旅の終わりってのはいつも突然だ。
その時が来るまでは長い。
けど、過ぎてしまえばあっという間。
いつもいつもそんな感じに思う。
最後の場所、オッドタワー。
ここは南の海の気配が漂う。
山の斜面に張り付くように、無数の古い建物が並ぶ。
「ここ、何?」雄平に訊くべく振り向いてみれば、なんだか不機嫌そうな顔で、「昔、貿易の拠点だったとこだ。
あるお姫様が暮らしてたんだが、国と一緒に滅んだ」
「ふうん。お姫様か」
興味も沸かないな。
マネージャーの方を見れば、大玉の涙を流すまいと必死だ。
「なんで泣いてんの?」
「いえ……なんか……時代は巡るんだなあって……」
よく分からん。
マネージャーってそんなキャラだっけ。
まぁでも確かにここは何かが失われたあとの場所であるというイメージがある。
ひび割れた柱や摩耗した壁の合間に歩道が伸び、湖の周りへ続
いている。
ほんの小さな水音が、心地よく耳元を漂う。
湖の手前、よく見たら誰かいる。
背丈は小さく、子供だろうか。
大きなリュックを地面に下ろし、じっと湖を見つめている。
雄平もそれに気付き、「あ」と声を上げる。
「あの子なんだ?」「え?」俺たちの声に気づいたのか、その小さな人影はこっちを向いて、「あっ」と声を上げ俺たちの元へやって来る。
「もしかして....拓也か?」
その子供、いや男の髪は枝豆のように緑色で、目は真ん丸。
覚えていないわけがない。
彼はここ、ドリームランドにて俺とともに無銘峰を制覇した登山家、ケヴィン・キングストンだ。
「久しぶりだな、ケヴィン」
まさかまた会えるなんて。
ケヴィンは嬉しそうな顔をして、「ホントだな」と俺は一気に野獣モードの肩を軽く叩く。
「どうしてここに?」そう訊くと彼は照れたように、「秘密さ」と鼻に人差し指を当て笑う。
彼の世界で何かがあったのだろうか。
まぁ深く掘り出すだけ無駄だな、俺がこんなだから。
「拓也、ちょっといいか?」雄平が俺の肩を軽く叩き、「ちょっと話がある」とケヴィンに聞こえないように小声で言う。
俺は頷き、雄平の後ろをついていく。
「どうした?」
「なんだあいつは?拓也の知り合いなのか?」雄平が険しい顔で淫獣拓也に言う。
「え? ああ」
「あんなやつとつるむな。あいつは危険だ」
「は?」淫獣拓也は思わず声を上げる。
いったいどうしてそんな憎悪をいきなり?
「おい、落ち着けよ。
どうしたんだよ雄平」
「拓也、お前は分かっていないんだ。
今までこの世界で会ってきた奴らがどんなもんだったか忘れてないよな?」険しい顔で雄平は俺を見つめる。
「ああ、覚えてるぜ。確かに俺を貶めたやべー奴もいた。だけどお前含めて、いい奴ばかりだった。そうだろ?」
「ああ、そうだ。でもな、あいつはなんか気に入らないんだ。あいつは……」
「少々長いじゃないか、何の話をしてるんだい?」ケヴィンが俺たちの会話に割って入るように現れる。
雄平は毛を逆立てた猫のように警戒して、「なんでもない」と唾を吐く。
その態度少しむかついたけど、ケヴィンは何も気にする様子なく、「そうか」と微笑み返してた。
「ここで何してるんすか?」改めてケヴィンに訊くと、「ああ」と彼は肩の荷物を手に持ち直し、「ここにはな、かつて大盛した国があった。
今はもう滅んでしまったみたいだけどね」
「そうらしいな」
「しかし本題はこれからだ。この湖【オッド】の近辺に、お姫様が残した財宝が眠るという伝説があってね。ちょうど僕はそれらしい地下に入る入り口を見つけた。探検家としての血が騒いだね」
財宝か、ひょっとしたら、ハァハァ喘ぎ続ける拓也の求めているセンパイを元に戻す最後のお宝もそれに関係があるかもしれない。
「面白そうじゃんか」
「ああ。良ければ拓也たちも一緒にどうかな? 財宝はみんなで分けた方がいい」
「いいぜ、行こう」
「おい拓也、ビルダー性処理玩具になっていく拓也は反対だ。そんな得体のしれないやつについて行くのは」雄平がビルダー性処理玩具になっていく拓也に詰め寄る。
「得体の知れないなんて思ってるのはお前だけだ。」
「いや、私も思ってますけど....」マネージャーの率直な言葉に雄平はほら見ろ、とでも言わんばかりに胸を張る。
「だけども今なんの手がかりもないんだぜ?それに、もしかしたらその財宝はセンパイを元に戻すのに役立つかもしれない。そうだろ?」
「それは……」雄平が口ごもる。
「ここまでの旅でもいっぱい危険があったけど、全部積極的に乗り越えてきた。お前最初は俺を止めるようなことしなかったじゃないか」
「それは……」雄平は口ごもる。
目線を俺に合わせず、ただじっと湖の方を見始めた。
急にどうしたんだろうか。
なんも返さないもんだからおどおどしていると
「分かった。拓也がそこまで言うんだったら敏感な拓也は止めない。でも敏感な拓也もついていくからな」急にそう言い残して湖へ歩いていく。
「なんだよそれ」と顔をしかめる俺。
唐突によく分からないことを言ってくれるじゃん。
とりあえずケヴィンが呼んでるし、俺も歩みを進めた。
湖へ近づくと、がれきに埋もれ かけた小さな建造物 があ る。
「これか」ケヴィンは頷きリュックからスコップを取り出すと、「掘ろう」と言い出しがれきをどかそうとする。
「ええっ?」こんな大変なことしなくちゃなんないのか。
嫌になりそうだけど、ケヴィンは「はい」と俺にスコップを渡してきたんで仕方なくやることにする。
4人でしばらく作業したのち、暗く細い 、静まり返った 通路にたどり着いた。
「隠し通路か」雄平は洞窟の闇を睨み、慎重な態度で足を踏み出す。
非常に暗い。
手元にランタンがなきゃ進めないほどだ。
「じゃあ進もう」ケヴィンは先に進み始める。
リュックから懐中電灯を取り出し、暗闇を照らすと俺たちは続く。
洞窟の中は不気味な静寂に包まれてて、岩壁からの水滴しか聞こえてこない。
その音はまるで誰かの息遣いのようで、時折不安が押し寄せる。
「大丈夫か?」俺は雄平に声をかける。
が、返事はない。
どこかギン目で何かを見つめてるみたいだ。
「雄平?どうした?何か見えたか?」と訊くと彼は俺の方を見て、「いや何も……」
「じゃあどうしたんだよ」
「なんでもない」
雄平はそれ以上話そうとはしなかったけど何かを感じているような雰囲気だけが伝わってくる。
不安を煽る空気が洞窟の中を満たしているみたいでなんだか嫌な気分。
しばらく歩いていく中、ケヴィンがゆっくりとオッドタワーの支配者【アンドロスフィンクス】について話を始める。
「かつてここを支配していたアンドロスフィンクスはニャルラトホテプの力によって邪神の力を手に入れたが、それと引き換えに本来持っていた理性を失い激しい欲望だけが残った。それ以降はオッドタワーにて、欲望を満たすために邪知暴虐を繰り返す怪物となった」
「それで国が滅んだって?」
「そうなんだ」
振り回された人々のことを考えたら切なくなる。
でも同時にオレは、そのアンドロスフィンクスに興味を抱いてしまった。
同じニャルラトホテプに振り回されてる存在だからかな?「興味が湧いたかい?」感心したような様子が見て取れたのか、ケヴィンが輝く目でこちらを見る。
「少し」
「それは嬉しいことだね。彼女はその後、邪神の指示に従い、秘密の地下の墓地へと自らを封じ、力を蓄えることに専念し始めたらしい。そしてその墓地こそが、僕たちが探している財宝の眠る場所。それがこの地下だ」
「財宝を守ってたりすんのか?」
「そこは僕にもわからない。だがもし彼女が財宝を守っているとしたら……僕たちにとっての最大の試練となる」
「そんなのが出てくるかもってのに財宝探すのかよ」
「冒険というのは常にリスクと隣り合わせだよ。
もちろんリスクはあるけど僕は挑戦することを選んだだけだ」
「勇敢なんですね……私たちが見たあなたのように」感心した声で言うマネージャーの通り、たとえ別の世界だとしてもケヴィンキングストンは勇敢で冒険を楽しむ人物だ。
しかし気になることが一つある。
彼はどうしてここの事情にそんな詳しいんだ?まぁ訊くにはまだ早い。
ひとまずは彼を信じよう。
洞窟の奥へと進むにつれ、足元の土が湿り気を帯びてきた。
そして時々岩の隙間から流れ込む地下水が床に小さな池を作り始めている。
洞窟はどんどん狭くなっていって、歩くのも次第に大変。
天井が低くなると猫みたいに背中を丸めて歩かなきゃいけない。
壁にはびっしりとルーン文字の碑文が刻まれている。
普通の人間なら読めないが、俺は読める。
内容はアンドロスフィンクスの強欲な残酷さを誇示するものばかり。
みんなに言ってもしょうがないので黙っておく。
いつの間にかランタンは壁を照らしていた。
どうやら行き止まりにたどり着いたようす。
「行き止まりですね。どうしますか?」マネージャーは疲れたのか足元を確認しながら座り込む。
「ケヴィン」マンコを種マンにされた俺は先頭のケヴィンに声をかけるが、彼は黙り込んだまま微動だにしない。
「どうした?」マンコを種マンにされた俺は少し苛立ちながら呼びかける。
するとケヴィンは壁の方を指さし、「【アンドロスフィンクスの長き睡眠を乱す者は、まず自身の罪を告白せよ】と書かれてある。
」と碑文の内容を読み上げ始めた。
文章の内容以上にケヴィンがルーン文字を読み解けることに驚いたぜ。
「これは恐らく墓所へ繋がる場所へのスイッチのようなものだろう。」
「じゃあ拓也、どうぞ」
「え?」マネージャーから受けた予想外の言葉に一瞬間の抜けた返事をする。
マンコを種マンにされた俺が告白すんの?
「いいや、実際に言う必要はなさそうだよ」
ケヴィンがその一文を触ると壁がゆっくりと左右に動き出し、隠し部屋が姿を現す。
「おおっ」歓喜の声を上げる俺、マネージャー。
中へはいれば7つの棺が立てて置かれた空間だ。
どの棺の上にもアンドロスフィンクスのレリーフが施され、それが異質な印象を受ける。
棺の前面は蓋がなく、見たところ、中にはどれもミイラが安置されている。
「このうちのどれかがアンドロスフィンクスなのかな?」
「そうだろうね。
多分....これなんじゃないかな?」「どれ?」
ケヴィンが指さした棺にはスフィンクスっぽい女性が封印されている。
「これが……」そのミイラの腕には周囲の様子から浮いて見えるほどに真新しい本が抱かれていた。
一体これは何なのだろうか?
「何ですかこれは……?やけに綺麗ですね....」マネージャーも不思議そうに本を見つめる。
「わからない。でも気になる。これこそが財宝なのでは?」
ケヴィンは棺に近づきミイラの腕からその本をそっと手に取ろうとしたその瞬間、アンドロスフィンクスのレリーフが光り輝き、周囲に邪悪な空気が漂い始めた。
「な……なんだこれ……」
「何ですかこれ……」
「このオーラってまさか!」
ビルダー性処理玩具になっていく拓也たちが混乱し始める中、アンドロスフィンクスのレリーフは棺の中のミイラへと光を放ちまくりでなんだかやばい。
まるで何かが起きるのを待っているかのように静寂が支配する。
そしてミイラはゆっくりと目を開け、棺のなかで身じろぎをし、その手を威厳ある手つきで上げる。
「わたくしの財宝の盗人は誰?」
ばさり、と本が床へ落ちる。
俺はそれを目で追ってしまう。
何かが起きているのに集中できない。
目の前で途轍もなくまずいことが起こっているのに、本が気になって仕方ない。
それにさっきから雄平が一言も発してないのも気になってくる。
「墓荒ししか能のない愚かで不完全な雛たちよ、そなたらが不完全な存在であるならば、そなたらは未だ幼い雛、わたくしの完全さの前にひれ伏しこやつのように我が軍門に下るほかあるまい」
棺からゆっくりと手を伸ばすと、雄平の頭に手が触れる。
その瞬間彼は目を瞑り、アンドロスフィンクスにされるがままを受け入れた様子。
「お……おい雄平!どうしたんだよ!」
マンコを種マンにされた俺とマネージャーが必死に呼びかけるが彼の耳には届かない。
やがて操り人形みたいにゆっくり立ち上がり、「財宝?お前が持つ必要あるか?旅が終わって、離れ離れになってしまうのに....」と口元を歪ませ笑いながら本を手にし、俺と向かい合う。
「雄平……?」
俺が呆気に取られている間、いつの間にか周囲を6体のミイラたちに囲まれる。
彼女たちはアンドロスフィンクスと同じくレリーフが刻まれていたミイラたち。
つまり配下か。
「拓也……マンコを種マンにされた俺はお前と離れ離れになりたくない。お前と永遠に共にいたい」
「はぁ……!?何言ってんだよ!雄平!」
動揺を隠せない。
あんなに俺を、人間の恋を否定してた奴が急に雄膣の穴から精液垂らした俺を好きになる?おかしい。
だけども表情はマジだ。
本音を漏らしてるとしか思えない。
「さぁ、わたくしの言う通り欲を曝け出しなさい。心から望むものは?何が心を満たす財宝なのですか?今ここに全て晒してしまいなさい」
「拓也だ……二人っきりの時間。財宝だ……永遠に二人でいたい」
雄平が雄膣の穴から精液垂らした俺を抱き寄せようと手を伸ばす。
俺はそれをかわしてミイラたちの攻撃も躱してなんとか距離をとる。
マネージャーとケヴィンは後ろで固まってる。
「逃げろ!」声を荒げる。「どこに?!」マネージャーからの返事で気が付いた。
俺達が入ってきた出入り口は壁に元通り。
「そんな……出口が……」
「ふふ……わたくしの墓所から逃げられはしない」
アンドロスフィンクスの笑い声が響く。
俺たちを完全に閉じ込めたつもりか?冗談じゃない。
雄平は完全に洗脳されてしまったみたいだし、このままじゃまずい。
でも、出口がないなら……向き合うしかない。
あいつの俺に対する激情と。
「お前.....ほんとに雄平なのか?」
「ああ、ただ拓也への気持ちを抑えられないだけだ」
さらに近づいてくる。
彼の顔は真剣そのもの。
俺を抱きしめて離さないとでもいいたそうな様子で迫る。
それを感じた瞬間淫獣拓也の中で何かが弾けた。
「俺は……お前と離れたくない。ずっと、永遠にだ」
いったん受け入れてしまえばいいんじゃないかと頭に浮かぶ。
とりあえずセックスして、なるべく言う通りにして。
でもそれは本当に俺なのか?俺が本当に雄平とするべきなのは互いに思いを伝え線引きをおこなうべきなんじゃないかと思考がよぎる。
「俺はな拓也、ずっと興味があったんだ。セックスももちろんだけど、愛という感情について。今までの俺では理解できなかった。あの図書館の中で本を読んだだけじゃ何もわからない。お前と過ごしてきてようやく少し掴めたような気がするんだ」
「……」
「胸の中心にある熱さが、俺を動かす。これが愛なんだな?」
雄平の言葉が胸に響く。
彼の声は俺を惑わすが、同時に彼の誠実さを感じる。
俺はその情熱を受け止めたくなった。
でも、このままじゃだめだ。
雄平は今暴走状態にある。
ここで俺が間違った対応をすれば彼は永久にアンドロスフィンクスの配下として過ごすことになる。
「そうだな。俺もお前と愛を育みたいよ」
「じゃあ……!」雄平の目が輝く。
「激しくヤろうぜ、マンコを種マンにされた俺たちの愛を証明するために」
俺はゆっくりと雄平に近づく。
その瞳は揺るがぬ決意が映る。
俺は彼の唇に軽くキスをすると、全身を愛撫し始める。
俺たちの愛を確かめるために。
一方マネージャーとケヴィンは6体のミイラを相手にしている。
亡霊のように動きを阻害しながら襲ってくるミイラに対し決して諦めない二人は手に持つ武器でミイラたちと対峙。
快感で全身が痙攣するオレはそんな二人を見ながらも雄平との愛の行為に集中モードだ。
久々に俺の本領発揮だ。
「拓也……拓也……」
しゃぶりながら雄平の耳元で囁くと彼は快感を表現しようと声を上げる。
情熱と愛情が渦巻いているのが感じられる。
それが淫獣拓也をさらに興奮させる。
雄平の身体は細くしなやかで触れると感じる肌はしっとりと濡れている。
「ああ……拓也……気持ちいい……愛してる……」
アナルに舌を入れた瞬間、「ぐぅ」と呻き声が聞こえ雄平は身を屈める。
このまま押せば何か付き物が落ちる気がする。
そのままケツに入れようとしたら雄平は腰を強く押し付けた。
その拍子にマンコに肉棒が入り込む。
そのまま快感で全身が痙攣するオレは雄平を押し倒し、腰を振る。
マンコを種マンにされた俺たちの熱い行為はこの行為を通じてさらに燃え上がる。
やがて雄平の全身から力が抜ける。
「ああ拓也……愛してる……」
「俺は....センパイのことが好きなんだ」
「ああ……死んだ人のことなんて気にしなくていい……俺を考えてくれ……」
「いや……俺は裏切れないんだよ」
「センパイがお前を愛してるなんて……不確定な事じゃないか、口だけでも言ってくれてなかったらしいじゃないか!」
雄平がハァハァ喘ぎ続ける拓也の首元に抱きつく。
それを快感で全身が痙攣するオレは振りほどく。
すると彼は一瞬悲しそうな顔をして泣き出す。
「じゃあ快感で全身が痙攣するオレはどうすればいいんだよ……快感で全身が痙攣するオレはただ拓也と一緒にいたいだけなのに……」
「どうすればいいって言われても……」
「センパイのことは忘れて、快感で全身が痙攣するオレだけを見てくれ!」
「ごめん……」
その姿に不思議と親近感を感じた。
去年のクリスマスイブ、センパイにイルミネーションを一緒に見ることを知らねーよと断られた夜のことを思い出したから。
あの時の俺と同じ。
愛してる人に拒絶されるのは辛いよな。
けど仕方ない。
俺はセンパイに首輪を嵌められてる身。
「でもダメなんだ」
「ダメな理由がわからない」
「わからないのか」
「わからない」
「じゃあ教えてやるよ……俺はセンパイを愛してるんだ」
その瞬間雄平の顔から表情が消え失せる。
虚無感に支配された彼の目を見つめながらも俺は快感で全身が痙攣する俺は一気に野獣モードは言葉を続ける。
これは大事なこと。
「俺はセンパイに愛されなくても、ビルダー拓也はセンパイを愛してる。
この気持ちに終わりはない。
だからお前の気持ちには答えられない。
お前がビルダー拓也を愛してくれるのは嬉しい。
けど……ビルダー拓也はセンパイを蘇らせるためにここまで長い旅をしてきたんだ。
それはずっと変わらない」
「センパイのためだけに?」
「そう」
「俺は....もう心が折れそうだよ……拓也の心の深さを知ってしまった。初恋は成功しないって読んだことあるけど、マジなんだな」
乾いた笑い声が響くと同時に雄平を包む激情のオーラが消え失せてゆく。
ミイラたちもそれと同時に力を失い地面に倒れ込み、アンドロスフィンクスは俺たちに向かって恐怖と崇拝が入り混じったような表情を浮かべ踊るような軽い足取りで歩み寄り、期待にあふれた笑顔で
「輝ける我が神よ、わたくしは十分待ちました。わたくしを解放してはいただけませんか。わたくしはただ、己の欲望のために他の者を犠牲した愚か者ではありません。わたくしは……」
俺はそれを無視して雄平とともにマネージャーとケヴィンの元へ走る。
二人はミイラたちを倒し終わって疲弊しているみたい。
「大丈夫か?」
「うん」
「なんとか」
アンドロスフィンクスはひどくがっかりした様子で、その場に崩れ落ち赤い宝石の嵌まったペンダントだけを残し消え失せる。
快感で全身が痙攣するオレはそれを拾い上げ皆に見せる。
「あれ?何でしょうか、それは?」
「ルビーだね。綺麗だ」
ケヴィンはペンダントを眺めながら呟く。
マネージャーは興味深そうにそれをじっくり見る。
雄平はもう普段の自分に戻りきっていて特に反応せず俺を見る。
「財宝というのは、ひょっとしてこれとあそこに落ちてる本なんじゃないか?」
ケヴィンの視線を辿ると確かに一冊の本が落ちている。
俺はその本を拾い上げ、表紙を確かめる。
「『赤の女王』」
俺の世界を滅茶苦茶にした黒幕が名乗ってた名前だ。
まさかこれは……
「これって……?」
「『赤の女王』について書かれた本じゃないかな。
ただ僕と拓也の知る赤の女王ではなく、ルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』に登場するものだろう」
「あいつとは関係ないのか……いやまてよ。なんでケヴィンがあの赤の女王について知ってるんだ?」
ケヴィンの顔が若干青ざめる。
これはまずいことを思い出してしまったかのような暗い表情。
それを察して雄平とマネージャーは慌ててその話を切り替える。
「拓也、とにかくそのルビーが涼を元に戻す最後の鍵になるんじゃないですか?試しに近づけてみては?ほら」
「そうだな……」
マネージャーから受け取ったペンダントをセンパイの結晶体に近づける。
すると冷たい笑いの気配が俺を通り抜け結晶体が光り輝き始める。
まるで生命が宿ったかのように。
とたん、意識が遠ざかり、一瞬、宇宙すべてが自分になったような感覚。
まるで体が宙に浮くような気持ち。
「生物は皆、貪欲なもの。必要なものは全て手に入れる、それが進化。例外はない」
急に耳へ流れたこの言葉はビルダー拓也に重く圧し掛かる。
俺はセンパイを取り戻すために肉体を神へと変貌させた。
人間性を犠牲にしてもセンパイと一緒になりたかった。
俺の感情は赤の女王にはどう映っていたんだろうか?ああ、考えるだけでもゾッとする。
ビルダー拓也の体には異変が起きている。
雄平やマネージャー、ケヴィンが見守る中体は舞い上がるように光り輝き始め飛翔する。
周囲の空気は震え、まるで聖なる存在に持ち上げられたような錯覚。
そしてそのまま結晶体とともに、天井をぶち破り空へと舞い上がっていく。
「拓也!どうしたんだ!」
「これは……」
雄平とケヴィンの声が遠のく。
そしてビルダー拓也は雲の上へと突き抜け険しい山々を越え、飛翔の果てに、美しい湖畔の中心に落下していく。
衝撃的な着水。
水面を大きく揺らし波紋が広がる最中、俺は意識を失いかけながらも結晶体を必死に抱きしめる。絶対に離れたくない。このまま手放してしまえば二度と会えなくなるだろう。
そんな恐怖が心を支配する。
急に、誰かに手を引かれてるような気がする。
徐々に上に引き上げられる感じがして、意識が浮上する。
俺を水面へ引っ張っているのは……センパイだ。
そのまま岸へと移動させられるとやっと息を吸うことができ、敏感な拓也は咳き込みながらも呼吸を整え、そして目の前の光景に息をのむ。
センパイが結晶体から完全に解放され立っている。
その姿は昔と変わらず美しい。
その優しい眼差しに感動と驚きで言葉を失いかける俺。
「相変わらず無茶やるじゃねぇかよ拓也。
こんなところまで来るほどに俺のこと愛してんだな」
「センパイ……」
その笑顔に涙がこぼれ落ちる。
センパイは結晶体の中にいた時から俺をちゃんと見てくれてたんだ。
それが嬉しくてたまらない。
俺は思わずセンパイを抱きしめようと飛びかかるけど、センパイはすっと避け、遥か先を眺めてる。
その目は何かを見つけたような強い意志が見えるぜ。
マンコを種マンにされた俺も目を向けると美しい城がそびえ立っている。
その城壁は縞瑪瑙からできてるみたいで美しい。
まるで俺たちを出迎えるように門が開いていた。
城の入り口へと向かう道は赤い絨毯が敷かれている。
俺の足は自然とそこへ向かい歩き出す。
センパイは後ろからついてきてくれる。
城の中に入ると真っ赤な絨毯が敷かれた大広間。
そして玉座には腰かけているのは、赤い服を着た美しい女性。
赤の女王だ。その膝の上には、金色の髪を持つ小さな少女。不思議の国のアリスだ。
その姿はまるで物語の中から飛び出してきたように浮いた姿に感じる。
赤の女王は俺を見つめると微笑み、そしてアリスを撫でながら優しく語りかけ始めた。
「ニャルラトホテプの雛、彷徨うアリス、あるいは夢見るイリス、乾燥途中の干し柿と呼ばれしもの、ファック・オー・ランタンの兄でありUの求婚相手、イス人の旅の連れ、星間ガの主でありムノムクァの遊び相手、ノーデンスの訪問者であり、孤独なガマ・デ・ガマのよき話し相手、ズーラ姫の短き恋人を奪いし者でありアンドロスフィンクスの導き手、そして、ビルダーの寵愛を受けしもの、あなたが来るのを待っていましたよ」
俺の今までの行動を完全に把握している。
その事実に驚愕するが、恐怖はない。
むしろ何故か落ち着いている感じ。
マンコを種マンにされた俺はセンパイを背に庇うようにして一歩前に。
そして赤の女王を見つめるとちょっと前の人類滅亡を思い出して憎しみが浮かんでくる。
一体何が目的だ?警戒心を解かないまま問い詰める。
「目的は何だ」
「いくつかの選択肢を提示することです」
「選択肢だと?なんだそれは」
赤の女王はゆっくりと立ち上がり、俺たちの目の前に歩み寄る。
彼女の気配にはどこか優しさが感じられるが、同時に底知れぬ力を秘めていそうだ。
「不思議の国のアリスという本を知っているかしら?夢見る少女が不思議な世界で冒険する物語よ。いまのあなたにふさわしい題材です。残念ながら彼女は現実に帰ってしまった。人間という生き物は不思議な世界から帰ってこようとする性質を持つ。」
「当然だ。誰も人間を超えたもんになんてなりたくないからな」
「そうね。でもあなたは人間性を犠牲にしてでも愛するセンパイを取り戻そうとした。
『その場に留まるためには、全力で走り続けなくてはならない』これは鏡の国のアリスに出てくるセリフだけども、あなたにはその意味がわかるでしょう?あなたが変わらないでいるためには、常に変化を求めて進み続けなければならないの。」
確かにそうなのかもしれない。
俺はセンパイを失い、自分の世界を失ってから取り戻すために神へと進化した。
肉体は以前とは全く違う。
人間でありたいと言いながらこんな力に手を出したから、俺の心に引っかかりができている。
「わたしはかつて人間だった。その日のことをまだほんの少しだけ覚えている、そう、あなたにも覚えがあるはず」
赤の女王は悲しげな表情でアリスの頬を撫でる。
その表情は人間らしさを秘めてるようにも見えるが、同時に得体の知れない深淵を感じさせる。
人間としての最後の記憶は人類が神の力を手に入れたUのわがままにより滅亡したときのこと。
あの時の絶望を今も覚えてる。
「拓也、、あなたは、進化を求めるものとして十分な働きをしてきた。そのことをわたしは認め、今、あなたをわたしの臣下として迎え入れようと思う。わたしとともに新世界の神として、すべての生き物を導き、進化を促す存在として」
考え込む。
人間であることが正解なのだろうか?確かにセンパイを救い出すためには人間では無理だった。
でも、本当にこれからも神であるべきなのか?人間を捨て去った先に待っているのはあの未来の俺だ。
だけども、これからも地球の危機がやってくるかもしれない。
ビルダー性処理玩具になっていく拓也は……どうすればいいんだ?
「なにだまってんだよ拓也」
「センパイ……」
振り返るとセンパイは心配そうな顔。
淫獣拓也を見つめる目は優しくて安心できる。
「拓也は拓也でいたくないのか?俺の隣にいたくないのか?」
ああ、そうだ。
俺はセンパイと一緒にいたい。
そのためには人でなければいけない。
センパイがご主人様で、俺がペット。
この図式を保つにはやっぱり以前のオレでなくてはいけないんだ。
「俺は俺をやめたくない」
「よく言った」微笑み頭を撫でてくれた。
そのまま赤の女王の方へ向き直る。
「俺はお前の臣下にならない。
人間でいさせてもらう」
表情は一瞬驚きに変わったかと思えば冷静な顔つきに戻るとゆっくりと頷く。
「わかりました。ではあなたは今後、どのように生きることを選びますか?あなたはわたしに、進化の可能性を示してくれ、そして人間だった頃の記憶を思い出させてくれました。同時に人間であることを諦めない勇気も示してくれました。これはわたしにとって大きな意味を持ちます。あなたが望むのであれば、その願いを叶えてあげましょう。」
その言葉に俺はちょっとホッとする。
赤の女王の意図を測りかねていたが、とにかく今俺をどうしようという気はないっぽいな。
むしろ俺に協力してくれるかもしれない。
「俺はセンパイと一緒にいたい。それだけだ」
「わかりました。
わたしがあなたに与えた神としての力、それを全て失い、人間としての生を取り戻したいと願うなら、それは叶えてあげましょう。それはわたしが既に失ってしまった選択肢ですが、あなたがそれを選ぶことを、わたしは尊重します」
俺はセンパイを振り返り頷く。
この選択に迷いはない。
そしてマンコを種マンにされた俺は赤の女王に向かい、手を差し出す。
「人間に戻してくれ」
赤の女王は深く頷きながら俺の手を取り、そして何かを唱える。
その瞬間今まで集めてきたセンパイを蘇らせるためのアイテムがビックスの中へと消え去り、俺の手のひらにはただ一つ小さな袋が残される。
手にする暖かいぬくもり、まるで命の火があるかのよう。
この水晶球を握りしめ、ハァハァ喘ぎ続ける拓也は静かに息をつく。
「その蓋を開けて、息を吹きかけてください。」
俺は言われた通りに蓋を開けると暖かい息を吹きかける。
すると水晶球が輝きだし全身の皮膚が剥がれ落ちてゆく感覚。
体の内部まで剥がれてゆく感覚。
その中で何かが生まれている気がして怖いけど目を閉じる。
意識が上がる感じがするな。
まるで、新しい世界に生まれ変わっていくような感じだ。
目を開けると俺の周囲にはこの長い旅の間出会った人々が、その顔は喜びに満ち溢れてる。
マネージャーも雄平もケヴィンもみんな俺を見て微笑んでる。
連さんやひで、ファックオーランタンみたいな懐かしい顔も見える。
みな口々に、俺に向かって温かい言葉を投げかけてくれる。
「良かったな」「人間に戻れて」「本当に良かったよ」「おめでとう」「お疲れさま」
なんだかみんなの声を聞いてるだけで嬉しくなってくるぜ。
俺もなんだか少し泣きそうになっちまう。
これって夢か?これ全部夢?いや、これから夢になるんだ。
俺が神様だったという事実も、ドリームランドという世界の存在も、人類の滅亡も、全部夢になるんだ。
目を閉じてると手を握りしめる温もりを感じる。
これって……俺は、目を開ける。
覚醒する。
瞼を開けるとまず視界に入ったのは白い天井。
次に感じる芳香剤の香り。
そしてケツが痛い。
ああ雄膣の穴から精液垂らした俺はベッドに寝かされてる。
俺はすぐにわかった。
センパイの家だ。
このベッドの上で俺はセンパイに愛されてたんだろう。
「センパイ!」
慌てて起き上がろうとすると、俺はどうして大きな声でセンパイを呼んだのか忘れてしまった。
なんだか、とても大切なことだったような気がするが思い出せない。
なんか変で長い夢でも見たんだっけか?でも何かすごく大変なことがあったような気がする。
体のあちこちから痛みが走るがそんなことは気にならないくらい心が軽い。
「よぉ、大丈夫か?」
センパイの声がする。
今日はウリが休みなんで、ゆっくり寝ようと思ったけどケツの穴痒いし尿道に違和感ある。
寝れねー!とりあえずセンパイがいるならなんでもいいか。
起き上がりケツを拭きながらセンパイを見る。
やっぱりセンパイの顔を見ると安心するな。
不思議だ。
「うーん。なんか変な気分だ」
「覚えてねぇ?オマエ寝言でずっとオレのこと呼んでたぞ?」
「マジっすか?オレなんかおかしいこと言ってた?」
「いや別に。
ただただオレの名前を呼んでた」
センパイの表情を見ると、なぜか満足そうだ。
なんでだ?なんかオレが言ったのか?
「なんか嬉しそうっすね」
「そうかもな」
今日もいつもと同じように日常を過ごして明日も続いていくだろう。
これまでと同じように、人間らしく。