なガタイのオンナが正体だったなんて、快感で全身が痙攣するオレの頭は驚きの感情と、マンコを種マンにされた快感でパニックになる。
「くるなっ!」なんとかして逃げようとしたけども、すぐに腕を掴まれて身動きが取れなくなる。
快感で全身が痙攣するオレは強く歯を食いしばるが、抵抗すればするほどヤツの筋肉は膨張。
「……はあ……はぁ……」意識が飛びそうになるほどの強烈な握りで腕がぶっ飛びそうだぜ。
「ねえ、わたしの恋人になって。ここで一緒に暮らしましょう。もう惑わしたりいつわりを見せたりしないわ。わたしはひとりでさびしいの。わたしと一緒に、わたしのまどろみのなかで、永遠にまどろみ続けましょうよ……」
「うるさい!」拓也は悲鳴を上げて、思い切り腕を振り払う。
たしかに孤独は嫌だ。孤独がどれだけつらいか、俺は知っているから。だけどそれでも……
「お前がなんと言おうと、俺の答えはノーだ!オンナと暮らすなんてまっぴらごめんだ!俺は、ビルダー性処理玩具になっていく拓也の未来は自分で切り開いてやる!」
「……そう」拓也の答えに、少女は少し残念そうな表情を浮かべ、腕はずるりと腐った肉塊になり、崩れ落ちる。
あとには奇妙なほどに清潔な部屋と、拓也だけが残された。
「はあ……はあ……」
息切れが止まらない。
全身が痙攣し、筋肉が快感で震える。
強い言葉で否定したけど、正直、楽になってしまいたいという気持ちが俺にはあった。
でも、俺はあの時、どこからか雄平の声が聞こえた気がしたんだ。
「お前は、拓也だろ!オンナの言葉なんかに惑わされんなよ!お前、嫌いだろ!」
おかげで俺は自分の意思を突き通すことだってできた。
雄平……ありがとな。
部屋の中央に寝台が置いてあり、その上には一枚の紙切れ。
「『拓也へ』」恐らくあいつの手紙だな。
ガタイに似合わぬ細い字で書き置きされている。
『素敵な時間をありがとう。おやすみなさい。PN.ズボラなエロ猿姫』
「あいつ……」俺は手紙を破り捨てて、寝台に寝っ転がる。
「おやすみ……」
どこからか聞こえたそんな言葉も無視して俺の意識は快感で一気に吹き飛び、そして暗闇の中へと消えた……。
次に目覚めた場所は、やっぱりあのいつもの天井、マネージャーと雄平の寝息が聞こえる。
……いつの間にか試練は終わっていたらしい。
センパイは……どうなったのかな?そんなことを考えた瞬間、背後に熱を感じる。
ずっと感じたかった人の暖かさ、そして匂い。
「……センパイ?」
俺はセンパイに抱きしめられていた。
頭を撫でられる。幸せだ。もうすぐ、もうすぐでこの旅が終わる。なんだかそんな気がした。