※この作品はR-18です。

〜兎と鴉と女神達〜   作:坩堝の騎士王

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やっぱおまえら(ヘレティック)嫌いだわ。

ー観客席ー

 

『勝ってきました。』

 

「お帰りなさいませハル様。」

 

「お疲れ〜ハルる〜ん。」

 

「最後のカカト落としカッコよかった!!というか身体軟らかっ!?」

 

満を持して戻って来たハスラーは三組の激励を受けていた。

どうやら最後のトドメは後頭部にカカト落としで決着をつけたらしい。

 

『さてさてお次は……弟子の成長を見定めるとしますか♪』

 

ハスラーは自らの弟子の成長性を見極めようと席に座った。

その隣には、当然の様にクロエが座った。が……右隣から声がかかった。

 

「隣……良いかしら?」

 

ネクタイの色から3年生の先輩と見受けられる女子生徒が、ハスラーの右に座る。左の腕にギプスを付けた澄んだ水色の髪をした少女はハスラーに問う。

 

「ねぇ、更識の事だけど……ありがとう…」

 

『…気にしなくていいですよ。』

 

ハスラーの隣に座った淡い水色髪の三年生は、黙って寄り添う。その様子にハスラーも黙って自身の腕を貸す。

その雰囲気は…

 

(((((ヤダ……凄くアダルティ…)))))

 

周りのギャラリー達に要らぬ誤解を生む程である。

 

アリーナ

 

アリーナの中心には、[リンドヴルム]を纏ったカイネ・ゲルトルート……

対するは[白式]を身に纏う織斑一夏の姿があった。

 

『……カイネ(*`・ω・´)…』

 

『…そう急くな。織斑一夏…ほら、戦う前の景気づけと言うものだ。』

 

そう言った、カイネの左手には1個の瓶が握られていた。

そして拡張領域から2つの杯を取り出すとそれを片方、織斑一夏へと放る。

 

『…おっとと…コレは…』

 

『杯を出せ。注いでやろう。』

 

瓶から杯に注がれたのは透明な液体。

ふわっとした果実の匂いが鼻をくすぐる。

酒の類ではないようだが、相当に高価なものだと伺える。

 

『…栽培された葡萄を絞った純粋な飲み物だ。……栽培された物は世に出ず久しい代物だ。農家達が汗水垂らして作ったのだよ。心して味わいたまえ。』

 

『なっ!?…戴きます。…旨い……』

 

女尊男卑の煽りを受けたのは、農業や漁業の生産業だ。

理由は単純。[男だった]。たったそれだけで理不尽な要求をされて、仕事が立ち行かなくなり廃業をしている農家や酪農家も少なくない。

最もそんな農家達を拾い集めて高条件で雇っているのが、[欧州貴族院]や、ハスラーや鈴音は知っているが、表社会に関わる事を放棄する代わりに[アーク]に終身雇用を頼む人達も多い。

 

……喚く以前に、喚く頭脳を使えよと言いたいが無駄である。

 

『カイネさん。少し俺から意見…良いか?』

 

『……赦す。述べるがいい…』

 

織斑一夏の意見陳述に、カイネは貴族としての振る舞いを崩さない尊大な趣きで答える。その光景は王に物申す1人の騎士に見え、時代と共に忘れられた礼節そのものであった。

 

『…俺が勝てる可能性は…無いよな』

 

『当然だ。』

 

カイネの毅然とした答えに苦笑する織斑一夏だが…右の手に握り締めた[雪片弐型]を左腰に納刀する素振りを見せ…一呼吸。

目を開けた時……織斑一夏の眼は一点の曇りなき決意に満ちていた。

 

『……勝率は那由多の彼方……でも、今の俺には充分だ!!』

 

『( ≖ᴗ≖)ニヤッ……来い!!』

 

両者、スラスターを吹かせて、突撃した。

[リンドヴルム]はウイングスラスターを利用し回転突撃を実行。

其れに対して[雪片]を納刀した状態の一夏は目を閉じてギリギリまで瞑想。カイネとの距離が至近にまで迫った瞬間……

 

『[…零落白夜…]』

 

ーザンッッ

 

『!?ッッッ…』

 

…抜刀した一瞬だけ、単一使用能力の[零落白夜]を発動させて斬る。

そして残心……

シンプルだが、綿密に練った集中力をこの一撃…この一瞬に込めた静かな斬撃は確実に[リンドヴルム]の翼を穿った。

 

『ッッッ!!カッッ…ハァ!…どうだ?!…』

 

冗談では無いくらいの集中力を使ったのか、織斑一夏はしばらくの間息苦しそうに嘔吐いていたが、すぐ様向き直る。すれ違った二機だが、変化があったのは[リンドヴルム]だった。

翼の先端…スラスターを担ってる羽根の部分が一枚…墜ちる。

 

『…ンフフフフフ…ハハハハハ……』

 

『怖いっす。カイネさん…』

 

『なるほどなるほど…居合の一瞬だけ[零落白夜]を発動させて斬ったか。刹那の見切り…無我の境地と云うニホンの[武(ぶ)]だと聞いたが……まだだ!!』

 

ーギャリィィンン

 

『!!ぬぉぉぉぉ!?!?!?』

 

ービュッ……ヂッッッ!

 

『!?あっぶねぇ?!』

 

[リンドヴルム]が跳躍。捻りを加えて此方へと緩やかに旋回しながら右脚の脚部ハンターエッジを展開して蹴りかかる。其れを[雪片]で受ける一夏。

緩い動きにも関わらず、受け止めきれなかったのか重い一撃に思わず仰け反る一夏。だが、天性の直感が良いのか、危機感知能力が長けてるのか、下から来る左脚の蹴りをギリギリで掠める。

[白式]のブースターを吹かせて後ろに後退するも[リンドヴルム]は回転しながら特攻。

[リンドヴルム]に下段からの斬り上げを食らわせるが…斬り上げを利用して上昇すると、スラスターを吹かせ、猛禽のように急降下。

[白式]は横合いに飛ぶ様に避けると、慣性を利用した回転撃を急降下した直後の[リンドヴルム]にぶつけた。

吹き飛ぶ[リンドヴルム]と距離をとる[白式]……。

だが、吹き飛んだ[リンドヴルム]は、重機関砲剣セローシュを地面に突き立てるとそれを軸に回転。ふわりと着地した。

 

『……やっぱムズいな。しかも回転突撃の時のウイングパーツの1枚1枚がビームダガーみたいになってるからこっちが削られる。…[零落白夜]は…使えて後1回…ワンチャンに賭けるか。』

 

一旦、呼吸を整えて…視た事を逐一分析する一夏……[零落白夜]の使用回数の限度があと1回という事実に対して刹那の可能性に全てを賭けようと決心した。

その瞬間……アリーナの天井が破壊された。

否、降ってきたのは暗色の物体。

シールドエネルギーをぶち抜いたソレは地面に着弾。

 

アリーナの天井からの攻撃に、会場はたちまちパニックに陥る。

 

『落ち着けお前ら!!…アリーナを覆うシールドバリアが破壊された。直ぐに隔壁が上がるはずだ。…仕事はパニックに陥った他の者達を落ち着かせる事・避難誘導・自らの命の確保。この三つ。無論、簡単にやれとは言わん。恐怖に負けて惨めに死ぬか…守りきって気分良く再会するか。どっちを選ぶ。』

 

「「「「惨めに死ぬのは嫌だ!!」」」」

 

「避難させて全員生存してやるわ!!!」

 

「三組のしぶとさ舐めないでねハル君!!じゃあ行こー!!!」

 

「「「「おー!!!!!」」」」

 

ハスラーがクラスメイトにかけた言葉はなかなか酷いかも知れない。

けれどトップクラスの負けず嫌いが何故か揃ってる一年三組を焚き付けるには充分だったようだ。通路の方々にグループになって散らばったクラスメイト達を見送るとクロエはハスラーに問いかける。

 

「ハル様はどうされるので?」

 

『乱入者を叩くさ。行ってくる(๑•̀ㅂ•́)و✧』

 

そう言って、[スティールヘイズ・オルトゥス]を纏ったハスラーは場に躍り出た。

時を同じくして[黒龍(ウォーロン)]を展開した鈴音もアリーナに降り立つ。

鈴音は両手の[ガトリング砲]を噴煙の中に向けながら1歩1歩進む。

噴煙の中でナニカが動き、煙を吹き飛ばした。

暗色のIS。普通のISより二回りは大きいが、明らかな相違点が背部の非固定武装が存在しない事とフルスキンだと言う事だ。

武装は両肩の二連レーザー砲と両腕部に取り付けられた大掛かりな電磁砲。

ソレは虹色の光を明滅させながらこちらに振り向く。

そして……周囲を漂う数匹のクラゲ型ドローン。

 

『……おや?晩餐…会は遅れ……たよう…ですね…』

 

ISを解除して現れたのは、解像度の低いガビガビのマイクで喋った様な女(・)性(・)の(・)声(・)を発する布仏虚。

其の声が聞こえた途端、鳳・鈴音とハル・ハスラーの顔つきが険しくなる。

 

『…[ヘレティック]!?…ねぇ冗談キツイわよ?!』

 

『…?!…マジか…』

 

『虚先輩!?…鈴!ハスラー!それに何だ![ヘレティック]って?!』

 

『ッッッ…"布仏虚"だと?!…食堂で会った時の雰囲気と違うぞ!?』

 

そう。声の主は布仏虚……あの時、喋れないのかホワイトボードで会話していた…ハズだが今は、流暢とは行かずとも、話している。

そしてカイネはあの時の静かな今にも消えそうな雰囲気ではなく纏わり付くような不気味な雰囲気に身の毛がよだち始めている。

そしてソレはハスラーの方向を見ると、にっこりと笑いながらとんでもない一言を言った。

 

『お久しぶりですね?[独立傭兵レイヴン]?』

 

『『『え?』』』

 

『…黒い烏…支配の天敵…龍殺し…最後の烏…この二つ名は全て……彼個人が持っている[名前]。』

 

『お前の2つ名ってやつ…多くね?!』

 

『待ちなさいよ!何よラストレイヴン(最後の烏)って…物騒ね。アンタの渾名?』

 

布仏虚の発した言葉はハル・ハスラーの知られざる正体。当然、知っていたが口裏を合わせる為に大袈裟に驚く織斑一夏と鳳・鈴音。

…独立傭兵レイヴン……その名を知る者はあまり居ない。彼の存在は秘匿されており、その容姿も見た者がおらず、色々な形で陰謀論者が話題集めをしていたり……

曰く、筋肉モリモリマッチョマンの変態だったりとか…

曰く、ロボコップじみたサイボーグマンとか…

曰く、頽廃に浸る人類に出された地球の答えとか……

 

…まぁ言ってることがほぼ無茶苦茶で滑稽だったと…見た本人は爆笑していたが。

 

『…都市伝説の類と思っていたが………そうか。ハスラー殿が…[生きる伝説]という訳か……我ながら運がいいのか悪いのか…』

 

こっちもこっちでハスラーの正体を知っていたカイネは、巷で語られる都市伝説の主が彼だと当たりをつけた。

 

 

 

 

━━━━━━━━一方、エデンと呼ばれる場所では……━━━

 

 

 

 

 

『バンクチャーバスター砲…準備完了だ…何時でも行けるぞ。』

 

『……有難うございます。グレイブ……さて[シ(・)ン(・)デ(・)レ(・)ラ(・)?・ペ(・)ロ(・)ー(・)ナ(・)?貴女達をIヘレティック…リバーレリオの元へと送付します。かの怨敵と相対しているレイヴンと共にあのヘレティックを討ち…人類守護の任を果たしてください。私達も後から向かいます。』

 

『えぇ…ドロシー様。分かったわ♪(レイヴン♡やっと会える♡)』

 

『頑張ります(ง •̀_•́)ง!!ドロシー様!!』

 

ふたりが入った夫々のコンテナはIS学園へと照準を合わせて調節される。

そして電磁加速が最大まで充填され、数瞬の沈黙の後……亜音速で撃ち出された。

 

向かう先は、レイヴンの元……

 

続く!!……

 

 

 

 

 

 




[リバーレリオ]
外見は[布仏虚]なのだが、何時・何処でヘレティックに至ったのかその正体が全く分からない。
名前の意味はリバタニアニズム(自由主義)から来ている。
なんでその名を取るのかは不明だ。

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